今回また小説「紅魔館に拾われた少年はゆっくりと暮らしたい」をハーメルンで書いていらっしゃるユキノス様とコラボさせていただき、小説を書かせていただきました。今回も楽しく書かせていただきました。本当にありがとうございました!
今回は私が前半、ユキノス様が後半の内容を担当しております。
「紅魔館に拾われた少年はゆっくりと暮らしたい」は此方から
https://syosetu.org/novel/134555/
それではコラボ小説、お楽しみいただければ幸いです。
「んん…くわぁぁぁぁ………」
狼の如く大きな口を開け、あくびを一つ。
そうして俺、新月霊夜は目を覚ました。
寝起きでふわふわしている頭を持ち上げ、暫くベットに佇む。瞼もようやく起き始め、見慣れた紅魔館の一室を見渡し、窓の方を見やると
もう日が登り切っているではないか。
「………やべ、寝過ごした」
と、飛び起き、着替えを引っ張り出しては自分の羽織っていた寝間着を無造作にに脱ぎ捨てて、部屋を出………
…ると、間違いなく咲夜に怒られるので、
扉の方へ放った腕を引き戻し、服をたたみ収納する。
そうして改めて、俺は部屋を後にした。
廊下に出て、陽の光を浴びながら身体を伸ばしていると
「ようやく起きたわね、霊夜」
「ん…、あぁ咲夜か、おはよう…?」
「もう昼よまったく…」
「ですよね…」
紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が呆れ顔でこちらに向かってくる。
「お腹すいたでしょ?食堂でサンドイッチ出してあげるわ」
「ありがとう、咲夜」
そう言って咲夜は身を翻し、来た道を戻って行く。俺もそれについて行った。
「はい、これ」
「待ってました!」
「大袈裟な…」
お手製サンドイッチを受け取り、食堂にある椅子に腰掛けてを合わせる。
「いただきます」
「どうぞ……そう言えば霊夜」
「ん…?」
俺はすでにサンドイッチを食べ始めていたのでもぐもぐしながら咲夜の方を見やる。
「いや、貴方が寝坊するなんて珍しいと思ってね。どっかの案山子は年中寝てるけど」
そんな冗談交じりに軽く投げ掛けられただけの言葉に妙に引っかかった。
確かにここに来てからあまり寝坊するなんてことはなかった。昨日夜更かししていたら無くもないのだが………あれ?
俺昨日何してたんだっけ?全然記憶にない。
宴会に参加していた…?
いやそんな覚えはない。
フランと遅くまで遊んでたか…?
…これも違う気がする。
次々と、あれやこれやと、目の前にかかる霧に答えを問いかけてみてもピタリと当てはまるものはなく、思考は濃霧に堕ちて行く。
「なぁ咲夜…」
俺は手を止め、有ったはずの俺を確かめるために同居人に声をかけた。
「ってもういないし」
そこには人1人として気配はなく、虚しくも俺の疑問は部屋の奥へと消えて行った。
その後もこの霧の原因を考え過ごしているうちに1日を終えてしまった。
部屋に戻り、流れに任せ半身をベットに放る。
「なんだっけかなぁ…」
もこ姉や慧音先生に用事…?いや違う。
草の根ネットワークで何かあったっけか?
いや、このあいだの集会もただお喋りして終わったし…
そう言えば…あの時あまり影狼と喋れなかったな…
そんな事を考えたら顔が熱くなって、今にも湯気が湧きだちそうだったので、頭を振って布団に潜り込んだ。一日中頭を使っていたせいか、眠りに落ちるまでそう時間はかからなかった。
・
・
・
「………んん…ふぁぁぁ……」
目がさめると、やっと見慣れた天井が目に入る。もぞもぞと身をくねると、太陽を吸った布団のいい匂いがふんわりと漂う。
このままもう一度寝てしまおうか。
そんな思考を促す様なこの気持ち良さはある意味で人を堕落させる。
私は頭を振り、眠気を払い落として如何にかこの魔の手から脱する。
普段着に着替え、リビングに降りるが誰の気配もない。居候先の住人、風見幽香は朝早く起き自分のひまわり畑の手入れをしている事をつい先日知り、この朝になっても誰もいない風景にも慣れてきた。
私は台所を借り、自分と幽香さんの分の朝食を作り始める。
ガチャ
「ただいま」
「あ、お帰りなさい幽香さん」
暫くすると、少し泥にまみれた幽香さんが帰って来た。
「汚れたからシャワー浴びてくるわ」
「分かりました、それまでには作っておきますね」私はまた、料理に取り掛かる。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
食器を片し、少し体を伸ばせば、日課の散歩に出かける準備は完了だ。
「それじゃあ、行って来ますね」
「あまり遠くに行くんじゃないわよ、あと襲われないでね面倒だから」
「…善処します」
皮肉交じりの挨拶をもらい、私は扉を開く。
夢にまで出て来た向日葵の花畑を抜け、小さな丘を越えた先に小さな花畑がある。最近私は散歩と称してこの花畑の面倒を見るのが日課となっている。自然とできたものだからきっと私の助けなど要らないのだろうけれど、なんとなく様子を見に来てしまいたくなる。
まぁ、助けなんて言っているが、本当に眺めているだけしか出来ないけど。
「…今日も来ちゃった」
私は裾をふわりと広げ、その場に正座した。
足に膝をついて頰杖をし、花をいつもの様に眺める。
サァァァァ…………
心地よい小風が花々と草原、私を揺らし通り過ぎて行く。
サァァァ………
………またしても風が通り抜けようとしているのか、草原を揺らす音が聞こえる。
サァ………サァ……サァ……
………風は来ないのにやたらと草の音ばかりが聞こえる。心なしか近づいている気もする。
ザッザッザッザッザッ
明らかに風じゃない。何かが来ている…?
来たる何かに備え、立ち上がり音のする方を凝視する。
ザッザッザッザッザッザッ!
すごいスピードで赤みがかった何かがこちらに向かってくる…!
「みっけたぁぁぁ!」
「ひえぇぇぇぇ!」
聞き覚えのある声の主は私を見て声をあげるとそのまま突っ込んでくる。
「あ、花畑あるので止まってくださぁい!」
「え!?、ぬぉあぁぁぁ!」
車は急に止まれない。猛スピードの妖怪も、だ。勢いそのまま花畑を飛び越え、草原に豪快に転がり込む。
「………大丈夫ですか?」
「あいたたた………此処にもあるんだな」
「いえ、幽香さんのってわけじゃなくて、自然に出来てたのを私が見に来てただけです」
「………敬語、いいよ。多分年近いだろうし」
「えぇ…」
身長的に考えたら…
なんて言ったらきっと怒るんだろうなぁ…
素直にその提案に従っておこう…
「…わかったよ、霊夜」
そうして大の字に転がっている新月 霊夜に手を貸す。
「ところで今日はどうしたので…んっんん
どうしたの?」
「あー、ぁー……」
理由を聞こうとすると、何故かばつが悪い様な様子を見せる。
「んー…んー…」
そのまま唸りだしてしまった。
「えぇ…どうしたの?」
「えぇっと、あれだ!あれあれ!」
人差し指をブンブンと振り、何か伝えたいのはわかるのだけれど、あれしか言っていないので伝わるものも伝わらない。
「今日、何か予定ある?」
「…………特にはないけど」
「じ、じゃあちょっと出かけないか」
「別にいいけど…」
確かに暇ではあったから許可してしまったけれど、良いのだろうか?まぁ幽香さんと面識があるくらいだし喰われるなんて事はない…ハズ。
「あーでも行くなら幽香さんに伝えなきゃ」
「そんな必要あるのか?」
「…色々と巻き込まれ体質だから」
「…?まぁいいか、ちゃっちゃと行ってくるか」
そうして幽香さんの家に一旦帰り少し遅くなると話に戻った。何か幽香さんに霊夜君が言われていたがよく聞こえなかった。
その後、人里に立ち寄り慧音さんや妹紅さんを紹介してもらい、お土産を買って魔法の森に向かった。
そこで、赤蛮奇さん、わかさぎ姫さん、今泉影狼さんを紹介してもらった。
影狼さんには、最初会った時何故かすごく敵対視されたけど何とか打ち解けることができた。
お土産をみんなでつまみながら他愛のない話で盛り上がっていると、あっという間に日が落ち、お開きになった。
「別に1人でも帰れるよ?」
「いや、何かあったら俺も一回休みにされるっていうか、むしろ危険なの俺の方っていうか…」
…何となく幽香さんが霊夜君に何を言ったのかわかった気がする。南無三。
「…………」
「…………」
話題のなくなった何とも言えない空気が重く両肩にのしかかる。何かないかなと、霊夜君の方を見やると、
今日会った時の様に、ばつが悪い様な、
何かあったかの様な顔をしていた。
「………なんか嫌な事でも…あった?」
「え…?」
気になったから聞いてしまったものの、
出会って日も浅いのに流石に不躾だったかなと後悔し
「い、いいのいいの!何でもない!突然変なこと聞いてごめんね?」
と付け加えた。
「なぁ、藍里。ひとつ聞いてもいいか?」
しかし、予想した気まずい雰囲気になる事はなかった。
「どうしたの…?」
「例えば…例えばだけどな、
会ったばかりとはいえ友達になれそうな奴に、
会った事が無かったことにされたら…どう思う?」
「えぇ…?何それ?哲学?」
「いいからさ、どう?」
「うーん…会ったばかりかぁ…」
何となく、元の世界にいた頃を思い出してしまった。こんな事早く忘れてしまいたかったのに
「案外、その人とは縁がなかったりして」
なんて事言っているんだ私は
「相手も忘れて、自分にとっても会ったばかりなら、それだけだし」
私の藍里はそんな事、言わない。やめて。
「だから気にしないでいいんじゃないかな」
やめて!そんな事言わないで!藍里はそんな事… 貴女は出てこないで!!
「案外、寂しいことを言うんだな…」
「えっ?」
そう、言われた気がして振り返ると、
そこには霊夜君の姿はなかった。
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「んん…くわぁぁぁぁ………」
狼の如く大きな口を開け、あくびを一つ。
そうして俺、新月霊夜は目を覚ました。
寝起きでふわふわしている頭を持ち上げ、暫くベットに佇む。瞼もようやく起き始め、見慣れた紅魔館の一室を見渡し、窓の方を見やると
涙に濡れた、一匹の狼がそこに佇んでいた。
「な…なんで…」
慌てて袖で顔をくしゃくしゃにする。
悲しい夢でも見たのだろうか?思い出せない。
でも……何かひとつ、確かなものを無くしたような気持ちが、片隅にあった。
ふと枕元を見やると、青い薔薇の花びらが数枚落ちていた。