導きの旅路で。   作:アリーナ

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物語の始まり

 

ーー此処はリゼンブールの東、

アメストリス村。

 

 

 

のどかで穏やかなその村は今日も朝日に照らされ、木々や湖を美しく光らせている。

 

そして少々冷え込んだ川辺の空気の中で、ゆったりと寝息を立てる金髪の少年が一人。

 

 

 

僕は小さく溜め息を吐いて金髪の少年… 。兄であるエドワード・エルリックの元へ歩み寄った。

 

 

 

 

「兄さん、

こんな所で寝てると風邪を引くよ?」

 

 

 

ガシャガシャと鎧の厳つい音を響かせながら揺さぶれば、ゴシゴシと目を擦りながらノロノロ身を起こす。

 

 

 

「…ンだよアル…。

人が気持ちよく「朝寝」してたってのによ〜…。」

 

 

「寝るなら家のベットで寝なよ…。それに朝から勝手に出歩いたりしちゃ駄目だって!ウィンリィがカンカンに怒ってたよ?」

 

 

 

兄さんは僕の言葉に「ウェッ」とあからさまに嫌そうな顔をして再びゴロリと転がった。

 

 

 

「ちょっと兄さん……!」

 

 

「ったく、アルもウィンリィもばっちゃんも心配し過ぎなんだよ……。リハビリは順調なんだし外に出るくらいはなんて事ないだろ?」

 

 

「順調って言ったって、何も病み上がりに無理してリハビリする事無いじゃないか!!最終調整が済んでないうちは身体への負担も大きいんだし……。」

 

 

 

そう…実の所兄さんは昨日の夜まで高熱を出して寝込んでいたのだ。『唯でさえ危なっかしいのに病み上がりにリハビリなんてとんでもない‼︎』と昨日ウィンリィやばっちゃんに止められていたのだが、朝起きて見ればベットはもぬけの空。慌て探しに来て見れば本人はリハビリを終えて川辺で朝寝をしているのだから驚いた。

 

 

 

「……兄さん。焦る気持ちはわかるけど、本来三年かかるものを一年で済まそうとしてる時点で大変なんだ。これ以上無理してたら元の身体を取り戻す前に生身の体が壊れちゃうよ?」

 

 

 

兄さんは僕の言葉を解ってくれたのか否か、ぼんやりと空を見上げたまま、何処か遠くを見ていた。

 

 

 

 

ーーやがてゆっくり目を閉じて、

ぽつりと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

「……自分を労わる暇があるなら、

俺はその分前に進みたいんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

次に僕の鎧の身体と自分の手足をじっと見つめ一瞬自嘲気味た笑いを浮かべたが、すぐにいつも通りの空笑いに戻った。

 

 

 

 

「身体を失ったのは俺達の…、俺の自業自得だ!!無理でも何でも踏ん張り続けるっきゃないからな!」

 

 

 

「……兄さん…。」

 

 

 

 

兄さんは金髪を揺らしながら「よっと!」と起き上がり、腹が減っただの、ウィンリィにまたスパナを投げられるだのぼやきながら家路を急いで行く。

 

 

 

 

 

(……ほんと、何時も無理して……。)

 

 

 

 

 

本人は上手く隠してるつもりなのだろうが、強がってる時の癖くらい僕やウィンリィにはすぐ分かる。

目を少し瞬かせて、

まるで涙を散らしてるみたいに。

 

 

 

(兄さんが目的の為に自分の身を削るって言うなら、僕は……。)

 

 

 

 

 

 

せめて隣で、その背中を守れるように。

 

 

 

 

 

僕は何となく伸びをすると、兄さんの後を追おうと立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

ーーその時。

 

 

 

 

 

「おい、アンタ大丈夫か⁉︎しっかりしろよ!おい!」

 

 

 

 

近くで兄さんの大声が聞こえ、慌てて駈け出すと反対の川辺に銀髪の青年がグッタリと倒れているのが見えた。

 

 

 

「!?兄さんその人どうしたの…⁉︎」

 

「わからねぇけど酷い熱だ!!アル、ばっちゃんの所に運ぶぞ!!」

 

 

 

僕は頷くと青年を抱き上げ、ロックベル家に向かい歩みを進める。気を失っているらしい青年は苦しそうに息をしていたが、その苦痛の表情を見ていた僕は何処か違和感を感じた。

 

 

 

 

(……なんだ?何なんだろう、

この感じは一体…?)

 

 

 

しかし違和感の正体はすぐ目の前まで来ているようなのに掴めず、歯痒さにおかしくなりそうだ。

 

確かめるかの様に兄さんの顔を見れば、兄さんも僕の顔を見て小さく頷く。

 

 

 

「アル……お前も感じたか?」

 

 

「うん…よくわからないけど何だかおかしいよ、この人……」

 

 

兄さんは険しい顔つきで考え込んでいたが、やがて何かを思い出したかの様に表情を凍らせる。

 

 

「兄さん?何か解ったの⁉︎」

 

 

 

 

「……の、…………ゃ…か。」

 

 

 

兄さんは僕の声が聞こえているのかいないのか、魂が抜けたかの様な真っ青な顔をで何か呟いた。

 

 

 

「…?聞こえないよ、兄さん何て言ったの?」

 

 

 

その瞬間ハッと正気に戻った兄さんは、作り笑いを浮かべて「何でも無いから気にすんな!」と誤魔化し話を逸らす。

 

 

 

「そんな事より取り敢えず急げ!!もうウィンリィん家はすぐそこだ!」

 

 

「あ……うん!!」

 

 

 

 

 

走るスピードを上げる僕達だが、胸の内にはまだ得体の知れない違和感が巣食っていて。それはまるで、キツく締め付けられた記憶を何とかこじ開けようとするかの様で、その感覚は僕に不思議な確証を生む。

 

 

 

 

 

 

(この人はきっと………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕達の行く道に、

共に影を落とす人なのかもしれないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









ハガレンの集合絵描いてみました!

多分「その他」の画像のところから見られるのでよろしければご覧下さい!アドバイス、指摘、評価など頂けると有り難いです!






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