少し前Side 研究員
「おい、地下六階のあの部屋のロックが解除されたままになっているぞ?」
地下四階の管理室でここ一年間無かった異常事態が確認された。その場所は、『角沢』の御一行が特別視する角の生えた子供が研究という名の監禁をされている場所である。
「定時連絡はどうした」
「さっき、食事を届けたのは誰だ?」
「監視カメラの映像が全部死んでいるぞ」
「誰か内線で六階の職員に確認させろ」
しばらくすると、ちょっとしたパニック状態となってしまった。『木原』と肩を並べる程のマッドサイエンティスト一族である『角沢』の研究素材に何かあったとなれば、自分達の命が危ないからだ。
しかし、彼らはもう二度と地上で息をすることはなかった。
「なんで地下六階の連中と連絡が取れなくなっているんだよ」
エレベーターの中で一人研究員が愚痴をこぼしていた。
監視カメラの映像が二時間前から不意に途切れ。 内線を繋いで確認をしても誰も出て来ず仕方無く、自分が無線機を持って直接確認しに行っているのだ。
「やれやれ、着いたか・・・何だこの監視カメラの壊れ方は?」
エレベーターが最下層に到着し、入り口近辺の監視カメラを確認すると、まるで深海の水圧を掛けられたかの如く潰されていた。
[どうしたんだ?ドーゾ]
「カメラが全部潰されいるんだが。この灰神という被験体以外に念動力か圧力操作系統の能力者はいないのか?ドーゾ」
[・・・いない筈だ そうだドーゾ]
「そうか、今から各部屋を見回りながら観察部屋のロックを確認するドーゾ」
[了解]
「おいおい、もう10室以上は確認したはずだぞ?誰とも出会わないっておかしいだろ」
どの部屋もついさっきまで人が居た形跡があるのに誰一人として会わないのだ。急遽、残りの部屋の確認を後回しにし、不安に駆られながら灰神柳の部屋に早歩きで、向かって行った。
「ここが問題の部屋か」
マジックミラーを覗き込んで中を確認すると、角の生えた男の子が鏡を背にして床に座っており、頻りに手を動かしていた。近くにパズルやブロックといった教育遊具が散乱としている状況から見て、遊んでいるようだ。
自動ロックのドアを確認して見ると食器がドアの間に挟まれていた。
「こちら、地下六階のロックを確認したところ、食器が挟まっていただけのようだ。被験体に変わりは無いドーゾ」
[おい、急いで戻って来い!!]
灰神に異常が無いことを確認し安堵したところに無線機から、慌ただしく焦った声が帰って来た。
[地下五階の職員が全員何者かによって襲撃され死んでいるのが確認された!
六階も恐らく全滅だろう、急いでそのガキ連れて地下三階に上がって来い!!]
「あ、ああ分かったすぐ行く」
[急げよ]
「柳君、遊んでいるとろゴメンね。今日、お兄さんと一緒にお外に出て遊ぼっか」
「分かりました、でももうちょっと遊んでからでも良いですか?」
子供を相手に馬鹿正直この施設が何者かに襲撃されていると言わずに、自然な態度で被験体を連れて行こうとするも、まだパズルが解けていないためか灰神は外へ出たがらない。
「うーん、あとどのくらいだい?」
「後一人、この部屋に足りないんです」
「??・・・誰が足りないんだい?」
「この部屋の
「なっ!?」
天井が高かった為マジックミラー越しでは確認できなかったが彼は今理解した。六階の職員が全員この部屋に集められていることを。
「うっ!?」
視線を天井へ移すとそこには、この階の職員が全員生気の無い目や白目を向いていたり、身体の関節をあり得ない方向に向けたまま、目に見えない何かに押し付けられているかのように張り付けられていた。
「馬鹿な、能力者だったのか!?
クソッ
今すぐ、地下五いや四階以降のフロアを封鎖しろ!?」
[どうした?何かあったのか!?]
灰神を突き飛ばし、 全速力でエレベーターへと向かいつつ少しでも、今手に入れた情報を伝えようと無線機を手に取る。
「あの被験体が、全員殺りやがったんだ。
恐らく
[馬鹿な、奴はまだ4歳の子供だぞ]
「いいから早く封鎖を・・・
不意に、頭に手か何かが入り込んだような感覚がしたと思ったら、意識が急に遠退き、倒れ込んでしまった。
そして、彼は二度と起き上がることはなかった。
[おい、どうした!?返事をしろ!!]
「無駄ですよ」
[!?]
さっきまで聞こえていなかった子供の声が無線機に入って来た。
「もう、ここに生きている人はいないので、すぐにそちらへ向かいます」
[っ、全員、緊急退避撤退をしろ!!
地下三階の管理室に――――]
男の子の背中から伸びた透明な腕が無線機を掴み・・・、
そのまま、握り潰した。
「早くあの人にお礼を言いたいな」
end
Side 木原偶接
全員非常に興奮していて話の内容は要領を得ないことばかりだったが状況は大体把握できた
地下五階は完全に殲滅されていて、六階は全員と連絡が取れず確認しに行った奴の証言では、あのガキが能力者で今回の襲撃を行っているらしい。
「地下四階以降のフロアの封鎖、全警備員と職員は武装して被験体を無効化しろ」
「分かりました」
大森に指示を出し、自分も灰神の無効化に向かおうと学園都市製の装備を身に着ける。
「無効化なんて甘いことは言わずに処分するべきでは・・・"ガチャ"ヒッ!?」
「だったら、テメェが殺れっつうんだよ」
駆け込んできた職員の一人がそんな事を口走り偶接はベレッタ 92FSを眉間に突き付ける。
「おい、大森行くぞ」
「はい、なっ!?」
大森がドアを開けると其処には角が生え、血の色が混ざった赤黒い髪と瞳を持つ4歳の子供が立っていた。
偶接の額には押し付けられたような圧迫感があり、見えない何かが頭の中で蠢いていた。
「違う あなたじゃない・・・。
あ!偶接さん一年振りですね。私、あなたにお礼がしたくて・・・三年間のお世話、ありがとうございました・・・ガッ!?」
気付けば自分と大森以外の職員全員、目を虚ろに倒れていた。
恐らくもう既に死んでいるのだろう、すると廊下から銃声が聞こえ灰神の横腹に着弾し倒れ込んだ。
「命拾いしたな偶接、ここにくる途中2、3人の死体を調べたが全員外傷が無かった所を見るに・・・」
「恐らく脳内の血管に直接、念動力を当てて殺していたんだろ」
スラッグ弾を構えた角沢の話に合わせて、詳しいことは未だ解らないが職員の死因を答える。
「しかし、いいのか?お前ら『角沢』はこのガキを特別大切に扱っていたようだったが」
「心配しなくても、打ち込んだのは実弾じゃなくて麻酔弾だから死ぬことは無いだろうさ
ただし、3時間は碌に動けないがな」
「・・・ッ、痛ったいな、クソ。俺じゃなかったら肉が抉れていたぞ?」
「「!?」」
しかし、角沢の言葉とは裏腹に灰神はもぞもぞと這いながら壁に手を付き立ち上がった。
その目には明らかに怒りの感情が渦巻いていた。
「手足の二、三本。覚悟してくださいね」
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