とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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8本編 幼少期6 「あなたは私には必要ありません」

「素晴らしい、その年そこまで強力な力を扱えるのか」

角沢は怒りに燃えている灰神のことよりもあくまで非殺傷の無効化を目的とした麻酔弾であっても、対高位能力者用にグレードアップされているスラッグ弾を完全に防御した能力の高さに歓喜していた。

彼等には知る由も無いが、灰神はこの世界にとって未知の技術である念能力を取得しているため、"纏"や"練"状態の場合、半端な軍事兵器では気絶させることすら難しいのだ。

「喜んでねーで構えてろ、ブチ殺されるぞ。

大森!・・・は、やっぱ駄目か」

「」←大森気絶

 

偶接は一人現状を把握し冷静な判断を下していた。

「せいぜい死なないように頑張って下さい」

「ま、待て、待ってくれ。私は君の味方だ!!」

手足を千切ろうと(ベクター)を伸ばそうとすると角沢が慌ただしげに説得を試みる。

「麻酔弾とはいえ、銃器を向ける方が味方なわけないです」

灰神が正論でバッサリ切り捨てる。

 

「・・・初めて会った時にも言ったが、我々角沢一族の者には頭部に角が生えて生まれる。

それ故に周りから鬼と呼ばれ疎まれた

本来、世界は我々二觭人(にきじん)の物となる筈だった。

しかし千年もの間人間(ホモサピエンス)との交配・・・結婚して子供を産むことだ。

によって血が薄まりこの角だけが残ったのだ、君のような能力はもう残っていない。

50年以上前から似たような力を扱っている学園都市に身を寄せ子供達に望みを託したりもしたが我々一族が望んでいる神通力を発現させることはなかった。

文献によれば雲に乗り、山を砕き、月にまで昇って行く程の力だ」

何やら改まって聞いてもいない昔のことを4歳児にもある程度、判るように語り始めた。

「チッ、また伝説トークかよ。 勘弁してくれ」

どうやら『木原』の間でも有名な話のようだ。

「その力が、再び突然変異で生まれた純粋な二觭人(にきじん)である君に宿ったのだ!!

我々と共に二觭人(ディクロニウス)だけの世界を作ろうじゃないか。

選ばれた者だけの世界―――

命の泉(レーベンスボルン)を」

「・・・取り敢えず、角沢さんが自分のことをどう考えているのか知りませんが」

遺言に一区切り付いたようなので、灰神はベクターを3本伸ばし両肩と頭を掴み。

「あなたは私には必要ありません」

一気に捻じ切った。

返り血を浴びないように角沢の身体を後ろに傾けることも忘れない。

 

「おいおい、マジかよそんな芸当まで隠し持っていたのか」

偶接は、灰神の能力に驚きを隠せず、額に冷や汗を流しつつ右手に構えている銃を握る力を強める

しかし。

「安心して下さい、偶接さんを殺すつもりはありません」

「は?」

偶接は、灰神があれだけ虫を殺すかのように、殺人を行っていたのにもかかわらず偶接を生かすと言っていることに驚いた。

「先程も言いましたが偶接さんには恩がありますので、仇で返したりしません」

「じゃあ、大人しく「ただ、私の目的を果たす為にはこうして施設内で研究監禁される訳にはいかないので、偶接さんには少し眠って貰います」

再び、偶接の頭の中で何かが蠢く感触がしたと思った途端に意識が遠退き、気絶してしまった

「先程、角沢さんが命懸けで欲していた物は、私を治療し世話をしてくれた偶接さんに贈らせて頂きましたからね、奥さんとよろしくしちゃってください。

て、聞いてないか。

さてと、1年振りに外へ出てみますか」

 

 

 

 

 

ベクターを一階の警備室とブレーカーの所まで伸ばし、地下と地上の両方を停電させ、警備員には少し眠って貰った。

そしてエレベーターの扉をこじ開け、ベクターを使い蜘蛛のように一階まで這い登り、予め位置を把握しておいた監視カメラを潰しながら進んで行った。

この時、後で『猟犬部隊(ハウンドドック)』や『暗部』能力者による読心能力(サイコメトリー)で追跡されないようにベクターで天井にぶら下がりながら移動した。

端から見ると幽霊のようである。

この施設の裏口にやっと辿り着き、ベクターによる高周波微振動で鍵を切断し破壊した。

 

そして

 

一年振りに外へ出た。

 

 

 

「あーやっぱり、夜だったか」

人の目や機械の目を避けるために夕飯時を狙って脱走したために空はすっかり暗くなっていた。

街灯の明かりを頼りに辺りを見回すと幼稚園や小学校が中心の一三学区であるだけあってそれ系のデザインの建物があちこちにあった。

「先ずは住むところと靴と後、"グギュルルルル"・・・食べ物をどうにかしないと」

あの施設から追跡を回避するためにずっとベクターを使って移動をしていたが2km程移動した地点に公園があるのを見掛け、ベンチに腰掛けようと降りると地べたの感触が足の裏に直接伝わり。今、自分が裸足でいることに気が付いたのだ。

思い起こせば、灰神は生まれて初めて自分の意志で外に出たのだ。

あの施設には自分以外の被験体は居らず研究員達も数ヶ月に一度は新しい服を持って来たが靴は持って来てくれなかった。

「お~い、君!

こんなに夜遅くにどうした?」

自分の人生を振り返りながらベンチでボーッとしていると、懐中電灯を片手に矛のエンブレムの腕章を着けた男が公園の入り口で灰神を見ると話し掛けてきた。

学園都市治安維持機関の一つ警備員(アンチスキル)であった。

 

「どうしたんだい?先生が送ってあげ・・・

 

どうやら、近づいて暗くてよく分からなかった灰神の容姿の異常さに気付いた様だ。

赤黒い髪と瞳に側頭部に角を生やした裸足の子供、端から見れば人体実験から逃げ出した被検体にしか見えない。

冗談ではなくリアリティを感じさせてしまうのが学園都市の恐ろしいところだ。

 

しかし、灰神にとってこれは大きなチャンスである。

上手くすれば、唯の置き去り(チャイルドエラー)としてのIDが発行されて、新しい戸籍を得ることが出来るかもしれないのだ。

やるべき事は一つ。

 

「…お…り…した」

 

「・・・っは!?

何?なんていったんだい?」

 

「お腹が減りました」

 

The’お・ね・だ・り☆保護大作戦。

 




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