最初に殺害するのが彼らの両親であろうと躊躇無く殺す例が余りに多かったためか。
『彼らが最初に殺すのは自分の親である』という一文もある。
『親殺し』
ディクロニウスの習性の一種とされているがそれは果たして真実なのか?
確かにディクロニウスは冷酷な殺人鬼である。しかし、それ以前に彼らは五歳に満たない幼児であり、他者への愛情も持ち合わせている。
そして、彼らは成長を遂げるに連れて親の存在を求め始める・・・既に自らの
この矛盾は、一体何なのか。
周りの人間どころか同族でさえ手に掛ける程の殺人衝動を備えていたのにも拘わらず自分の父親には牙を向けられなかった、
この問題は見方を変えると、こう考えられる。
『彼らディクロニウスの存在を最初に否定したのはディクロニウスの両親である』と。
ルーシーのようにベクター発現による殺人のトリガーが『他者の裏切り』や『差別』による物だったとしたら・・・有り得ない推論ではない。
また、これらは親を視点に考えると、容易に想像が出来てしまう。
何の変哲の無い普通の家庭から突然生まれた
奇形の証である側頭部に生えた角と
これらを一切気にせずに育て上げられる親がどれほどいるのだろうか?
家庭内での間柄に軋み、皹、歪み、摩擦が存在しないと言えるか?
周りの評価を、地域周辺の声などを気にせずに生活出来るのか?
人間は全員が全員、異物を受け入れられるほどの器があるのだろうか?
育児放棄。
虐待。
離婚。
家庭内暴力。
これらが、起きる事など有り得ないと言い張れるだろうか。
答えは限りなく黒に限りなく近いグレー。
正真正銘の正しい判断を下せる"大人な"両親がゼロとは言わないが殆どのディクロニウスは親に拒絶されていたのだろう。
幼子は言葉を十分に理解出来ない部分を話し方や雰囲気といった感受性の部位で補う。
自己が完成したら自分が相手にどう思われているかを、どうすれば良いかを必死に感じ、考える。
自分は愛されていない存在だと気付くのにそれほど時間は掛からない。
そこに追い討ちを掛けるかのように耳元で頭の中で囁き続け殺人を促す『DNAの声』。
自分を愛さない両親と自分を邪険に扱う周囲の他人達、一人孤独に生きて行く中で純粋でいられる者はどれだけいたのだろうか。
・・・・・・もっとも、灰神が先程見た
少なくとも、灰神と『DNAの声』である
第十脳神経応用科学施設八階
科学者共が、完全なパニックに陥っていた。
一度外へ出ようとエレベーターに乗ろうとした職員がそのまま悲鳴を上げて一階に落ちたのが引き金であった。
内線を使って連絡を取ろうとすると寸断されており、非常階段を使おうと扉を目にすると外からの何らかの衝撃により歪められ開けることが出来なくなっていることを確認し、自分達が退路を断たれ何者かに追い詰められていることに気が付き慌て始め。
そして、追い討ちを掛けるかのように床や壁や天井からすり抜けるように生えて来た肌を刺すような空気を纏ったどす黒い腕に科学者は蛇に睨まれた蛙になり果て、脳からの命令を体が受け入れず、硬直し竦み上がり冷や汗を流し。中には失神する者も現れ、縮こまっていた。
「ヒ!?・・・ぁ、ぁ・・・・・・た、たすけてくれ」
いくつかの黒い腕が一人の研究員に狙いを定め、一歩一歩確実に部屋の中央へ追い込む。
同僚や上司は硬直した自分の体に動かそうとするも、指先をピクリと動かすだけで精一杯で誰も彼を救う余裕はなどなかった。
「ぐぇ!?アガッ・・・がぐる・・・・・・じぃ」
そして、黒い腕の一本が、大蛇が獲物の喉笛に噛み付くかの如く一瞬に距離を突き詰め研究員の首を掴み取り、天井ギリギリまで持ち上げる。その他の黒い腕も右肘へ左膝へ背中へと這わせた次の瞬間。
腕が一斉に鞭のように奮い立ち、一瞬遅れて浮き上がっていた研究員がバラケ、体の一部が持ち上げていた所より下の黒い腕へと落ち、血が吹き出ないほどの綺麗な切り口を披露しながらまるで豆腐やゼリーが刃物の上に置かれ自重で勝手に裂かれるかのように更に切断される。
「「『ワァァアァアアアア"ア"』」」
緊張と怯えで張り詰められていた空間も研究員の一人が黒く染まった
壁や床に叩き付けられ、蟻喰いが蟻の巣を壊し、長い舌を使った巧みな動きで蟻を捕らえるように掴み取られた者は。
「ヒィィイイイ!?
アガッグ、ェゲ・・・・」
黒い
その中で運良く、惨劇の中を潜り抜けエレベーターの前まで到達した者もいた。―既にその逃走が知られていることも知らないで。―
「クソッ、クソッ、なんなんだ『アレ』は!?
能力なのか学園都市の次世代兵器なのかわからないがこんなイカレた所にいつまでも居られるか。フンっ、―――グギギギィィイイ、ひらけぇぇええええ」
研究者にしては鍛えているのか。暗部の前線から引退した『プロデュース』関係者か、はたまた『外』からの企業スパイかは分からないが職員の一人がエレベーターの扉を無理やりこじ開け、エレベーターのワイヤーを伝い下へ降りていく。
「畜生、厄日だぜ全く、・・・"キィイイイイイイイイイイイ"・・・・・・まさか」
一つ下の階辺りに到達した途端、ワイヤーが細かく速く振動し金属音が響き。上を見上げると自分の掴んでいる場所より1m上のところを黒い
黒い
「・・・・ぉい、冗談だろ?
ゆっくりと確実に、浸食映像の早送りのようにそのワイヤーはどんどん細くなって行く。
半分程削れると"ガクン"と大きく揺れ。
「・・・やめろ」
更に粉雪より細かい金属粉末が霧のように舞い落ち。
「やめてくれぇぇええええ!!!!」
ガキィィイイン。
一階に取り残されたエレベーターの床上にもう一つ死体が増えた。
彼・・・紅鬼は八階の職員全員が動かなくなったことを擬似"円"で確認すると黒い
「クハハハハ・・・あとは、最上階だけかぁ」
怒りと憎悪の混じった不安定な表情を貼り付けて、
最上階
「一体これは何かのパフォーマンスかね?」
「いえ、そのような話は聞いておりませんが・・・」
会議室はざわめき、科学者達は黒い
「・・・・・・」
「何か嫌な感じがするな」
「何がだ?」
「なんつーか・・・『殺気』みたいな」
彼らが下階の異常に気付かず今も尚、会議を続けていたのには二つのミスがあった。
内部情報の漏洩防止のために会議室を防音壁にしたこと。
もう一つが定時連絡といった、施設の機械系統のセキュリティー以外の対策法を怠ったことだ。
もし、会議室が防音壁でなければ。
もし、この施設の研究員が全員無線の類のものを持っていたら。
彼らは武器を持ち戦って散り逝くことぐらいは出来たかもしれなかった。
しかし既に、鬼は彼らのすぐそばまで迫り、目に付く罪人を全て喰らい尽くさんと駆け上る。
会議室丁度中央の床から突然現れた無数の黒い
黒い
科学者達は突然の爆音と暗闇の中、黒い
「停電dグェルベバ!?」
科学者の一人が吹き飛ばされた辺りから曇った悲鳴と、肉と骨を剛腕で無理矢理引き裂いたような音と共に生暖かい液体が隣の同僚に降りかかる。
「暗くて何も見えないぞ!?」
「ちょっと、私のペンライトを盗ったの誰!?」
「待て!!もう少しすれば非常灯が点く筈だ。それまで無闇に動くな!!」
一人の研究員が騒ぎ始めた連中を大声で諫める。
「おい、アレって」
目が暗闇に慣れて来たのか、一人が指差す方向に顔を動かすとその先には、
大穴の中心に佇む背中に無数の腕を生やした悪魔が見えた。
少年の背中から伸びる黒い
―――見ぃつけた
唇だけ動かすと、少年は科学者達から抜き盗ったペンライトやボールペン、携帯を掴んでいるベクターが狙いを定め投擲をしようと、うねり始める。
「おい、実験動物!!テメェ自分がどんな立場か理解してi
ドゴッ、とベクターを振るう高速移動の運動エネルギーを使ったそれは一つ一つが弾丸と化し人の身体を意図も容易く貫通した。
「は?」
速過ぎる展開に運悪く生き残った科学者は間抜け呆けた声を上げる。
分からない。
つい先程までこれまでの研究成果を語り合っていた人間が頭や胸や腹を携帯やボールペンで風穴が作られた。・・・・状況が余りに無茶苦茶過ぎて現実として受け入れられない、受け入れたくない。
ふと気付くと自分の目の前に物凄い速さで迫る天井が見えていた。
「あー、コレで終わりかな~?」
無論、息遣いや衣擦れの音で居場所はわかっているのだが敢えて口にし、一瞬の希望をちらつかせる。
「こっここかな~、あっそこかな~♪」
血で汚れていない死体を積み上げて腰掛けながらベクターを伸ばし床ごと瓦礫を持ち上げたり、横倒れたデスクを真っ二つに切り裂く。
「「!?」」
「およ?まだ生きてたんだぁ」
まだ20代そこそこ女性の科学者二人が恐怖の余りに互いに白衣を強く握り締め涙を流しながら震えていた。
「ぃ・・・いや、死にたくない」
「ひぃ!?」
少年は口端を吊り上げながら歩き、近づくと彼女達のすぐ
「いや、・・・いや、だ・・・助けて」
片方の女が涙を流しながら声を絞り出すも、彼は視線を揺るがすことなくその救援を求める声を無視して座り込み笑みを向け続ける。
「・・・見逃してk「もういいや、飽きちゃった」ア゛」
更に命乞いを聞き続けるのが億劫になったのか、人間の動体視力では到底捉えることは不可能な速度で首を切断する。
「え?・・・っ、いやぁぁぁああああ!?」
声も出ないほど怯えて黙り込んでいた方の女が、目の前で同僚が首を刈られ、その切り口から吹き出る生暖かい液体が自分に降りかかり今まで実験に使った
「お願いします!!助けてください!!」
「クフフ・・・あ?・・・あれ??」
文字通り、命懸けの懇願を嘲笑いながら止めを刺そうと
「助けて・・・くださ・・・・・・い?」
女研究員がいつまで待っても来ない死に訝しげに顔を上げると自分を殺そうとした少年が半目の状態で床に倒れていた。
「た・・・すかったの?・・・私は生きている?・・・・・・生きているぅぅうう!!」
倒れている少年を壊れたテーブルの足のパイプで
「よしっ、ヨシッ、ヨォォォオオシ!!・・・・・・・ハハ、そうよ。高が
一頻り自らの生命活動の確認を済ませると女研究員は持っているパイプを高く振り上げ、少年の頭を狙う。・・・少年の目に狂気ではなく知性ある光が戻っていたことに気付かずに。
「
そして、
「ぐ、ぅぅ・・・痛い」
感情の激震による血圧の上昇の影響で頭痛が酷いのか
「はぁ、はぁ、はぁ・・・どうすんだよ、コレ」
21本編の冒頭に戻る。
感想、意見、誤字報告、待っています!!
皆さんは怒り過ぎて頭痛がした経験はありますか?(疑問)
人格の入れ替わりを上手く表現できているのか非常に不安であります(怖)
次回の『とある淘汰の転生憑鬼』は弔い&原作キャラとの接触!!・・・ができたらいいな←