東方蒼夢録   作:音無雨芸

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音無です。今回も中々に書くのが難しかったです…
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藍里を逃がすために1人咲夜に立ち向かうレミリア、しかし隙を突かれ大怪我を負ってしまう。なんとか動きを封じる事が出来たものの、その場から動く事さえ出来なくなってしまっていた。そこにレミリアを見捨てきれずに戻ってきた藍里が、レミリアをその場から運び出し一度態勢を立て直す事にした。

今回も、楽しんでいただければ幸いです。


22話 革命後の敗走した王者

「さて…どうしたものかしらね…」

「咲夜さんの事?」

「えぇ…あれは足止め程度にしかなっていないはずだし…」

 

館内の異変が収まっていないと言うことは、咲夜さんはまだ正気に戻れていないと言うこと。

なんとかして彼女を元の戻さないと…

 

「……藍里」

「どうしたの?」

「あの時の、チルノがおかしくなった時の話をもう一度聞かせてもらえないかしら」

「……う、うん………」

 

眼の色が紅に染まり、藍里に襲いかかって来たということは、咲夜もチルノと同じ症状に陥った可能性が高い。それならば、その時の状況を聞いて打開策を模索する他に手段はない。

 

しかし、どうも藍里の様子がおかしい。

自分の身体を両手で抱え込むように双肩を握りしめ、僅かだが身体を震わせている。

 

「ちょ、ちょっと、大丈夫?」

「…あ、あれ……」

 

声を掛けると、我に返ったようで少しだが冷静になれたようだ。もしかしたら彼女にとってあの出来事は深く心に刻まれてしまったのだろうか?自分勝手で無茶な彼女でも恐ろしい物はできるのね。救ってもらっておいてこんな事を考えるのはあんまりだとは思うけれど、よくそんなもので今まで生き抜いてこれたものね…

 

「………いや、辛いなら無理して言わなくていい」

「…大丈夫…大丈夫だよ、レミリア」

 

明らかに強がっているのが見て取れる。私にあんな事言っておいて結局自分が強がっているじゃない…いや、あんな事言った手前、無理しているのかもしれないけれどね。

 

「……あの時は…何かルーミアと話していたみたいだけれど…でも今回の咲夜さんは…そんな余裕はなさそうだった」

「…………ふぅん」

「あの時の…あの子もあの紅い目をしていた…かな…」

「そうね…咲夜は普段は青い眼なはずだし、チルノも青眼だった筈よ」

「あとは…………」

「………"貴女を狙った事"かしらね」

 

藍里の顔が、より一層険しくなる。

 

「私が岩陰に隠れる前、あの子が何の予兆もなしに攻撃してきた時、確かに私の事を憎いと言っていたけれど…」

「会ったことも無いし、ましてや恨まれるような事なんてしていないって言う訳ね」

 

藍里は頷き肯定の意を示した。

 

「……それで今回も、同じ様におかしくなってしまった咲夜は貴女を狙った」

「……………」

「となると、貴女を1人にするのは危険ね…私が守ればいいだけの話なのだけれど」

「!!、レミリアだって怪我を…」

「わかってるわよ、さっき貴女に諭されたばかりだもの、私だってそこまで愚かではないわ。

でも、貴女1人じゃ咲夜に太刀打ちは出来ない。

だから頼りに行くわよ、頼れる家族を」

「………わかった」

 

藍里は私の右側に回り、肩を貸して貰って何とか立ち上がる。

 

「よいしょっと…歩ける?」

「何とかね」

 

庇われながら、入ってきた方とは別の扉を目指して歩き出す。

 

 

 

ギィィィィ…

 

藍里が先行し、扉を少しだけ開けて周囲の様子を観察する。

 

「咲夜さんは…いなさそうだね」

 

藍里は確認が済むと、私が通りやすいように扉をもう少し開けてくれて、ゆっくりと歩を進める。

 

また紅魔館の廊下に出た様だったが、床も壁も天井も傷ついていない様だったので、どうやら先程まで彼女と戦っていた廊下とは別の階の廊下の様だ。

 

庇われているとはいえ、動くとなると少々傷が痛む。

 

「やっぱり痛む?」

「あぁ…やっぱりアレにやられた傷は再生に時間がかかるか…」

「アレって?」

「銀よ、銀のナイフ。聞いたことないかしら?吸血鬼は強靭な肉体と生命力ゆえに弱点があるのよ」

「それってニンニクとか日の光とか?」

「そうよ、普通の傷とかならすぐ再生できるのだけれど銀のナイフで傷付けられたから再生がままならないわ」

「そっか……」

 

全く…知識があるんだかないんだか分からないわね。

 

「やっぱり…血を飲んだりするの?」

「………じゃなきゃ吸血鬼なんて呼ばれないわよ。まぁ、私達姉妹は少食だから普段は飲まないのだけれど」

「ふぅん……」

 

急に私達の種族について藍里は聞き出してきた。本当にこの子の考えていることはよく分からない。そんな疑問を抱きつつも普通に受け答えしている私もどうかと思うけれどね。

 

「毎食?」

「いや、そんなに頻繁に摂取する必要はないけれど……」

「え、吸血鬼にとって血っていうのは命の源って訳じゃないの?」

「あー…」

先程までは私達吸血鬼に関して聞かれた事を素直に話していたけれど、こればっかりは話すのは憚れる。

 

確かに、吸血鬼が生活するのに生物の血は必要不可欠であり、血を摂取する事は急速な妖力回復と疲労回復に繋がる。そういう意味では命の源といっても間違いはない。

 

私も先の戦闘で妖力も体力もスッカラカンな訳で、吸血鬼的にはまたと無い給血タイムなのだけれど……

 

吸血は基本、行う対象に対して一切の配慮をしない。つまり相手を仕留める為に行う行為の1つである。勿論加減する事も可能だが、吸血鬼としての本能が抑えられなければ勿論アウト。吸血の際に与えるショックも相当なものだろう。

 

いくら頼れったってそんな危険な事までさせる訳にはいかないわよ…

 

チラリと私に肩を貸す少女を見る。

少女はまっすぐと廊下を見据え、私の歩行に合わせてゆっくりと歩いている。

 

恐らく、本当のことを言えば私が断ってもこの子は聞かずに口の中に腕を突っ込んで来かねない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うかそれは普通に困る。怖いわ。

 

 

 

「……リアー、レミリアー?」

「ん? あぁ、ごめんなさい。考え事していたわ」

「で、どうなの?」

「何が?」

「吸血、ゆーにとってのその行動のみーにんぐ」

「やめてその言い方」

 

藍里に思考の内から呼び覚まされたものの、なんて返答したら良いのかしらね…

 

「そ、そうね……」

「?」

 

私の回答を待っている彼女の蒼眼が突き刺さる。適当なことを言ってこの場を凌ぐか…

 

私は彼女に偽証を提唱する事を心の内に決め、内容を考えていると、

 

 

タッタッタッタッタッ…………

 

遠くの方から、不穏な足音が聞こえてくる。

 

「…まさかこれって」

「あぁ…恐らく咲夜だな…不味いな」

 

咲夜があの瓦礫から脱したようだ。ここに来るのも時間の問題だろう。向こうも疲弊しているとはいえ、私はまともに動けないし、藍里にはまだ戦闘させるには無理がある。

 

やむを得ない…のか…?

 

 

 

 

「ど、どうしよう…」

「藍里! 取り敢えずあの部屋に向かうぞ!」

私は負傷した左腕をどうにか持ち上げ、近くの扉を指差す。

 

「わ、わかった!」

 

少し無理をして近くの扉へと歩き始める。そんな中、此方に向かう足音はどんどん近づいて来る。

 

「ぐッ……」

「レミリア…もうちょっとだから頑張って…!」

 

藍里は焦りからか先程よりエスコートの仕方が荒く、衝撃が体に響く。まぁ、こんな状況で贅沢も言ってられないが。

 

 

 

バァァァァン!

後方で、思い切り扉を開く音が廊下に響き渡る。

 

「!!」

「咲夜さんがっ!」

「構うな!扉に駆け込め!」

咲夜が此方を視認するなり飛びかかって来る。

扉を開くと同時に中に転がり込む事でなんとか回避することはできた。

 

「ぐぁっ!」

「レミリア!」

「藍里…扉を…!」

「…んもう!」

 

無理ある回避をした代償に全身を強く打ち付け、激痛が全身をめぐる。しかし、咲夜はすぐ此方に来ようとするのは明白。此方に駆け寄ろうとするのを制止し扉を抑えさせる。

 

バンバンバン!

「くっ…」

 

藍里では力不足なのか、衝撃のたびに咲夜の姿が扉の隙間から見え隠れする。幻想郷の猛者の中で、パワーこそあまり強くない咲夜だが、流石に藍里に遅れを取るほどではないか…

 

「藍里…なんとか耐えてくれ…」

藍里だけでは今すぐにでも突破されてしまいそうなので、私も体を引きずりながら扉へと向かい、扉に体重を預けて扉が開かれないように手を貸す。

 

「レミリア…大丈夫…?」

「正直…かなり堪えた…」

背中に衝撃を感じながら藍里と言葉を交わす。

なんとか2人で抑える事で先程よりかは時間が稼げそうだが、いずれ扉自体が破られるのも時間の問題だろう。

 

 

…やるしか…ないのか…

 

 

…何が怖いって、もし失敗した時に私はともかく藍里まで命の危機に晒すという事になってしまう。仮に成功したとしても藍里が助からない可能性だって十二分にある。そんな危険な賭けに藍里を、友を巻き込んで良いのだろうか…?

 

 

 

 

 

……………………………ギリッ

 

「藍里」

「何?レミリア」

「貴女も無茶だと思うなら、私を止めてくれるかしら?」

「……言われなくとも」

「わかったわ…

 

 

 

それじゃあ、一生一大の大博打を私から提案するわ」

 

 

レミリアから提案されたものは、私から吸血する事だった。そのことだけを聞いて私は正直安直な考えだなぁ…と少し期待外れな気持ちになる。そんな事が表情に出たのか

 

「貴女、吸血鬼の吸血を甘く見てるでしょ」

なんて言われてしまった。

 

「だって、血を吸うだけでしょ?」

「はぁ…やっぱりわかってないわね…」

ボロボロの顔で不備を振るレミリア。

 

「あのね、吸血鬼にとって吸血は相手を滅する常套手段よ?とてつもなく貴女にとって危険な行為なの」

「…だからさっき答えをはぐらかしてたのね」

「…………そうね、きっと行為の意味を言ったら無理にでも腕を口に突っ込みそうだったから」

…私はそんなに無茶をする奴に見えているのか。

 

まぁ…でも…

 

「ありがと、レミリア」

「…はぁ?」

「だって私の為に取り得る手段の1つを最後の最後まで隠していたんでしょ?1番希望があるにもかかわらず」

「……… 」

レミリアは顔をそらし、黙り込んでしまった。

 

彼女なりに色々考えてくれた故の行動に、

"私"はただ単に嬉しかった。私に関わろうと考えてくれる彼女の思いが、ただ単に嬉しかった。

 

だったら私は…

 

 

 

レミリアが首に巻いてくれたハンカチを外すと少し畳んで口に挟む。

「…藍里、貴女はどう考える?無茶ならなんとか別の方法も考えるけれど…って何してるの」

そして私は左腕をレミリアの口元までまっすぐ伸ばす。

 

「…いいのね、藍里」

私は一度決めた意見は揺るがせない、自分勝手なんだ。

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