なるべく期間が開かないようには頑張りたいと思いますが、更新は遅れると思います。本当に申し訳ございません…
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何か様子のおかしい紅魔館の従者 十六夜咲夜と、藍里の危機に駆けつけた紅魔館の主人 レミリア・スカーレットの激闘が幕を開ける。藍里は2人に振り回されながらも、何かレミリアの役に立てることはないか模索するが、いつもと状況が違う故にレミリアにこの場から逃げるように言われてしまう。一度はその場から離れるが、どうしても見過ごす事ができずに藍里は死地へと再び駆け出した。
今回も、お楽しみいただければ幸いです。
ガンッ!ガンガンッ!
「くっ……」
奴はどんどん咲夜に馴染んできているみたいね…さっきよりナイフの振りにキレが増しているし能力も多用してきている…
何より…戦うことにおいて奴にはリミッターが…自分が傷つく恐怖といった制限が存在しない…どうせ傷つくのは自分の体ではないのだ。
それ故に反撃を恐れない無茶な攻め方をしているが、その物量に押され、私も疲弊してきている。
1番堪えるのは、銀のナイフの攻撃をモロに顔と腕に食らったことだ。さっきっからその傷口がジリジリと音を立てて焼けている。左手は動きが鈍いし、傷の痛みを堪えるのに目を開けているのが辛い。
「この私が…曲がりなりにも咲夜に遅れを取るなんてね…」
「…………………」
相変わらず、彼女は何かに囚われたかの様に目をも開き、狂気に満ちた紅い目を此方に向け、ナイフを振るう。
藍里は、ちゃんと逃げれたかしら…?
なんとかパチェか美鈴の下まで辿り着けていればいいのだけれど………
ヒュッ!
「あら?私も舐められたものね」
私の思考が散漫になった所を狙った様だけど、まだまだ甘いわ。
咲夜は、一本目が外れたとわかった途端に私の視界から消える。風の流れは…背後か。
「たかがナイフの一本や二本で私が落ちるわけ…」
余裕の表情で、ナイフが風を切る所を感知し回避しながら背後を見やる。
しかしそこには、飛んでくるナイフだけしか視覚する事ができない。
「なっ!?」
ヒュッ!
シャァッ!
「しまっ…!」
いつの間にか上空を取って居た咲夜が放つ銀のナイフは、私の右足を捉えた。刺さりはしないものの、行動不能にするには十分な傷だった。
「ぐぅぅ!」
足の痛みに思わず槍を床につき、しゃがみこんでしまう。太ももから踝横まで熱戦が刻み込まれ、ジリジリと音を立てている。
咲夜はどうやら手に持って居た分は投げ切った様で、新たに身体に仕込んであるナイフを取り出し構えなおしている。その動作は勝利を確信した様で、私を視界に入れたままだが、ゆっくりと支度を整えている。
「ハッ………最後で油断するとはなってないわね…」
「…………………」
強がってみたものの、状況は絶望的。
満足に移動できない今、彼女の一振りを喰らえば無事では済まない。
「…立派になったものね…ついこの間までひ弱な人間だったくせに」
「………………」
「主人をここまでにするとはね…?」
「……………………」
咲夜の目には涙が浮かび、再び紅い目に青が混ざり始める。彼女は銀のナイフを頭上で構えたまま動かなくなってしまった。
「…やはりまだまだ半人前ね」
「………………ゥ…」
「全く手がかかるんだから…」
「……ゥゥゥ………」
再び眼は紅に侵されて行き、青い意思が飲み込まれて行く。
でも、はっきりわかった。彼女が恥を承知で私に助けを求めた事。従者としてはあるまじき行為だけど、日々の苦労を労って今回限り許してやるとしよう。
だから、私はこんなところで運命を絶つわけにはいかないわね。
「ゥゥゥウウアアァァァアアァアアア!」
「そこッ!」
ついに頭上のナイフを振り下ろした彼女に向かって右手に持っている神槍を放つ。しかし、あまりダメージを受けていない彼女にとってそれを避けることは造作もないこと。半身で槍を躱し、此方を向き構え直す。
ドォォン!!
躱された槍は天井に突き刺さり、大量の瓦礫を生み出す。そしてそれらは、
「…………………!」
彼女の頭上に降りかかる。
私の眼前には、先程まで紅魔館の床だった物が瓦礫の山となり、鎮座している。
「……………ふぅ」
勿論、これで倒せたなんて思ってはないけれど、身体を再生するぐらいの時間は稼げるかしら…?
そんな、暫しの時間稼ぎに安堵していると、足音が…こっちに来る?
「…………レミリア!」
「藍里!?どうして戻って来たのよ!」
「レミリア…やっぱりこんなに…」
「私は大丈夫だから早くッ…」
「ダメだよッ」
「わっちょ、ちょっと!」
藍里に、いわゆるお姫様抱っこをされ彼女は駆け出した。
「大丈夫だからッ降ろせって…!」
「嘘、その傷すごく痛そうだもん」
「…大丈夫よ、これぐらい…」
「カッコつけすぎだよ、もっとみんなを頼ればいいのに」
「………」
「それとも、みんなが信じられない?」
「!!」
違っ……
違うんだ……
皆が信じられないとか……そんなんじゃ無いんだ…………
私が…私が…
「みんなを守らねばいけないんだ…」
「…………………」
・
・
・
レミリアを抱えたまま、あの廊下から離れようと私は少し離れた扉を開ける。まだ咲夜さんの能力が残っているのか、扉の先は広い食堂につながっていた。なんとか壁までたどり着き、レミリアを寄りかからせて私も隣に座り込む。
「…………っ…」
「痛む…?」
「………少しな」
「救急箱か何かあればいいんだけど…」
勿論食堂にそんなもの置いてあるはずもなく、他の部屋に行こうにも、もし咲夜さんの能力が働いているならレミリアとはぐれてしまうかもしれない。そうなっては本末転倒だ。
結局何もできない自分に胸が痛む。
「なぁ…藍里…」
「ん………?」
「私を…私の事をかっこ悪いと思うか…?」
レミリアの口から語られたのはこの幻想郷で起こる不思議の1つ、異変の話だった。過去にレミリアと紅魔館の住人は幻想郷を紅い霧で覆うという紅霧異変を起こしたことがあるそうだ。動機は単純、此処に訪れた挨拶程度に自分の住みやすい様にしてやろうと思って行動に移ったらしい…それだけ聞くと随分と滅茶苦茶な動機だけれど、幻想郷ではそれも当たり前なのかな…
「勿論この異変の発案者は私だ。今考えれば唐突に現れては随分と横暴な事をしたものだ」
わかってたんだ…
「…皆は無茶な案にもかかわらずボロボロになりながらも最後まで付き合ってくれた。それなのに私はあっさりと博麗の巫女に負けてしまった…」
「…………」
「情けないわよね…皆は私の為の尽くしてくれたのに、何も物に出来やしなかった…」
もしかしてレミリアはずっとこの事を…?
「笑いたければ笑いなさい」
「……………」
私はレミリアの前に躍り出て、彼女の閉じた口の両端を上へと持ち上げる。
「ぅへぃ!?、な、何するのよ!」
「だって笑いたければって言うから」
「私じゃないわよ!!」
「…失敗を笑える様になった時には、それは大した事じゃなくなってるよ」
「はぁ?」
「…レミリアは私の事信用してくれる?」
「何よ突然…」
「いいから」
「…別に疑ってはないわよ」
「じゃあ、今から咲夜さんの眼を覚まさせてくるね」
そう言って私は急に立ち上がり、扉の方へと向かおうとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!貴女には無理よ!」
「わぁ!」
レミリアは慌てて私の手を掴んできた。しかし怪我をしてても吸血鬼。思いっきり引っ張られたので私はその勢いで引き戻され仰向けで倒れる。
「む、無茶よ…やめなさい…」
「…えへへ…やっぱり?」
「分かってるんならなんでッ…」
「そう、分かっているならみんなは貴女を止めたと思うよ」
「へ?」
私は仰向けのまま、逆さまのレミリアの顔を見てそう言った。
「最初から無理だって分かっているなら、あの人達なら貴女を止めたはず。それでもし失敗したとして、皆が貴女を見限るのはお門違いだと思うよ、レミリア」
「………………」
そんな事を言っていたら今度はレミリアに頬っぺたを両手で押さえつけられた。
「ぷぇ」
「偉そうに…本当に自分勝手なんだから…」
「へへ………」
「でも、少し気が楽になったわ」
そう、彼女は傷だらけの顔でニッコリと笑った。