とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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知っている人は知っているそんな内容です。


29番外編 4原作三年前 たくさん必要なんです

第一〇学区、学園都市の学区で一番土地の値段が安く、少年院や実験動物の廃棄場、唯一墓地のある曰く付きの場である。建物の九割が何らかの研究施設でありその詳細は表に出ることはなく統括理事会やその傘下の組織企業が半ば独占している状態であった。

その中でも『木原』と肩を並べるほどの異質で古い歴史を持つ『角沢』も例外ではなかった。

その角沢ご用達の質素な白い施設の中を長い茶髪を後ろに纏めている白衣の男、木原能宗はサンダルをペタペタと足音を立てながら上機嫌に職員カードと板チョコの両方を取り出し右手にチョコを左手にカードを持ち、関係者以外立ち入り禁止の施設の中央口を潜った。

 

奥へと進めば進むほど薄暗くなる廊下には剥き出しの透明な太い導管が壁際にいくつも連なって各フロアへと怪しげな液体を運んでいた。その先では見る者が見れば嫌悪感に思わず吐き気がし、喉の奥を胃液が刺激するほどの■■が水槽に浮かんでいた。五cm間隔でぱっと見五十以上の数が並ばれているそれを横切り能宗は自分の部下達がいる調整室へと向かい軽い歩調をとっていた。

 

「ドクターは?」

 

「昼飯買いにコンビニ行くって」

 

「・・・あの人の食事も特殊だからな」

 

「まったくだよ、御菓子しか食べないし主食がチョコだし。見ていて不気味だよ」

 

「・・・三食カップ麺で生活しているお前も大概だろ」

 

「えぇ!? ちゃんと野菜も食べているよ?」

 

「どこが?」

 

「今回はモロヘイヤとゴーヤ味のスープ」

 

扉の前に着き半分開くと丁度二人の部下がチュウショクを買いに行った自分の話をしていたが。非常に遺憾である。チョコは偉大であるのに。とやや不満げな表情になるも自分がというか一族が世間一般とかけ離れているのは周知の事であったと思い直す。

 

 

「悪かったですね。不気味で」

 

「ブホッ!! ドクターいつの間に」

 

「うわっ、(きたな)!!おい、眼鏡にかけるな!!」

 

電気の付いた明るい室内に入るとカップ麺を食べていた一人が辛辣に話していた当の本人が真後ろにいたことに驚き緑色の麺を噴出していた。・・・ビジュアル的にそちらのほうが十分不気味であったのは言うまでもない。

 

「馬鹿にしちゃいけません。チョコはとてもおいしいんですから・・・!」

 

チョコ食であることに何の問題があるのか? そこに旨い味があるから当たり前だとさも当然の事実のように能宗は二枚目を取り出していると、室内の奥にある多くキーボードとスイッチがある制御台の上に設置されている監視カメラの映像(ウィンドウ)端が赤く点滅していることに気付く。

 

「ほらほら、よそ見をしないでください。アラームが出ていますよ」

 

「は、はい」

 

ついでに、机に無造作に置かれている今週の報告書を読み上げ予定より芳しくない結果であることを確認する。

 

「今週はまだ目標の数値に達していないんですね」

 

「すいません。何しろ材料が材料ですので苗代の生産が滞っていまして・・・」

 

「仕方ありません、貯蔵(ストック)のも使ってしまいましょう」

 

「よろしいのですか?」

 

「角沢長官には後で私から通しておきます」

 

「はあ、・・・では」

 

助手が右手奥のボードとスイッチを操作すると、複数ある画面のうちの一つが大きく映し出され他の水槽が映っている映像は一時端に移動させられた。

 

大きく映し出された映像のコンベアとラインの稼動音が大きく響きわたり、大きな肉塊が弱弱しく蠢きながら除骨機器とよく似たモノの中へと消えていき、鈍い破壊音と粘着質な水音がしていた。

 

「こんなことをしても案外・・・慣れちゃうモノなんですね」

 

緑色に染まった麺を啜りながら能宗の『気軽』という『木原』に犯された助手は何の感慨も無く、否無くなった自分の精神に驚きを通り越し呆れに似たつぶやきを零す。

 

「何をおかしなことを言っているんですか。私たちは学園都市の利益のために成っていることをしているだけです。不良品が良品に成るんですからこれは立派な再利用(リサイクル)ですよ。再利用(リサイクル)・・・まぁ、何はともあれ」

 

工程機器の出口から再び出てきたソレは白く、頼りないほど細く湿っぽく赤く塗れ彩られていた。

ソレの上半分は何かの籠のように空っぽで真ん中に通る太い主柱だけが意図的に残されたように何かが物足りない達磨のような・・・。

 

「私たちには、無能力者(かれら)の脊髄がたくさん必要なんです」

 

人骨が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ドクター。さっき角沢長官が昼飯食い終わったら自分のところに来るようにって、言ってましたよ」

 

先程、眼鏡を汚された部下がふと思い出したのか、チョコを食べ終わりココアを飲んでいた能宗に忘れる前に連絡をした。

 

「ゲッ、またあのオッサンか・・・今度は何でお呼びですか?」

 

どうも能宗とはあまり反りが合わない性格ようだ。

 

「いくつかの完成した検体の性能を測るつもりだそうですよ?」

 

「・・・なるほど、では僕の最高傑作をお披露目と行こうじゃないか! ・・・君達も見てみるかい?」

 

「「無理ッス」」

 

能宗は一瞬どうすべきか思案するもすぐに結論を出し目的の場へ行こうとドアに手を置き半開きの状態で部下の二人に誘いをかけるもすぐに断られ、結局一人であの頭のお堅い上司に立ち向かわねばならない現実に戻される。

 

「・・・じゃあ、あの子たちのフロアへの通路の施錠を外して置いて下さいね」

 

「了解しました」

 

「ういーす」

 

仕方なく見学の勧誘諦めて二人に準備を頼むと能宗は今回の仕事の依頼主の元へといつもの軽い足取りで向かっていった。

 

 

 

 

千年間続く歴史を持つ角沢の現当主。六十六代目、角沢泰三(たいぞう)は自室で能宗が来るのをコーヒーを飲みながら待っていた。机には能宗が読んだのと同じ報告書がファイリングされていた。

 

「失礼します。・・・お待たせしました角沢長官」

 

軽くノックをし、入って来たのは依頼主の前であるのにも関わらず『気軽』に半分銀紙に包まれたチョコを齧っている木原能宗その人であった。

泰三は無骨な皺の刻まれた顔を顰めながら書類を叩きだす。

 

「予定よりも製造がやや遅れているようだが」

 

「ご心配なく、この程度は誤差の範囲内です。・・・あっ、でも素材が不足しているのは事実ですので来週中に追加をお願いします」

 

「其れについてはもう手を打ってある。問題は、地下に保存しているあれらが本当に使えるのかどうかだ」

 

「もちろんです。ごらんになられますか?」

 

売り言葉に買い言葉、食えない科学者二人は敵意を剥き出しにしたまま地下へと向かっていった。

 

 

 

 

「ここは、この施設の研究員もそう簡単には入れないようになっていますから―――

 

薄暗い施設の更に奥へと繋がる細長い地下のフロア、其処は牢獄の様な静けさしかなく、能宗のサンダルの足音と初老のスーツ姿の角沢泰三の足音なければ墓場のような生者が確認できない、静寂そのものしかいない場所であった。

 

「うなあー」

 

二人が目的の小部屋へと向かう途中のドアを横切るたびに怪しげな声と人影が窓から覗く。

 

「お前達『木原』の力を借りるのは我々『角沢』の前の世代の者たちにとっては面白くないものらしい」

 

「ハハハッ、こちら(木原)も似たようなことを姉に言われましたよ。危うく殺されかけましたけど」

 

「私個人としては、我々の目的達成のためには泥を飲むことも必要であると判断した。だからこそ、数々の科学的威光を示す『木原』にこの計画の短縮化を依頼した・・・」

 

「まっ、その依頼も『気軽』の木原を背負う私以外からは失笑されて断られてしまったらしいですけど」

 

「例え、お前が拒否したとしても私は別のプランを実行し賄うだけだったがな」

 

「・・・一族ぐるみでお家騒動なんてそんな重苦しいことは起こさせませんよ」

 

私の木原にかけてと、能宗は目的の部屋に着いたのを確認し暗証番号を打ち込み指紋ロックに手を翳と、電動式のドアの無骨な施錠がプシューと空気が抜けるような音と共に開錠された。

 

「ここまで至るまで他の『木原』の技術や計画の成果を費やした結果、彼らの能力と従順さは目を見張るものですよ」

 

部屋を覗き見るとそこには簡素な貫頭衣を着込み無骨なフルフェイスヘルメットを被った少年らしき四人がそれぞれ何かの指示を待つかのように寝そべっていたりしゃがみ込んで静かに待機していた。

 

「僕の現段階での最高傑作、殺生能力では学園都市最強の超能力者(レベル5)第四位(灰神 柳)をモデルとした現在製造中の量産型天然能力者(ジルペリット)、千百八体の内大能力者級(レベル4クラス)に達した四体です」

 

能宗が奥に入り、彼ら紹介を済ますとその内の一体に向って命令を下す。

 

「デイン、立ち上がりなさい」

 

ヘルメットの眼の部位に穴が四つ開いている個体がゆっくり立ち上がる。能宗は彼のメットの接合を外し角沢にその素顔を見せる。

 

「並みの能力者や対人兵器などこの子たちには何ら意味も無く通用する筈もありません。何しろこの子たちは、あの灰神柳を素体とするクローンなのですから」

 

灰神と瓜二つの少年がどこか焦点の合っていない無気力な視線を床に向けていた。

違う点と言えば、彼の額には直径四㎝程の円形の金属質な何かが埋め込まれていた。

 

「それだけではありません。彼らの脳にはちょっとした細工を施してあります。前頭葉の一部を切除しある一定の手順さえ踏めば誰の命令を利くように脳神経と電子回路(アジナー)を直結させ口もきけなくさせました。もうこの子たちは例えその命令がどんな不条理なモノであっても逆らえません。この技術の確立のために木原脳幹の外部演算回路や学習装置(テスタメント)の小型化と外装代脳(エクステリア)と同質の個体同士のネットワークの投入に手間を取りましたけど、それ以上の働きを見せるでしょう」

 

と、能宗はクローンたちの方へ手を差し伸べながら命令する。

 

「さあ、お前たち『こっちにおいで』うぉわああ!?」

 

「なう!!なうなう!?」

 

「なう。ななう」

 

「なうなうなう!!」

 

・・・命令を聞きそれを実行したクローンたちは突き飛ばすとまではいかなくとも、かなりの勢いで四人全員が能宗を押しつぶさんとしているのかと錯覚するほど擦り寄ってきた。それはもう甘えん坊な子犬が母親から離れずに自分の身体全体で淋しさを表そうとするような懐き具合であった。とてもあの灰神から作られたクローンとは思えない純粋な行動だ。

 

「馬鹿!?お前たち何をしている!!もう少し手加減しろ!!」

 

「『・・・!?』」

 

怒鳴られて自分たちが怒られていることを理解し、しゅんと俯くと先程の擦り寄りで能宗が落とした細長いチョコテックに気付き飛びついた。

 

「『うなう!!うなう!うまう!!』」

 

 

「ああ!!こら、僕のお菓子を勝手に食べるな!! ・・・ハッ!?」

 

公園で無防備に餌を啄ばむ鳩のようにお菓子を食べるクローンたち。自前の(食事込み)のチョコを一瞬で奪われた能宗の後ろからただならぬ気配が・・・。

 

「・・・・・・」

 

角沢長官は相変わらずの仏頂面で一部始終を見下すかのようにただ無言で観察をしていた。

 

「えーと、大変見苦しいものをお見せしました」

 

能宗はあっさり自分の非を認めこれ以上ややこしい事にならないように謝罪をする。

事態の簡略化のためには自分の頭をあっさりと下げる。彼ならではの『木原(気軽)』を重点にするスタイルそのものであった。

 

「本当に彼らはお前の命令に従うのか?」

 

疑わし気に角沢は能宗とクローンを品定めするかのように見比べた。

 

「本当ですよ!!」

 

自分の最高傑作と豪語するだけ自信があるのか半ば否定する勢いで能宗は叫んだ。

 

「ならばソレらが本当にお前の言うことを何でも利き兵器としてどの程度使えるレベルのモノなのか。書類ではなく実際に私の目で確かめさせろ」

 

「仕方ありませんね、できるだけ僕の作品を傷つけたくはないのですが。

デイン、『ナイフで自分の腕を切り裂きなさい』。命令だ」

 

不機嫌な表情を隠すことなく彼は不満げながらの腰からサバイバルナイフを取り出しクローンに手渡した。

命令を受けた面の外してあるクローン(デイン)は、食べかけのチョコテックから手を離し無表情のまま右手でナイフを掴み左上腕になんら躊躇なく刺し込んだ。二cm、三cmと貫通するほどではないがどんどん深く肉に刺し込まれ血が溢れ出て足元に滴らせた。

 

「もういいぞ」

 

能宗の命令を聞くとすぐさまナイフを抜くと目が滲み。

 

「う・・・うなぁあああー」

 

赤ん坊のように泣き出してしまった。周りのクローンも頭を撫でて慰める。

 

「ああ悪かったな、無理させて。後でお菓子やるから。・・・とまあ、このように「下らん茶番だ」

 

能宗がクローンたちの服従を証明して見せたことに満足した能宗に予想外の言葉が掛かった。

 

「なんですって?」

 

先ほどの発言に流石に納得がいかないのかつい言葉に力が入る。

 

「下らんといったのだ」

 

「お言葉ですが自身を傷つけるという行為がどれほど」

 

バァアアン。

 

クローンを傷つけてまで証明した、自分の研究成果を語ろうとした能宗の言葉に合わせて銃声が響き渡る。

角沢長官が自分の右手親指の付け根を打ちぬいたのだ。激痛が走っている筈なのにも拘わらず表情が揺らぐことはない。

 

「この程度の自傷行為に何の意味がある?  私が求めているのはそんなのもではない。命令のためならば自分の命すら捨てる完全なる無私だ。それが適わないのならお前の研究は全て無駄だ」

 

「・・・いいでしょう。デイン『自分の心臓をナイフで貫け』命令だ」

 

能宗は、一瞬考えるもこのまま引き下がった場合、自身の『木原』としてのあり方に対し不満が残るのは気分が悪いと思い直し、デインに重傷を負えと命令した。

 

「っ、」

 

一瞬、デインが自分のナイフを胸に突き立てたときにデインが能宗の方を向き泣きそうな悲しげな顔をするも自分の胸に深く刺し込む。あまりの痛みに体を縮みこませギリギリまで水を押し込んだ水風船のように血が噴き出し腕を切り裂いた時とは比べ物にならない血溜まりができた。

 

「これでよろしいですか?」

 

「いいだろう。次第点といったところだ、他の強能力級(レベル3クラス)の調整もお前に任せる」

 

言うだけ言うと角沢は能宗を置いて先に廊下へと出て行った。

 

「アラン、ブライアン、カイン。デインに応急処置を」

 

普通なら即死しているほどの怪我を負いながらもデインは生きていた。荒い虫の息でありながらも意識が朦朧とし半目の状態であったが生きていたのだ。

 

「「「なう」」」

 

クローンたちがデインに近寄り不可視の腕(ベクター)を伸ばし傷口を中から治癒し始め能宗はデインの横にしゃがみこみチョコスティックを齧りながら頭を撫でる。

 

「えらいぞ、デイン。まあ、気にすることないよ。お前たちの臓器には予備があと百八十万人分以上あるんだから」

 

 

 




やっとこのクローン編に達しましたぁァァぁああああ(歓喜)

え?なんで鳴声が『みゅう』じゃないかって?
さすがに男の子で『みゅう』はねぇだろと思い「なう」にしました。


どっちも同じじゃね?by紅鬼



追伸、二と一は飛ばします。御免なさいorz
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