東方蒼夢録   作:音無雨芸

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今回から、文字数を4000文字に増やして頑張っていきます。


6話 未知の領域

「……………」

 

あれから数時間

未だに自らの中を模索し続けている。

だが、未だに自らを流れる力を掴むことができない。

 

何度も感覚を忘れないようにと、幽香さんに妖力を流し込まれ、その度に

 

気を抜いたら死ぬ

 

そんな緊張感に晒される。

 

「はぁ…はぁ…」

「…やっぱり私が渡してもダメね、全く受け付けていない」

「…人のものじゃダメということなのでしょうか?」

「そんなことないと思うのだけれど…」

幽香さんはどうもこの手の話は詳しくないらしい。やっぱり詳しい人に話を聞くべきなのだろうか?

でも、ここまで協力してくれているのに別案を提示するのは気がひける。

 

 

 

…と言うかスルーしていたけれど

「…幽香さん、さっき妖力って言ってたってことは幽香さんは妖怪なんですか?」

「そうよ?そういえば言ってなかったわね」

「………」

「別に喰べやしないわよ」

「そ、そうなんですか…てっきりストックされてるのかと…」

「貴女結構失礼なこと言うわね」

「す、すみません…」

 

幽香さんに睨みつけられてしまった。

妖怪、と言ってもあの時のような一見して化物と判断できる者だけでなく、幽香さんみたいに普通に人と変わらぬ見た目をしている(妖怪)もいるんだな……

 

「心外だわ、あんな見境もない下品な輩と同じにしないで頂戴」と、罵声を浴びせられ私は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「…それにしても加減しているとはいえ、これだけの妖力を入れられて何ともないなんてね」

「ごめんなさい…こんなに協力してもらってるのに何も掴めなくて…」

「本当よ、全く」

「酷いっ!」

そこは慰めてくれるとか、励ましてくれるとか、そんなのを期待していたため予想外の反応に思わず口が動く。

 

「その様子じゃ、まだまだ余裕そうね。でももう今日はここまでにしましょう」

そう言われ、意識を空へ向けると、もうすでに空高く登っていた光源はいつの間にか傾き、今にも隠れてしまいそうだった。

 

「え、あれ?もうこんな時間?」

「帰るわよ」

「あ、はい…」

そうして2人はひまわり畑へと消え行った。

 

 

 

その後幽香さんの家に着き、一緒に料理をして晩御飯を食べた。食べている間、不慣れな包丁で切った歪な野菜を箸で摘み、徹底的な言葉責めにあい、言い返すとすごい笑顔で説き伏せて来る。折れて黙るとまた罵られてもうどうすることにもできなかった。太刀打ちできない私は、逃げるようにご飯を食べ終え、お風呂を借り、その場から退散した。

 

 

「…………♪」

 

久しぶりにあんな顔を見た。

此処らの連中じゃ中々あんな表情はしない。

楽しくて、つい徹底的に苛めてしまった。

 

そんな事に微笑を浮かべていると突如として、部屋の空気が変わった。

 

「……………」

 

来たわね。まぁ、こっちから招き入れたわけだしそれもそうなのだけれど、やはり不本意ね。

 

幽香は、未使用の湯のみに茶を注ぎ、対角線の席の前にそれを置く。

 

すると空間を裂き、1人の女性がそこに現れ座った。

 

「珍しいわね、あなたの方から話があるなんて」

髪は金髪ロング、紫を基調としたドレスを着こなすまさに貴婦人と言った容貌の女性はそう口を開いた。

 

「この手の話は貴女専門でしょ」

「あら、ゆうかりんが私を頼ってくれるなんてねぇ」

 

女性は扇で口元を隠し、私を冷ややかに見て来る。

「消しとばすわよ?」

「おぉ、怖い怖い」

 

まさに一触即発

強烈な妖気と妖気が混ざり合い、部屋を満たす。こんな場面に出くわしたら、下等妖怪は死を直感し、実力者でも戦慄するだろう。

だが、私は殺し合いをするために彼女を、八雲 紫を呼んだのではない

 

「…貴女も、もう知っているのでしょう?」

「えぇ、私は幻想郷の管理者よ?幻想郷のことならなんでも知っているわ」

「…ふざけているの?」

「とんでもない、事実よ」

 

紫の目は真剣な眼差しになり、その視線は私に注がれる。

「…あれは、あの子はどういう事なのかしら?」

「…そうね、もし妖怪になるなり、付喪神になるなりするなら最低限本能的に技能はあるはず。なのにあの子には全く無い、そうなると、可能性としては、外来人である可能性が高い…だけれど…」

「どうしたのよ」

「…いえ…やっぱりあるはずがないわ、もし外来人なら、あの博麗結界を通ってこちら側に来ることになる。何に私はそれに気づけなかった、いえ、気づかなかった」

「……………」

 

博麗結界と言って、

幻想郷の管理者八雲 紫と、博麗神社にいる代々博麗の巫女が維持し続けている結界が幻想郷を覆い、外界とのつながりを絶っている物がある。

 

そして外来人は、本来博麗結界の外側の世界、外界に住む人が、希に生じる結界の歪みからこちら側の世界、つまり幻想郷へと迷い込んで着てしまう人間の事を指している。

 

八雲紫の仕事、幻想郷の管理者と言うのは、常にこの博麗結界の様子を観察し、異常があれば修正し、幻想郷のバランスが崩れないようにする観測者なのである。

 

そんな幻想郷にとって、外来人もまた、一種の異変であり、調和を乱しかねないので、紫はそう言った人間が迷い込んだら機を伺って外界に帰しているのだという。

 

その観測者でも、今回の歪みには気づけもしなかった。この異常さに焦りを覚えているのか、会話する紫の声色はいつものとは違う。

 

「……………」

「貴女がその様子じゃ、私もお手上げね」

「彼女は元々、貴女の言う青い薔薇で間違い無いのね?」

「えぇ、それは信じてもらって結構よ、だから…その外来人とやらである可能性は低いと思うわ」

「ますます謎ね…」

 

心なしか、先ほどまで余裕がなさそうだった紫の表情に笑みが宿る。この妖怪、何を考えているんだ。

 

「ちょっと興味が湧いたわ、もう暫く観察するとしようかしらね」

「あくまであの青い薔薇は私のものなのだから、変な真似したらただじゃおかないわよ?」

 

皮肉を込め、笑顔でそう送る

「あら、私はただ彼女とお話がしてみたいだけなのだけれど?」

向こうも同じように笑顔で返してくる。

お互い笑っているはずなのに表情がこわばっている。

 

「まぁ今日のところは退散するわね、それじゃあまた」

そう言うと、紫は境界を作り出し、その中へと消えて行った。

 

 

「ふぅ……」

 

私は幽香からの言葉責めから逃げるように、お風呂に入っていた。なんやかんや、此処(幻想郷)で意識が覚醒してから初めてのお風呂である。

 

…一女子として流石にどうなの?

 

体を洗っている時に、不意にそう思った。意味はないだろうが、少し長めに浸かろうかなと、体を洗いながら目の前の姿見を見る。初めて今の体をまじまじと見たが、意外と整った体つきをしていて、自分で言うのも何だが悪くはないと…思う。

 

「…何考えてんだか」

馬鹿馬鹿しくなって無理やり思考を停止させ、石鹸を洗い流し湯船に浸かる。

 

「はぁぁぁぁぅぅぅ…………」

久々に味合うこの感覚

体に染み渡る温度は私をゆっくりと温めていく。

 

「あーぁ………」

ため息は壁に反響し、だんだんと薄れていく

 

「上手くいかないものだなぁ…」

私は、修行のことで気に病んでいた。それこそ修行1日目で出来るようならば、そもそも修行など要らないのだが、そうではない。

 

手応えが感じられない。全くもって。

 

勉強にしたって、運動にしたって、身につかなくても、やってすぐの事は見様見真似で少しばかりは出来るはず。だが今回は、その前例が効かない、そんな領域にいるような感じ。

 

言うなれば、今までなかったものを感じ、認識することを今私は成そうとしている。

いわば、第六感の発達である。

 

「……出来るのかなぁ…私に…」

何より、私のためによくしてくれている幽香さんに申し訳がない。

なにか、何かコツみたいなものがあるはずだ。

何もない代わりに何かはあるはずだ。

 

………本当に何もない場合も否めないが

 

闇雲も考えても仕方がないので、取り敢えず自分の状況を整理してみる。

 

私は、

この幻想郷に住んでいる種族

人間、妖怪、妖精、神etc …

のどれに属しているのか、よくわかっていない。

私の中に霊力も妖力も神力もない事がその要因である。

そして、そんな私は妖力を受け付けないらしい。これに関しては素人の私はどうしてなのかなんてわかるはずもない。玄人の幽香さんですらわからないのだ。

 

…あっさりと状況整理が終わってしまう。

見事な八方塞がり。打つ手なし。わからないことが多すぎる。

 

「はぁ……」

きっと明日も幽香さんは練習に付き合ってくれる…と、言うより強制的に力の発現練習をさせられるだろう。

とはいえ、それは私を思っての行動であって、嫌がらせしようとしているわけでは…

 

ふと、先ほど私をからかいとても楽しそうにする幽香さんの顔が浮かぶ。

 

 

 

「違うよね…?」

流石にこの考えは失礼だろう。

居候させてもらっている上に稽古までつけてもらってる分際で

 

私はふるふると顔を振り、より一層湯船に深く浸かり込んだ。

 

 

「上がりました〜」

「おかえり、湯加減はどうだった?」

「気持ちよかったです!」

「そう」

お風呂から上がると幽香さんは食器を片付けている。どうやら湯のみは湯上り後に飲み物を飲むためか、洗わずに残しておいてくれているようだ。

 

 

 

でもどうして1つ増えているのだろう…?

誰か来てた音は特にしなかったし…

幽香さんが別のものでも飲むために分けたのかな…?いや、それでも…

 

「飲むんだったら飲んじゃって、湯のみ洗いたいし干からびるわよ」

「は、はい 頂きます」

私はお茶を飲み干すと、湯のみを台所まで運んだ。結局何故三つあったのかは聞きそびれてしまった。

 

「私はお風呂入るけど、貴女はもう寝なさい」

「はい、わかりました お休みなさい」

「…お休み」

そうして私はリビングを後にし、寝室に向かった。

 

 

 

 

…よくよく考えたら自ら寝室に向かうのもなんだか久々である。

「っぅぅ〜…///」

なんだか恥ずかしくなって来た。

早く寝てしまおう。

寝て忘れようそうしよう。

 

そうして私は布団に潜り

「明日は上手くいきますように」

と呟き、視界を閉じた。

 

………

しかしそんな彼女に待っていた明日は、慣れない力を全身に巡らせたせいか、身体中に激痛が走り、まともに動けぬ日が待ち構えて来ていた。

 

 

翌日…の翌日

なんとか私は回復し、今日も訓練に勤しむ。主な内容は、幽香さんの放つ弾幕を避けるものだった。

 

獣の妖怪に襲われた時も感じたが、私の身体はとても軽い。

きっとそれは花の身体をもつお陰なのだろう。それを生かして幽香さんの放つ弾幕をひらりひらりとかいくぐる。

 

 

「…………!?」バシッッ!

油断していた私は、あっさりと死角から飛ばされた弾幕に被弾してしまう。

軽いと言うことは、被弾した時も通常よりダメージが大きいので私は4、5m吹っ飛んでしまった。

 

 

「い…ぃぃぃ…」

「ちょっと…大丈夫?」

「…ダイジョブデス」

「…ちょっと休憩しましょうか」

 

強がってみたものの、正直衝撃が強くて体が起こせないでいた。

 

「ぁぁぁ〜……」

 

草原の中、仰向けにだらしなく広がる。

 

 

 

「あれ、その声は…そっか無事だったんだね」

広がる少女に、そびえ立つ木が語りかけて来た。

「ぁ〜れ?、その声って…」

「そうだよ、あの獣の妖怪に追われてた時に…」

「あぁ!あの時はどぅ…ってぇてて……」

「あぁあぁ大丈夫だよそのままで」

「すみません、みっともない姿で……」

「そんなことないよ、立派に頑張っているじゃない」

「そう…ですかね、頑張れてるんですかね、私…」

 

青い薔薇は、樹木にそう投げかける。

「…よし、自信がないなら私も稽古をつけてあげる!」

「…ふぇ?」

予想の斜め上な樹木の返答に、変な声が出る。

 

「それってどういう…」

「藍里ー?」

「あっ、幽香さんが呼んでる…」

「じゃあ、明日またここにおいで」

「…わかりました、では失礼します」

 

 

こうして、喋る謎の樹木との奇妙な約束を取り付けた。

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