とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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原作編 始登
30本編 原作編1 なにこれ知らない


 

「うだぁぁあああ、毎度の事ながらこの時期だけは憂鬱なんだよな~」

 

第七学区ファミレスの窓側の席になんとも間の抜けた愚痴が零れていた。

時に七月の中旬とは学園都市の各学校の生徒たちにとって特別な意味を持つ。

それは、自身の持ち得る超能力の測定、身体検査(システムスキャン)である。生徒一人一人各々の能力をそれぞれの系統に合わせて測定を行いその能力の強度(レベル)を測る。

〇から五まで六つの段階に大別され、百八十万人中六割弱は顕微鏡や精密機械を用いてやっと観測できる無能力者(レベル0)から単体で軍隊と渡り合える七人の超能力者(レベル5)などピンからキリまで存在する。もっとも、その最高レベルの『レベル5』の七人には学園都市が定めた序列が存在しており、それは単純な戦闘能力や希少価値、殺傷能力、破壊力などで決められるのではなく能力の応用した学園都市の研究機関が生み出す利益が元となっている。詰まるところただ強いだけでは研究対象として以外の面では役立たず扱いされるのだ。

灰神からすれば自身の能力(ベクター)はそもそも学園都市の超能力ですら無いのだから比べること自体が間違いだというのは解ってはいるのだ。しかし、面と向かってあなたにはだれだれさんより下ですと言われて気分を害さない人がどれだけいるのだろうか?

 

灰神は不快に思う側の人であったということだ。

 

もともと学園都市第一位を獲得し八年間その地位に居ながらも新参が出てきて二位に、更に二年足らずで四位に、仕舞(とどめ)には去年の春から新しく認定された常盤台の二人に超されて第六位にまで落とされた時に成績表(ほうこくしょ)を苦笑いしながら渡してくる(一応)養親、伊豆舞博士にむかついて八つ当たりしたのは今でも鮮明に残っている。一般科学者(ヒッキー)に目隠し逆バンジージャンプはやり過ぎだったと反省はしている。

そんなこんなで落ち込み通しな灰神を気遣い、今日このファミレスに一緒に来た紫のネクタイをリボンのように上手く結んでいる連れが声を掛ける。

 

「ま、まあまあ灰神さん(・・・・)。取り敢えず落ち着こう?」

 

「蔵間!!」

 

「はい!?」

 

相席している柵川中学校の制服を着ている蔵間と呼ばれた少女が宥めると、愚痴を零しながら突っ伏していた灰神は、限界まで押さえつけられたバネのように起き上がり感動の意を示しながら少女の両手を掴み強く握る。

 

「俺を父親や祖父扱いしないのは、お前や親船ぐらいだよ!!」

 

「ア、ハハハ・・・そうだね。私とか(かしわ)は両親がこの学園都市にいるからそんなに寂しくないから」

 

そっちかと若干引き気味になりつつも遺伝子を三分の一だけ受け継がせた(はいがみ)の手を振り払わないのは彼女の優しさだ。蔵間ナナ、彼女も灰神と同じディクロニウスの一人で現在学校の寮から通わずに研究職に就いている両親と五歳になる妹との四人家族で自宅通学している。今日は灰神に直接聞きたいことがあったらしいのだが身体測定(システムスキャン)の結果に落ち込み倒していた様子を見て今までそっとしていたのだ。

 

「そうだよな、紅鬼が親代わりに話し相手に成ってはいても所詮は俺達ディクロニウスの人格の一部が独立したものだから、自問自答に近いもの・・・なのか?」

 

と、先程の落ち込み具合嘘のように家族の話題になるとそちらに集中し始めた。

この男、気難しい面もあるがコツさえ掴めば案外ちょろい。

 

「実際に存在している訳じゃないし、親が角の生えている私たちを敬遠している家庭もあると思うし・・・・・・というより、箱庭学園なんてエリート校に通っている人が個人の成績に不満があるって結構贅沢な悩みなんじゃないの?」

 

「ふっ、せめて第五位(食蜂)よりは応用性が高いと思っていたんだけどな。頑張れば(ベクター)で空も飛べるし」

 

自嘲気味に鼻で笑いつつ自己のフォローも忘れない。蔵間の前においてある二つのグラスの内、解けかけた氷の入ったグラスに手を伸ばして、呟くと傾けて水と氷の欠片を口に含む。

 

灰神柳は現在、所詮学園都市の五本指の中でも最大規模を誇る箱庭学園(エリート校)に入学しており、さらにその中でも登校を免除されるという破格の待遇を持った ((マイナス))十三組と呼ばれる異常選抜クラスに所属していた。

そこは霧ヶ丘系列の施設をしのぐ変り種であり毎年、大勢の大能力者や強能力者の生徒はその好待遇に惹かれて異常選抜(十三組)を目指すのだがほぼ100%が門前払いを食らう。

選ばれなかった彼らは超能力ではなく学力と一般的資質(・・・・・・・・)を元に振り分けられるのだ。

一組~三組の普通科

四組~六組の体育科

七組~九組の芸術科

十組の普通選抜

十一組の体育選抜

十二組の芸術選抜

といった長点上機学園のような実力を元に振り分けられる。

当然、学園都市内の能力開発機関の一つであるため超能力のカリキュラムも存在する上に統括理事会からの予算も優秀な能力者が所属している以上、普通の教育機関より明らかに多くなる。しかし、その予算の殆どは上の十二のクラスとは違う箱庭学園が本当に求めている人材(十三組)たち・・・正確にはその能力の解析解明に力を注がれるのだ。

箱庭学園が求める人材とは即ち、『例外』。

それは、学園都市の最高機密に指定されている素養添付(パラメータリスト)の結果から『外れた』生徒達を集めているのだ。

素養添付(パラメータリスト)とは、学園都市の能力開発を受けた学生たちの発現した能力が将来、どの程度成長するのかを予測した素質調査データをリスト化したもので将来低能力(レベル1)までしか成長しないであろうとされた者には余計なカリキュラムを組ませず低能力(レベル1)に相応しい開発を施し、逆に将来超能力(レベル5)に到達しうる者には優先で高度なカリキュラムを受けさせる。こうする事で学園都市は効率よく予算を回しているのだ。無論、素養添付(パラメータリスト)強度(レベル)予測はあくまで上限値を測るもので将来確実にそのレベルに達するといった未来予測とは異なる。

 

 

だがしかし、

 

 

そんな粗悪で乱雑な能力開発下の中でも予想外の成長を遂げる学生達が存在していたのだ。彼らはそんな異常選抜の中でも限界値以上の強度に達したものを十三組に、能力が成長していく内にある一点に能力が特化して別種の能力であると誤認させられるほどの歪な成長を遂げた者を-十三組に分けられる。

 

数万分の一程度の確率で誤差と切り捨てられた時期もあったが各年代に一定した人数(三十人前後)で存在しているのは無視できる事実ではない。

ある者は、無能力(レベル0)の烙印を決定付けられながらも大能力(レベル4)にまでその能力を昇華させ。

ある者は、低能力(レベル1)の発電系能力者であるが周囲の電磁波の感知能力は大能力(レベル4)読心系能力(サイコメトリー)に匹敵し。

ある者は、異能力(レベル2)の精神感応と判断されつつもその能力が生み出す被害(破壊力)強能力(レベル3)を上回る勢いであったそうな。

 

 

そういった例外を集め管理という意味合いを含めてそういった能力者達の殆どが箱庭学園の生徒として指名入学され特別待遇である両十三組に籍を入れるのだ。

 

ちなみに登校免除のクラスであるだけでなく各施設のフリーパス見学、情報ランクA相当(各研究施設の機密文書級)の資料閲覧など下手な正規研究員以上の権限を持っているといわれても過言ではないのである。

両十三組生は授業があっても登校する義務は無く寧ろ大学院のように個々人の研究に没頭することが出来、その利益は大能力者の奨学金を上回ることもあるといった噂まで出回っていたりする。

学園都市の中でも異質な存在でありつつも、その敷地は広大で一つの小さな街が出来上がっているような錯覚さえ覚え、生徒達も第一八学区から滅多に出てこないため半ば都市伝説と化していた。

 

 

 

当然、そんな灰神(箱庭の学生)が第七学区のファミレスを訪れれば一気に注目の的となるのだが灰神は自身の持つ念能力の『絶』によってその存在感を希薄させているので一般人がその視界に捉えたとしても赤の他人に「いた」と認識されることは滅多にない。

 

その副作用で、配膳のお冷の水も貰えないことが玉に瑕だが蔵間は別に飲み物を頼んだことにより灰神は彼女が貰ったグラス(お冷)を自分の飲用水にしている。

 

 

一通り言いたいことを言い終えた灰神の落ち着いた様子を見ると蔵間は口を開く。

 

「愚痴はもういい?私だって暇じゃないからさっさと聞いて用件を済ませちゃうね」

 

「おう、いいぞ。しかっし紅鬼を通してじゃなくて直接聞きたいことって何だ?」

 

「噂ってぐらいなんだけど。ネットでレベルアッパーの話題がチラホラ出て来ているっていう掲示板で気になる記事を見つけて・・・これなんだけど」

 

「どれどれ、・・・はい?」

 

携帯を操作して灰神に渡すと彼は何とも気の抜けた声を出し驚いた。

スレッドには、こう書かれていた。

『常盤台の電撃姫、路地裏で箱庭の男子生徒と逢引き!?』。

ご丁寧に写真まで添付されており、顔の部位にモザイクが掛かっていながらもそこに写っている白い制服にニット帽の男の姿には身に覚えが有り過ぎた。

 

「なにこれ知らない」

 

あまりの衝撃的な内容に疑惑をそのままぶつける。

 

「あら、やっぱり違うんだ?」

 

「当たり前だ、一応面識はあるが五年程前に一度切りの関係だぞ。というよりこんなことが有ったら紅鬼がすぐに悪乗りして騒ぐはずだろうg、・・・」

 

そう、五年程前、どこかの大学病院で一度切り。確かDNAマップの登録を同時に行って帰りに挨拶を交わした程度の。と、灰神の表情に焦りが見え、グラスの氷を揺らしていた手が止まる。

 

「だから不自然に思って直接灰神さんに事の真相を聞こうと思ったんだけど」

 

「・・・ま、まあ。当の本人が知らないからなぁ、誰かの悪戯じゃないか?」

 

誤魔化すようにさも在り来たりな予想を立てた。

 

「うーん、普通ならそう考えるのが自然な流れだけど」

 

「一応、箱庭学園の方でも俺と似た背格好の奴が常盤台生と関わりがあるのか調べてみるさ、じゃあな」

 

「待って」

 

強引に話を終わらせ席を立つと、蔵間のベクターが灰神の肩を掴む。

 

「どうした蔵間?」

 

「灰神さん私に何か隠していることあるでしょ」

 

疑問ではなく暫定で言い切る第二世代()の顔を見ると灰神は呆れたように自分のベクターで彼女のベクターを掴み肩から退かした。

 

「どうしてそう思う?」

 

「灰神さんが急に話題を終わらせて立ち去ろうとしたことを考えると心当たりが有ったってことなんでしょ」

 

「お前が今知る必要は無い」

 

灰神は、今までの兄としての顔を仕舞い込むと親としての顔を出し、蔵間に言い聞かせるようにできる限りやさしく言う。

 

「紅鬼さんが教えてくれるとでも言って逃げるつもりなんでしょ?」

 

「・・・お前、精神感応(テレパス)じゃなかったよな」

 

「馬鹿にしないで、それぐらいすぐに分かるよ!!」

 

「・・・心当たりが無い訳じゃないのは当たっている」

 

それなら私も、と続けようとした蔵間を手で制し続けて言う。

 

「紅鬼にも何度も言ったが、(第二世代以降の)お前たちをまだ(・・)巻き込むつもりは無い」

 

「でも、だからって・・・何も教えてくれないのは、ずるいよ」

 

「紅鬼にはちゃんと、いつか知らせるべき時が来た場合にのみ全部話すように言ってある」

「本当?」

 

「ああ、何かわかったら連絡を入れるぐらいのことはするから今回見たことにお前が関わるな」

 

「わかった」

 

「・・・あの~」

 

納得はしていないながらも、頬を少し赤らめながら蔵間は再び席に着くと、ウェイトレスが気まずそうにトレーを抱きながら二人の間に立ち声を出した。

 

「お客様、二名様の相席よろしいでしょうか?」

 

「ああ、私はもう出ますので」

 

お気になさらず、と灰神は余所行きの面を貼り付けて答えファミレスを出た。

 

 

 

 

 

 

「あの、すみません」

 

「はい?」

 

「もしかして、先ほどのお客様の注文を聞かずに行ってしまいました?」

 

灰神がファミレスから出て行った後、バイトのウェイトレスが蔵間に注文を受けた時には灰神の存在に気付かなかったことに負い目を感じながら聞いてきた。

 

「あぁ、大丈夫ですよ。あの人はそういう影を薄くすることが特技らしいから」

 

「そ、そうなのですか」

 

よかったと、灰神がそういう能力者なのかと勘違いをし、溜め息を吐き一旦入り口付近に待たせている二名の案内に移った。

 

 

 

 

「こちらに相席となります。申し訳ございません」

 

「まあ、もうあちこちの学校で下校時刻が重なる時間帯だし、しょうがないわね」

 

「お姉様と二人っきりのティータイムが・・・失礼致しますの」

 

「あ、いいえ」

 

蔵間は、相席を了承したことに若干後悔していた。と同時に興味に満ちた視線を後からやってきた二人組みの常盤台生の片方に向けていた。

それぞれ、ヤシの実サイダーとレモンティーを注文する。

 

「畏まりました、ごゆっくりどうぞ」

 

ウェイトレスが注文を聞きそのまま厨房へと向かい。茶髪の常盤台生が向かい側に座っている蔵間が自分に視線を向けていることに気付き気を悪くさせてしまったのかと思い謝罪の意を表すように手を合わせる。

 

「ごめんなさいね、急に相席なんかして。私たち待ち合わせしているだけだからすぐに出ると思う・・・そうよね、黒子」

 

「はい、そんなに時間はかからない筈ですの。全く初春ときたら、丁度込み合う時間帯に待ち合わせさせるとは」

 

 

「気にしないでください。私もさっきまで連れと・・・初春?」

 

不意に知り合いの名が出てきたことに彼女の言葉が途切れた。

 

 

「「へ?」」

 

「あの、もしかして御坂さんですか?」

 

彼女は好奇心に負けてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰神は急ぎ足で真っ直ぐ路地裏へと向かうとすぐに携帯を取り出し、不本意ながら自分の養親のいる所属先の研究所に高校に入学して以降初めてその番号押す。

 

「もしもし、灰神君?珍しいわね君の方から電話してくるなんて」

 

「伊豆舞さん、今から一度研究所(そっち)に帰るから。これから言う

最近の実験資料を全部出してくれ!!」

 

「ちょっと、いきなりどうしたの」

 

「妹達、量産型能力者、一方通行、――――――

 

灰神の尋常じゃない様子に伊豆舞博士は混乱するも、灰神はそんなこともお構いなしに続ける。

 

―-――――――第六位、それらに関するもの全てだ」

 

「・・・なんで、灰神君がそのこと知ったのかはあえて聞かないけど。実験を止めようとしても、もう無駄よ。去年の夏から既に実験は開始されているし、協力している企業や開発グループは二十を超えているのよ!?」

 

「止める積もりなんかないですよ。絶対能力(レベル6)に興味が無い訳ではないですけど私にはどうしても必要というわけではありません。ただ、」

 

言葉を切り唾と一緒に吐き出し掛けた本音を飲み込んだ。

 

「ただ?」

 

 

「・・・・・・その実験に関与している各施設のデータに興味が出ただけです」

 

「はぁーーーーー。わかった、わかった、わかったわよ裏事情あたりのもそれなりに調べてあげるから灰神君もたまには研究所に帰ってくるのよ」

 

「有難う御座います」

 

―――オイオイ、柳!! いきなりどうしたんだよ。

 

 

通話を切ると灰神の脳内に直接、DNAの声である紅鬼が彼の慌てぶりに心配し声をかける。

 

「紅鬼、お前に確認しておきたい事がある」

 

―――何だよ?

 

「俺の遺伝子を受け継いだあの子達(ディクロニウス)はみんな人並みの幸せを生きているのか?」

 

―――・・・ああ、三歳を越えないと人格が完成しないからそれより前に殺された子達のことは分からないが少なくとも今確認できる限り理不尽な不幸を背負っている個体はいない。

 

「そうだよな、ありえない筈なんだよな」

 

―――さっきの蔵間が見つけたっていうお前みたいな奴と超電磁砲(レールガン)の写真のことを気にしているのか?

 

「おそらくだが写真に写っていた御坂美琴は軍用のクローンである妹達(シスターズ)だ。それが偶然箱庭の生徒と接触していただけという可能性が高い。だけど・・・」

 

もし、一緒にかつて登録したあれが奴らの手に渡っていたら。と灰神はベクターを伸ばしビルを屋上にまで跳躍し、携帯のGPSで方向を確認し真っ直ぐと幼少期世話になった研究所に向かって行く。普段は建物に皹を入れない様に気にしながら移動するのだが。この時だけは余裕が無くなった焦りが浮き出た表情に歪めていた。

彼が足場にしたビルの屋上には、手足に余計な力を入れてしまい不自然な手形や足跡のような皹が残っていた。

 




箱庭学園は五本指の一校ってことで受け止めてくださいorz

幸せな蔵間一家の世界があったとしてもいいと思ったので・・・やっちまいました☆
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