東方蒼夢録   作:音無雨芸

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2話 夢からの訪問者

「なっ…なんの音!?」

眠っていたせいか、はたまたその音を一瞬で理解し、そうではないと自分に言い聞かせるためのエゴなのか、大妖怪は動揺していた。

 

慌てて明かりをともすと、

そこには、割れた花瓶と、見慣れない青髪の少女があった。花瓶は側面から落ちたのだろうか?片側だけは原型を留めているが、中身をだらしなく吐き出している。

 

「青い薔薇が…」

 

そう、そこには青い薔薇の姿はなかった。

代わりにあるかのように転がっている見知らぬ少女。倒れたのだろうか、肩下までありそうな青い髪は周りに広がり、肌は白く、青い薔薇と茨の模様の入った袖付きのドレスを着ていた。

 

周りには微かに薔薇のいい香りが漂っている。

まるで先程から見かけない青い薔薇のような雰囲気を感じる。

 

 

一体この子は…?

 

 

…暫く様子を見てみたが、起きる気配が無い。

 

「…全く…しょうがないわね…」

幽香はその少女を抱きかかえ、自分のベッドへと運ぼうとした。

 

…正直驚愕した。

 

恐ろしく軽いのだ。

まるでたった一輪の花を持っているかのごとく。片手だけでも支えられてしまう。

人間でも妖怪でもここまで軽くなるのはありえない。

 

オマケに妖力も何も感じない。

格好からして人間では無いと思っていたのだが。

 

「…まぁ目を覚ませばわかることか」

そうして腕に収まっている可憐な花をベットに寝かしつけた。その後幽香は、朝焼けの中へと消えて言った。

 

 

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「…うぅ…いったた…」

どうやら寝ている間にベットから落っこちてしまっていたようだ。

 

「…夢だったのかな…」

 

 

 

一体どこからどこまで…?

 

またもや私は不思議な体験をしたようだ。

なんだか今日は頭がぼぉーっとする。

まるで現実なのに、夢にいるような…そんな感覚だった。流石の私でも、こう立て続けに不思議に出くわしていると、頭が追いつかない。私は不思議に浸るのを一旦やめて、洗面所に向かい、顔を洗って目を覚まそうとした。

 

「(バシャバシャ)………ふぅ」

 

 

タオルで顔を拭き、ふと鏡を見た。

 

「……えっ…何…これ…」

 

 

 

そこに立っていたのは、わたしではなく青い髪をした少女だった。

 

手を動かし、髪をいじって見たり、片目だけ不器用に閉じて見たり…そうすると目の前の少女はまるで鏡写しのように反対の動きをするのだ。

 

「ひっ……」

 

いや、嫌、イヤ 、イヤダイヤダイヤダイヤダ。

 

正直、もう私は限界だった。

私は一歩、また一歩と少女から遠ざかっていく。

そうして私は我を忘れて駆け出した。

認めたく無い。認めたく無いみとめたくないミトメナイミトメナイ

 

 

認めたら、私が私で無くなってしまいそうで。

 

「お母さん、お母さん!お母さん何処!?」

まるで私は幼子のように、泣きそうになりながら親を探す。

 

「どうしたのよ、そんなに慌てて。」

「あぁ…お母さん…お母さん…」

「あらあら…本当にどうしたのよ…」

 

私は母親に抱きついたまま、崩れ落ちてしまった。

母親は、そんな私を優しく包み込み、昔のように撫でてくれた。

 

「よしよし…大丈夫よ…側にいるからね…」

 

「………………」

 

いつぶりだろう…こんなにも安心したのは…

いつからだろう…この気持ちを忘れ去ってしまったのは…

 

「久々ね…こんなにも私を頼ってくれたのは」

「………」

「寂しかったのよ?私嫌われちゃったのかと思ってた。」

「……………」

 

そんなことない

そう言いたかったのに、出てこない。

 

「…落ち着いた?」

 

「………うん……」

 

涙交じりに私は言った。

 

「そう…よかったわ…」

 

あぁ、私はこれが欲しかったんだ。

人と違う不思議な体験じゃなくて、

このありふれた安心が

欲しかったんだ…

 

「こんな可愛いのに悩みなんてあるなんてね…ちょっと嫉妬しちゃうなぁ。」

 

「……………」

 

母親は時々子供みたいなことを言う。

 

「どうしてこんな綺麗な"青い髪"をして生まれてきたんだろうねぇ…きっと神様の授かりものね♪」

 

「……えっ……」

 

私は母親を押しのけてしまった。

 

「ちょ、どうしたのよ?私…まずいこと…言った?」

 

「お母さん…私の…髪…」

 

「髪がどうしたのよ?」

 

「私の髪ッッ何色なのッッ!?!」

 

「何って…綺麗な"青色"をしているじゃない…?」

 

「嫌っ…いやぁ…イヤァァァァァァァッッッッッ!!」

 

 

私は公園のベンチにいた。

無我夢中だった。ここが何処だかわからない。

 

「………………」

 

泣きはらし、目は腫れて少しヒリヒリする。

目は虚ろで、何も写っていない。

 

なんでだろう。なんでこんな時に。

 

私は意識を闇へと手放した。

 

 

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「………夢…?」

 

私はベットの中で目を開ける。

 

しかし、私はそれ以上考えることを拒んだ。

怖いのだ、もしこれが夢でなくて、私が私でないことが。

 

もう…戻れないことに…いつもの日常に…

一筋の光が顔を伝っていく。

 

「うっ…ぅぅ…ぁぁ…ぁぁぁぁ………」

 

枯れたと思っていた、でも、それでも私は流す。

 

不安を拭い去るために。

 

「どうして泣いているのよ……」

 

「ぅぅ…ぅぅぅ…ぁぁ「あぁもう面倒くさいわね」

 

そうすると、その女性は私を包み込んだ。

暖かい…安心する。

 

悲しい事に、その感触は一度裏切られたそれに酷く似ていた。

 

「……なんで私が…」

 

そう言いながら彼女は暫く離してくれなかった。

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