とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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24本編 児童期9 運痴が祟って

「そもそも今回の依頼って施設とか機材はそのまま別組織や団体に寄贈する予定だったんだろうけど・・・・・・八階より上は文字通りの血溜まりの惨殺現場だし、七階から屋上まで大穴が開いて風通が良い状態だし。依頼者からしてみれば散々な状況だよなコレ・・・マジでどーしよ」

 

―――・・・まあ(・・)そんな些細なことは(・・・・・・・・・)どうでもいいじゃね?お前だって本当のところ、言い訳を考えるのが面倒なだけだろ?

 

灰神は、紅鬼が暴れた被害状況を確認しようと歩きながら見回り早速、愚痴を零すも以外にも彼の顔には焦りによる曇りは何一つなく飄々としており。

紅鬼はそんな灰神の感情を汲み取ってか自責の念や反省といったものが一切感じない反応であった。

 

 

「黙っとれ、この殲滅狂い(デストロイヤー)。お前は世界を滅ぼす気か!?」

 

―――モチコース!!

 

灰神と紅鬼は話し合いながら大穴の傍まで着くと歩みを止めて、(ベクター)を伸ばし床と下の階の天井を伝いながら降りて行き。血に塗れた八階を見据えながら通り過ぎ、七階の『未成標本(ディフォームド)』保管室へと降りる。

 

「・・・あのな、紅鬼。どうして俺がベクターウイルスを矢鱈滅多に周囲の人間に感染させていないのか話しただろ?」

 

―――・・・・・・分かってるさ。当然お前のあの話を忘れた訳でもないし、今更説教混じりの説得を聴く積もりも無いさ。だけど・・・今回の『アレ』は、あの子達のことは!!

 

感情を押し殺しながら灰神は紅鬼を諭す口調で説得するも、紅鬼は再び精神を震わせ興奮し始める。

 

「今まだ力が足りないんだ!!情報も仲間(ディクロニウス)も資源も人脈も地位も年齢も、どれも時が進むに連れて大きく成長するモノだ!!『今は耐えろ』俺たち(ディクロニウス)の本能そのものであるお前には酷な話だが、これが一番・・・少なくとも俺にとって正しいと思っている選択だ。

二度手間になる前に連絡を入れるぞ」

 

―――・・・分かった

 

人は生きている限り常に選択に迫られる。食事のフォークを数あるどの皿の具に刺すことから人生に悲観し自らを殺すか生かすか他者を巻き込むことまで、様々な選択肢が存在する。

 

灰神は、瓶詰めにされた胎児たちの敵討ちを後回しにして今回の依頼を達成させることを選び、そして・・・。

 

「もしもし、伊豆舞博士ですか?」

 

〔はーい、伊豆舞です。灰神くんが仕事を始めてから一時間以上掛けるなんて珍しいこともあるのね。どうしたの?〕

 

「少々不愉快なものを拝見し感情に任せて施設の一部を予想範囲以上に大破させてしまいました・・・それに伴い八階より上のフロアは血みどろな状況でして、いつもの処理班の装備ですと些か隠滅に不安が残ります。ですので、猟犬部隊(ハウンド・ドック)クラスの整備の整った処理班を至急こちらに向わせて下さい」

 

〔あー、取り敢えず灰神くんが予想以上に怒っているのは分かったわ。いつもより手間が掛かる分は今回の報酬から引かせてもらうけど構わないわよね?〕

 

「はい、それと運び出したい物がありまして・・・処理班より二時間ほど先に目立たないように収納部が(カラ)の大型引越しトラックとB-160サイズのダンボールを・・・取り敢えず60個程と幅1m前後長さ50m以上の気泡入り緩衝材(プチプチ)とホチキスを運転手付きでお願いします。それから・・・・・・第一〇学区の火葬施設を一つ間借します」

 

胎児たちの弔いを選んだ。

 

 

 

保管室を出て床の抜けたエレベーターから一階へと下り、薄明りのみが灯っている施設の傍らで、しゃがみ込みながらトラックを待ち続けるとものの10分足らずで無印のシンプルなトラックがサーチライトを照らしながら到着した。

 

「ご苦労様です、目的の物を運び出すのに三十分から一時間は要りますので適当なところで時間を潰していてください」

 

「・・・ウス」

 

引越しトラックの後ろへと回り、扉を開けて中にダンボールがあることを確認し、雇われ運転手であるスキルアウトであろう不良姿の男から気泡入り緩衝材(プチプチ)とホチキスを受け取ると灰神は荷物を詰め込む所要時間だけ伝え、運転手が道路の向かい側の建物へと歩き始めるのを確認すると再び保管室へと小走りで向かう。

 

 

「さてと」

 

保管室に入ると、手に持った気泡入り緩衝材(プチプチ)をベクターで持ち上げ、胎児たちが入れられているそれぞれの瓶の大きさに合わせて包み上げてホチキスで止める作業を黙々と続ける。

器用にも部屋の各四方で作業を行い、その光景は五、六人の透明人間がせっせと包装作業をしているよう見られるほどキビキビと(ベクター)を巧みに操っていた。

 

そして10分と経たないうちに室内にあった53個の瓶、全ての包装を終え。彼は瓶の中にいる一人一人に優しく愛おしい視線を送り(ベクター)で持ち上げ、外へと運ぼうと歩き出す。

 

 

 

 

「・・・まだ来ていないな。今のうちに全部ダンボールに入れて置くか」

 

薄暗い外へと出て引越しトラックの前で、運転手がまだ来ていないことを確認し、(ベクター)を使い丁寧にダンボールへと胎児たちを収納する。

 

「ふう、何とかなったな・・・アレ?あ、鍵か」

 

最後のひとつをトラックの収納スペースに入れ終わり滑り止めを設置しドアを閉めて一息つき。そのまま引越しトラックの助手席に座ろうとドアに手を掛けると鍵が掛かっていた。

 

「ま、この程度のものなら簡単に・・・"ガチャ"・・・よっと、チョロイな」

 

鍵といっても大量生産の『外』のモノとたいした変わりはないのでベクターで難なく開錠し自慢気に助手席へと座り記録チップの入った黒ウサギを抱き寄せる。

 

 

 

「??・・・スイヤセン、待たせちまいやしたか」

 

暫くすると運転手が戻ってきて案の定、鍵を掛けて閉めたはずのドアが開いていることに疑問を持ちつつも依頼主側である灰神を待たせたことを詫びる

 

「大丈夫です。それより荷物が割れ物なので帰りは安全運転でお願いします」

 

「ハイ」

 

「ん~~~あふ、眠い」

 

灰神は気にせず、それよりも胎児たちの瓶が割れないよう少しきつめに念を押し。背もたれに乗り掛かりゆっくりと舟を漕ぎ始めた。

 

 

 

 

 

 

「着きやしたぜ・・・どこに停車させればいいんで?」

 

「zzZZ・・・!!ん、ご苦労様です。そのまま敷地内の駐車場に停車して構いませんので入っちゃって下さい」

 

半時ほどうつらうつらと目を閉じ寝息を立てていると灰神の所属先の研究所に着いたため運転手が灰神の肩を叩き、起こしてトラックの停車位置の確認を行い研究所の空いてる駐車場に止めた。

 

「今回は、ありがとうございました。明日の午後には約束の口座に振り込みをして、このトラックの処分はこちらで済ませますのでこのまま徒歩でお帰り下さい」

 

「・・・お疲れしたー」

 

トラックから降りると雇われ運転手に労いの言葉を送り、黒ウサギのぬいぐるみを片手に伊豆舞局長の自室へと施設の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

「今回は珍しく予想以上に時間を掛けたり、裏で勝手に仕事先の資材を持ち出したり私の名義で勝手に第一〇学区の火葬場を間借したりして色々と聞きたいことが有るのだけど、っ!?・・・・・・。取り敢えずお疲れ様、お蔭で今夜は徹夜よ。メモリチップの確認は私のところで済ますからそのまま置いて今日はもう寝なさい」

 

「はい、今日は一段と疲れたのでありがたいです」

 

局長室には案の定、伊豆舞が忙しくパソコンと睨めっこをしながら忙しく彼方此方にメールを送り隠蔽や事後処理に追われており。最初は灰神の勝手な行動に言及をするも、顔を上げ灰神の顔を見ると行く前と比べて明らかに悪くなった顔色と涙の跡を確認すると彼の心情を察して声のトーンを和らげ就寝を促す。

灰神は素直に好意を受け取り、黒ウサギの中からメモリチップを彼女のデスクの脇に置き。一礼をして自室へと戻ると黒ウサギを部屋隅の床に放り投げ、真っ直ぐベッドに倒れ込み沈む様に眠気を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

彼は同じ夢をたくさん見た。

 

いくつもの暗くて狭い・・・、けれども居心地の良い鼓動の響くその小さな部屋で静かに、ただ縮こまりじっとしていると、何人もの人の声が聞こえ始めた。

嗚咽の混じった啜り泣きや、罵り合う怒鳴り声や、何度も呟く謝罪や、冷たい説明口調。

 

共通することはどれも不快で不気味で不粋で不愉快なものだった。

 

しばらくすると、どの部屋からも縦に割れた光が差し込み大きな手によって持ち上げられる。揺れるような浮遊感を味わう。前から居た腹から延びる部屋との繋がりを断ち切られると、すぐにどこかに連れ込まれ冷たくて苦しい液体が口の中に入り込み。薄暗い部屋に閉じ込められる・・・そして。

 

夢の中でだんだん眠くなっていった。

 

 

 

「~っっっっっつう!!?」

 

まだ朝日の射さない未明に目を覚ました灰神は、口の中に残った不快感を漱ぐために洗面所に駆け込み服が濡れるのにも拘らず、蛇口を思いっ切り捻り出すと、水を浴びる様に口に運ぶ。

 

「ガララッラ、ッぺ。・・・ゥガララララッラ、ッぺ」

 

10回、20回、うがいと漱ぎを繰り返し、薬品の味がしなくなったと思う頃には、服と体が頭から爪先まで濡れ鼠となり、服を全て脱ぎ捨て洗濯機に直接入れる。

ついでに昨夜洗い落とし損なった身体を洗うために浴室へとどこか覚束無(おぼつかな)い足取りで向かい冷えた体を暖めようと熱いシャワーを浴び、悪夢の原因であろうともう一人の自分に問いかける。

 

「紅鬼」

 

―――なんだよ。

 

「さっきの『アレ』は、お前が見せたのか?」

 

―――ん?何のことだ??

 

予想に反して、嘘偽りの無い純粋な疑問を含んだ返事が返ってきた。

紅鬼は良くも悪くもディクロニウスの本能そのものであり、欲望に忠実で感情に左右され易く嘘など吐くこうとすると問い質した方が気を悪くするほど動揺するので少なくともあの悪夢(イメージ)は、彼が意図して見せたものではないことが窺えた。

 

「いや、何でもない。・・・嫌な夢を見ただけだ」

 

再びシャワーの蛇口を捻り、頭からお湯を被り、流れるお湯の感触の中で両側頭部に当たる角を意味も無く撫でる。

身体を洗い終えると、手慣れた動きで(ベクター)を使い。タオルで体を拭き、木原等比が付けた拷問検査の傷跡を隠すための長袖長ズボンを着て局長室へと歩き始める。

 

 

 

 

「あ・・・灰神くん起きていたの?今日の予定のことなん、だk?とっととt、キャ!?」

 

目的の部屋に向う途中、廊下の進行方向に秘書の如月が空のコーヒーカップをトレーに乗せ、灰神に声を掛けようとすると自分の足に躓きよろけそのまま床に激突(キス)しかけ・・・。

 

「っよ。で、どうしたのですか?」

 

灰神は慣れた様子でカップと如月を(ベクター)で支えて摘み上げて如月が言いかけた話の続きを促す。

 

「伊豆舞博士の事なのだけど。昨日、徹夜で疲れたから昼過ぎまで休むってメールで連絡があったから。私、さっき博士が飲み終えたコーヒーを片付けに行って。ついでに灰神くんに渡すものと今日の昼頃予定に追加が・・・・・・えっと、訪問する施設が第二学区の人心応研(人間心理学応用研究所)以外にもう一つ追加で概要は、この研究所の下請けの山下大学付属病院でDNAマップの登録と一部の患者の治療(マッサージ)の依頼が舞い込んできたみたいよ。で、これが人心応研に届ける情報チップの入ったケース・・・てゆうか下してくれると嬉しいなーなんて」

 

「・・・了解しました」

 

如月は(ベクター)ぶら下げられたまま、端末を取り出しメールを記載されている内容を読みながら今日の予定の追加部分を伝え、片手に収まるほどの大きさのケースを彼に渡し。灰神は如月を床に降ろし少し感慨深い顔をするもすぐにいつもの平淡な顔に戻していた。

 

 

 

 

 

 

第二学区 人間心理学応用研究所・・・別称、暗部研究機関『才人工房(クローンドリー)

 

 

「―――それで、こちらが今回依頼された荷物です」

 

「ご苦労様です、・・・確かに確認しました。これで我々のエクステリア計画の外装は完成されたも同然です」

 

「それでは、失礼します」

 

人間心理学応用研究所内の所謂、隠し部屋で灰神は、『プロデュース』の研究情報のメモリチップを所定の手続きを踏み、この研究所の研究者に手渡し昨日の依頼を完遂し終え。次の依頼を早めに済ませようと出口を目指し暫らく歩き続けると。

 

"バン、・・・バン、バン"

 

何者かがアクリル製の板を叩いているような音が聞えて来た。

 

「?」

 

訝しげに歩みを早めると・・・。

 

「ふう、ふう、ふう・・・・・・なんでぇ。私の欲しいジュースが出ないのよぉ」

 

そこには、日本人離れをした長い金髪に両瞳に入った十字型の星が特徴の女の子が一人自動販売機の前で上の段(届きそうで届かない位置)にあるドリンクのボタンをなけなしの体力を使い、飛び跳ねて何とか押そうと (本人にとって)悪戦苦闘を繰り返しており周りには彼女が望んでいないジュースの缶が多数転がっていた。

 

 

 

 

食蜂操祈。

 

彼女には精神系能力の才能が有った・・・正確には自分で『区切り』を設ける必要がある程、周りに疎まれるほど有り過ぎた(・・・・・)。故に一般の同世代の子供たちから離れて毎日を自分の所属する研究所で過ごしていた。

能力が発現し始めた頃には既からその鱗片が見えており、学園都市の超能力開発の時間割(カリキュラム)にはいつも頭全体から目、耳までを覆うヘルメットの様な装置を付けた大人たちと能力の測定と開発を行う。

 

 

どこまで人の頭の中(きおく)を覗けるのか?

干渉できる限界個体数は?

射程範囲は?

人間以外の生物には有効なのか?

記憶の改竄期間は?

暗示や洗脳は対象の限界を超えることはないのか?

人格や個性の塗り替えや消去なら?

 

その能力は()の精神に関する事ならなんでもできる十徳ナイフのような能力。

 

心理掌握(メンタルアウト)』。

 

近い将来、超能力(レベル5)になり得る可能性を秘めた存在。

 

しかし、その実態は一人の少女が自身の能力の研磨や研究といった退屈な日々のほんのささやかな自由時間を無駄に浪費していた、

 

 

 

 

「(食蜂操祈、だよな?年は・・・7歳か8歳ぐらい・・・か?状況を見る限り、自販機のジュースを買おうとしたがボタンに手が届かないからジャンプをしたのは良いが運痴が祟って本命の品以外のボタンを押しているなこりゃ)」

 

食蜂は練乳サイダーを買おうとしているが、彼女が跳ねて叩いているボタンは隣のガラナ青汁といちごおでんの二大地獄であった。

 

「ふう、ふう・・・あ!」

 

「(、ッ!?不味い!!)」

 

食蜂は灰神が見ていることに気付き、真っ直ぐ手を足元に置いてあるリモコンへと伸ばし灰神に向けて命令しようと息を吸う。

 

「そこのお兄ぃさん、私の代わりにこのボタンを押しなさぁい」

ピッ

 

「・・・・・・??・・・っああ、いいよ。君の周り転がっているその二種類の間にある練乳サイダーでいいんだよね」

 

灰神は、食蜂に精神を乗っ取られると、反射的に身構えようとする自分を諌めて直立し続けるもいつまで経っても洗脳される兆しが無いので普通の年下の子と接するような態度で話し掛け、彼女の代わりに(ベクター)を用いて右手の人差し指に当たる部分でボタンを押し練乳サイダーを取り出し渡す。

 

「(アラ?変ねぇ、わたしの干渉力が通じないことなんて有り得るのかしらぁ?)・・・あっ!」

 

突然ボタンが押されて、ジュースが吐き出されるという予想外な現象に、彼女は狐に包まれたように唖然と自分の能力が通じない灰神を不機嫌に睨み付けるも。

つい先日、自分の能力にある能力者に対して致命的な弱点が存在し得る可能性が出てきたことを思い出した。

無論、きちんと能力開発(カリキュラム)を組み、予定通り心理掌握(メンタルアウト)が成長すれば殆どのその能力者に対してもほぼ無効化出来ると聞かされていたため、それほど重視していなかったが今回のような事が再び起こり得るなら考え直す必要も・・・。と思考するも今は一端頭の片隅へと放り込み、目の前のニット帽を目深に被っている年上の少年に自らの予想を伝える。

 

 

 

「アナタ、もしかして発電系能力者(エレクトロマスター)ぁ?」

 

 




はい、足りませんね。コンチクショー(涙)

次で何とか終わらせたいよ・・・(悔)


まだ、性格が捻くれ切れていないミサキチ(食蜂)をイメージしてみました


感想、意見、誤字報告、待っています!!





以下 独り言
超電磁砲Sの春上さんのそぼろおにぎりを実際に作って食べてみました。(隠し味が生姜とオイスターソースのアレです)

結果 美味しかったです(他の人達にも好評でした)※分量は適当です
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