とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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今回、序盤に原作(エルフェン)への自分独自の自己解釈がありますのでご注意くださいorz



23本編 児童期8 ―――見ぃつけた

原作(エルフェンリート)に於いてディクロニウスの殆どは三歳を過ぎ自己が完成されると『DNAの声』に導かれ発現したベクターを用いて僅かな感情の憤りで衝動的に周りの人間を殺し始める。

 

最初に殺害するのが彼らの両親であろうと躊躇無く殺す例が余りに多かったためか。

『彼らが最初に殺すのは自分の親である』という一文もある。

 

 

『親殺し』

 

 

ディクロニウスの習性の一種とされているがそれは果たして真実なのか?

 

 

確かにディクロニウスは冷酷な殺人鬼である。しかし、それ以前に彼らは五歳に満たない幼児であり、他者への愛情も持ち合わせている。

そして、彼らは成長を遂げるに連れて親の存在を求め始める・・・既に自らの(ベクター)で殺めた両親を再び。

 

この矛盾は、一体何なのか。

周りの人間どころか同族でさえ手に掛ける程の殺人衝動を備えていたのにも拘わらず自分の父親には牙を向けられなかった、35番(マリコ)がいい例だろう。

 

 

 

 

この問題は見方を変えると、こう考えられる。

『彼らディクロニウスの存在を最初に否定したのはディクロニウスの両親である』と。

 

ルーシーのようにベクター発現による殺人のトリガーが『他者の裏切り』や『差別』による物だったとしたら・・・有り得ない推論ではない。

 

 

 

また、これらは親を視点に考えると、容易に想像が出来てしまう。

 

何の変哲の無い普通の家庭から突然生まれた異常(ディクロニウス)

奇形の証である側頭部に生えた角と両親(じぶんたち)とは明らかに違う髪と瞳の色。

これらを一切気にせずに育て上げられる親がどれほどいるのだろうか?

 

家庭内での間柄に軋み、皹、歪み、摩擦が存在しないと言えるか?

 

周りの評価を、地域周辺の声などを気にせずに生活出来るのか?

 

人間は全員が全員、異物を受け入れられるほどの器があるのだろうか?

 

育児放棄。

虐待。

離婚。

家庭内暴力。

 

これらが、起きる事など有り得ないと言い張れるだろうか。

 

ディクロニウス(我が子)を疎まない可能性は皆無であるのだろうか?

 

答えは限りなく黒に限りなく近いグレー。

正真正銘の正しい判断を下せる"大人な"両親がゼロとは言わないが殆どのディクロニウスは親に拒絶されていたのだろう。

 

幼子は言葉を十分に理解出来ない部分を話し方や雰囲気といった感受性の部位で補う。

 

自己が完成したら自分が相手にどう思われているかを、どうすれば良いかを必死に感じ、考える。

 

自分は愛されていない存在だと気付くのにそれほど時間は掛からない。

 

そこに追い討ちを掛けるかのように耳元で頭の中で囁き続け殺人を促す『DNAの声』。

 

自分を愛さない両親と自分を邪険に扱う周囲の他人達、一人孤独に生きて行く中で純粋でいられる者はどれだけいたのだろうか。

 

7番(ナナ)が如何に特殊なケースと言われていたのかが伺える。

 

 

・・・・・・もっとも、灰神が先程見た胎児(ディクロニウス)達はそんな親達に先に殺されたので孤独や人間の醜さを知らずに死んでしまったので、それが不幸であったのか幸せであったのかは分からない。

少なくとも、灰神と『DNAの声』である()、灰神院紅鬼は我を忘れて、灰神柳の体を乗っ取り、憎悪と本来封じられた人類に対する『殺意』を溢れさせ、残虐を引き起こさんと怒り狂っていた。

 

 

 

第十脳神経応用科学施設八階

 

 

科学者共が、完全なパニックに陥っていた。

一度外へ出ようとエレベーターに乗ろうとした職員がそのまま悲鳴を上げて一階に落ちたのが引き金であった。

内線を使って連絡を取ろうとすると寸断されており、非常階段を使おうと扉を目にすると外からの何らかの衝撃により歪められ開けることが出来なくなっていることを確認し、自分達が退路を断たれ何者かに追い詰められていることに気が付き慌て始め。

 

そして、追い討ちを掛けるかのように床や壁や天井からすり抜けるように生えて来た肌を刺すような空気を纏ったどす黒い腕に科学者は蛇に睨まれた蛙になり果て、脳からの命令を体が受け入れず、硬直し竦み上がり冷や汗を流し。中には失神する者も現れ、縮こまっていた。

 

「ヒ!?・・・ぁ、ぁ・・・・・・た、たすけてくれ」

 

いくつかの黒い腕が一人の研究員に狙いを定め、一歩一歩確実に部屋の中央へ追い込む。

 

同僚や上司は硬直した自分の体に動かそうとするも、指先をピクリと動かすだけで精一杯で誰も彼を救う余裕はなどなかった。

 

「ぐぇ!?アガッ・・・がぐる・・・・・・じぃ」

 

そして、黒い腕の一本が、大蛇が獲物の喉笛に噛み付くかの如く一瞬に距離を突き詰め研究員の首を掴み取り、天井ギリギリまで持ち上げる。その他の黒い腕も右肘へ左膝へ背中へと這わせた次の瞬間。

 

腕が一斉に鞭のように奮い立ち、一瞬遅れて浮き上がっていた研究員がバラケ、体の一部が持ち上げていた所より下の黒い腕へと落ち、血が吹き出ないほどの綺麗な切り口を披露しながらまるで豆腐やゼリーが刃物の上に置かれ自重で勝手に裂かれるかのように更に切断される。

 

「「『ワァァアァアアアア"ア"』」」

 

 

緊張と怯えで張り詰められていた空間も研究員の一人が黒く染まった(ベクター)により目の前で10個以上のパーツに切り裂かれたのを皮切りに血潮と絶叫が爆発した。

 

壁や床に叩き付けられ、蟻喰いが蟻の巣を壊し、長い舌を使った巧みな動きで蟻を捕らえるように掴み取られた者は。

 

 

「ヒィィイイイ!?

アガッグ、ェゲ・・・・」

 

黒い(ベクター)に捕まり手足をばたつかせ、もがき些細な抵抗も虚しく無様に吊し上げられ空中でバラバラにされ、肉と臓物が絡み合い、飛び散り、壁に床に天井にまで赤黒く染め上げて殺戮を生む。

 

その中で運良く、惨劇の中を潜り抜けエレベーターの前まで到達した者もいた。―既にその逃走が知られていることも知らないで。―

 

「クソッ、クソッ、なんなんだ『アレ』は!?

能力なのか学園都市の次世代兵器なのかわからないがこんなイカレた所にいつまでも居られるか。フンっ、―――グギギギィィイイ、ひらけぇぇええええ」

 

研究者にしては鍛えているのか。暗部の前線から引退した『プロデュース』関係者か、はたまた『外』からの企業スパイかは分からないが職員の一人がエレベーターの扉を無理やりこじ開け、エレベーターのワイヤーを伝い下へ降りていく。

 

「畜生、厄日だぜ全く、・・・"キィイイイイイイイイイイイ"・・・・・・まさか」

 

一つ下の階辺りに到達した途端、ワイヤーが細かく速く振動し金属音が響き。上を見上げると自分の掴んでいる場所より1m上のところを黒い(ベクター)がワイヤーをゆっくり掴み上げていた。

 

黒い(ベクター)が動くとサラサラと霧のような金属の欠片がワイヤーに捕まっている職員に降りかかる。不覚にも彼は、僅かな光に反射し煌めくそれに美しさを感じ見とれていた。

 

「・・・・ぉい、冗談だろ?宇宙船(スペースシャトル)にも利用されているのと同じ素材の特殊合金(ワイヤー)だぞ?」

 

ゆっくりと確実に、浸食映像の早送りのようにそのワイヤーはどんどん細くなって行く。

半分程削れると"ガクン"と大きく揺れ。

 

「・・・やめろ」

 

更に粉雪より細かい金属粉末が霧のように舞い落ち。

 

「やめてくれぇぇええええ!!!!」

 

ガキィィイイン。

 

 

一階に取り残されたエレベーターの床上にもう一つ死体が増えた。

 

 

 

 

 

彼・・・紅鬼は八階の職員全員が動かなくなったことを擬似"円"で確認すると黒い(ベクター)は、巻き戻しを掛けられたら映像のように()の中へと戻っていき、()は笑う。

 

「クハハハハ・・・あとは、最上階だけかぁ」

 

怒りと憎悪の混じった不安定な表情を貼り付けて、()は目前の獲物を狩り尽くさんともう一度黒い(ベクター)を、最上階へとそのまま伸ばし続けた。

 

 

 

 

最上階

 

 

「一体これは何かのパフォーマンスかね?」

 

「いえ、そのような話は聞いておりませんが・・・」

 

会議室はざわめき、科学者達は黒い(ベクター)の束に目を釘付けにしていた。

 

「・・・・・・」

 

「何か嫌な感じがするな」

 

「何がだ?」

 

「なんつーか・・・『殺気』みたいな」

 

彼らが下階の異常に気付かず今も尚、会議を続けていたのには二つのミスがあった。

内部情報の漏洩防止のために会議室を防音壁にしたこと。

 

もう一つが定時連絡といった、施設の機械系統のセキュリティー以外の対策法を怠ったことだ。

 

もし、会議室が防音壁でなければ。

もし、この施設の研究員が全員無線の類のものを持っていたら。

 

彼らは武器を持ち戦って散り逝くことぐらいは出来たかもしれなかった。

 

 

しかし既に、鬼は彼らのすぐそばまで迫り、目に付く罪人を全て喰らい尽くさんと駆け上る。

 

 

 

 

会議室丁度中央の床から突然現れた無数の黒い(ベクター)の束柱に、唖然として見ている者が半分、勘がいいのか黒い腕の纏った空気を感じ自分達が弱者に成り下がったと畏縮する者が半分と興味を示す一部の者という具合に分かれていた。

 

黒い(ベクター)はそのまま天井へと更に上へ上へと上昇して行き、屋上まで透過していくと突然甲高い高周波の音が強く響き渡り、会議室の照明・・・否、施設全体が停電し、それと同時に床と天井が文字通り吹き飛ばされ爆音と衝撃が響き渡り、後には中央の床と天井には直径6m程の大穴が屋上まで抉られ続いていた。

 

科学者達は突然の爆音と暗闇の中、黒い(ベクター)が見えなくなったことにより肌を刺すような空気を感じられなくなり、緊張状態から混乱状態に陥っていた。

 

「停電dグェルベバ!?」

 

科学者の一人が吹き飛ばされた辺りから曇った悲鳴と、肉と骨を剛腕で無理矢理引き裂いたような音と共に生暖かい液体が隣の同僚に降りかかる。

 

「暗くて何も見えないぞ!?」

 

「ちょっと、私のペンライトを盗ったの誰!?」

 

「待て!!もう少しすれば非常灯が点く筈だ。それまで無闇に動くな!!」

 

一人の研究員が騒ぎ始めた連中を大声で諫める。

 

「おい、アレって」

 

目が暗闇に慣れて来たのか、一人が指差す方向に顔を動かすとその先には、

 

 

 

大穴の中心に佇む背中に無数の腕を生やした悪魔が見えた。

 

少年の背中から伸びる黒い(ベクター)が彼を支え、落ちずにその場に留まらせる。

 

―――見ぃつけた

 

 

唇だけ動かすと、少年は科学者達から抜き盗ったペンライトやボールペン、携帯を掴んでいるベクターが狙いを定め投擲をしようと、うねり始める。

 

「おい、実験動物!!テメェ自分がどんな立場か理解してi

 

ドゴッ、とベクターを振るう高速移動の運動エネルギーを使ったそれは一つ一つが弾丸と化し人の身体を意図も容易く貫通した。

 

「は?」

 

速過ぎる展開に運悪く生き残った科学者は間抜け呆けた声を上げる。

 

分からない。

つい先程までこれまでの研究成果を語り合っていた人間が頭や胸や腹を携帯やボールペンで風穴が作られた。・・・・状況が余りに無茶苦茶過ぎて現実として受け入れられない、受け入れたくない。

 

ふと気付くと自分の目の前に物凄い速さで迫る天井が見えていた。

 

 

「あー、コレで終わりかな~?」

 

(ベクター)を大きく振るい瓦礫や半壊したテーブルを撤去し生存者を炙り出し始める。

無論、息遣いや衣擦れの音で居場所はわかっているのだが敢えて口にし、一瞬の希望をちらつかせる。

 

「こっここかな~、あっそこかな~♪」

 

血で汚れていない死体を積み上げて腰掛けながらベクターを伸ばし床ごと瓦礫を持ち上げたり、横倒れたデスクを真っ二つに切り裂く。

 

「「!?」」

 

「およ?まだ生きてたんだぁ」

 

まだ20代そこそこ女性の科学者二人が恐怖の余りに互いに白衣を強く握り締め涙を流しながら震えていた。

 

「ぃ・・・いや、死にたくない」

 

「ひぃ!?」

 

少年は口端を吊り上げながら歩き、近づくと彼女達のすぐ(そば)で静かにしゃがみ、震えている二人を覗き込む。

 

 

「いや、・・・いや、だ・・・助けて」

 

片方の女が涙を流しながら声を絞り出すも、彼は視線を揺るがすことなくその救援を求める声を無視して座り込み笑みを向け続ける。

 

「・・・見逃してk「もういいや、飽きちゃった」ア゛」

 

更に命乞いを聞き続けるのが億劫になったのか、人間の動体視力では到底捉えることは不可能な速度で首を切断する。

 

「え?・・・っ、いやぁぁぁああああ!?」

 

声も出ないほど怯えて黙り込んでいた方の女が、目の前で同僚が首を刈られ、その切り口から吹き出る生暖かい液体が自分に降りかかり今まで実験に使った置き去り(チャルドエラー)たちを殺した罪を表す、アカ(・・)に染まる。顔に掛かった飛沫が頬を伝い床を当てていた手の甲にアカ(・・)が滴り落ち、現実だと理解すると絶望し、叫び、懇願する。

 

「お願いします!!助けてください!!」

「クフフ・・・あ?・・・あれ??」

 

文字通り、命懸けの懇願を嘲笑いながら止めを刺そうと(ベクター)を振るおうとすると糸が切れた操り人形のように力が抜け左横へと体が傾きそのまま倒れ込んでしまった。

 

「助けて・・・くださ・・・・・・い?」

 

女研究員がいつまで待っても来ない死に訝しげに顔を上げると自分を殺そうとした少年が半目の状態で床に倒れていた。

 

「た・・・すかったの?・・・私は生きている?・・・・・・生きているぅぅうう!!」

 

倒れている少年を壊れたテーブルの足のパイプで(つつ)き肩を揺らして無反応であることを確認すると自分が生きている事実に歓喜する。

 

「よしっ、ヨシッ、ヨォォォオオシ!!・・・・・・・ハハ、そうよ。高が実験動物(モルモット)の分際で」

 

一頻り自らの生命活動の確認を済ませると女研究員は持っているパイプを高く振り上げ、少年の頭を狙う。・・・少年の目に狂気ではなく知性ある光が戻っていたことに気付かずに。

 

研究者(わたしたち)に逆らうn」

 

そして、いつも道理の(・・・・・・)通常の人間には不可視の(ベクター)が彼女の頭へと透過し、脳内の血管を引き千切る。彼女は自分が何をされたのか分からないまま後ろへと血と涙と生に執着した笑みで汚れた顔を歪ませ、倒れ込み二度と動かなくなった。

 

「ぐ、ぅぅ・・・痛い」

 

感情の激震による血圧の上昇の影響で頭痛が酷いのか灰神(・・)は頭を抑えて小一時間ほど悶えると息を整えながら立ち上がり。自分の中にいるもう一人の自分(コウキ)に語りかける。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・どうすんだよ、コレ」

21本編の冒頭に戻る。

 




感想、意見、誤字報告、待っています!!


皆さんは怒り過ぎて頭痛がした経験はありますか?(疑問)


人格の入れ替わりを上手く表現できているのか非常に不安であります(怖)

次回の『とある淘汰の転生憑鬼』は弔い&原作キャラとの接触!!・・・ができたらいいな←
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