………まただ
私はまた、あの不思議な揺らめく空間にいた。
前と同じように、私は虚ろな姿だ。
そして周りでは、光源から光が湧き出て、
周りを漂い、私の中に入って行く。
前と違うことは、意識が前よりはっきりしていること。眼前に起きている現象を認識できること。
虚ろだった私は、光が中に入っていくごとに、
その姿形が鮮明になる。
この光は一体………?
「………はっ……」ガバッ
「おっ、今日はお目覚めが早いねぇ」
先程まで、不思議な現象を目の当たりにしていたはずの私は眼を開ける
あれは夢だったの…?
先程までの出来事を見ていたはずの眼は閉じられ、
謎の場所では起きていたはずの身体は横たわっている。
しかも、意識が鮮明だったせいか、この違和感が何とも言えない不快感となり身体に纏わり付いている。
「うっ………」
頭がぐらつく
少し、気分が悪い。
「…もうちょっと横になったら?」
木の言われるがまま、私は横になる
差し込む日差しに、私は手をかざした。
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「じゃあ、今日はもう帰るね」
「大丈夫?1人で帰れる?一緒に行こうか?」
「馬鹿にしないでよ…
って木って移動できるの!?」
「いや?言ってみただけ」
「……………」ジトー
「悪かったって、じゃあまたね」
「………またね」ムゥ
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私は、幽香さんの家のある向日葵畑へと足を踏みいれようとした時、1人の女性が向こうから歩いてくるのを発見した。
近づいてくるにつれ、その人の格好が見えてきた
金色の髪にカチューシャをつけ、服は青いドレスの上に白いケープを羽織って赤いネクタイをしている。そしてその隣には…同じ格好をした小さな人の形をした何かが宙ふよふよとに浮いている。
じっとこちらを見る私に気づいた女性は、こちらに近づくと声をかけて来た。
「こんにちは、何か用かしら?」
「あ、いえ ごめんなさい。
此処に人が来るのを見たのは初めてだったので…」
「そうだったの、まぁ確かに不用意に近づこうとするのは居ないものね」
そ、そうなのか…綺麗な花畑なのに…
勿体無いなぁ………
「失礼しました、じゃあ私はこれで」
女性にそう言って、横を抜けて私は花畑に足を踏みいれようとした
突然、先程の女性に腕を引かれた。
「へ?」
「ちょ、ちょっと、何処に行く気?」
いきなりだったので、女性の言った言葉の意味が理解できなかった。
「貴女、この辺じゃ見ない顔だと思ったけどまさかあの風見幽香の事を知らないわけじゃ無いわよね?」
「へ?幽香さん?知ってますけど…」
「じゃあなんでわざわざ消されるような事をするのよ!?」
「へ?、え?」
「知らない貴女でも、黙って見殺しにするのは私だって寝覚めが悪いわ」
「ちょ、ちょっと待ってください?何か勘違いしていらっしゃいませんか?」
「だからそんな事は考え直し…え?」
「そ、そうだったのね…ごめんなさい、勘違いしてて」
「誤解が解けたみたいで良かったです」
どうやら納得してもらえて何よりです。
どうやら彼女はアリス・マーガトロイドという名前で幽香さんに用事があってここに来ていたらしい。
そしてにわかには信じがたいのだが、幽香さんはここら辺では恐れられている大妖怪で、自分の花畑に侵入しようものなら問答無用で襲う…らしい。
アリスさんは、それで私がわざわざやられに行ってるように見えたため引き止めたとのことだ。
「本当にごめんなさいね…どう見てもか弱い女の子にしか………」
「い、いえ、事実ですし、心配して頂いていたのは十分伝わりマシタカラ……」
「なんで片言なのよ?」
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アリスさんと別れて、再度花畑の中を進み、幽香さんの家に着いた。
「ただいまです……」
「おかえり…なんか暗くない?」
「キノセイデスヨ」
「なんで片言なのよ…ほら晩御飯作るから手伝って」
「あっ、はい」
このあと、2人で今日はシチューを作った。
トロトロに煮込まれた野菜とホワイトソースに舌鼓を打ちつつ、お互いの今日の出来事を話した。
「そう言えば、今日アリスさんが幽香さんの家から帰ってくるように見えましたけど、何か用事でもあったのですか?」
「あぁあれね、実は今日人里に行った時にあの魔法使いに会ってね、なんでも調合に必要な薬草を探していたらしいのだけれど、人里に無くて困ってたから私のところで分けてあげあげたのよ。 というか、花畑であの魔法使いに会ってたのね」
「家に向かおうとしたら止められたのでびっくりしましたよ… そう言えば幽香さん、アリスさんが言った事ってどういう事なんでしょう?」
「あぁ、そのまんまの意味よ。
私の大切な庭に踏み入る不埒な奴らは蹴散らしているだけよ」
「………」ガタガタガタガタ
「…最近はちゃんと確認してるわよ」
「その前は問答無用って事じゃ無いですかー!」
こんな事を言い合いながら、
私たちはシチューを平らげ、夜は深まって行った。
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「…………」
「シャンハーイ?」
「あ、ありがと上海
あの子、不思議な子だったわね……」
「シャンハーイ」
「そうね、また会いに行ってみましょう」
「シャンハーイ」
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木との稽古が始まり数日後
私はいつも通り朝ごはんの準備をし、出かける準備をする。
前に朝ごはんを褒められたのが嬉しかったので、朝は私が作るようになった。
2人で朝ごはんを食べていると
「そういえば貴方ってあの木に稽古付けられてるんだってね」
「えっ」
朝から唐突の重大発表
まさかの幽香さんと木は知り合いだった。
誤魔化さなくてもよかったのか…
まぁこれから出かけるのが少し気楽になると考えればなんも問題はないかな。
「その木から伝言で、今日と明日は稽古はやらないそうよ。 あの木曰く、
「時には休息も必要よね、まぁただ遊びに来たいっていうなら構わないけど?」
…だそうよ」
「は、はぁ…」
そして重大発表の後は、暇を出されてしまった。ただの週末みたいなものだろうけど。
…どうやって連絡をとってるんだろう?
「あ、後私は用事があるから家を開けるわね。だから今日明日は自分で訓練しなさい」
「自主練…ですか」
今日だけでなく、明日も幽香さんがいないのか。
それほどかかる用事って何なのだろうか?
気になりはしたが、わざわざ伏せて用事と評して言っているということは聞かれたくはないと思うのでグッとこらえる。
あとは…
「あ、あの…具体的に何をすれば…?」
「自分で考えなさい」
…今日の幽香さんはちょっとドライで厳しめだ。まぁ居候させてもらっている上に一応師匠だし、その言葉に従っておく。
「じゃあ私は行ってくるわね。ご飯は…自分で作れるわね」
「わかりました、行ってらっしゃい」
そうして太陽の畑の主は、日傘をさしながら黄色い絨毯の合間を縫い、消えて行った。
1人残された私は、お昼用のお弁当を作りはじめた。天気もいいし、折角なのでお昼も外で食べてしまおうという寸法である。
作ったお弁当を携え、私も外へと繰り出した
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「………………」
私は向日葵の花畑を抜けた先にある草原にいた。
少し歩いた先にちょうどいい高さの岩があったので、腰掛けてまずは木との修行の復習からすることにした。
と、言っても木との修行はただただ何もせず佇むというものだったので(恐らく)精神統一とか心頭滅却とかそういうことだと思う。
…うん、何せ今までそんな事やった覚えも無いからこれが適切な表現なのかも、行為なのかも分からないが。
それっぽい座り方をし、目を閉じて極力何も考えないようにする。
「………………」
太陽は程よく照りつけ、小鳥たちは囀り、そよ風は周りの草木で音を奏でる。
恵まれている環境の中、佇む少女が思うことといえば
普通修行ってもっと過酷な場所でやる物じゃないのかな…?
そんな平和な考えだった。