生まれたことが消えない罪というなら、俺が背負ってやる   作:ルシエド

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 現代日本だと競走馬の絵を書く画家は日本に一人しか居なくて、競走馬に芸術性を見出したその人の名前が長瀬さんというらしいです


人間の証

 木場の高速移動に相乗りさせてもらったおかげで、長瀬もあっという間に現地に着いた。

 ゲロゲロ一発、吐き出せばもう元の体調に元通り。

 ゲロフェノクと化した長瀬と木場はメールを頼りに移動し、人目につかないよう夜影と物陰を渡って動き、巧達と合流した。

 

 巧、海堂には多少の疲労の色が見えたが、敵の姿はどこにも見えない。

 どうやら戦闘は今一区切りされ、戦いの合間に彼らはこっそりと隠れていたようだ。

 木場を始めとする援軍が来るあてがあるのなら、なるほど最適解の一つだだろう。

 長瀬は彼らが無事なことにホッとしたが、癇癪を起こした照夫に怒られ――長瀬は自分が囮になって照夫を守ったことをすっかり忘れていた――しどろもどろになってしまう。

 

「バカ! バカ! 心配したんだからな!」

 

「ああ、俺も心配してたぞ。怪我ねえか?」

 

「バカー!」

 

 長瀬が照夫の叫ぶような感情の発露を耳にしたのは、これが初めてだ。

 新たな出会いが僅かに照夫に変化を生んでいるのか、それとも照夫が長瀬に心を開き始めている証拠なのか、ちょっと曖昧なところである。

 木場が合流し、海堂が露骨に嬉しそうな顔をした。

 

「よう木場、頼りにしてるぜ」

 

「ああ、海堂。また一緒に戦おう」

 

 何だか無邪気に嬉しそうにしている木場と海堂を見て、巧が長瀬の肩をポンポン叩く。

 どうやら長瀬は"やる男"だと巧に認められたようだ。

 今回の一件は、運が良かったという要素もそれなりにはあったのだが。

 

「よくあの分からず屋を説得してくれたな。どうやったんだ?」

 

「いや、お前は信用できないとか何か言ってたら、何かこう、フィーリングで」

 

「フィーリング……いや、まあ、そうか。

 俺や海堂みたいな関係の形じゃ駄目だったのかもな。こいつは運が良いと思っとくか」

 

「妙に馬が合ったんだよ、木場と」

 

「……馬だけに?」

 

「馬だけに」

 

 巧は携帯電話(ファイズフォン)を取り出して時間を見る。

 

「あと五分……よし、時間通りだな」

 

 やがて、巧が待っていた人物が、定刻通りにやって来た。

 サイドカーを駆って来たその男は、サイドカーの座席にライダーズギアの銀色ケースを乗せていて、それがサイドカーを使っているくせに"誰も横には乗せない"という意思表示をしているように見えてしまう。

 

「よくないなぁ、オルフェノク同士の汚らしい争いに俺を巻き込むのは」

 

「んなこと言ってる場合じゃねえだろ、さっさと行くぞ」

 

 その男は、キッチリ仕事を果たしてきた。

 巧と海堂が照夫を抱え隠れている間、その辺りをバイクで駆け回りスマートブレインの追手を攻撃・撹乱することで、陽動役として活躍してくれたのである。

 この男は私情で仲間を殺すこともあるが、仕事に私情は挟まない。

 エゴの塊ではあるが、一度戦いが始まればそこにエゴを挟まない男。

 

「人間の長瀬裕樹か。話は聞いてる。俺は草加(くさか)雅人(まさと)だ」

 

「草加か。名前だけは聞いてる、よろしくな」

 

「ふん」

 

 愛想が無い。

 長瀬は喧嘩を売りたくなったが、長瀬が喧嘩を売れるだけの時間的余裕はなかった。

 スマートブレインがまだ付近をうろうろしている中、彼らは戦場離脱を画策する。

 

 彼らはここから、夜の闇に紛れ、この付近一帯に張られたスマートブレインの包囲網を突破しなくてはならないのである。

 

 巧と草加はバイク。

 海堂が運転する車に長瀬・木場・照夫が乗り込む形となった。

 こんな車どこから奪ってきたんだ、と長瀬が聞けば、ラッキークローバーが乗って来た車を海堂がちょろまかしたのだという。

 手慣れたやり口に感心すればいいのか、そうでもしないと移動手段の確保にも苦労する、勢力ごとの経済格差に涙すればいいのか。はてさて。

 

「木場、あの草加って奴、どんな奴なんだ? 何かお前らの反応変じゃねえか」

 

「草加君は……その……」

 

 長瀬の問いは木場を返答に迷わせる。

 例えるならば、ウンコの味をレビューしようとして、言葉選びに苦心しているような顔だ。

 素直に答えるべきか、長瀬と草加に不和を産まないために当たり障りのない言い方をするべきなのか、『いい人』な木場は頭を抱えてうんうん悩み始めてしまった。

 そんな木場の横顔を見て、照夫は何か思うところがあったらしい。

 車の窓を開けて、車にバイクで並走する草加を睨む。

 

「草加は来なくてよかったのに。バーカ」

 

「このクソガキ……!」

 

 そして返答を聞く前に窓を閉めた。

 照夫のこんな子供っぽい攻撃を見せられたからか、海堂も木場もちょっと呆れ顔で、木場に至っては苦笑までしていた。

 照夫はむすっとしている。

 草加はどうやら、あまり子供には好かれていないらしい。

 

「乾さんはかっこいい。

 ナオヤは信じられる。

 木場さんはめんどくさい人。

 草加はだいきら……気持ち悪い」

 

「海道への半端ない信頼と草加への半端ない見下しが感じられるな……」

 

 照夫の中の四人評はそんな感じであるようだ。

 

 長瀬は海堂と木場に改めて草加の評価を聞くが、何をどう聞いても悪評しか出て来ない。

 曰く、嘘つき。

 曰く、仲間割れ誘発機。

 曰く、強さは折り紙付き。

 曰く、スマートブレインに掴まった人間の仲間を助けるため、オルフェノクの王を交渉材料として守りつつも虎視眈々と狙っている。

 

 草加という男はオルフェノクが大嫌いで、オルフェノクの全滅を願っている。

 だが人間の仲間が皆スマートブレインに捕まっているせいで、長瀬が仲間に加わるまで、この陣営は照夫含めオルフェノクしか居なかった。

 草加のストレス、及び普段の素行は推して知るべしといったところだろう。

 捕まった仲間と交換できる可能性が無ければ、子供であろうと容赦なく照夫の抹殺に動いていただろう。それはまず間違いない。

 

 長瀬は草加の評判を聞き、車の窓から外を見る。

 疾走する車と並走する巧と草加が、バイクの上で会話している様子が見えた。

 海堂と木場の話を聞いていると、もしやここには草加雅人と真っ当に話してくれる者は乾巧しか居ないのでは? と思えてくるから不思議なものである。

 

 戦闘面においては信用されているため、草加の信用度はゼロではない。

 だが好感度においては間違いなく底値をマークしている。

 嫌われていて信頼もされていないが強さの信用はされている、という意味ではクソまみれの機関銃のような男だった。

 

「ちゅうか、そろそろだな。

 照夫、シートベルト締めとけ。

 木場、長瀬、橋が見えるだろ?

 あそこの橋はやたら長いくせに車線が二本しかねーんだ。

 仕掛けてくるとしたらあそこだろうからよ、準備しといてくれ」

 

 合理とは、与えられた情報から考えるという前提があれば、敵も味方も同じ結論に達するということである。

 すると、逃走側と追跡側で『ここで戦う』という無言の合意が成ることがままあるのだ。

 そして彼らの予想通り、戦いはその場所で始まった。

 

「! 来やがった! ナオヤ、後ろを見て四つ目の信号のとこにオルフェノクだ!」

 

「ああ、見えんな。かーっ、やんなっちゃうぜ……変身!」

 

《 Standing by 》

 

 海堂、巧、草加がライダーズギアを起動する。

 

《 Complete 》

 

 デルタ、ファイズ、カイザのギアが彼らを戦士の姿へと変え、逃走者と追跡者は両者共に橋の上に突入した。

 

「オラァ!」

 

 ライダーズギアの使用者達が、ギアにデフォルトで装備された銃を一斉に後方へ撃つ。

 高熱猛毒の光弾が、スマートブレインの追手を襲う。

 されどもそれを平然とくぐり抜けて来た時点で、追手がただのオルフェノクでないことは確定的だった。

 

 雑魚のオルフェノクに運転を任せ、車のルーフから上半身を出し、鞭で全ての光弾を叩き落としたのはセンチピードオルフェノク。

 そしてその車に並走し、バイクで追いかけて来ているのは、ドラゴンオルフェノクであった。

 

「さあ、今夜こそは我々の王を返して貰いますよ!」

 

 照夫が乗っている車を破壊されれば、ただそれだけで追い込まれる。

 センチピードオルフェノクが振るう中距離武器である棘付き鞭を、カイザの銃撃が撃ち落とし、ファイズの銃撃が牽制し、デルタの銃撃が抑え込む。

 疾走と並行する激しい攻防に、ドラゴンオルフェノクはニタリと笑った。

 

「僕を楽しませてくれないと、つまんないよ」

 

 バチッ、と竜の角に稲妻が走る。

 次の瞬間、ドラゴンオルフェノクの角から強力な雷撃が放たれた。

 放たれた雷撃は無差別にドラゴンオルフェノクの前方を破壊し、長瀬達の周囲を信じられない威力で片っ端から消し飛ばしていく。

 

 路面は抉れ、街灯は消滅し、案内板は溶けて吹き飛ぶ。

 一秒ごとに雷がいくつも着弾し、そんな破壊が何分も絶えず継続されて続いてゆく。

 戦闘機の機関砲でも、単発の威力ではこの雷撃に及ぶまい。

 長瀬はたまらず、揺れる車内で叫んでいた。

 

「なんだあいつ!? 無茶苦茶過ぎんだろ!」

 

「奴は北崎、ドラゴンオルフェノク。

 ラッキークローバー最強にして、最も危険な心を持つ男だ!」

 

 木場はオルフェノクに変身しながら、窓から車外に飛び出した。

 ホースオルフェノク・疾走態のスピードで、走るようにして着地する。

 車より足の早い木場であれば、この程度の芸当は大したものでもない。

 木場は大剣を生成し、センチピードオルフェノクの鞭、ドラゴンオルフェノクの雷撃の余波を、その大剣で切り払う。おかげで車もすぐさまスクラップにならずに済んでいた。

 

「ヤロー、目にもの見せてやる!」

 

 長瀬はドラゴンオルフェノクがバイクに乗っているのに目を付けて、後部座席下から予備のオイルタンクを取り出し、窓からぶち撒けた。

 車もバイクも最高速度。時刻は夜。街灯は片っ端からドラゴンが破壊している。

 当然の結末として、見えなくなったガソリンはドラゴンオルフェノクのバイクを転倒させた。

 

「よし、ザマァ見やがれ!」

 

 ―――そして、歓喜する長瀬を嘲笑うように、ドラゴンオルフェノクはバイクを見捨てて飛翔する。

 

「ウッソだろ、てめェ……」

 

「もっと激しく抵抗してくれなきゃ……つまんないのさぁ!」

 

 飛びかかるドラゴンオルフェノクの顔面に、ファイズとカイザの息の合った銃撃が同時に炸裂する。

 怯むが止まらない。怯むが死なない。

 急所だらけの顔面でこれなら、それ以外の耐久力はどれほど高いのだろうか。

 

 逃げる車と、それを守るバイク二台にケンタウロス一人。

 追う車と追うドラゴン。

 だが橋も半ばまで差し掛かった時、新たな追手が橋の下の河から現れた。

 

「!」

 

 橋を右から左へ横切るように、河から飛び出したオルフェノクが猛スピードで飛んで来る。

 水中戦に特化したオルフェノク特有の、水中で加速し飛び出した勢いを利用する一撃。

 照夫の乗った車を狙った一撃を、割って入った木場の剣が切り払った。

 

「ロブスターオルフェノク……影山(かげやま)冴子(さえこ)か!」

 

「あら、お馬さんじゃない。また古巣に戻るなんて、相変わらず節操がないこと」

 

 飛び出して来た冴子はまた河に落ち、今度は橋を左から右へ横切るようにして飛び出し、彼らへと襲いかかる。

 今度はファイズが割って入って事なきを得たが、またしても冴子は水中に戻り、不可視の夜の河の中を泳いで回る。

 

(こいつはロブスター、水がある場所で本領を発揮するオルフェノクなのか!?)

 

 水中のロブスター。

 車上のセンチピード。

 そして空中のドラゴン。

 何故今回の追手の中心にこの三人が選ばれたのかがよく分かる。

 

 やがて、ファイズとカイザだけでは防げなくなる。木場が居ても守れなくなる。叩き落とし損ねた雷撃の一発が、海堂の操る車のタイヤに命中してしまった。

 

「くっ……やべえっ!」

 

 車はスピンし、クラッシュしてしまう。

 長瀬は咄嗟に照夫を抱きかかえるようにして守ったが、車は猛スピードで橋の柵に激突、見るも無残に破壊され、漏れたガソリンが炎上を始める。

 

「う、ぎ……」

 

 長瀬は額に突き刺さった鉄片を引っこ抜き、照夫を抱えてフラフラと車外に脱出。気絶した照夫と一緒に、倒れるようにして路面に転がる。

 

「ぐっ……頭のネジ飛んでやがるな、流石オルフェノク……!」

 

 額の傷から流れる血が目に入りそうで鬱陶しい。

 千切れたシャツの端を切り取って、長瀬は額の止血を行う。

 凡人があくせくしている中、戦士達は戦っていた。

 夜闇の下、ファイズとカイザのエネルギーが光の軌跡を残して走る。

 

 強い。

 掛け値なしに強い。

 巧、草加、木場の三人の強さは、多くの戦いを見て来た長瀬でも感嘆するものだった。

 

 だが足りない。

 敵もまた掛け値なしに強いがために、戦力が足りない。

 ドラゴン、センチピード、ロブスターは王の移動手段(車)を潰した今、ゆっくりと包囲して彼らを追い詰める段階に移行していた。

 海堂は車がクラッシュしてからどこにも見当たらない。デルタが参戦していないというのが痛手になってしまっているのだ。

 

(俺がやるしかねえ!)

 

 長瀬はオイルタンクを蹴り飛ばし、火勢の強い範囲を作る。

 そこに剣と鞭をぶつけ合う木場と琢磨が突っ込んで来たのを見て、長瀬は駆け出した。

 炎越しに木場と長瀬の目が合って、長瀬は身振り手振りで作戦を伝える。

 琢磨は長瀬の存在には気付かない。

 

「くっ、炎が……」

 

 やがてガソリンのせいで勢いを増した炎の光と、闇夜の暗さのギャップのせいで、センチピードオルフェノクはホースオルフェノクを見失ってしまう。

 一瞬。

 見失ったその一瞬こそが、長瀬がこの炎で作りたかったもの。

 

 闇の中の陽炎の向こうに、琢磨は大剣を振り上げる人影を見た。

 

(そこだ!)

 

 琢磨は大剣を鞭で受け止め、腹に思いっきり蹴りを入れようとする。

 

 そして、構えた鞭で大剣を受け止め……『大剣を振り下ろしたのは長瀬である』ということに気付いた時にはもう遅く、その背中に木場の手刀を突き刺されていた。

 

「な、に……!?」

 

「こちとら雑魚い人間だ。騙し討ちと連携くらいしか脳がねえんだよォ!」

 

 オルフェノクの目も、基本的には人間と同じ光を感知し物を見る目だ。

 炎の光で眩ませることはできる。

 そうして一瞬でも視界を誤魔化すことができれば、木場の大剣を受け取ることで、長瀬が自分を木場だと誤認させることができる。

 その一瞬が、そのまま勝機だ。

 木場は剣士ではない。

 徒手空拳も得意な戦士であるために、剣がなくとも敵は殺せる。

 

「クソぅ……長瀬、木場ぁ、貴様らよくも僕を……!」

 

「木場、殺せ!」

「言われなくても……」

 

「困るなあ、琢磨君は僕の玩具なんだから。勝手に壊さないでよ」

 

「「 ! 」」

 

 ドラゴンオルフェノクが、脱皮するように形を変える。

 重装甲の魔神態から、軽装甲の龍人態へ。

 "なんだあいつ"と長瀬が言おうと思った瞬間、ドラゴンオルフェノクは目にも留まらぬ超高速加速を開始した。

 

「な」

 

 長瀬が一単語を口にするだけの一瞬の時間でさえ許されず、ドラゴンオルフェノクの高速移動攻撃が、カイザ・ファイズ・木場を叩きのめす。

 

「んっ―――」

 

 一単語にも満たない刹那、通常の人間の反応速度では何も見えない一瞬の中、()()()()()()ファイズの動きが、その身を超加速形態へと変形させた。

 

《 Start up 》

 

 赤から銀へと姿を変え、千倍速の強化形態(アクセルフォーム)の力を解き放つ。

 ファイズとドラゴンオルフェノクが、マッハ50前後の領域での高速戦闘を開始した。

 殴る。

 蹴る。

 投げ飛ばす。

 その全てがマッハ50。

 四方八方に駆け回り、跳び回る二者の高速戦闘は、橋の上の大気を炎と一緒くたにしてかき混ぜていく。

 長瀬のようなただの人間は、移動の余波だけで何度も何度も吹き飛ばされた。

 

《 3 2 1 》

 

 ただの人間であれば木の葉のように吹き飛ばされる、ソニックブームの戦場。

 木の葉が枝から地に落ちるまでの一瞬の攻防。

 竜とファイズの拮抗は、やがて"ファイズは10秒しか加速できない"という弱点のせいで、その拮抗を維持できなくなってしまう。

 

《 Time out 》

 

 加速の終了と同時に、ドラゴンオルフェノクの蹴撃がファイズの腹へ突き刺さった。

 

《 Reformation 》

 

 強化形態を使用したファイズでさえドラゴンオルフェノクには追随できず、炎の中へ転がされてしまう。

 アクセルフォームも解除され、通常形態に戻されてしまった。

 

「くあっ!」

 

「乾さん!」

 

 長瀬は何度も吹っ飛ばされた体に鞭打ち、根性で立ち上がる。

 

「これで終わり? ま、楽しめたからいいけど」

 

 ドラゴンオルフェノクも魔神態へと戻った。

 こうして重装形態と軽装形態を見比べてみると、重装形態の『殺せなさそう』な印象が格段に増して見える。

 どちらの形態も、殺せなさそうな気配があることには違いないが。

 ドラゴンはたった一人で長瀬達を打ちのめし、その上で最上級オルフェノクであるセンチピードとロブスターを傍に従えていた。

 ファイズ、カイザ、ホースオルフェノクも立ち上がるが、満身創痍と言う他ない。

 

「草加ぁ! 木場ぁ! 踏ん張れ!」

 

「黙ってろ乾……お前に言われなくても、俺はお前より踏ん張っている!」

 

「くっ……ぐっ……!」

 

 木場が回復するのを待たず、乾巧(ファイズ)草加雅人(カイザ)が突撃する。

 二人の攻撃は息もピッタリ。

 一人のオルフェノクの急所二箇所を二人同時に剣で狙い、重いドラゴンは二人同時に蹴ってふっ飛ばし、肩が触れそうなくらいの距離で並んで敵を攻めても、巧と草加の肩が触れることはない。

 理想も理想、隙の見当たらないコンビネーション。

 

(乾さんと草加……なんて、完成度の連携だ……!)

 

 だが、それだけで覆るような戦力差でもない。

 

(やべえ、こいつヤベえぞ。

 このドラゴンは多分、俺達全員でこいつ一人を囲んで、ようやく殺せるかどうか)

 

 センチピードが乗って来た車にもオルフェノクは居る。都合四体。

 この状況で勝ちに行くには、あまりにも巧達の消耗が大きすぎる。

 どうする。

 どうすべきか。

 何をすべきか。

 考えに考え、長瀬は周囲に目を走らせ……そして、見つけた。

 

(―――!)

 

 車のクラッシュで車外に投げ出され、気絶した海堂と、外れたデルタギアを。

 

(この状況での最善は)

 

 戦え、と心が言っていた。

 戦え、と本能が言っていた。

 戦え、という内なる声に従い、獣のように長瀬は叫ぶ。

 

 炎の中に見えた照夫の姿が、血溜まりの中で叫ぶ千翼の姿と重なって見えて、『もう二度と』という意志が、感情を熱く昂ぶらせる。

 

「やれるか分からねえが、これしかねえだろォ!」

 

 ベルトを巻いて、ただ一言。

 

「変身!」

 

《 Standing by 》

 

 今までの自分とは違う自分になるという祈りを込めて、口にする。

 

《 Complete 》

 

 銃をホルスターに据えるように、グリップをベルトに挿入し、長瀬は変身を完了した。

 

 闇夜に溶ける黒のボディ、闇夜切り裂く銀の閃光、闇の向こうを睨む目の光。

 

 何の才能も持たず、何の高等技能も持たず、何の夢も持たず、何の力も無かったがために、何も守れなかった長瀬裕樹―――その手に初めて握られた、『デルタ』の力であった。

 

「すっげ……なんだこれ?

 ただの防護服かと思ったら、力が湧いてくる……

 いや、これは、俺の体の動きに合わせてスーツが動いてんのか?」

 

 使い慣れていない人間がすぐにでも使えるよう、使い方が分かるようになっている。

 ゆえに長瀬にも分かる。

 武装が『銃』だけというのも、長瀬にとっては馴染み深い。

 

「ファイア!」

 

《 Burst Mode 》

 

「オラオラオラオラ!」

 

 デルタの銃が火を吹いた。

 フォトンブラッド弾の12連射が、オルフェノク達の動きを止める。

 ドラゴンならともかく、センチピードとロブスターならばこの銃でもクリーンヒットになりかねない。

 

「小癪ね……琢磨君、やりなさい」

 

「しょうがないですねぇ」

 

 まだ初変身の内に、デルタの戦闘に慣れない内に、殺してしまえ……そういった冴子の意図は、琢磨に相違なく伝わった。

 光弾の合間をかい潜り、琢磨は全力の一撃を放つべく腕を引き絞る。

 棘付き鞭で狙うはデルタの首筋。

 即死が狙える人体急所。

 "人間をオルフェノクが殺そうとしている"というこの状況は、自らの信念と理想に準ずる木場勇治を奮起させた。

 

「あああああああああああっ!!」

 

 木場は立ち上がり、またケンタウロスに似た疾走態へと変わり、体当たり気味に長瀬を抱えそのまま駆け抜け回避する。

 空振った鞭が橋の路面を打ち据えて、木場は長瀬を馬の背に乗せる。

 

「木場!」

 

「長瀬君!」

 

 そして長瀬は、そのまま馬の背に跨って、そこから手にした銃を乱射した。

 

「騎馬役、頼んだぜ!」

 

「馬歴は長くないんだ、荒っぽくても文句は言わないでくれよ!」

 

 デルタの銃撃がドラゴンと離れていたセンチピードとロブスターを襲う。

 そして飛び道具を持たない木場は、背に乗せたデルタに銃撃の一斉を任せたことで、手足の一本も使わないまま敵の動きを止めていた。

 両手で強く大剣を握り、すれ違いざまに斬撃一閃。

 センチピードとロブスターに二人まとめて、強烈な一撃を叩き込んだ。

 

「くぅっ!?」

「うぎゃあ!?」

 

「ファイア!」

《 Burst Mode 》

「死んでろクソオルフェノクがよォ!」

 

 更に、倒れた二人に向けて銃撃の12連打を御見舞する。

 少しは動けなくなっただろうが、これでもまだ死ぬ気配を見せないあたり、流石はラッキークローバーといったところか。

 長瀬木場の合体状態が三人中二人をノックアウトしたことで、逃げられる可能性が見えてきた。

 

「乾さん! 照夫を!」

 

「ああ、分かってる!」

 

 いつの間にやら気絶した照夫をサイドカーの座席に乗せて、巧が戦場を離脱していた。

 王さえ逃がせば、もうここで戦う意味はない。

 敵も味方も目的はオルフェノクの王なのだから、照夫さえ逃がせれば各々好き勝手に逃げればいいのだ。

 

「ちょっと……僕は王様を見に来たんだ、勝手に逃げられちゃ困るよ」

 

 だが、ここに来ても立ちはだかるのがドラゴンオルフェノク。

 飛行能力と高速移動能力を持つ彼にかかれば、有視界内ではどんなに離れても意味がない。

 王を逃がすには、このオルフェノクに強烈なのを一発叩き込まなければならないのだ。

 それを、草加は一瞬の内に把握していた。

 草加の卓越した戦闘思考が、脚部スリットにポインターを装着しながら、長瀬に向かって叫び声を上げさせる。

 

「おい、ポインティングマーカーの使い方は分かるか?

 ベルトのミッションメモリーを銃のスリットに差し込め。

 発射したポインターを全力で蹴り込めばそれでいい! やれるな!」

 

「あ、ああ、使い方なら分かる」

 

「どの道高速移動する北崎にダメージを与えられなければ意味はない。

 お前に俺が合わせてやる。同時攻撃だ、追って来れないよう全力で蹴り込め!」

 

「お、おう!」

 

 木場から飛び降りた長瀬と草加が、肩を並べる。

 

「チェック!」

「胸を狙え。そこが一番的が大きい!」

 

《 Exceed Charge 》

《 Exceed Charge 》

 

 デルタが手にした銃から放たれるは、三角錐の形状のマーカー。

 カイザの脚部装備から放たれるは、四角錐の形状のマーカー。

 マーカーはドラゴンを拘束し、ドラゴンはマーカーごと高熱の猛毒を体内に蹴り込もうと飛び込んで来る二人の戦士を見つめ―――つまらなそうに、息を吐いた。

 

「君達はさぁ……もう少し、自分の弱さを学習しようね」

 

 ドラゴンが一秒だけ、一時だけ、一撃だけ本気を出す。

 本気を出したドラゴンが放った渾身の腕の一振りは、マーカーの拘束を振りほどき、目障りなマーカーを粉砕して、蹴り込んで来ていた草加と長瀬を吹き飛ばす。

 草加は長瀬に合わせて蹴った。

 草加が巧に合わせるのであればそれでも強い。

 だが、()()()()()()()()()()()()合体攻撃は当然のように弱くなる。

 

 必然の結末として、二人の攻撃は時間稼ぎだけに終わり、長瀬と草加は河に叩き落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こう短期間に連続して水に落ちると、ちょっと自分の幸運を疑いたくなるところだ。

 河に落とされた長瀬が目を覚ますと、そこはマンションの一室だった。

 部屋の内装だけ見れば極めて普通で、窓から外を見て初めて"ああ、マンションっぽいなここ"と思えるような場所だった。

 

「気が付いたか」

 

「草加、か?」

 

「草加さん、だ。君達は年上に払う敬意というものを持っていないのかなぁ?」

 

「ねぇな」

 

「……」

 

「あんたが助けてくれたのか? サンキュー、助かったぜ」

 

「ああ」

 

 敬意は払わないが感謝はする。

 草加からすれば自分に包容力を見せてくれないヤンキータイプの人間は嫌いなのだが、感謝の言葉は心地良い。

 草加の中には『俺のことを好きにならないやつは消えろ。消えないなら追い出す』という基本行動原理がある。

 長瀬は今のところセーフだった。

 

「長瀬君には事務的な連絡になるが、まだ誰も死んでいない。

 乾のやつは忌々しいことに逃げおおせたようだ。

 海堂も木場が抱えて離脱したらしい。

 どうやらまだ、王と真理達を交換する余地は残っているようだ。

 明日正午、タイミングを測って隣の県で落ち合うことが決まった。君が寝てる間にな」

 

「そうか、よかった……つうかアンタ、マジで照夫を交換材料としてしか見てないのか」

 

「でなければ、俺がオルフェノクなどという化物を守るわけがない。

 オルフェノクの王? 人間のためを思うなら、今殺すのが最善だ」

 

「そいつは……あんたにとっては、そうなんだろうけどよ」

 

「君にとっても最善だ。

 オルフェノクが人の心を失った時、君もまた裏切られるのだろうからな」

 

「……」

 

 草加は陰謀策謀を好む。

 ただし、詐欺師にはなれない。

 草加は褒め言葉や甘言を駆使し、相手の気持ちを理解しそれを操って、他人を自分の思うようにコントロールするということが苦手だ。

 彼の陰謀は大体の場合、嘘と工作と陰口で終わる。

 

 つまり、草加が得意なのは他人を陥れることであって、他人を操ることではないのだ。

 だから草加は他人が自分を好きになるよう工作するのが苦手で、誰かが誰かを嫌いになるように仕向けることしかできなくて、最終的に誰からも嫌われるようになる。

 草加雅人は嘘つきであっても、詐欺師にはなれない。

 

 草加は相手の気持ちをあまり考えない。

 相手の考えを意識的にあまり読み取れない。

 女心等は天敵だ。

 草加の人間関係内で一例を挙げるなら、草加は理解したいと思っている園田真理(好きな女)への理解が足らず、乾巧への理解が足りている。

 真理(はつこい)に好かれる人間になれないのに、巧と戦闘する時は息ピッタリで、巧の思考を先読みして罠にハメることができる。

 

 そういった認識の上で、草加の発言は見るべきなのだ。

 草加は長瀬に"照夫を見捨てるのが君にとっても最善"と言っているが、実はこれは厳しいことを言っているつもりなだけで、そのせいで長瀬に嫌われる可能性を考えていなかったりする。

 長瀬は嫌そうな顔で、草加の言葉を噛み砕いた。

 

「……まあ、いいんじゃねえの。

 あんたみたいに人間のため化物を殺そうとする奴も、世の中には居るんだろうさ」

 

「ほう……話が分かるじゃないか。

 乾の奴が君を買っていたから、どんな異常博愛主義者かと思ってみれば」

 

 長瀬の中で、公的な『人間の守護者』は二種類いる。

 一つは恩人のマスター・志藤を始めとする、"化物と戦っている内に化物に同情してしまった"タイプの者達。情に流される者達は皆このカテゴリに入っている。

 もう一つは黒崎部隊長を始めとする、"心を抑えて化物には一切同情しない"タイプの者達。情に流されない理性の者達は皆このカテゴリに入っている。

 

 化物に同情しないという意味では、草加は後者に入るだろう。

 複雑な心境になった長瀬は、自分の右手がずっとデルタギアを握っていたことに気付いた。

 

「俺が持ってていいのか? デルタギア」

 

「こう言ってはなんだが、君は得難い人間だろう。

 君はオルフェノクではない。

 そして、オルフェノクを殺すことに躊躇がない。

 『共存不可能な化物』という認識が、君の中には確かにある。

 それは人間が持っていて当たり前のものだが……俺の周りには、そう居なくてね」

 

 長瀬が死ねば草加はまた仲間にオルフェノクしか居ない生活に逆戻りだ。

 木場を連れて来たことは気に入らない。照夫の味方を公言していることも気に入らない。だがその上で、長瀬を味方に保持しておきたい理由が草加にはある、というわけだ。

 草加からすれば、ベルトは極力『人間』に持っていて欲しい。

 それも、『殺せる人間』に。

 草加視点、安心してベルトを預けておける者はあまりにも少なかったのである。

 

 そして、もう一つ。

 

「長瀬君。君は俺にデルタギアを一時でも預けておいていられるか?」

 

「? まあそりゃ、強い人が持ってんのが一番だろうしな。ほれ」

 

 長瀬は躊躇いなくデルタギアを草加に渡した。

 草加は長瀬の目を見ていたが、その目に惜しみの色はなく、執着など欠片も持たない。

 相も変わらず、自分が特別でないことを思い知らされた、無力な自分を受け入れた凡人の目のままだった。

 

「いや、デルタギアは君に預けておこう。試してすまなかった」

 

「試す? 何をだ?」

 

「……君には話しておこう。

 デルタは呪われたベルトだ。

 使えば使うほど、心も体も改造されてしまう。

 体は生身でも赤い雷を放てるようになる。

 心は凶暴化し、デルタギアの力に麻薬のような依存症を起こすようになるんだ」

 

「やっぱ草加が使ってくれよな、このベルト!」

 

「今の話を聞いて堂々と俺に押し付けるか。怖いもの知らずにも程が有るぞ君は」

 

 そう、そうなるべきなのだ。

 『デルタギアを使った長瀬』は。

 

「だが、全員がそうなるわけじゃない。

 芯の強い人間、闘争本能が薄い人間……

 そういう人間は、デルタのベルトを使っても凶暴化しない傾向があった」

 

「例外ありなのか」

 

「使用者の体質もあるかもしれないな。

 とにかく、デルタのベルトは謎が多いんだ。

 君が生身で雷を放てる頃にまだ理性を保てていたなら、そこで一安心と思っていい」

 

「そう考えるとあんまり使いたくないなこれ……」

 

「ああ。落ちれば終わりの深い谷を飛び越えるつもりで使った方がいい。

 一歩間違えれば君はデルタに魅入られ、落ちて、堕ちて、理性を失い……」

 

 長瀬は理解する。

 

「その時、君は人間の心を失った怪物となる」

 

「―――」

 

「人の体で、赤い雷を放ち、闘争本能のままに暴れるオルフェノクもどきになるだろう」

 

 最悪に最悪な事態になった時、草加雅人(このおとこ)が己の処刑人となることを。

 

「分かったら、デルタギアを持て。ここを離れる」

 

「分かっ……ん? 待て草加、そういえばこの部屋ってお前の持ち部屋なのか?」

 

「そんなわけがないだろう。

 さっき殺したオルフェノクの部屋だ。

 オルフェノクの死体は灰になるために、行方不明として処理される。

 行方不明届が出て遺族のチェックが入るまでは、その部屋は仮宿程度には使えるんだよ」

 

「……」

 

 なんという男か。

 オルフェノクを殺す、という行為は大前提。

 そこで"そういえばこの長瀬って奴を寝かせる場所が必要か"くらいの気持ちで、オルフェノクから部屋の鍵と部屋をかっぱらったのだ。

 ドラゴンオルフェノクとの戦闘直後にも平然とオルフェノクと戦い勝ったことといい、この男はとことんオルフェノクが敵に回してはいけない者のようである。

 

「そりゃ確かにさっさと逃げた方がいいな……」

 

「ああ」

 

 草加が"オルフェノクの汚らわしい部屋に居たくない"と無言の表情で訴えていた。

 部屋を出て、階段を降り、マンションを出る。

 マンションの前の道路でここからどう移動していくか、を相談しようとしていたのだが。

 

「おにいちゃんたち、ひま?」

 

「ん?」

 

 そこで、草加と長瀬は女の子に声をかけられてしまう。

 栗色の毛の女の子であった。歳は6~7歳だろうか?

 赤いリボンで髪を留めているものの、それは髪をまとめるためではなく、この年頃の女の子特有の"ファッション未満の可愛いおしゃれ"に見える。

 あくまでファッションではない。幼い子供の、可愛いおしゃれだ。

 

 そしてこういう子供のお願いへの対応は、個々人の性格が出る。

 

「ごめんな、俺達は少し急いでるんだ。君のお願いは聞いてあげられないんだよ」

 

 草加は笑顔を作って、猫を被って、子供のお願いを聞くこともしない。

 

「おう、なんだ? 困った顔してんなお前。

 言うだけ言ってみろ、俺が手伝うかどうかは別だけどよ」

 

 長瀬は口が悪く、作り笑顔なんてものも使わないが、子供の話はとりあえず聞く。

 

「おかあさんが、おかあさんが、へんなの。へんになっちゃったの」

 

「変になった? どういうことだよ」

 

 しっかり話を聞くモードに入ってしまった長瀬を見て、草加は心中舌打ちした。

 

 

 

 

 

 女の子は、このマンションの住人らしい。

 

「わたし、千尋(ちひろ)! 中村千尋!」

 

「あー……まあそうか。チヒロって女っぽい名前だもんな……長瀬裕樹だ、よろしく」

 

 千尋の相談は、『お母さんがある日突然変になった』というものだった。

 娘を見る目が変になり、ブツブツと意味の分からない言葉を呟くようになり、家の周りの地図をじっと見つめることが多くなったらしい。

 彼女が断片的に覚えていたワードを長瀬と草加が繋いだところ、出て来たワードがあまりにも物騒で、流石にここまで来れば草加もガキの戯言だとは思わなくなってきたようだ。

 

「まだ早い」

「今まで通りの家庭の偽装」

「殺せば最悪行方不明扱いで怪しまれる」

「まだマンション内の住人か近所の人間に限って」

 

 そんなワードが、ゴロゴロ出て来る。

 これはもう明らかに正常ではない。

 子供のうろ覚えを適当に継ぎ合わせた証言など何のあてにもならないが、これが真実ならどう転がっても犯罪の臭いがする。

 確証を得るため、長瀬は千尋に手を引かれて彼女の家へと足を運んだ。

 

「ここが、わたしのおうちだよ」

 

 千尋はドアの横の植木鉢をどけ、その下に隠されていた鍵を取り出しドアを空ける。

 不用心すぎねえか? と長瀬は思ったが、長瀬の世界の時代ならともかく、この世界の時代であればこういう鍵の隠し方は多かった。

 

「草加、どう思う?」

 

「こういうのも職業病と言うのかな……

 俺はこういう話を聞くと、どうしてもオルフェノクのことを連想してしまう」

 

「……考えすぎだろ。よくあることじゃねえか、親が子供への態度を変えるなんてこと」

 

「そうであって欲しいと、俺も願うさ」

 

 長瀬は親が犯罪者で子供に酷いことをする可能性を考えていた。

 彼が"親と子"をスタンスの基本に置いているからだ。

 草加は親がオルフェノクになった可能性を考えていた。

 彼が"人間とオルフェノク"をスタンスの基本に置いているからだ。

 

 マンションの一室に足を踏み入れると、草加はドアの一つに歩み寄り、そのドアノブに鼻を近付ける。

 

「木のドアノブか」

 

「草加、どうした?」

 

「僅かに鉄のドアノブに近い香りがするな」

 

「は? 何言ってんだ?」

 

「鈍いな君は。血の匂いが僅かに移っていると言ってるんだ」

 

「―――!?」

 

「人を殺して、血まみれになった『手』をよく洗わなかったな。

 見かけ上は血が付いていない手でも、血液の成分が残っていることは多い……」

 

 オルフェノクでない草加の鼻でも、感じ取れるほどの血の香り。

 一般人では気付けない領域の僅かな香りであったとはいえ、それが確かに感じられるのなら、このドアノブに触れた人間は"何人殺してきた"のだろうか?

 何度殺して。

 何度手を洗って。

 何度その手で、このドアノブに触れたのだろうか。

 

 草加は不快そうな顔をして、手をウェットティッシュで拭きながら振り返る。

 

「当たりだ」

 

 手を拭いたティッシュを投げ捨てた草加の視線の先には、奇怪な笑みを浮かべ、身を震わせる女性の姿があった。

 千尋とよく似たその顔は、ひと目で親子関係にあることを理解させる。

 間違いない。彼女が、千尋の母親だ。

 

「おかあ……さん……?」

 

「千尋ちゃん……駄目じゃないの……変な男の人を家に入れちゃあああああああああっ!!!」

 

 それは悲劇か、惨劇か。

 その手を血と灰で汚した母親が、両生類のオルフェノクへと姿を変える。

 襲いかかるその怪物が母であると、そう理解した瞬間に、少女の心は限界に達した。

 

「いや……やぁ……いやぁっ!」

 

 そして、この悲劇に眉一つ動かさず、草加はオルフェノクの顔面に蹴り込んだ。

 何の躊躇もなく、一片の迷いもない全力の蹴り。

 鍛え上げられた草加の蹴りは、オルフェノクを玄関から叩き出し、続く第二撃の蹴りで三階から地上に落ちるよう蹴り落とした。

 

「お前達オルフェノクはあってはならない魔物だ。一匹残らず、この世から消してやる」

 

《 Standing by 》

 

「変身!」

 

《 Complete 》

 

 三階から叩き落としたオルフェノクに、カイザと化した草加が襲いかかる。

 三階から落下する勢いのまま首を蹴り込み、首をへし折らんばかりの一撃を叩き込んだ。

 

「千尋! 立てるか?」

 

「ひぐっ、えぐっ」

 

「……無理か。しょうがねえよな。ちょっと抱きかかえるが、我慢してくれ」

 

 千尋を抱えて長瀬は逃げる。

 母が怪物だったという記憶に、母が自分を殺そうとする記憶まで万が一加わってしまえば、この子はもう立ち直れなくなってしまう。そう思った。

 カイザとオルフェノクの戦いの脇を抜け、マンション前から離れようとしたところ、そこで長瀬は千尋にどこか顔の似た男性とバッタリ会ってしまう。

 

「……あ、あ! おとうさん!」

 

「おお、千尋じゃないか。どうしたんだい?」

 

「! 千尋ちゃんのお父さんっすか!?

 千尋ちゃんをお願いします!…… あ、あとっすね!

 今お宅のマンションにアブねー不審者が居るらしいんで、今帰るのはやべーっすよ!」

 

「おお、不審者とは恐ろしい。

 どこのどなたか存じませんが、ありがとうございます」

 

「いえいえ。あ、くれぐれも今帰らないように気を付けてください!」

 

 千尋を父親に預け、マンションから離れるように言う。

 そしてこっそりデルタギアを身に着けて、Uターンして草加に加勢すべく走り出した。

 怪物になったしまった妻を、あの男性にまで見せるわけにはいかない。

 マンションからあの父娘を引き離し、可及的速やかにあの母親をどうにかする必要がある。

 

 どうする、どういう結末にする、どういう落とし所に着地させるべきだ、どうするのが最善なんだ、そんな風に苦悩の思考を回していた長瀬は――

 

「おとうさん、どうして?」

 

 ――千尋のその声に、振り返ってしまう。

 振り返るべきでないのに、振り返ってしまう。

 見るべきでないのに見てしまう。

 

 両生類のオルフェノクになった父親が、大きな牙を千尋(むすめ)の心臓に突き立てていた。

 

 

 

 

 

 何が起こったのか、長瀬は理解できなかった。脳が理解を拒んでいた。

 長瀬は根が善良である。

 親子は愛し合うもの、大事にし合うのが普通、という幻想をまだ抱き続けている。

 だからこそ『クソ親』の類が嫌いだ。

 だからこそ『親子の愛』を心の奥底で信じている。

 深く考えずに行動した長瀬の心は、千尋の親を無意識の内に信じ、千尋を預けてしまった。

 

 先にオルフェノクになったのは、父なのか、母なのか。

 それはもう誰にも分からない。

 今までの日常を守りながら、人間社会に潜みつつ人間を殺していたオルフェノクは……ある日、『我慢できなくなって』、結婚した伴侶を殺した。

 殺された伴侶は偶然にもオルフェノクとなり、千尋の親は両方共オルフェノクの夫婦となった、というわけだ。

 なんてことはない。

 母親に演技力がなく、父親には演技力があったというだけの話。

 

 長瀬の世界で、アマゾンは食うために人を襲う。

 食欲ゆえに人を襲うのがアマゾンだ。

 対しこの世界では、オルフェノクが人を襲うのは繁殖の意味合いもある。

 オルフェノクに殺された人間がオルフェノクになることがあるため、これは一種の生殖であり、オルフェノクにとっての性欲の一つでもあると言える。

 

 アマゾンは食うように殺し、オルフェノクは犯すように殺す。

 父に牙を突き立てられた千尋は、涙をこぼし、自分に手を差し伸べてくれると思った人に―――長瀬裕樹に、手を伸ばす。

 

「たすけて」

 

 そして、伸ばされた手は誰の手を掴むこともなく、力なくだらりと垂れた。

 

「チヒロおおおおおおっ!!」

 

 『子殺し』に、長瀬の頭が沸騰する。

 

「変身!」

 

《 Standing by 》

 

《 Complete 》

 

 デルタの拳が、父親であったオルフェノクの顔面を殴り飛ばした。

 

「てめえ! 親が! 親が子を! 親が子供殺すのかよぉッ!」

 

「親がオルフェノクで、子が人間。分からないかな? これは当然のことなんだよ」

 

「子殺しが当然だと!? テメエ、もう一度言ってみやがれッ!」

 

 殴って倒して、投げ飛ばして、また投げる。

 長瀬の闘争本能が激化し、デルタのパワーが父親だったオルフェノクを殴って運ぶ。

 草加の目にも見える位置にまで、父親だったオルフェノクは殴り飛ばされていた。

 長瀬の激昂が、草加に一つの理解を与える。

 

(デルタの凶暴性、攻撃性……そうか。

 こういう発現の仕方をしていたのか。

 『否定すべき親』への過剰な攻撃性……これが長瀬裕樹の心に根ざした、闘争の根源!)

 

 デルタはシステム上、人間の闘争本能を引き出し、一部の人間はその後遺症として凶暴化と依存症を発症してしまうことがある。

 長瀬の場合、デルタのシステムは『親の否定』に関する闘争本能が引き出される形になっているようだ。

 長瀬の攻撃性は、『子供の敵』『悪しき親』にのみ向けられ、その分だけ極限まで濃縮されて発現している。

 それが、草加に長瀬の本質を理解させていく。

 

「さっきまで、さっきまで! 生きてたんだよ……千尋はよぉッ!」

 

 デルタの拳が、父親であったオルフェノクの強固な表皮を破壊し、その奥の骨格にまで深いダメージを浸透させていく。

 殴れば殺せる。

 デルタの拳は、それ単体でナイフを遥かに凌駕する凶器だ。

 あと数回、あと数回殴れば殺せる。

 

「やめて!」

 

 なのに、その拳は止められてしまう。

 

「おとうさんをいじめないで!」

 

「は、あ? 千尋? お前……今、殺されたはずじゃ」

 

 停止する長瀬の思考。

 

「長瀬ぇ! その子はもうオルフェノクだ! 迷うな! 殺せ!」

 

 思考を動かす草加の叫び。

 

「ね、おにいちゃん、わたしをうけいれて。

 もうたたかうのやめて、さっきのすがたにもどって?

 わたし、ちゃんとおにいちゃんをオルフェノクにできるよう、がんばるから」

 

「……お、まえ……何言って……」

 

「オルフェノクになれずにしぬか。

 オルフェノクになっていきるか、ふたつにひとつ。

 オルフェノクになって、いきのこれたらいいよね。

 でもどっちでも、にんげんはやめられる。それはとってもすてきなことだよ」

 

 長瀬が銃を抜く。

 オルフェノクに変わってゆく千尋の顔に銃を向ける。

 引き金に指をかけ、歯を食いしばる。

 だが撃てない。

 両生類のオルフェノクと化したその顔は、人間だった頃の千尋の面影なんてどこにもないのに、銃口は震え、引き金にかけた指は動かない。

 

「だって、にんげんのまま、いきていてもしょうがないじゃない。

 オルフェノクになれず、にんげんのままいきていても、いみがないよ」

 

 長瀬は見た。

 許せないものを見た。

 殺せないものを見た。

 生まれてはならないものを見た。

 オルフェノクという存在が罪である理由の根幹を、ここに見た。

 

 震える銃口が自然と敵でなく、地面に向けられる。

 

「千尋ちゃーん、先生がプリント届け……え?」

 

「あ、みんな。ともだちだもんね、わたしたち」

 

 十数人の女の子達。

 その子達の不運は、千尋と同じ学校に通っていて、千尋と同じクラスで、学校の先生にプリントを届けてと言われたこと。それだけだった。

 何の罪もない千尋と同い年の子供達が、千尋の後ろ姿だけを見て、近寄ってしまった。

 近寄ってしまったから、もう逃げられない。

 

 一息の間に、十数人の小さな女の子達の心臓に穴が空く。

 千尋がオルフェノクの触手を彼女らの心臓に突き刺したのだ。

 オルフェノクになれれば生還。

 なれなければそのまま即死。

 悲しいかな、この十数人の女の子達にオルフェノクになれる者は居ない。

 

「やだ、やだ、なに、これ」

「やぁぁ……あああああ!?」

「おとうさん……おかあさん……なに、なに、苦しいよ……」

 

「いっしょに、みーんないっしょに……わたしと、みんないっしょに……」

 

「千尋ォ! やめろ! ……やめろぉッ!」

 

 千尋は心臓に穴を空け、心臓を燃やした。少女らの苦痛は想像を絶するものだろう。

 小さな女の子達が、苦しみ悶え涙を流しながら灰になっていく。

 長瀬は千尋の罪を見て、殺さなければと思い、その額に銃を当てる。

 撃て。

 撃たなければ。

 そう思うのに、彼は撃てない。

 止められない。

 殺せない。

 こんなになっても、長瀬は撃てない。

 加害者の化物になってしまったその少女が、親に殺された哀れな子供である限り。

 

 胸痛み心俯くデルタの背後に、父親だったオルフェノクが、気配を消して接近する。

 

《 Exceed Charge 》

 

 そのオルフェノクの胸部を、背後からのカイザの一撃が吹き飛ばした。

 カイザのパンチングユニットから放たれる必殺の一撃、グランインパクトである。

 

「……あ?」

 

「よくも夫を!」

 

 父親だったオルフェノクは死に、母親だったオルフェノクが、カイザにズタボロにされた身で襲いかかる。

 

「誰が何と言おうが俺は言い続ける。オルフェノクは生きているだけで悪、だとな」

 

 カイザは手にした銃剣を操作し、母親だったオルフェノクの口の中に銃口を突っ込み、十二連射の一斉発射。

 濃縮フォトンブラッド弾がオルフェノクの体内を高熱と猛毒で破壊し尽くし、その命を死に至らしめた。

 父と母が灰となって崩れ去るのを見た千尋は、狂乱してカイザへと飛びかかる。

 

「おとうさん……おかあさん……うあああああああっ!」

 

「よくないなあ、そういうのは」

 

 カイザは余裕たっぷりに、ただ圧倒的にそこに在り、すれ違いざまに銃剣一閃。

 

「君は人間の心を失っている。

 なのに生前の、人間だった頃の自分の真似をしている。そういうのがいけないんだ」

 

 銃口を上げられないデルタの前に、切り落とされた千尋の首がゴロリと転がる。

 

「友達だった人間を殺しても何も思わなかったくせに、人間のフリをするんじゃない」

 

 その死体も人間ではなかったがために、青い炎に焼かれて消えた。灰となってただ消えた。

 

 後には何も残らない。

 

 中村千尋の、人間だった頃の心でさえも、とっくに消えて残ってはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長瀬は灰になった子供達を見て、灰になった両親を見て、灰になった千尋を見て、拳を砕きそうなほどに強く地面を殴った。

 

「なんだよ……なんだってんだよチクショウ!」

 

 草加は手をウェットティッシュで拭きながら、憎悪と嫌悪を顔に浮かべる。

 憎悪と嫌悪はオルフェノクだけに向けられており、むしろ長瀬には同情に近いものが向けられていた。

 

「死んで、死んだままでいられないやつが居たからだ。だからこうなってる」

 

 苛立ち。自虐。何かに対する全否定。

 草加は長瀬の迷いに、草加なりの答えを与えようとしていた。

 

「死んだままでいればよかったんだ!

 あの子の親も、人間だった頃は違ったはずだ!

 怪物になどなりたくはなかった!

 怪物になって、娘を殺したくなどなかった!

 愛する娘を怪物になんてしたくなかったはずだ!

 それがどうなった? このザマだ!

 人間の心は怪物の心に食い尽くされ、見るも無残な有様だ……これがオルフェノクだ!」

 

 草加は信念をもってオルフェノクを差別する差別主義者だ。

 彼の中にはオルフェノクを全否定する道理があって、オルフェノクは皆殺しにすべきという論理があって、オルフェノクの全否定こそが摂理に沿っているという確信がある。

 

「オルフェノクは消えやしない。

 奴らは人間が死ぬ生き物である限り、永遠に発生し続ける。

 だからこそスマートブレインは許せない。

 オルフェノクで構成され、オルフェノクを影で操る奴らを倒さなければ、悲劇は続く!」

 

「……スマート、ブレイン」

 

「長瀬、君も見ただろう。アレがオルフェノクだ。

 ああいうオルフェノクを、スマートブレインは支援し守っている。

 まるで癌細胞のようだよなあ、オルフェノクは。

 発生すれば宿主(じんるい)を弱らせる。正常な細胞(にんげん)癌細胞(オルフェノク)に変えてしまう」

 

 今の戦いは、自然発生するオルフェノクという脅威を、スマートブレインというバックアップ組織が強大化させていることで発生している。

 スマートブレインを倒さなければ、この戦いをひとまず終わらせることすらできない。

 草加はそう確信していた。

 癌細胞なら、誰かがそれを切除することが必要である。

 

「オルフェノクは死んだ人間だ。

 死んだ人間が蘇り、生きている人間を殺す。

 死に損ないが死を広げていく。

 真理も三原も何も分かっちゃいない。あんな化物は他に居ないということを」

 

 もしも、死者が全てオルフェノクとならず、そのまま死んでいたらどうなっていただろう。

 オルフェノクが生まれたおかげで救われた人の総数と、オルフェノクが生まれたせいで死んだ人の総数はどうなるのだろう。

 ……単純に数だけで見れば、きっと後者の数の方が多くなる。

 

「オルフェノクと人間の共存なんて不可能だ。

 単純な性能差以上に大きな問題がありすぎる」

 

「……草加がそう思ってるだけで、まだ分かんねえだろ」

 

「いい加減目を覚ませ、君も人間だろう! オルフェノクとは違うんだ!」

 

 長瀬は感情面で言えば、照夫の味方で、木場の理想の方に賛同している人間である。

 だから何か言い返そうとした。

 けれど何も言い返せなかった。

 

 千尋という女の子であった灰が、まだ手の平にこびりついていた。

 

 

 

 

 

 草加のサイドカーに乗せてもらって、長瀬は思考する。

 

(きっついな)

 

 久々に胸が苦しくなった。

 懐かしい胸の苦しさだ。昔は長瀬も、千翼とイユの二人を見守っていた時には、ずっとこの気持ちを抱えていた。

 

(千翼……お前も、こんな気持ちだったのか?)

 

 生きていてはいけないんだ、と皆が千翼に言った。

 分かりやすく丁寧に、千翼が生きていてはいけない理由を本人に告げた。

 大人の正論の積み重ねに対し、子供な千翼は正論で返すことができず、自分が生きていてもいい理由を捏ねくり回すこともできなかった。

 その時点で、一般的な正当性は千翼を殺す大人にある。

 

 けれど千翼は、その上で『それでも俺は生きていたい』と叫んだ。

 

(千翼。俺に、『それでも』と言う勇気をくれ)

 

 いいのだ。それでいい。『それでも』と言う権利は誰にでも許されている。

 草加に何を言われてもいい。

 人間がオルフェノクを滅ぼすことにどんな正当性があろうとも、それに従う義務はない。

 『それでも』と言えばいいのだ。

 それでも別の道があると俺は信じたい、理想が叶うと信じたい、と心の中で言えばいい。

 

 乾巧も、海堂直也も、きっと多くの悲劇を見た上で、木場の理想を信じて進んでいるのだから。

 

「それでも、俺は」

 

 長瀬の手の中のデルタギアが、やたらと重く感じられる。

 

 ファイズは選ばれたものにしか使えない。

 カイザは選ばれた者以外が使えば死ぬために、死と戦わねばならないベルトだ。

 そしてデルタは、選ばれた者以外が使えばその心を狂わせるために、己の心と戦わねばならない宿命を持つベルトである。

 長瀬は戦わねばならない。

 他の何でもなく、己の心とだ。

 

 でなければきっと、生かすも殺すも、守るも戦うも、いつも何も選べはしない。

 

 握られたデルタのグリップが、長瀬の握力に小さな軋みを上げた。

 

 

 




 流星塾生は父親(花形)大好きっ子しか居ないので、長瀬とは微妙なところで気が合わない元塾生が多いものの、母親の愛に飢えてる草加と親の愛に飢えてる長瀬は奇跡的に相性がそこまで悪くないというワンダーセット
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