「……う………うぅん……」
まぶたの裏からでもわかるほどに、赤黄色の光が差し込んできて、目を覚ました。
ゆっくり目を開くと、制限されていた光が溢れ出し、目が眩む。
「うぬぅ…………」
思わず情けない声を発して目を覆う
暫くして、目が慣れてきた。
それと同時に思考がサイクルを始める。
と同時に気を失う前の光景がフラッシュバックする。
「…あっ!……ぃっつぅぅ……」
跳ね起きようとして、左手をついたのを後悔する。
痛む左腕を右腕でかばうと、丁寧に左腕全体に包帯を巻かれているのとは別に、左手首に何かが巻きついているのを見つける。
「……縄?」
私は繋がれた左手を少し体側に寄せて縄の先を確かめようした。
ギシッ
帰って来たのは近くで軋む音のみだった。
少し痛いのを我慢し、2、3回軋ませると、どうやらベットの足にくくりつけられているらしい。
「………どういう状況…?」
「見てそのままの状況よ」
返ってこないと思っていた返事は、ドアに寄りかかる1人の女性から返ってきた。
「えっと…これってどういう?」
「そりゃぁ…貴方が好き勝手しないためよ」
幽香はニッコリ笑う、正直怖い。
一歩ずつこちらに近づいてきた彼女はおそらく、
いや確実に怒っている。
私は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「…なんであんな時間に外に出たりしたのかしら?」
「…眠れなくて…いたっ!?」
ひたいに衝撃を感じて少し仰け反る。体勢を持ち直して原因を探ると、
幽香から放たれたデコピンだった
「…腐っても妖怪よ、まだ夜の開けてない時間帯なんて奴らの独壇場じゃない、死にに行くようなものよ」
…耳を疑った。
妖怪…妖怪だって?
あの日本で伝承されているぬりかべとか口裂け女とか…そういう?
「よう…かい?」
ヒリヒリ痛む額を右手で抑えながら声を漏らす
「まさか貴女、妖怪の存在も知らないわけ?」
「は、はぁ…」
幽香は頭を片手で抑え、ため息をついた。
「そこからなのね…」
「……?」
・
・
・
その後色々幽香さんから色々教えてもらった。
この世界、幻想郷のこと、ここに住み暮らす種族のこと、そして彼らの生活やこれからどうするべきかも。
「最近はどこぞの脇巫女が、<スペルカードルール>なんて作ったから直接襲いかかる妖怪なんて珍しくなったけどもね。」
「すぺるかーどるーる…?」
「そうよ、自分の技をこういったカードに書いておくの」
そうして幽香は一枚のカードを見せる。
「ここに書いた技名を宣言して技を、要は<弾幕>を放つわ。」
「は、はぁ…」
なんだろう、この人たちは常日頃から重火器を携帯し、そしてカードで技名を宣言した上でそれらを撃ちまくるのか?
謎である、全くもって。
想像ができない、カオスである。
「…実際に見ればわかるわ」
「えっ」
理解に苦しんでいるのが顔に出たのだろうか?親切にも、実演してくれるらしい
…いやいやいやダメでしょどう考えても。
無駄な殺生はいけない、そうだいけない、うん
ましてや私に教えるためにだなんて。
「い、いえ!結構です!てかダメです!どんな命だって奪われていいことなんてないです!」
「貴女何を想像しているの…?」
「えっ」
「貴女のその無知な頭で何を想像したかは知らないけど、いきなり実践をするつもりはないわ」
なんだろう、馬鹿にされている…?
「兎に角、始めるわよ」
「え、始めるって私もやるんですか?」
「当たり前じゃない、じゃあなんのためにやるのよ」
「え、だって私左腕…」
「別に右手が生きてれば大丈夫よ、あとこれは貴女が勝手にうろつかなければ済む問題だったのだから」
「ぅ…」
痛いところを突かれてしまった。これは従うしかなさそうだ。
そうして2人は部屋を後にし、
幽香さんによる弾幕講習が始まった。
・
・
・
単刀直入に
まず弾幕とはどんなものなのか聞いてみると、
「まぁ見てなさい」
と一言発し、持っていた傘を片手で柄を持ち空へと向ける。
すると、傘の先端にみるみると光が集まる。
次の瞬間、極太レーザーが轟音を立てて空を切り、雲に大穴を開ける。
次第にレーザーは薄まり、そこに大穴の空いた雲と、口を開けた私を残して何事もなかったように静まり返る。
「こんなものよ」
と、こちらを振り返る。
いやいやいや、こんなものって、こんなのできるわけないでしょ。
いきなり素人が玄人の技を見せられ、はぁなるほど、こうやるのかとはならないだろう。
というより、なんだあれは何の変哲もない日傘だと思っていたのに、なんだあの兵器は。
そうした思考を巡らした私は、自然と不服そうな顔をしていたらしい。
「…別に最初からこれを撃て、とは言わないわよ」
「で、ですよねぇ」
安堵すると同時にこの人には勝てないな、と思わせざるを得なかった。
・
・
・
「……………」
心を落ち着かせ、思考 感覚 を共に自らの体に集中させる。
「…………」
「……………」
幽香もそばで腕を組み、様子を伺っている。
「………ダメです……」
「……そう……」
やはり、何も感じられない。
ここにいる人来る人どちらにも少なからず不思議な力を宿すらしい。
人間だったら霊力、妖怪だったら妖力、魔法使いだったら魔力、といった具合にそして、ある程度の実力者は相手の力を見極めることができる。いや、正確にはそれが出来るから実力者なのだろうか。
しかし今の問題はそこではない。
幽香さんはさっきの弾幕…というものを見ても明らかな実力を保持している…はず
なのに私に宿る力はわからないという。
青い薔薇の器に人の魂を持つ
「……………」
「…ちょっとこっちに来なさい」
「…?」
そういうと、幽香は藍里の両手を掴み、目を閉じる。
「??………えっとなにを」
「行くわ、準備しなさい」
そうすると、体の内側からすごい圧力を感じた。
まるで水風船に水を入れ続け、溢れそうになっても、破裂しそうになっても、流れることをやめない。
「うぅ…!?…ァァ…!?! 」
「…………」
声がッ…息がッ…気を抜いたら…器が破裂する…!
すると突然、幽香が私の手を空へと向け、手放した。
「!?」
私の手から押し貯めた物が一気に逆流する
放たれた弾幕は一直線のレーザーとなり、雲を貫き、穴を開けた。
「…はぁ…はぁ…一体なにを…?」
「貴女に私の妖力を流し込んだわ、コツを掴めるかと思って」
「…そんな無茶な…」
「さぁまだ続けるわよ」
「ひ、ひぇぇぇ…」
この訓練が、徐々に藍里を人から遠ざけていった。
読んでいただき、有難うございます。
皆さんが読んでいただいている事がとても嬉しく、最大の原動力になっていて、楽しく書かせてもらっています。
よかったら是非今後とも読んでいただければ幸いでございます。