このところずっと寒いのでカイロを手放せないです…
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パチュリーさんに渡された不思議な"白い本"。
何も書かれていなかった本だが、藍里が呪文を唱えると内容が浮かび上がったので、藍里はそれを読んで見ることにした。
今回も楽しんでいただければ幸いでございます。
本を読み始め彼此5時間ぐらいはたったのではないだろうか。此処には外に通づる窓がないので外の様子がわからないため正確な時間はわからないけれど随分本に集中していた気がする。
その証拠に、ふと気がついて目線を本から離すと、どっと疲労が押し寄せ持ち上げた頭が落ちそうになる。
どうやらそんな状態になるまで私はこの"白い本"を読み漁っていたようだ。本に集中していたのもあるのだが、本に書かれた言語、異国語を解読するのに手間取った事が長引いた原因だと思う。ある程度読めるとはいえ、やはり訳して文脈を理解するという二重のプロセスで時間も労力も二倍かかってしまう。
…いやそんなことより
さっき本を読んでいた時に視界の隅に一瞬映った黄色のヒラヒラは何だったのだろう?
一瞬とらえたその物体の正体をつかもうとして私は読書を中断し頭を上げたのだけれど、それらしきものは見当たらない。
気のせい…かな…
そう思い、本に眼を再び落とそうとするが思ったより疲れたので再び読み進める気にはなれず一旦本を閉じた。
眼を閉じ、ため息を一つつく。
そのタイミングで、ティーカップが置かれる音が眼前でした。
「お疲れ様、ちょっと休みなさい」
「咲夜さん…有難うございます」
紅茶を差し出して来たのは、咲夜さんだった。
そして彼女はついでと言わんばかりにもう一皿私の目の前に運んで来た。
「…サンドイッチ?」
「貴女何も食べてないでしょ、もう午後3時回ってるわよ」
「そ、そんなに!?」
慌てて時計を探す…
そしてすぐに近くに時計が置いてない事を思い出してきまりが悪くなった。
代わりに私の腹時計が現在時刻を告げてくる
「さ、さっさと食べちゃいなさい」
「あ、ありがとうございます…頂きます…」
本を横に避けて、早速サンドイッチの皿に手を伸ばし咲夜さんが作ってくれたサンドイッチにかぶりつく。一口食べると、みずみずしいレタスに黒胡椒が効いたハムが口中に広がる
「お、おいしい!」
「口にあってよかったわ」
咲夜さんも心なしか私の反応を見て表情に笑みが宿る。
「最近産まれたばかりって聞いてたから何が好きかわからなかったのよ、こんな事なら幽香のでも聞いておくのだったわ」
「すみませんわざわざ、とっても美味しいです」
その言葉を聞くや否や、咲夜さんは目の前から消えていた。毎度思うのだけれど何故眼を離した隙にこうも高速で移動できるのだろう?
そんな疑問が頭の隅で渦巻きながら、私はサンドイッチにパクつく。
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「ごちそうさまでした」
私は咲夜さんにもらったサンドイッチを完食し終え、紅茶カップへと手を伸ばす。
すると、手を伸ばした先にある本棚の影から、またもや黄色のヒラヒラが見えた。
眼を擦りもう一度見てみるが、今度は消えない。
なんだろう…あれ…
ティーカップに伸ばしかけた手を戻し、席を外す。そうして一歩一歩本棚の影へと近づいて行く。
抜き足差し足忍び足、なんとなく音を立てずに近づいてみたくなる衝動にかられ、悟られないようにゆっくりと近づく。
もう少しで本棚にたどり着こうとしていた。
タッ…
「あっ…」
もう少しの所で逃げられてしまった。
少なくとも、あの黄色いヒラヒラは、何かしらの生き物のようだ。まだ見ぬ此処の住人なのだろうか?だとしたらお世話になっているので挨拶しておきたいのだけれど…
「藍里さん、此処で何してるんですか?」
「あ、小悪魔さん…此処の住人って他にもいらっしゃるんですか?」
「他にもって言うと?」
「えぇっと…黄色い…ヒラヒラしたものを身につけている…とか」
「黄色…ヒラヒラ…?」
「私の勘違いなのかな…」
そんな会話を小悪魔さんとしていると、後ろの方から彼女の雇用主、パチュリーさんが声をかけてきた。
「ちょっと小悪魔、何サボってるのよ」
「い、いえ!サボってるつもりじゃ!」
「あ、ごめんなさい小悪魔さん。呼び止めてしまって…どうやら私の勘違いみたいなので大丈夫ですよ」
「そ、そうですか…」
そう、一言断りを入れると小悪魔は抱えた本を奥の本棚へと運んでいった。
小悪魔さんもこころあたりがないと言うことはやはり気のせいなのか…疲れているのかな。
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人間の里のずっと外れ、魔法の森付近の木々に囲まれた一件の古ぼけた建物。看板には黒く大きな字で、
と書かれているお店に私は訪れていた。
ガチャ
「邪魔するわよ」
「おや、君が此処に来るなんて珍しいね」
「今日は依頼したいものがあってね、貴方手先が器用って聞いたから」
「…話を聞こうか」
少女説明中
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「へぇ…"力を増幅"させる装置か…」
「出来そうかしら?」
「出来ないことはないよ、実のところ僕が調節してる魔具があるんだけど、それも同じような原理なんだ」
「…ただ手先が器用って訳じゃないのね」
「それを知ってて僕に依頼したんだろう?
それにしてもなんでまた?君にはそんなもの必要ないだろう?」
「そうね、"私には"必要ないわね」
「例のあの子か?」
「!?」
驚いた、なんでこの店主が藍里のことを知っているのだろうか?藍里は此処らへんをうろついたとは聞いてないし、この店主もこの店から中々出てこないので面識があるとは思えない。
と言うことは藍里のことを言いふらしている輩がいると言うこと。
彼女はまだまともに戦えるような力はない。
今彼女の存在を知られると言うことは格好の餌を周りの飢えた野獣どもに差し出すようなもの
私は気がつくと、香霖堂の店主、森近霖之助の胸ぐらを掴み切迫していた。
「…誰から聞いた」
「ちょ、ちょっと待て幽香、落ち着け」
「もう一度聞く、誰から聞いた」
「わぁ、わかった、話す、話すから離してくれ」
手から力を抜き、霖之助は座っていた椅子へとヘナヘナと落ちて行く。
「彼女のことは妖怪の賢者、八雲紫から聞いたんだよ」
「…んのバカ賢者!」
「勿論意味もなく話したわけじゃないさ、
恐らく彼女の特殊な"出生"について彼女も調べているのだろう」
「…………」
確かに、彼女の出生は特殊で人妖神霊どれなのだかわからない生まれ方をしてしまった。
その特殊な出生の手がかりを探るために、同じとは言わなくとも珍しい種、
「だけれど、流石にこと手の話は詳しくないから力にはなれなかったけれどね」
「そう…」
「さてと、じゃあ早速作業に取り掛かるかな、暫く掛かるから、完成したら知らせるよ」
「よろしくね、私はあの駄賢者に灸を据えて来るわ」
「あんまり手酷くしてやるなよ?君たち思って行動してくれているんだから」
「…考えておくわ」
そう言い残し、軋むドアを開けてこの場を去った。
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私は一旦客間に戻ってベットに寝転がっていた。流石に疲れたので本は明日にし今日はもう休むことにする。
本の内容は、魔法に関する基本理念とその歴史についてだった。初めて踏み入れる世界だったので解読するのと合わせて読むことに難航した。
でも…
私は魔法も何も使えないのにこんなもの読んでなんになるのだろうか?パチュリーさんは「役立つから」と言っていたものの…
「……ぁ〜」
無気力に捻り出す声は個室にこだまする。
今日は頭を酷使したためか、ホワホワと蒸気が頭の中に溜まって思考を阻害する。それとお腹が満たされたのもあってか、眠気の波が私の身体に押し寄せて来る。
次第に瞼が重力に逆らえなくなり、視界が段々と遮断されてゆく。
ズブズブと暗闇に思考が埋まって行き、やがて眠りについた。
・
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ギィィィィ
重々しい音とともに紅魔館のドアが開かれる。
「あら、おかえり」
「咲夜…あの子は?」
「客室で眠っているみたいね、掃除しようとしたらベットに横たわっててびっくりしちゃった」
「そう…じゃあこれ、うちで取れたやつ」
「?…野菜?」
「泊めてもらったお礼よ、あの子も目を覚ましたし帰らせてもらうわ 暫くは通わせるからこれでいいでしょう?」
「え、えぇ………急ね」
「またあんな馬鹿げた事やらされても困るわ」
そう、言い放つと咲夜の顔がニヤける
「中々似合ってたわよ?」
「うるさい」
「…まぁ今日のうちは寝かせておいてあげたら?ぐっすり眠ってるみたいだったし」
「…………わかった、じゃあ私は帰るわ…あ、一つ言っておくけれど」
「何よ?」
「いくら客人だからって、門番が無反応っていうのはどうかと思うけれど?」
「…ご指摘ありがとう」
私が焚きつけると、彼女は居眠り門番の元へと駆け出していった。その手にナイフが握られていたことは言うまでもない。
さて…
私dもレミリアに一声かけてうちの寝坊助に置き手紙でも書こうかしら。
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「ん…ぐぅ…ぇぁ…」
なんだか気持ちの悪い目覚めだった。
眠っている間に悪い夢を見ていたわけじゃない…けど…
なんだか不自然で…なんと言うか作られた?と言うか…なんだか眠っている時に感じた情景は気持ちの悪いものだった。
「……ぉぇ」
ちょっと吐き気もする。こういう時は大人しく横になっていたほうがいいのだろうけれどこれは眠っていたのが原因なのでそんな気も起きずに、身体を無理やり起こす。
なんだが頭がフラフラする……なんだこれ…
外の空気を吸おう、この閉鎖された部屋にずっと循環していた空気じゃ悪くなる一方だ…
私は這うように扉に手をかけ、出てすぐ目の前にある窓を勢いよく開いた。
「っぱぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
体内に新たな空気を入れ、古い空気を外へと追いやる。肺に通り抜ける少し冷たい風が気持ちいい。太陽の光がいい感じに風で冷える身体をゆっくり温める。
「気持ちいい……」
先ほどまでの息苦しさは何処へやら。
とても清々しい気持ちで一杯だった。
ってあれ?
「あれは……日の入り?それとも日の出?」
「日の出だ寝坊助め」
声の方を見るとそこには館の主人、レミリアさんがいた。
「…まじすか」
「幽香が帰る時に寝てるとは聞いていたが…まさかそのまま一日中眠っているとはね」
…え?
「一日中…?」
「えぇ、昨日一日中」
「どうりで………」
気持ち悪くなる訳だ。そんなに眠っていれば。
と言うより
「レミリアさんって吸血鬼なんですよね?
朝平気なんですか?」
「陽の光がダメなだけで朝は別に平気よ。
私達は目が覚めた時に活動してるから別に夜にしか起きてないわけじゃないわ」
「そうなんですね…」
私は久々に痛感するした。
此処では先入観で判断してはいけない事に。
「あー、藍里、だったわよね?」
「はい」
「貴女に話があるの、ちょっと来てもらえるかしら?」
「…?わかりました」
優雅にターンし、窓から刺す朝日を避けながらレミリアさんは奥へと進んで行く。私はそれについていった。
少女移動中…
・
「お邪魔します…」
レミリアさんについていき、彼女の自室へと案内された。彼女の部屋は天井付きのベッドに大きなタンスや丸机に細かい装飾の施された椅子…
まさに絵に描いたようなお嬢様の部屋だった。
「なんだその顔は?」
「いえ別になんでもないです」
レミリアさんは少し首を傾げていたが、あまり気にせずに奥にある椅子に私を招いた。
2人で高そうな椅子に向かい合って座る。
「…………」
「…………」
話があると聞いて来たのだが、椅子に座ったのに会話が始まらない。
どうしたのか声をかけようとしたら、どうやらレミリアさんの様子が少しおかしいのに気がついた。悩んでいるのだろうか…?
「れ、レミリアさん……別に今話さなくてもいいのでは?」
「いや…今話すわ」
「そ、そうですか…」
気を利かせたつもりだったが、気苦労に終わったようだ。あまり悩みのなさそうな生活を送ってそうなレミリアさんなのに、こんな部外者の私に悩みとはなんなのだろう?しかも直前になって話すのを渋るほどの内容だ。
「話というのは…私の妹の、フランの事についてなんだ」
なるほど
確かにそういうのは他者を巻き込んでいいものなのかどうなのか悩ましいところだ。
「妹さん…ですか、初めて聞きました」
「えぇ…貴女には意図的に彼女の存在を隠していたからね…」
「はぁ…」
いささか今のは卑怯な聞き方だった。
別にこれから此処で家族同然に暮らす訳でもない赤の他人に家族構成を全て教える義理など存在し得ない。
それでも気になる表現の仕方だった
「あの…"隠す"というのは?」
「あの子、フランは少し危険でね…正確には彼女の程度の能力なのだけれど」
「危険な程度の能力…」
「そういう名称じゃないからね?」
「え?」
「……いえ、なんでもないわ
そしてあの子の能力、フランの程度の能力は……
"ありとあらゆるものを破壊する程度の能力"よ」
「は、はぁ…」
規模が大きすぎてイマイチぴんとこない。
「えっと…それをどうにかしろというのですか?」
「いえそうじゃないわ、というより貴女では手に負えないはずよ」
わかっているがそんなはっきり言わないでほしい。あと何でちょっと誇らしげなんですか。
「あの子はその能力ゆえに、少し精神が安定していなかったのよ…だからそれ故にあまり友達とか…ね…その…」
「はぁ…なるほど…」
「最近ではどっかのお節介が無理矢理でもフランに会いに来てくれるおかげで少しずつだけど明るくなって来たのよ」
「………」
「だから…フランと友達に…」
「嫌です」
「え?」