とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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おかしいな、ここまで外道なことをするキャラだったっけ?←今更


28番外編 3原作四年前 本当にそんなものがあったら

『聖人』

 

この世に生を受けた時から『神の子』と近い身体的特徴、魔術的記号を宿した世界に二十人といない『人』の総称。聖痕(スティグマ)を開放することにより一時的にヒトを越えた力を使い、一時的に神の使いである天使とも渡り合え。魔術サイドに於いては核に相当する戦力を持ち、並みの魔術師であれば戦いにすらならない正真正銘の化け物で魔術を使用しない場合でも幸運や体内に宿る莫大なテレズマによって生み出される怪力や五感の強化といった『加護』等その場にいるだけで各勢力のバランスに影響を及ぼしかねない。その強すぎる能力故に聖人たちのその殆どが特定の組織に属することが無くましてや科学の総本山である学園都市に存在する筈がない。

 

否、『有ってはならない』

 

そんなことがもし各教会の・・・魔術サイドのある程度歴史と力のある組織に見つかれば間違いなく世界を二分する『戦争』が始まってしまう。科学サイドと魔術サイドのいざこざは互いの領分を冒された場合、互いの技術の流出を防ぐという大義名分があって行われる必要不可欠な処置として扱われる。人一人、組織が一つ、一つ国が滅ぶ程度のことなど科学と魔術の戦争が回避されるためならば当然のように黙認される。

 

この場にいる誰の言葉が戦争を始める引き金になるのかわからない。誰にでもその源泉となる可能性がある。

だからこそ、彼ら魔術を学びそれらの特秘と科学サイド側への牽制として諜報潜入活動を行ってきた彼らは否定を求めた。

 

この怪力の少年が『聖人』であるという予想がどうか杞憂であってくれと。

 

 

 

隔壁を持ち上げこの競技場(アリーナ)に収容されている者の生活物資を運んできているフルフェイスヘルメットを被った少年は左手を一気に伸ばし荷物を室内に入れる。押された荷台は慣性の法則に従い隔壁より室内へと四メートルほど中に進み止まった。

少年がそれを確認するとすぐに両手を頭上の隔壁に手を伸ばし支え、室内との境界に差し掛かると不意に右反転し後ろを向くとゆっくりしゃがみ込みながら隔壁を降ろす。目測五メートルほどの厚さの鉄壁は唸りにも似た地響きを立て、床を揺らした。

 

『紹介しよう、君達の原型世代(プロトタイプ)に当たる八番だ』

 

「『!!』」

 

 

全員があまりの事態についていけなくなっているこの状況を気にすることなく天井のスピーカーからの声に何人かが反応をする。

 

『丁度良い、八番!』

 

「・・・はい」

 

口まで覆われたヘルメットから声変わりする前の大人しめの少年らしい声が響を交え天井に向って返事をした。

 

『ソレを修理(ちりょう)しろ』

 

「・・・・・・・」

 

命令を受けると、少年は黙ったまま辺りを見渡し状況を片腕と指を失っている山前の傍まで歩くと血に塗れている腕と指を怯むことなくまるで雨の日に電車で倒れた傘を拾い上げるように、落としたヘアピンや眼鏡のように、それを当たり前の如く断面を自分の方に向けじっくりと眺めると。

 

「まずは腕を繋げます。激痛が走りますので何か噛んでいて下さい」

 

――は?

全員が思ったことが一致した。そんな固まっている彼らの様子を気にすることなく少年は山前を仰向けに寝るように指示し、横に座り腕の断面を向い合せると左腕を万力のように固定した。

 

「え?」

 

先程の隔壁を持ち上げていた様子を見ていたのにも拘らずその押さえつけられる握力・・・否、本当に同じ人間なのかどうか疑う程の単純なチカラ。

 

「行きます」

 

「え、いやちょっ!?ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああいぇぇえぇええええええあぁぁあああああああ”あ”あ”」

 

・・・・・・・心の準備という覚悟が出来ていないことを最後まで告げることができずに山前は腕の骨、血管、筋肉、神経それら一本一本全ての再生治療される感覚を体験する。通常なら半年から数年かけて行う腕の接合を二十分そこそこで完治させた代償の激痛はショック死レベルのモノだったようだ。虫歯の治療時に使用される歯削用ドリルを初めて体験したときの数十倍の激痛を背負い。彼は、彼の口から声にならない悲鳴を上げていた。

 

 

 

 

その後、二、三度気絶しながらも最期に右手の指の治癒が終わった頃には、力は入らないまでも五本の指を動かし拳を作る程度まで回復していた。

 

「スゲーな。取れた跡が残っているけど、もう指動くって半端ねぇ」

 

「残りは自己治癒で十分な筈です。暫らくは、様子を見て幻痛がみられればすぐに言ってください」

 

「おう」

 

手を開いたり閉じたりしている様子を見ながら少年は立ち上がり天井を見上げる。

 

「終わりまs、ガフッ!?ゴホッウェボゴホゴホゴホ」

 

「『!!』」

 

「なっ!?」

 

終了の意を紡ごうとした少年が急に咳き込み、ヘルメットの隙間から血が噴き出した。彼は、急いで側面にある留め金に手を伸ばし口の部分のみ外した。

膝と右手を付き半ば四つん這いになると咳と共に血の混じった胃液が吐き出される。

一瞬ゆるくなった室内が一気に緊張で張り詰められた。

 

『また随分と時間を喰うようになったな?』

 

「ゴホ、・・・あ、・・・ごめんなさい。ごめんなさい」

 

天井のスピーカーから冷徹な声が響き渡り少年が縮こまりながら謝罪を繰り返していた。そこには先程取れた人間の一部に対し何の嫌悪感抱くことなく掴み拾い上げることの出来る狂人ではなく、絶対的な力の存在に平伏す唯の男の子がいた。

と同時にこの場にいた全員がこの少年も自分たちと同じく此処に捕らわれた者の一人であると察したのだった。

 

『フンッ、後の説明は貴様に任せる、終わり次第また戻ってこい』

 

「はい」

 

『失敗作が』

 

最期の言葉にピクッと反応するもそのままスピーカーの電源が落ちるまで少年は動くことなくじっとしていた。

 

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

「は・・・はい」

 

傭兵風の男がシャワー室から持ってきたタオルで少年の口元を拭う。

 

「おい、バケツを持って―――

 

「物置にモップみたいのがあったよな―――

 

他の人たちは、血に塗れた床を拭くための清掃用具の準備に回っており少年に(かま)かけているのは目の前の傭兵風の男のみであった。

 

「その、なんだ。顔見られると不都合か何かあるから、それ(メット)を被っていんだろ? 今ならトイレの方は誰もいねぇ。早いとこ面にぶちまけた血を落としてこい」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「ばッ、頭動かすな! 血が滴る」

 

吐血した少年のヘルメットの中の惨状を察してこの競技場に集められた全員が顔を隠している少年の気を使いトイレを開けてくれたのだ。

少年は、礼を言い。床に転がっている口を覆う部分を拾うと真っ直ぐ駆け込みトイレの中に入っていった。

鏡の前に立ち手を後頭部のスイッチを押すとヘルメットの側頭部の留め金が外れ溶接時に顔を守るヘルメットと同じように上へと上げられるようになった。

 

「フーッ」

 

血に塗れた顔を洗いヘルメットの中も粗方綺麗にし、貰ったタオルで水気を拭き終えた少年のその正体は。

 

「案外・・・上手く行くものだな」

 

灰神柳本人であった。

 

 

 

 

 

 

「改めて初めまして、八番です。皆さんの能力開発担当を務めさせて頂きます」

 

競技場(アリーナ)の中央に集められた十五人は先程の異常な治療と怪力を見せたフルフェイスヘルメットを被った少年の前に集まり彼の話を食い入る様に聞いていた。

これからの自分の余生が伸びるか縮まるかの瀬戸際になっているのだ。一部不満げに顔を顰めている者もいるが話の内容に興味があるため聞く姿勢だけは積極的である。

 

「まず皆さんの立場を砕いて言いますと・・・戦闘要員候補です」

 

一様に息を飲みざわついたため彼は再び静かになるのを待つ。

 

「・・・・・・取り敢えず一安心して下さい。皆さんは僕達の頃のより研究が進んでいますからこんなメット(もの)を被ることにはならない筈です。私が皆さんにこの組織(ベナート)で最低限生き残れるように洗礼(カリキュラム)の説明をします。

これから皆さんが受ける能力開発は電極刺激や薬物投与といった脳の開発を一切行わない別種の新しいモノです。基本的に生物であれば誰でも扱え」

 

「ちょっと待って、あなたのそのチカラは最初から身に付いていたものでは無いということなの?」

 

すると、赤を基調とした一風変わった修道服のようなものを着ていた女性が慌てた様子で少年の言葉を遮って真剣な態度で詰めよう様に聞いてきた。

 

「・・・? はい、違いますよ。簡単に説明をしますと普通の人間には目視することが出来ない生命エネルギーを意志を以て操る能力です。近い物で言えば東洋拳法とかの気孔とかに似ているのかな?」

 

少年は、首を傾げて何か言い間違えたのかと右手を顎の位置にまで持っていき考える仕草をするも、否定しすぐさま説明の続きを開始する。

 

 

「なぁ、言ってはなんだと思うのだが。そんなものが存在するのか?いや、確かにさっきの馬鹿力と腕の接合を見た訳だが」

 

「疑うのも無理はありません。しかし、こういったチカラの概念は間違い無くこの世界に本物が学園都市以外にも幾つか存在しています」

 

単純に超能力(AIM)魔術(テレズマ)といった異能だけでなく。この世界にはあり得ない現象が複数存在している。上条当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)、直感や常人離れした運動能力、常盤台の寮監の管理色の覇気、滝壺理后の見た目に反した怪力、鳴護アリサという奇跡そのもの、など不自然なまでに様々な異能が存在する。

 

先の女性を含めた学園都市内に侵入した魔術師の何人か気まずい苦笑を漏らしていた。

 

「論より証拠、実体験を積む方が分かり易いでしょう」

 

と言うと、少年は立ち上がり全員との距離が一定である中心に当たる位置まで歩く。全員が注目していることを確認すると空手の構えのように両手の拳を握り締めゆっくり息を吸う音がヘルメットを通りくぐもるのを全員で見届け少年が息を止め体全体に力を込めると周りの空気が揺ぎ何か別の存在を感知したような錯覚に似た、目の前の少年の印象がガラリと変わったのだった。

まるで、誰も見つけていない可憐な草花に擬態した蜘蛛や蟷螂の存在に今し方気付いたような・・・視覚ではない別の感覚で捉えた違和感。

 

「何か感じられますか?」

 

「圧迫感のような・・・緊張時に近い感覚がヒシヒシと伝わって来る。まるで、次元の違う術sy・・・強者と出会った時のような」

 

「それが、この力の正体です。幾つかの例外はありますけど身体の中に眠っている生命エネルギー・・・あの人達に倣って便宜上オーラと僕は呼んでいますけど。それは全ての生物に宿っていて意志の力により様々な現象を起こします」

 

「先程の腕や指の接着治癒と剛力がその効果であると?」

 

「ん、あぁーハイ。大体そんな感じです」

 

少し息を詰まらせるように歯切れが悪くなるも直ぐに本格的な説明に移り込み話を戻す。

 

「人体に眠っている精孔と呼ばれるツボのようなオーラの通り道に別の念能力者のオーラを強制的に流し込んで喝を入れ精孔を覚醒させます。

覚醒し身体から噴き出すオーラを留めることできるようになれば。怪力はある程度鍛錬を積めば余程のことが無い限りあれくらいのことは三ヶ月もあれば皆さんも出来るようになりますよ?」

 

「・・・すごいな」

 

正確には、留めることが出来るかどうかで才能の有無が生死が別れるのだがそこには触れずに感銘を受けている無能力者(レベル0)たちの希望を壊さずに更に詳しく説明をする。

 

「腕をくっつけたのは『発』と呼ばれる技術で、個人の思い入れにより色んな形になります。私の場合は”自他に関わらず干渉する肉体の治療”で『発』の形にも依りますが学園都市の超能力とは違い殆ど演算が必要ありませんし数にも制限がありません。ですが使用者のイメージと適性が密接に関わります。これら全てをひっくるめて『念』、もしくは『念能力』と呼ばれるチカラで、元は学園都市外の原石を調査していた時の副産物らしいです」

 

「原石?」

 

「偶然、周囲の環境が『開発』と同じ効果を齎したことで現れる能力者のことです。現在、世界中に現存する原石の内2%以上は念能力者だと言われています」

 

一息が付き少年は全員に何か質問があるかどうか聞くと。

 

「なぁ」

 

「はい」

 

「さっきから気になっていたのだが。キミは失敗作とさっき言われていたがあれはどういう意味なんだい?」

 

少年の身体がピクッと強張り質問を投げかけて来た三十代の男の方を向きヘルメットが下へと傾く。

五秒後、十五人全員の三十の視線に晒され返答を待たすと少年は不安げに自分の貫頭衣の右側にある鎖骨付近と更にその下にある二つの結び目を引っ張り、右上半身をはだけさせた。

 

「「!!?」」

 

その衣に隠された無数の痛々しい手術の縫い目の跡に全員それぞれの反応をする。度合いは個々人によって顔色が変わる程の者から眉を顰める程度と異なっていても皆が皆不快感を覚えていた。

 

「ご覧の通り、私の体は当時の未完成な開発の過程によって身体の幾つかに欠陥・・・いえ、欠損が見られました。そのせいで激しい戦闘を行うと立つことすらままならなくなり、実戦では役に立たないと、処分が決まっていたのですが幸か不幸か試作段階の人工臓器のテスト検体として今も生かされ(使われ)ているんです。

そうまでして失敗作である私が今もこうして生きていられる理由の一つに私の治癒能力が単に希少で利用価値があったというのもあるんですけどね」

 

脳味噌があれば能力が発現する学園都市の能力者と違い念能力者のチカラは機械によって生み出されることが出来ない。生命エネルギーを元に生み出し人間の意志によって形作られているのだから。と少年は皆に説明をした。

理論上は正しいのである。しかし、この少年の説明には証拠と呼ばれるモノが明らかに少なく話の内容にも不自然な点が綻び程度に確認出来、それらについて誰か一人でも追及すれば十五人全員が少年の言葉を鵜呑みにすることはなかったのであろう。

有名な「吊り橋効果」あれは、危機的状況に於いて恐怖を別の感情に置き換え錯乱を防ぐというもので男女である場合愛情が同性である場合友情が芽生えるのはよくある事例だ。では危機的状況に陥ったのが三人以上である場合は?

愛情以下の友情以下の感情であれど他人に対する感情以上の結託。即ち仲間意識が芽生える。

しかし、二人の例とは異なりそれは所詮利害の一致による一時的なもの。集団心理が働き正常な判断力が鈍り、例え間違っていようとも進む狂気と冷静の狭間を通る危うい繋がりであるのだ。

故に、『』の可能性を疑わない。例え『』であろうと疑うもその可能性を否定する事実を探し出す。

 

「それでは、これから皆さんに僕のオーラを流し込んで強制的に念に目覚めさせます。

上着を脱いで後ろを向いて下さい」

 

結び目を直すと少年は、固まっている全員を無視して指示を出していた。その様子をただ見ていただけの彼らでは彼の本当の心情を理解することは出来ず、急ぐように言われて慌てて指示通りに動くしかなかった。

 

「肩の力を抜いて・・・姿勢を楽に、では行きます」

 

少年の指示により覆うように一定距離を保つ扇型で並ぶと少年は手を前に(かざ)し掛け声とともに全員の背中から体を破壊しない程度に調節された(・・・・・)オーラを送り込む。神経全体に響き渡る衝撃によって無理やり抉じ開けられた精孔から蒸気の様な物が服や髪を揺らしながら迸る。

 

「うおっ、なんだこりゃ!?」

 

「今皆さんの身体全体の精孔を開きました。自分の目でオーラを視認できるようになりましたね?」

 

「おい、これって要は純粋な生命(マナ)を常に放出しているってことだろ?それって・・・」

 

「はい、この調子でいけば十分と経たないうちに立つことすらままならなくなります。いいですか? 体の中に血液が絶え間なく全体に循環するイメージを持ち、だんだんとその流れをゆっくりと穏やかにしていき。イメージは自然体が理想ですが自分が一番楽な姿勢で行ってください」

 

的確にアドバイスをし、何人かの魔術師らしい人たちがオーラを留めることができ始めていったのを確認すると少年は、荷車を押しながら隔壁の方へと歩き出した。

 

「おい、どこに行くんだよ!?」

 

まだ、オーラを沸騰したやかんや間欠泉のように噴き出している男が出口に向かい歩き出したことに驚き、肩を掴む。

 

「そろそろ人工臓器の調整時間ですので一端戻ります。一通りのことは教えましたので後は、出来た人たちから随時アドバイスを聞いて下さい。コツさえ掴めば自転車と同じようにいつでも使えるようになります」

 

というと、そのまま隔壁のところに到着し持ち上げて右手で支えながら奥へと消えていった。

 

 

 

殺風景な廊下の奥へと荷車を押しながら運搬用のエレベーターに乗り込みヘルメットを外した。

 

「フーッ。・・・いやぁ、焦ったな。このヘルメットのおかげで相手には顔色が判らないことは理解していたが冷や汗が止まらなかったな」

 

―――こっちは大方予定通りに事を進めていっただけだからそんなに焦りはなかったな。

 

フルフェイスヘルメットの少年、灰神柳はエレベーターの奥にしゃがみ横に置いたヘルメットを叩きながらもう一人の自分である灰神院紅鬼に語り掛ける。

 

「クク、クハハハハハハハハッ。・・・・・・”体細胞浸透圧操作用ナノデバイス”・・・ねぇ、本当にそんなものがあったらどれほど楽だったか」

 

―――まったくだ、ハッタリだったとはいえ俺たちの(ベクター)を切断対象に添えて高周波微振動で軽くなぞっただけなのに、あんなに上手く行くとは。・・・あいつらの慌て振り様は傑作だったな。不知火(・・・)もバカ受けしていたぞ。

 

そう、体細胞浸透圧操作用ナノデバイスなど存在しておらず実際に注射したのは学園都市の学生が『外』に里帰りする際に(ゲート)で拉致対策用に撃ち込まれる発信機と同じ型のデバイスのみであったのだ。

そして、実際にスピーカーで話していたのは、紅鬼に体を貸した別の二觭人(ディクロニウス)である。即ち、

 

 

『他の個体を使用した自作自演』

 

 

「で、不知火は今どうしている?」

 

―――ああ、ちょっと待て・・・丁度、エレベーターの前で

 

キコーン、と目的の階に到達した知らせを聞きドアが開いた先に小学校低学年程の青い髪にゼンマイのようなアホ毛と側頭部に生えた角が特徴のパーカーを着た小柄な少女が立っていた。

 

 

 

「おとーさn、アダッ!?」

 

「誰がお父さんだ!! お兄さん、もしくは灰神さんと呼べぇぇぇええええい!!」

 

予想外の第一声にとっさにベクターでデコピンをした灰神は悪くない・・・。筈だ、手加減もちゃんとしたし。

彼女の名は、不知火(しらぬい)半袖(はんそで) 九歳、所属・・・箱庭学園付属小学校四年一組。第二世代のディクロニウスであり、今回の集団拉致及び念能力開発時の虚構拘束具(ハッタリナノデバイス)の提案者である。灰神の書類上後見人である伊豆舞博士と彼女の祖父である不知火(はかま)との交流で度々顔を合わせていたのだが、紅鬼を通じて今回の念能力臨床実験の人材をどう拘束すればよいのか悩んでいるのを知ったらしく彼女の方から接触してきたのだ。ちなみに軟禁している施設も彼女の祖父が個人所有しているモノを拝借した。

 

「イテテテ、だって紅鬼さんがこうやって取り入った方が将来役立つって言ってましたよー?」

 

「・・・・ハァ。ったく、可愛らしい見た目に反して、なんちゅー腹グロイことを考えていやがるんだか。後紅鬼、打ん殴るから」

 

―――ちょ、待って!?え何?俺が悪いの!?

 

「問答無用、俺はこの年で父親になる積りは無い」

 

―――え~。でも精神年齢は結構いい年したおっtヘブルグゥィア!!

 

灰神が一瞬意図的に意識を落とし、精神世界に入り込むと右往左往している紅鬼をベクターで捕まえて逆さま宙吊り状態のまま思いっ切り殴り付けた。

河原の石投げ用の石のように錐揉み回転をしながら二、三度跳びはねて最後は頭から落ちた。

 

―――な、殴った!?精神体を・・・もう一人の自分を、グーで!!

 

 

「あひゃひゃひゃひゃ、相変わらず酷い扱いですね。おと・・・おにーさん」

 

「うっせい、あんなキチガイなトラップを仕掛ける九歳児に言われたくない」

 

「・・・まっ、その辺にはわたしにも責任が一撮みぐらいあるかもですけど。そのあとのアドリブの内容に関してノータッチの筈ですよ」

 

確かに、捕まえた連中の一人を見せしめにした後治療する(くだり)までは不知火と一緒に考えたが、木原等比に付けられた手術の跡を見せて信用を得るというのは灰神があの場でとっさにでっち上げたモノである。詰まる所、この二人の外道具合はどっこいどっこいなのであった。

 

「確かにそうだったな」

 

「所詮似た者同士ってやつですね!!

あっ、今回のお礼ですけど・・・」

 

「ああ、夕飯おごるぞ」

 

「よっしゃ! じゃあ早速行きましょう!!」

 

どうやら、不知火はタダで灰神に協力したようではないようだ。

そのまま、二人で施設を出て第六学区の予約の取ってある料亭へと向かっていった。

 

「ここですよ、ここ!! テレビで見たときから一度行ってみたかったんだ~」

 

報酬・・・高級料理店のフルコース。

第六学区 料亭水族館『竜宮』。

アミューズメント施設の多い第六学区には珍しい『食』を追求した立派な食堂であるのだが。店長の趣味で食用不可の海洋生物をペットとして飼育していくうちに数が増え水槽を大きく買い替えるときに実験を兼ねた建築物の改装が容易に依頼できると聞いて芸術系の大学付属の業者に頼んだところ手入れ要らずの半永久的に水槽の環境が保たれる完全な世界(すいそう)が出来上がり、今では生け簀用と観賞用の水槽の二つが学園都市の最新技術にすっかり毒されガラスは藻が付かないように表面の凹凸がナノ単位で調節され海草と各魚のバランスが取れて世話いらずという超ハイテクアクアリウムとなり料理人との腕も一流と良いとこ尽くしな店であるのだ。

 

「いらっしゃい」

 

「予約をした灰神です」

 

「はい、コース『桜』を二名でご予約の灰神様・・・確認が取れました。奥へとご案内いたします」

 

入口に入りレジ打ちの若い従業員に予約の有無を伝えると、その従業員が腰に付けている画面端末を操作し、別の従業員に奥へと案内され二階の水槽の仕切りに囲まれている席に座った。イソギンチャクとクマノミが主役の別名『共生の間』と言うらしい。そのほかにも毒々しい鮮やかな色のウミウシや餌の小魚が群れを成して泳いでいるのを二人で見ていた。

 

「そういえば、アイツらって『念』?の才能って本当にあるんですか?」

 

料理が来るまで少し時間が掛かるらしく不知火が拭き終わったおしぼりで鶴を折りながら灰神に今回の作戦に関しての質問をし出した。

 

「さぁ?」

 

「さぁって、え?」

 

「いやー初めてなんだよね。殺さないように精孔を開いたの(オーラを目覚めさせた)

 

「?? どういうことなのですかー?」

 

「初日にさ、適当に廃棄(クビ)寸前の奴を人材派遣(マネジメント)に調べさせて無効化した後練習を兼ねてオーラを送って手加減を調べる調査をして八人使い潰してやっとコツを掴んだんだ・・・・全員死んじゃったけど」

 

「おい!!」

 

「まあ、名乗るときの八番もそこからとっさに出したんだけどさ。最初の、一人目は案の定ちょっと力加減を間違えて上半身を蒸発させちゃって。二人目以降は結構上手く行ったんだ。それぞれ強能力級(レベル3クラス)の発火や発電系統の能力者を覚醒させたんだけど・・・」

 

「けど?」

 

「おそらく能力者のAIM拡散力場をオーラが勝手に強化したのが原因なんだと思うんだが。自分の能力で体を吹き飛ばしちゃったんだよね」

 

「うわぁ、そいつは何ともごしゅーしょうー様です」

 

低能力者(レベル1)の発電系能力者が一番グロかったな。なんたって威力が低い分、半端に死体が残っちまって・・・リアルにレンジでチンっとされた死体を見たな。

ちなみに精神系(テレパス)は発狂して自殺した」

 

「・・・ごめんなさい、食事の前にすることじゃなかったね」

 

「気にするな、不知火。お前の疑問はもっともだ、それに」

 

と、何とも食欲の失せる会話が終わりに掛かり。丁度、お待たせしました。と厨房からどんどん鯛料理が出されてきた。刺身はもちろん鍋や酢漬け、味噌汁。変わり種ではカツ揚げまで様々な品がテーブルを埋めていった。

 

「と、取り敢えず、あたしたちの計画の第一段階の成功を祝して」

 

「「か、カンパーイ」」

 

氷水の入ったグラスを軽く合わせ、暫らく気まずい空気になったものの一口食すと二人とも箸が止まらなくなり、気にすることなく料理を食べ始める。

不知火も灰神も生き締めから塩焼きまで隅々まで喰らい尽くす。

 

「どうだ、美味いか?」

 

 

「うん、家族から引き離されてハラワタを引き摺りだされて鱗を削ぎ落とされて惨殺された鯛の苦しみと怨念が伝わってきて・・・とっても美味しい」

 

ブフォ、と不知火の予想外の発言に驚き灰神が飲みかけの水を噴き出してしまった。

 

「お前、また能力を・・・作り変えやがったな」

 

「あひゃひゃひゃ、達人の料理を楽しむように読心系の能力を使ったんですけど鯛の怨念の方が強かったみたいです」

 

二人とも本当によく似た  であった。

 

 




めだかキャラ二人目登場!!

ちなみに能力名は能力改喰(AIMイーター)。周囲のAIM拡散力場を吸収して自身の使える能力を改変させる能力。今のところ強能力(レベル3)くらいの出力が限界。
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