とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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お久しぶりです
先ず皆様には二か月以上の更新停止に謝罪いたします。御免なさい
しかも今回はほぼオリジナルである上に各原作に対する自己解釈and独自設定のオンパレードです。
ご注意ください。orz
後いつもより長いです。ごめんなさい



27番外編 2原作四年前 金と時間と人材とリスク

『第一九学区』 別名、荒廃化学区。再開発に失敗し急速に寂れてしまい、その後外の機関でも取り扱うことのない蒸気機関や真空管等を調べる研究機関が不自然なまでに残っている。学区全体の雰囲気が古臭く学園都市の中心部から離れているためか廃ビルの撤去作業も遅々として進んでおらず、どこか薄汚れたという言葉が当て嵌まり過ぎる学区であった。

 

「いっただきまーす!!」

 

その中でも、一際(ひときわ)廃ビルが密集し学園都市の監視衛星でも完全には捉える事の出来ない死角を作り上げている一番高いビルの屋上端の一角にニット帽を目深に被った黒ジャージ姿の少年が一人、ビニール袋に入っていたコンビニ弁当(アンチョビブリーチーズサンドの姿揚げ)に舌鼓を打ちながら時折真下の路地裏に警戒するように暗視スコープ機能付きの軍用双眼鏡を覗き込んでいた。日はとっくに暮れており、辺りには壊れかけた街灯が燈す薄暗い暗闇が広がっていた。

 

彼は今回、この場で行われる学園都市内で精製された薬品の密売を妨害しそれに加えてそれらの薬品回収とその場にいた人間を全員の始末が言い渡されていた。

 

「しっかし、アチッ・・・あの子(木原 円周)が偶接さんの娘だったとは世間は狭いものだな」

―――半年も掛けて探して当てが見つかったと思ったらまさか知り合いだったとか、拍子抜けだったな。

 

「でも、八・・・いや、もう九年前か。その時に感染させた『木原』といったらあの人しかいなかったことを忘れていたのは失念だったか」

 

そんな仕事内容とは似合わない、仕事自体を日常として受け止めて狩りを行う前の一時を味わうように自らの半身でもある紅鬼(DNAの声)との家族会談(ファミリートーク)に花を咲かせていた。

 

―――実際本人達に会うまで確証がなかったのは事実なのだからそこまで気にする必要も・・・!?

 

下を見ると汚らしい路地裏とは不釣合いなダークスーツを身に纏った大人が三人、私服の上に白衣を羽織っている三人の二組が互いに向かい合う形で路地の中にいた。

 

「約・・・金・・・・で・・・そち」

 

「りょ・・・した・・虫・・・・・ろうな」

 

各自一人ずつ、頑丈そうなスーツケース(おそらくそれぞれ薬品と金)を持っている代表が前へと進み取引を始めた。

 

「来たな、時間通りだ。・・・じゃ、先ずは手筈通りに紅鬼が半分殺って様子見な」

 

―――ああ、分かってる。

 

食べかけの弁当に蓋をし、ビニール袋に入れて足元に置き。灰神(・・)の眼から光が一瞬消えたと思ったとたんに紅鬼(・・)が目の焦点を合わせる。

 

 

「・・・今日こそ出来るといいな」

 

灰神と意識を入れ替えた紅鬼は、弁当入りの袋を掴み上げるとベクターを伸ばし屋上からそのまま静かに飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

「商品に問題無し、発信機、爆破物、いずれも仕掛けられていない模様」

 

「よし、・・・撤収する」

 

取引が終了し直接スーツケースを取引に出した一人を待っていたダークスーツ側の二人は仲間が何の問題もなく近づいてくるのを確認すると三人はさらに路地裏の奥へと歩き続け、迎えの車を寄越そうと無線に手を掛けようとしていた。

 

「ちょっと待て」

 

「どうした?」

 

「なんだこれは・・・腕?」

 

そのうちの一人が歩みを止めて自分たちの目線より少し上のビルの壁面を見つめ不思議なものを見た顔をし、仲間を呼び止める。彼の眼には透明な長い手の形をした触手か何かが自分たちの周りを取り囲み地面や他の壁からも出てきてその数増やして自分たちに近づいてくるのが見えていた。異常事態と判断し懐に手を伸ばし拳銃に手を添えた。

仲間の二人も彼の異常な警戒態勢に驚くも直ぐに互いに背中を預け合う陣形を組む。

 

 

「・・・何かあるのか?」

 

「お前らには、見えねぇのか? 俺たちを囲うように腕みたいなものが」

 

仲間に自分たちが今どのような状態であるのかを説明しようとした途端。一本の腕が彼の額に物凄い速さで向かいそのまま頭の中へと透過し、一瞬彼が固まるように身体全体を強張らせると何も言わずに倒れ込んでしまった。

 

「「ッ!?」」

 

狙撃されているのかと二人は倒れる仲間を見捨てて一瞬アイコンタクトを取ると二人はそれぞれバラバラの方向に走り込み、換気扇や粗大ゴミの物陰に身を隠すと耳裏に仕込んでいた非常用の通信機に電源を入れる。

 

〔聞こえるか〕

 

「ああ、きっちり聞こえるぜ」

 

〔今の攻撃どう思う?〕

 

「不自然・・・としか言いようがねぇ。あの状況で少なくとも普通の方法では俺達の視界に入らない程の距離で一人一人狙う狙撃なんざ非効率過ぎる」

 

〔くそ、『超能力』か。厄介な、〕

 

「このままじゃ全滅と考えて間違いねぇな。マニュアル通り、二手に分かれて逃げっぞ」

 

〔・・・・・・〕

 

携帯を手鏡代わりに傾けて、倒れた仲間の傍に置いてあるスーツケースの場所を確認する。

 

「問題は、例の薬品をどうにかして回収することだが」

 

〔・・・・・・〕

 

「?・・・!!おい、返事をしr」

 

いつまで経っても返事のない無線機に不審を抱き、頭を過ぎった最悪の予想を振り払い仲間の生存を確認せんと強い口調で返答を求めようと声を張り上げた。

しかし、彼は最後までその確認の言葉を紡ぐことは叶わずに電源の切れたロボットのように倒れ込む。

 

 

「”やっぱり”出来ないな」

 

突如彼らの頭上五メートル程上の空中から灰神の身体を借りた紅鬼が失望というよりも失意に満ちた、この現状に満足のいかないといった不機嫌な愚痴に近い呟きだった。

 

 

(やなぎ)、一旦意識を戻すぞ。望み薄だが今度はお前がやってみろ」

 

―――了解。

 

先程と同じように一瞬、目の焦点が揺れて『灰神柳』に意識が戻り二、三度辺りを見回し背中からベクターをビル四階の手ごろな窓枠にまで伸ばし一気に収縮させビルの屋上を跳び越え辺りを一様出来る高度まで飛躍した。重力に逆らう反動で体が大きく斜め後ろに傾くも直ぐに別の(ベクター)を伸ばし栗鼠やトビトカゲと同じように空中でバランスを取り、白衣の集団が向かった方向に二十本以上のベクターを伸ばした。

飛び上がりながらいつもと変わらない透明な(ベクター)であることを確認すると灰神は不機嫌そうに顔をしかめた。

 

「・・・チッ、駄目だ出来ない」

 

―――無理だったか。

 

身体のバランスを取るために使った(ベクター)を屋上の屋根まで伸ばしそのままゆっくり降り、自身の(ベクター)を見据え、いつもとなんら変化が無い事を確認すると小さく舌打ちをする。そして三つの標的の内一つを何本かのベクターを使い生け捕りにしこの場に引き寄せるようと収縮させその間、目を閉じて紅鬼との会話に集中する。

 

「グッ、カハァッ・・・ここは?」

 

ベクターが七メートル程にまで短くなる頃に三人のうち茶髪に染めた短髪、無精髭男の姿が見え適当に自分の右側五メートルの場に捨て置く。白衣をボロボロにされながらも左手にはナイフを掴んで離さないでいるところを見る辺りそれなりに手馴れているのだろう。すぐさま状況確認をするために辺りを見回していた。

 

「・・・距離を短くしても変化無しか」

 

「!?・・・テメェが岩k、ガッ、グゴッグボォ」

 

「うるさい、今話し掛けるな」

 

灰神の声に反応し、この場に引き寄せられた茶髪の男が敵意を剥き出しに武器を構えようと起き上がると怒鳴りながら仲間の名を叫びながら走り出した。

しかし、彼は紅鬼との会話に邪魔が入ったことに憤りを感じた灰神が羽虫を追い払うようにベクターを振るわれ吹っ飛ばされ最上階へと続く階段の踊り場までドアを突き破り、そのまま壁に激突し気絶してしまった。

 

灰神と紅鬼が先程から意識を交換し合い何を検証しているかというと、去年瓶詰にされた胎児たちを発見したときに発現した黒く染まった(ベクター)についてだ。

あの黒いベクターを使いプロデュースの職員と施設を吹き飛ばした時に気付いた事なのだが、あの状態のときにだけ『ベクターの末端でこめる力』が通常の状態、・・・元より念能力(オーラ)を使用した状態より力を籠めずに効率よく破壊が容易にできた、詰まる所明らかに燃費が良かったのだ。

ベクターの射程距離と腕力の関係は水圧や熱伝導のように互いに反比例し合い、ベクター伸ばせば伸ばすほど末端で動かせる運動量は減少する。それを補うために今まで念能力でカバーしていたのだが他で効率よく代用できるのなら習得してしまおうと、ここ半年遠距離からの攻撃から接近戦まであらゆる戦闘パターンを試しているのだがあれきり進展がなく行き詰っているのだった。

 

「あのさ、紅鬼」

 

―――なんだ?

 

吹き飛ばした男のことなど気にもせず灰神はその場で腰を下ろし堅い口調で話す。

 

 

「これは、今まで思っていた中で一番認めたくない・・・あくまで仮説なんだけど、聞く?」

 

―――・・・一応。

 

「俺は一応、念能力の他に見聞色・・・『気配』を読み取る覇気を習得しているんだけどさ、もしかしたら他の覇気にも適正があるんじゃないかと思うんだ。って、覇気について説明したほうがいい?」

 

―――大丈夫だ、お前の記憶から知識については一通り叩き込んである。確か人の意思についてのチカラでそれぞれ、気配を読む『見聞色』気合で体や武器を覆う『武装色』相手を威圧する『覇王色』の三種類があるものだったな。

 

「うん、多分それで間違っちゃいないと思う(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

―――うん?それって。

 

「つまり、それら三種類をベースに他の覇気も存在するんじゃないかっていう予想」

 

 

灰神が言うには、同じ気合や威圧であってもそれぞれの人の『意思』によりそれらが変質してしまうのでは?という内容であった。

 

戦いに趣きを置いた『闘気』

神聖な空気を籠もる『神気』

怒りが元で漏れる『怒気』

殺生時の際に纏う『殺気』

 

他にも「色気」や「霊気」や「安気」などの人により様々な『意思』の方向がそれぞれを形作るのではということだ。・・・つまり。

 

「前回、俺たちが使用したアレがもし、覇気であるのなら殺気・・・そうだな便宜上『殺生色』の覇気と名付けるが。これは、威圧(覇王色)気合(武装色)が混ざり合って相手に対する殺意によって威力が変わってしまうものなんじゃないかな・・・と」

 

―――俺達が新しい覇気を複合的にとはいえ編み出してしまった?

 

「あくまで仮説だけどな。黒い手なんて他の作品にもたくさん使われてい、る、し!!」

 

「グアッ、ゴホ、ゴホゴホ」

 

会話がひと段落すると灰神は、ベクターを使い浮かび上がるかのように立ち上がり。更に再びベクターを伸ばし最上階踊り場へと吹き飛ばしていた茶髪の男を掴み上げ今度は自分の傍に仰向けに叩きつけて喉と両手両足首を各(ベクター)で押さえつけ大の字に寝かせて、そのまま屋上の端に置いていた弁当の入っているビニール袋のところまで歩き、まだ弁当が温かいことを確認すると激しい動きで少し中身が移動してしまった残りを食べ始めた。

 

「だけどもし本当にその通りだとしたら俺の念能力が十年以上(・・・・)も鍛えているのに発に到れない原因が更に分からなくなるんだよな。・・・無論、才能が無いだけなのならそれまでなんだけど」

 

灰神がリスクを冒してまで黒いベクターを習得しようとしている理由は、『発』―オーラを燃料として各能力者により様々な現象を起こす念の集大成。必殺技もしくは特技―を発動させることができないという問題点があった為なのだ。

 

―――練による水見式をしたんだから系統は分かっているんだろ?

 

「ああ、案の定特質系だった。因みに前世のネットであるアンケート形式調査だと操作系と結果が出ていたが、周りからは強化系(たんじゅん)と言われていた」

 

水見式とは、六つの系統の内、念能力者が自分の属している系統を調べるための方法である。

それぞれの能力者が水の入ったグラスの水面に葉を乗せ、『練』――通常より遥かにオーラを出す技術――によって増幅されたオーラを当てると。

 

あらゆるものを強めることを得意とする強化系は水の量を変化させ

物質や他の生命体を操る操作系は葉を動かし

生命エネルギー(オーラ)の性質を変える変化系は水の味を変え

生命エネルギー(オーラ)を飛ばす放出系は水の色を変え

生命エネルギー(オーラ)を物質化する具現化系は水の中に異物を発生させ

 

上の五つの内どれにも当て嵌まらない特質系はそれ以外の現象を起こす。(例、異臭が出る 葉が枯れる その逆 グラスに変化が起きる) 等千差万別。性格により系統が予想できるという話もあるが血液型の性格分析と同じく根拠の無い独断的なものらしい。

 

因みに灰神はというと

 

―――グラスにはどんな変化が出たんだ?

 

「衝撃・・・かな?薄い氷の膜や飴細工、枯れた落ち葉、トランプタワー、針や網目状に結晶化した食塩とかに触れようとした時つい力を込めて割れたり崩れたりしたような衝撃が走るんだ」

 

―――・・・そいつは、変わった現象だな。

 

「ここで、良くある二次創作系の主人公だと他の作品の技を真似る能力とか

例えば時を操ったり、命を操ったりだとかする能力を作るべきなんだろうけど・・・・・・・ただなぁ」

 

食べ終わり米粒一つ無い空の弁当箱をビニール袋に仕舞い、割り箸を両手に一本ずつアイスピックを持つように逆手に持ち。床に押さえ付けている男の口をベクターで塞ぐ。

 

「?・・・・・・!? ウガ、ウォッ、ウオオォォ・・・」

 

灰神に口を塞がれたその現状に茶髪の男は自身の命が風前の灯であることを覚りもがくも、自分の手足は微動だに動かず恐怖の余りに唯一動かせる首を大きく振っていた。灰神は男の頭の傍まで近寄ると膝を落とし大きく腕を振り上げ首を振り続ける男の頭目掛けて振り下ろした。

灰神の手に持った割り箸は折れることなく男の額を頭蓋骨ごと貫き二、三度脳内を抉って絶命させると立ち上がり押さえ付けに使っていたベクターを離し割り箸を掴み引き抜いた。彼は飛び散った血液には目もくれずに自身が強化した割り箸を見つめていた。

 

「こういった、オーラを込めて物体強化とかの応用技は難なく使えるのに、発の開発をしようと制約と誓約を決めようとするとオーラが霧散して形が維持出来なく成るんだよな」

 

―――系統別の修行は問題無いのが更に謎を深めていると?

 

「最初は特質以外それとなくやっていたけど今は強化系の修行一本線。でも、行き詰っている事実に変わりは無い」

 

―――ふーん、じゃあついにアレを実行するつもりなのか?

 

「非常に面倒だけど戦力増加にリスクが増えるのは仕方の無いことだって受け止めるさ。・・・ハア」

 

灰神達が話しているアレとは実にシンプルな提案でありながらも実現には数多くの対策と金と時間と人材とリスクの掛かるモノであった。しかし、灰神が『発』を使えない以上手段を選んでいる暇は無い。

死体を持ち上げ屋上から飛び降りて残りの五つの素材(・・)とスーツケースを回収し迎えの処理班に預けると入学した箱舟中学の寮に向かわずに久しぶりに研究所へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

五日後 

 

山前(さんぜん)風太郎(ふうたろう)は冷たく固い床の感触に目が覚め、辺りを見渡すと窓の無い地下の競技場(アリーナ)のようなソコソコ広い場所に居た。

彼は、武装無能力者(スキルアウト)と呼ばれる無能力者(レベル0)を中心とした所謂不良グループの一員であった。武装無能力者(スキルアウト)と一括りに言ってもその規模や程度は多岐に渡り、放課後二、三人でコンビニの前でたむろっているだけの武装をしない無能力者(スキルアウト)のグループもいれば組織的に行動し犯罪行為を繰り返し摘発に多くの治安部隊人員を割く規模まで様々である。

彼は、後者のタイプのグループに所属しており、時折小遣いを稼ぐ感覚で見知らぬ荷物の運送や特定の研究派閥の研究所の破壊工作といったテロ行為まで行っていた。

 

つい先日も、リーダーの指示で十数人の仲間と共にとある施設の資料を強奪しようと敷地内に侵入し・・・・・・

 

そこで彼の記憶は途切れていた。薄暗い照明が切り換え切れない睡魔を誘発するも彼は慌てて周囲を見渡す。すると自分以外にも十数人ほどの人影を確認し、一先ず落ち着きを取り戻した。

皆全員まだ寝ていたり、壁際に膝を抱えて俯いていたりとはっきりと確認した訳では無いが年齢や性別、服装などに統一性が無く下は中学生程のから上は三十代後半までおり、自分と同じスキルアウト(チンピラ)風の格好の者から部屋着姿の者、中には奇抜なエセっぽい修道服やアクセサリーをしている者までいる。

腕時計を見てみると午前六時。自分が施設に侵入した日付から十時間以上も経っていた。急いで仲間かリーダーに連絡を取ろうと携帯を開くと左上の電波表示が圏外となっていた。

 

「無駄だよ。外との連絡手段は全て断たれている様だからね」

 

左側に座っていた白衣を着た自分より十歳程年上の無精髭が生え始めた科学者風の男が山前(さんぜん)の驚いた顔を見て諦め切った声で教えて来た。

 

「アンタも起きたら此処にいたって口か?」

 

「ああ、職場から自宅に帰る途中までは覚えているんだがね」

 

「・・・あっそ」

 

自分から聞いてきたのにも拘らず自分と大して変わりの無い話の内容に興味を失い素っ気無い返事をして会話を強制的に終わらせようとする。しかし科学者風の男は気に素振りを見せずに更に話し続けた。

 

「・・・因みに私は三番目に連れて来られて、君が十五番目だ」

 

「ッ!! 俺を連れてきた野郎の顔を見たのか!?」

 

「ちょ、声が響く!!」

 

不意に出た有益な情報に驚きつい声を荒げてしまい声量を下げるように言われてしまった。何人かが驚き、こちらへ顔を向けたがすぐに元に戻し静かにじっとする。

 

「・・・悪ぃ」

 

「はぁ。・・・残念だが私を含めてここにいる連中は全員、収監される瞬間を見た者はいない」

 

「?何故なんだ??」

 

「私は四日ほど前からここに軟禁されているのだが、毎晩午後六時から十一時の間に強制的に入眠能力か催眠能力かそれとも単純に催眠ガスを嗅がされたのかは分からないが、意識を奪われ目が覚めると収監されている人数が増えているという日々でね」

 

「はあ!?何だよそれ、訳が分からねえ」

 

「ここに私たちを拉致した奴の意図は分からないが、一応水道が設置されていて毎日人数分の食料を置いて来ている様子から殺すつもりは無いみたいだ」

 

「ぁあん?水道があるのか?」

 

「ああ、向かって右側の三つの扉があるだろう?手前から順に男性用、女性用のトイレ。一番奥のはシャワー室になっている」

 

男が指差す方向に目を凝らすと扉の上にはよく採用されている赤と青のシンボルマークのプレートが確認でき右側にも同じく三つの扉があることに気づく。

 

「反対側にはどんな部屋があるんだ?」

 

「色々な物がある物置っぽい部屋、書斎、洗濯部屋・・・っとこんなものかな」

 

「・・・何か変なものが混ざっていたが、入り口はどこなんだ?」

 

ああ、それなら と白衣の男が右手を挙げて入口の場所を伝えようとするまさにその瞬間天井に設置されている安っぽいスピーカーの電源が付く音とギィィィィイイイイと、耳鳴りによく似た甲高い音が二人の会話を遮った。

 

『先ずは「おめでとう」と言って置こう、選ばれた側の諸君。"ベナート"へようこそ』

 

機械で変声された甲高いロボットやAIのような身元が分からないよう調節された人情を感じない口調がアリーナ全体に響いた。

先程まで横になるか俯いているかのどちらかであった者たちの内十人以上が顔を上げ天井のスピーカから響く話の内容に耳を傾け、中には立ち上がる者もいた。声は続ける

 

 

『諸君らは本来、学園都市・・・引いては統括理事会に対する背信行為、敵対行動、過剰詮索と一人一人理由は様々だが不穏分子としてそれ相応の処分が下されることが決まっていた』

 

“処分される”その内容に皆、息を飲み一気にざわめきが広がる。

山前にこの場所の説明をした男も心当たりがあるのか手を口元にぶつぶつと「あれは、噂じゃ」と顔色を変え絶望していた。

 

『しかし、我々"ベナート"は『才能』を持つ諸君らを歓迎しよう』

 

その言葉に対する反応はここにいる個人によって皆、様々であった。

困惑するもの

怒るもの

疑問に思うもの

焦るもの

絶望するもの

 

「『才能』だと?笑わせるなよ。そんなものがあったのならオレはこんな暗部(クソダメ)にいるわけがない」

 

その内の山前と同じくスキルアウト(レベル0)であろうと思われるダメージジーンズと赤白の派手な縞シャツを着た大学生程の大男がスピーカーに向って悪態をつく。

 

 

『君は・・・』

 

言葉が途切れ紙が擦れる音がスピーカーに響く。

 

『確か”元スキルアウトの井茸(いたけ)(げん)無能力者(レベル0)、妹が事故に遭い一命を取り留めたものの二ヶ月間植物状態で入院費を稼ぐ為に外部組織から依頼され、二週間前に第一六学区の製薬会社からDH-174型、Rs-07型を始めとする学園都市外搬出規制薬品法に記載されているサンプルを盗難。三か月間少年院に収容されるも運転技術、開錠技術(ピッキング)などをを買われ後に特殊精鋭治安部隊スナイプの下部組織に配属される”で合っているかな?』

 

「な、何でおまえ!?」

 

驚くことにこちら側の声も通じる様であり、悪態をついた奴の経歴が語られる。

名前や能力の強度(レベル)はもちろん家族関係者、所属先まで調査されている、つまりこの声の主はここにいる全員の弱みを把握していることとほぼ同義なのだ。

 

『これから全員受けて貰う能力開発(カリキュラム)の特性上、君達のある程度の経歴や身元調査は必要不可欠であった為、失礼ながらこちら側で勝手に調べさせて貰った』

 

声の主は簡単に言っているが一個人の情報を集めるというのはそれなりの能力と費用が掛かるのが常である。無論、書庫(バンク)と呼ばれる学生から教師、研究者などこの学園都市に住む住人の情報が纏められており、一定のランクのものなら相応の理由と申請さえ行えば研究機関や理事会だけでなく風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)といった様々な機関の関係者が閲覧可能なモノだが所詮は報告書にまとめられる程度の情報であり確認できる内容など高が知れている。

問題なのは、そんな薄っぺらな内容を嘲笑うかのように纏め上げられた先程の資料の内容は明らかに一般の表の事情を越えたモノ。即ち、

 

『何か質問があれば請け負おう。・・・こちらが答えられるかどうかは別だがな』

 

「『・・・』」

 

「・・・・・・お前は、俺に・・・否、俺達に何をした(・・・・)

 

その場にいた殆どが唖然としていた中で、山前から見て左側の壁に寄り掛かり腕を組んでいる傭兵風の男が姿見え無き声に問うた。

 

 

『ほぅ、気付く奴がいたか。・・・説明の手順が入れ替わってしまうが、多少の誤差は構わないだろう。君達(もとい)、ベナートの構成員は全員逃亡防止の枷として体細胞浸透圧操作用ナノデバイスを左手に注射する

本来は治療薬を目標の病巣に効率良く行き渡らせる為の医療補助ツールでしかないが、出力を少し上げて無理矢理体内で暴走させると』

 

ボトチャ、と大きな石をよく浸したスポンジの上に落とした時とよく似た音が山前自身の左際から聞こえた。

体の重心がブレてバランスを崩した直後には、何が起きたのか理解できなかった。隣の男が短く悲鳴を上げて駆けていく姿を見て、顔に掛かった滑りの感触が肌を通るを感じ。

 

左肘から先が無くなったことに気付いたのだ。

 

「・・・・・・ぁぁああ、え?」

 

彼は何が起きたのか漸く理解した。してしまったのだ。血の跡を辿り下に落ち、指先を痙攣させている自分の左手を、床に広がる赤い水溜りの源泉となっている傷口を見るまで気付けなかった。それほどまでにまるで最初から外れるように出来た安物のプラモデルの部品のようにポロリと取れてしまった。最悪なのは彼が自分の腕が取れてしまった事を認識してしまったこと。

 

「ぇ、・・・イテェェェェェエエエエぃぁぁぁあぁああああああああああああああああぁぁぁあああぁぁあ嗚アアアアアアアあああ!!!」

 

『とまあこうなる。医療として使用するには余りに危険である上に治療効果も劇的に変化するわけでもないので拘束具(くびわ)として暗部側に流れた負の遺産だな』

 

「『う・・・うぇ、おえ』」

 

「おい!押さえつけろ!!」

 

「傷口に当てればいいのか?」

 

「いや、きつく縛り上げろ!!」

 

殆どの者が左手から吹き出す血に酔い吐き気を催すも逸早く近くに来た二、三人が山前の体を押さえつけてシャツを無理矢理引裂き即席の包帯とし、傷口をきつく縛ると一通り痛みに叫んだ口を使い彼は悪態を吐く。

 

「ぁぅ・・・・ふ、ざけっやがぁって、クソが」

 

『フッ、解っていないようだな』

 

「あ”あ”?・・・・・・あぁっぅぁぁああああユビガァァァアアァアアア!?」

 

鼻で笑いながらスピーカーから漏れた声の主は冷たく言い放ち。直後、残った右腕の親指が零れるように落ち、再び悲鳴が上がった。先程応急処置施した者達も二度目の人体の分離という衝撃を受け唖然とするも直ぐに別の感情が湧き上がる。自分たちにも同じものが身体の中に”仕込まれて”いるという事実が『恐怖』を生み出しドゴッ!!――。

 

「『!?』」

 

突然、隔壁が左右に岩と鉄柱がぶつかるのによく似た鈍い音が響き渡った。全員が何事かと天井から山前たちがいた(・・・・・・・)後ろの壁へと意識を向ける。

ギィッギギギイイイイ、と金属が擦れ合うような自分の何倍もある大きな扉を開けるような音がこの場に広がった。

その音に伴いゆっくりと壁が上がる。そう、彼らの後ろにあったのは「カベ」などではなく、この外部との連絡を一切立たれた部屋(アリーナ)の中で唯一の『出入口』。余りの大きさに一面であると思ってしまう程の巨大な隔『壁』であったのだ。

 

そこから入ってきたのは、簡素な貫頭衣を纏い厳ついフルフェイスヘルメットを被った少年だった。

 

「え?」

 

その疑問符が籠った声はソレを『見た』集められた者達の総意であった。

 

何故なら少年が段ボールを乗せた荷台を押し、片手で(・・・)隔壁の底を支えながら入って来たのだから。

 

その小さな腕で、どうやって大きく分厚い隔壁を持ち上げられるのだろうか?

無論、この学園都市の住人であるのなら先ず一番先に思い当たるのは念動力使い(テレキネシスト)身体強化(フィジカル)系の能力者かと思われるが、ここに集められたこの都市の住人ではない(・・・・)者達は全員同じことを考えていた。有り得ない、とすぐさま否定するものの意識の中でだがやっぱりと考えてしまう。

 

『聖人』だと。

 




長い、そしてまだ続く・・・どうしてこうなったのか自分でも分からなくなってきちゃったんです(混乱)

早く原作開始時期に辿り着きたいです(悔泣き)

頑張って行きます!!
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