そこで待ち受けているものとは…
今回もお楽しみいただければ幸いでございます。
長い渡り廊下を咲夜さんと歩いて行く。
「……………」
「……………」
ど、どうしよう何話したらいいかわからないからすごく気まずい………
「………どうしたの?」
「へ?」
「いや、さっきからずっとこっち見ていたから……」
「あっ…すみません…」
無意識のうちに私は咲夜さんを凝視していたらしい。ここで何か切り出さなければもっと気まずくなる………何か……何か話題はないのか…?
「藍里……だったわよね?」
「あ、はいそうです」
そんな難儀に頭を悩ませていると、咲夜さんから話しかけてきた。
「貴女は……妖怪なの?」
「…………うーん……どうなんでしょう…」
「えぇ……」
元は青い薔薇だったらしいので、人ではないのだろうきっと。でも自信もないので濁しておく。
「…急にどうしたのですか?」
「いえ…ちょっと気になって、あ ついたわよ」
いつの間にか、目の前には両開きの大きな扉が鎮座していた。
重そうな扉が音を立て、従者によって開かれる。そこには、薄暗い空間に枠組みには収まらないほどの木製の棚がそびえ立つ。
「わぁ………」
「パチュリー様はこの奥でございます」
咲夜さんは手を揃えてお辞儀している。
「は、はい…」
緊張感と、少しの好奇心に揺られて歩みを進めた。
・
・
・
大図書館と呼ばれるこの場所は、その名にふさわしく見渡す限りに本が陳列されている。
それのどれもが整理されているように見えた。
あくまで見えるだけで背表紙にはなんて書いてあるか全く読めない が、同じような文字が続いている本が並べられているので整頓はきっちりされているのだろうと勝手に解釈する。
怖いくらいに静まり返っている大図書館を歩いて行く。通路にはまっすぐカーペットが敷かれ、その上を歩いているせいか足音はほとんどしない。
……誰かいるんだよね?、これ
「あれ、お客さんですか?」
「うひゃぁぁぁ!?」
「うわぁ!?」
誰か、いました。
「だ、大丈夫ですか…?」
「だ、大丈夫です」ドキドキ
正直すごくびっくりしましたはい。
声をかけてきた女性は白のワイシャツに執事が着ていそうな黒のノースリーブの燕尾服、そして黒いロングスカートを着、赤いネクタイを身につけた女性だった。
普通と違うところは頭にも背中からも蝙蝠の羽のようなものが生えていること。
「パチュリー様に御用でしょうか?」
「えと…はいそうです」
「そうでしたか、驚かせてごめんなさい
ここの司書を勤めている小悪魔と言います」
「こちらこそ驚いてごめんなさい……
藍里です」
「藍里さん、ではこちらに」
小悪魔さんに案内され、さらに大図書館の奥へと進む。
すると奥に、薄ピンク色のゆったりとした服装をした紫髪の女性が見えてきた。
・
・
・
「…………」
「……………」
ガチャ
「ただいま戻りました」
「咲夜か」
藍里を送り届けた咲夜が部屋に戻ってきたが
その顔は少し曇っている。
「お嬢様…彼女のことですが…」
「あぁ……私ももう少し詳しく聞こうと思ってな…」
そう言うと、主人と従者は向きなおった。
ガチャ
扉に向かって
「何処に行ってたのだ? ルーミア」
「ちょっとね…調べ物」
「…チルノのことね」
「まぁ…そう言うこと」
問い詰めると、あっさりと理由を吐く。
妙によそよそしく、ルーミアはこちらを見ようとしない。
「それで? 何がわかったのかしら?」
「…………何も………」
小さな声で、ぽつりと言う。
「そう………」
「で、でも彼女はそんな事する子じゃない!!」
俯いていた彼女は、力強く言い放った。
「だから……わからない」
彼女とチルノは長い付き合いだ。
仲もそれなりにいいことは誰もが知っている。
だからこそ、あんな事をしたのを信じられないのだろう。
「チルノは…あの日のことを何も覚えていなかった…」
「…………」
途切れるルーミアの言葉。
誰もが答えぬその状況に空気が重くのしかかる。
「ルーミア」
私が彼女を呼びかけると、何を思ったのか
見てわかるほどに体をビクッとさせた。
「はぁ……別にどうもしないわよ
ただ…」
「ただ…?」
「その甘さが、人を救うことも、自らの首を締めることにもなるわ、気をつけなさい」
私はルーミアの頭にポンと手を乗せて部屋を去ろうとした。
「ちょっと、何処行くの?」
「ちょっと用事ができてね、どうも身内は自衛に疎いみたいだから」
「いいだろう、外出を許可する」
「お嬢様、よろしいのですか?」
「えぇ、但し暮れまでには戻ってきなさい」
「気が向いたらね」
「行っちゃった…」
「さて…身勝手なメイドの埋め合わせをしなければな咲夜よ」
「えぇそうですねお嬢様」
「ねぇ…どうして2人してこっちを見ているの?」
・
・
・
「パチュリー様、お客様です」
「ん、ご苦労様、あそうだ小悪魔 悪いんだけどついでに紅茶入れてきてもらえるかしら」
「わかりました」
小悪魔さんは頼まれたとうり紅茶を淹れに部屋を出て行った
「さて…貴女がレミィが言ってた子かしら」
「恐らく合っていると思います……藍里です」
彼女、パチュリーさんは、開いていた本を閉じ、こちらを向く。
「パチュリー・ノーレッジよ、よろしくね藍里、あの我儘吸血鬼に色々言われるのよ、貴女に色々教えるようにね」
「そうなのですか…」
「じゃあ早速なのだけれど…」
すると一冊の本が差し出される。
「これは………?」
渡されたのは
知らない言語で書かれた題名が書かれた真っ白な本だった。
受け取った本をひっくり返したり背表紙を見たりと、ほんの全身を見てみた。真っ白な、どこを見ても絵も何もない本だった。ただあるのは読めない題名だけ
「そんなに眺めてどうしたの?もしかして本を見るのは初めてだったかしら?」
「いえ、本は見たことありますけど...こんなにも何もない真っ白な本というのは初めてなもので...読んでもよろしいですか?」
「いいわよ、読めるのならね」
...?
何を企んでいるのかパチュリーさんは、少し悪戯っぽく口元を緩ませた。
疑念を抱きつつも私は真っ白な本を開く。
....?
めくれどめくれどページは白紙ばかり。確かにこれでは本は読めない。
いや、それを見越してこの本自体を"読め"というのだろうか。
「パチュリーさん...?」
「さぁ、貴女はどんな答えを出すのかしらね?
ヒントはいくらでも出してあげるから頑張りなさい」
「は、はぁ...」
「パチュリー様、藍里様、紅茶を入れてきましたよ」
「さて、まずはお茶にしましょうか。 レミィが興味を持つほどだから私も興味があるわ」
少女対談中…
・
「へえ...青い薔薇...」
「私青い薔薇なんて見たことないです」
「
「...えぇ、このあたりじゃ見かけないわね」
私の幻想郷での出生話を紅茶の肴に大図書館でお茶会は進行する。
「植物系の妖怪なんですかね?」
「そんなのもいるのですか...?」
「珍しいことには珍しいけど...鈴蘭の妖怪だっているしいないことはないわね」
鈴蘭というと...あの白い小さなつぼ型の花が連なっている植物のことだったっけ...
実際に見たことないけど、幽香さんの育てている中にいるかもしれないから今度見せてもらおう。
そういえば...
「お二人は妖怪なのですか?」
「あぁ、そう言えば言ってなかったわね。 私は妖怪じゃなくて魔法使いにあたるわ」
「魔法使い...」
そういえば幽香さんに話を聞いたとき魔法使いが
「小悪魔は私の使い魔よ」
「使い魔...道理で悪魔っぽいわけですね」
「悪魔っぽいって初めていわれたかもしれないです」
「え」
こんなにも悪魔っぽいのに、言われたことがないとは...
この世界の基準がよくわからなくなってきた。
あ、でもレミリアさんも蝙蝠の羽生えてたし、そんなに珍しいものではないのだろうか?ごく一般の生活を送ればまずないけれど。
「レミィは吸血鬼よ」
「...なんでわかったんですか」
「そんなこと考えてそうだったから」
「...」
「貴女は表情の練習もしとくといいかもしれないわね、相手に与える情報は少ないに越したことはないわ」
「ぜ、善処します」
小悪魔さんが横でくすくす笑っているのが視界に入り、頬を膨らませる。
...そんなに
確かに表情の練習をしたほうがいいかもしれない。周りに意味もなくニコニコとふるまってもいいことなど1つもありやしない。どうせ互いに仮面の表情で相手の腹の内を探り合い、隙あらば本性を現し、蹴落とす。
所詮、ヒトなんてものは自分しか信用してはいけないのだ。利用するだけ利用し、用が済んだら自分の足枷になる前に切り離す。ヒトとの関わりなど
カカワリ...ナンテ...
「...ぃ...藍里?」
「...はっ!」
「...大丈夫ですか?」
「は...はい...」
「さて...そろそろ始めましょうか」
そういうと、パチュリーさんは持っていたティーカップを机に戻し、目線を白い本へと向ける。その視線の意味を自分なりにくみ取り、本を手に取り再度開いてみることにした。
そういえば、私はさっき何を考えていたんだっけ...
珍しくぼーっとしていたのだろうか。
まぁ思い出さないということはさほど大切なことではないのだろう。
そうして私は本を開いてみる。
すると、最初のページに火で炙り出したような、焦げ茶色の文字が一片書かれている
「
先ほどまでは、このような記述はなかった。
つい、生前の知識から英文をすらりと読んでしまう。
すると、次から次へと文字が焼きあがってゆく。
実際は本から熱を発するなどありえないのだが、見た目の情報がほんのり本から熱量を感じさせる。
次第に目に見えた変化は収まったので、またパラパラと本をめくってみる。
どのページにも記述が増えていた。真っ白なページは1ページもない。
背表紙まで見終わり、閉じる。
「どうやら英語なら読めるようね」
「そ、そうみたいですね...」
先ほどの安直な行動に、苦しい同意をする。
「まぁ、それはいろいろと役に立つはずよ、読んでおきなさい」
「ありがとうございます」
どうやら追及はされなかった、ほっと胸をなでおろす。
そうして私は、近くの椅子に座り直し、再び本を開き、読み始めることにした。