東方蒼夢録   作:音無雨芸

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お久しぶりです、音無です。
更新が大変遅れて申し訳ありませんでした…
これからは更新ペースをなるべく戻せるよう努力いたしますので気長に待っていただけると有難いです。

それでは、今回もお楽しみいただければ幸いです。



24話 忘れ難き血縁の味

程なくして、咲夜から微かに寝息が漏れ出してきた。すると周囲で結界が溶け出すように解除されていくのがわかった。

 

どうやら、完全に無力化することに成功したようだ。念の為に起こさない程度に咲夜の下瞼を少しずらし目の色を確認するが、いつもの蒼い目に戻っていた。しかし安堵する暇もない。今は一刻も時間が惜しい。早く彼女を、私の友に処置を施さなければ。

 

すると私の後ろ側の渡り廊下からバタバタと騒がしい足音とともに向かってくる者がいた。

 

「お嬢様!ご無事ですか!」

「美鈴、よく此処が…ってそんな場合じゃないわ」

「へ?あ、あれ?咲夜さんどうしたんですか!?」

「美鈴、説明は後よ、咲夜をベットで休ませて来て頂戴。その後客間にパチェ…あとフランも至急来るように伝えて」

「わ、わかりました。お任せください!」

二つ返事で答える彼女に咲夜を預け、早足でかけて行く

 

私も急いで戻らないと…!

片手をつきながら上体を持ち上げる動作にも、既に前へと進む推進力がかかっていた。

「藍里…!」

 

 

 

 

 

 

 

バァァァン!

「藍里!」

勢いよく開け放たれた扉の先には、もたれさせた壁から動くことなく虚ろに一点を見つめる無気力な彼女がまだそこにいた。

 

彼女の眼には光が宿っておらず虚で、糸を切られたマリオネットの様だった。

「藍里!!」

 

終幕後の役者からは挨拶が帰ってこない。

私は強引に舞台に飛び乗ると袖幕から役者を引きずり出し、担ぎ上げて跳躍する。

 

藍里の身体は僅かながら熱を帯びており、胸の鼓動も止まっていないが力の全く入っていない四肢が振り回され、お世辞でも心地の良いとは言えない感覚が乗せている肩から身体に伝わってくる。

 

間に合え…!

扉を弾き飛ばすように扉を貫き、貫き、貫き通して客間へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

客間に辿り着き部屋のベットに藍里を寝かせると、廊下のほうでバタバタと足音が複数近づいてきた。

「お姉さま!藍里が…藍里がいないの!目を覚ましたらいなくなってるし、探そうにも部屋がめちゃくちゃに繋がってて見つからないし…」

「お嬢様、言われたとうりに連れてきました…」

「ちょ…ちょっと…あまり急かさないで頂戴…」

 

フラン、美鈴、遅れて息を切らせながらパチュリーが続々と部屋に入ってくる。

 

「ありがとう美鈴、さっそくだけれど…」

「藍里!」

私が説明をしようとすると、先程から慌てふためいていたフランが藍里を見るなり今にも泣きそうな声を出しながらベットに駆け寄った。

 

「はぁ…はぁ…それで、何の騒ぎだったの?何かの力が館全体に影響を及ぼしたようだったけれど」

「説明は後で…」

「お姉様…これは一体どういうこと!?」

先程の泣きそうな声色は一転して、覇気を纏い、眼前へ迫ってくる。

 

「私が彼女の…藍里の血を飲んだ」

「それが何を意味しているのか分かっているの!?」

突然の事が立て続けに起こり、余裕のないのか、彼女は感情を剥き出しにしている。

 

「…十分に理解しているわ」

「まさか…咲夜とグルになって藍里を…」

「それは違ッ」

「近寄らないで!」

 

無罪を主張しようと踏みよると、フランは藍里の胸元へ抱き寄せこちらに向かって吠える。

「藍里は…壊させないわ…」

威勢の割に、手元が小刻みに震えているのが見て取れる。何とか説得しないとこうして姉妹喧嘩をしている間にも藍里は…

 

「全く…」

先ほどまで息を切らしていたパチュリーが口を開いた。

「フラン、レミィが本当にそんなことするんだったらわざわざ美鈴に呼んでこさせたりしないわよ」

「で…でもっ、この傷はッ…」

「何か訳があるんでしょ、無いなら仕留めてるわ」

「……」

 

 

パチュリーの洞察力に救われてしまった。

本来は私がちゃんと状況を説明しないといけないのに…

そもそもこんな状況になる前に…

 

 

「それで?状況を説明するよりも前にしなきゃいけないことって何?」

「…」

「ちょっとレミィ」

「えっ、あぁ…」

 

駄目だ、今は私の不甲斐なさなんて気にしている場合では無い。

そんな事でまた取り返しのつかない事になったら…

 

 

 

 

 

 

 

私は私が許せない

 

 

 

 

今度のレミィの注文も中々に無茶なものだった。

「藍里を、助けて欲しい」

詳しい事の顛末はまだ教えてくれていないが、レミィが吸血しなければならない状況になったという事だけは確かだった。

 

 

全く、私は医者では無いのだけれど。

「…応急処置にしかならないわよ」

「それでも構わない」

…悪魔の友人を持つと苦労が絶えないわね。

 

 

外部の損傷は吸血の後と数カ所の擦り傷しか見受けられない。体温はそれ程下がっておらず、心音も然程異常なようには感じられない。となると藍里が目を覚まさないのは恐らく体内の血液不足が原因だろう。

 

「永遠亭に行くしかないわね。そこで輸血してもらいましょう。」

 

永遠亭、迷いの竹林に建てられた薬師、八意永琳の住む屋敷。医学に関しては幻想郷に置いて上の者はいないだろう。彼処には人間も妖怪もよく尋ねると聞く。輸血用の血があってもおかしくはないだろう。しかし…

 

横目で部屋の外にある窓に目をやる。

日はまだ登り始めたばかりだ。永遠亭まで藍里を運ぶのに最速であろう吸血鬼2人はまず無理…美鈴に任せてもいいけれど…

 

「それまで藍里が持つかどうか…」

「…もうこれしか無いのか…」

するとレミィは自分の左腕を持ち上げ、牙を剥く。

 

「待ちなさい、そうやってなんでも自分で解決しようと突っ走る癖をいい加減治しなさい」

「で、でもこのままじゃ…!」

「説教の続きは後、ちょっとどいて。フラン、手伝いなさい」

いい機会だし、いい加減レミィには自覚してもらわなければ。

 

「パチェ、どうするの?」

「血液が少ないのならそれで乗り切るしか無い。無い分は速度で補うしか無いわ」

「それって…!」

「魔力で血液循環を加速させる」

「そんなやった事ない…」

 

勿論私だってやった事などない。だが今藍里の生存する確率を上げるのはこれしか無い。だが血管はすごく脆い。加速させるとなると当然血管に負担がかかるので魔力でコーティングする必要がある。下手に魔力を加えたら押し潰しかねないし、かと言って薄過ぎると内部出血してしまう。

 

ここ最近で1番神経を使う魔力調節になるのは間違いないわね。だからこの方法は藍里を輸送しながらでは無理。ならば…

 

 

「美鈴、私達が延命しているからなるべく早く永遠亭から医者と輸血用品を借りてきなさい」

「わ、わかりました!」

そう言うと美鈴は颯爽と廊下へ駆け出した。

 

 

「さて、フラン私達も始めるわよ」

我儘な我が主人(親愛なる友人)の尻拭をね

 

 

 

 

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