これは、もうこの二次創作の宿命です。
今日の刺客は、見た目は可愛い女の子。でも、その実体は、魔法少女プリズマイリヤ……ではありません……
果たして、セイバー達の助けは間に合うのか?
今朝は、衛宮くんの体で目覚めた。
桜ちゃんが居る時は、私が起きる頃にはもう朝食が用意されている。でも、先日の事件で桜ちゃんはまだ入院中のため、私が朝食を用意する。
遠坂さんは朝が苦手なようで、まだ起きて来ていない。セイバーは起きて来て手伝うと言ってくれたが、力任せに包丁を使う姿が恐ろしいので、遠慮してもらった。
桜ちゃんの作る料理は、とてもおいしい。ただ、そう言うといつも、
“まだまだ、先輩には及びません”
と返して来る。お婆ちゃんや四葉も、衛宮くんが私と入れ替ってる時に作った料理が、とてもおいしかったと言っていた。
そんなにおいしいのなら一度ご相伴に預かりたいものだが、入れ替っているのでそれもままならない。入れ替って無い時にここに来ればよいとも思うが、そのためにわざわざ来るのは厚かまし過ぎる。それに、ただでさえセイバーや遠坂さんと同居しているのだ。そこに私まで来たら、桜ちゃんがたまったものではない。
本当に、あの女ったらしには困ったものだ。
朝食が出来上がる頃には、遠坂さんも起きて来た。
そこに、1日早く退院できたと藤村先生が集りに来たので、また騒動が起こった。
「な……何で、遠坂さんがここに居るの?!」
しかし、流石に口が達者な遠坂さん。あっという間に、藤村先生を言いくるめてしまった。
「あ……そうだ、士郎。私、この後検査のために病院行くけど、あんたも行かない?」
「え?」
「顔を出してあげたら、桜ちゃん喜ぶよ。」
私も桜ちゃんの事は心配していたので、このお誘いには二つ返事で合意した。
セイバーも護衛のため付いて来ると言ったが、桜ちゃんの事を考えると、女連れでいくのはどうかと思った。だから、昼間で、人の多い病院なので心配無いと言い聞かせた。
それでも念のため、遠坂さんがアーチャーに、柳洞寺の動きを見張るように指示してくれた。
「わざわざ、ありがとうございます。先輩。」
桜ちゃんは、もうすっかり元気になっていて、満面の笑みで迎えてくれた。でも、この笑顔が、衛宮くん家に居座る遠坂さんを見たらどうなるかと、考えるだけで胃が痛くなる。
「退院したら、直ぐにまたお手伝いに行きますから。」
「そんな、しばらくは、無茶しちゃだめだよ。」
「いいえ、私、先輩のお手伝いをしている方が、元気が出るんです。」
な……なんて健気な、いい娘なの?こんな娘を悲しませるような事するなんて……本当に衛宮くんはっ!
その後、藤村先生が検査を受けている間、私は病院の中庭で待っていた。
ベンチに腰掛け、池の周りで遊んでいる子供達を見ている時に、声を掛けられた。
「今日も逢えたね、お兄ちゃん!」
「え?」
ベンチのすぐ横に、紫の帽子とコートを着た女の子が立っていた。
こ……この子は、確か、最初に入れ替った時に会った……何か、クロエさんに似てる……
「ふふふ……今日もひとりだなんて……」
「あ……あなたは?」
「何だ、まだ覚えてくれてなかったの?イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、“イリヤ”って呼んでって言ったでしょ。」
そう言って、その子は私の目の前に来て、私の膝に両手を置いて、じっと私を見詰める。
その時、その子の目が妖しく光った。
「あ……あれ……」
急に、体が重くなる。思うように動けない。
「あ、もう金縛りになったんだ?シロウったら、護りも何も無いんだもの。こんなに簡単に捕まっちゃうなんて?可愛いなあ……ふふふ……」
捕まっちゃう?何を言ってるの、この子?……
「動こうとしても無駄よ、お兄ちゃん!もうじき声も出なくなるけど、心配しないで。私も、今日はお話をしに来た訳じゃないもの……」
だめ、動けない……それに、だんだん、気が遠くなって……
私は、そのまま意識を失ってしまった。
「はっ?!」
気が付くと、私は、西欧風の部屋の中に居た。周りには椅子が沢山あり、その上に熊のぬいぐるみが座らされている。私も、椅子に座っているようだ。
何処?ここ?私、確か……
そこで、謎の女の子に金縛りにされた事を思い出す。慌てて動こうとすると……
う……動けない……え?私、縛られてるの?
私は椅子に座らせられたまま、両手を背もたれの後ろで縛られ、足も椅子の脚に縛り付けられていた。
ま……まさか?私って、また襲われちゃったの?何で、どうしていつもこうなるの?
賢明にもがくが、しっかりと縛りつけられているので、びくともしない。
で…でも、何であの子が私を……待って、あの子の名前“イリヤ”って……そう言えば、遠坂さんから聞いていたんだった。バーサーカーのマスターの名前が、確か、イリヤ……
その時、ドアが開いて、イリヤが入って来る。
「あ?やっと起きたんだ。」
イリヤは、私の前まで寄って来る。
「体はどう?もう、声くらい出せるよね?」
「え?……あ……ほ……ほんとだ。」
「捕まえた敵はね、本当なら地下牢に入れるんだよ。シロウは特別に、私の部屋に入れてあげたんだから。」
そう言って、イリヤは私の膝の上に乗って来る。
な……何か、馴れ馴れしいわね、この子。今迄の言い方を思い出しても、何か前から衛宮くんを知ってるような……でも、敵のマスターなのよね?
「ここは、樹海の中のお城。誰も助けになんか来れないし、邪魔は入らないわ。」
「ど……どうして、こんな所に?殺すんなら、あの病院でもできたのに……」
「何で?私、シロウを殺す気なんて無いよ。他のマスターは殺すけど、シロウは特別だもん!」
と……特別?やっぱり、以前に何かあったの?まさか衛宮くん、こんな小さい子にまで手を出してたの?
「ねえ、私のサーヴァントにならない?そしたら殺さなくて済むわ。」
「な……何ですって?!」
その頃、衛宮家では、士郎が居なくなったと騒ぎが起こっていた。
「ええっ?士郎、まだ帰ってないの?」
「藤村先生、一緒じゃなかったんですか?」
「私が検査をしている間に居なくなって……てっきり、先に帰っちゃったのかと思ったんだけど……」
セイバーが、凛に耳打ちする。
「まさか?また、キャスターに?」
「ううん、柳洞寺に動きは無かったって、アーチャーが。」
凛は、再び藤村先生に問い掛ける。
「誰か、衛宮くんが病院を出て行くところを、見た人は居ないんですか?」
「出て行くところは無いけど、中庭で、銀色の髪の女の子と話しているところを見た人が居たけど……」
『銀色の髪の女の子?!』
セイバーと凛の言葉がハモる。
「ミツハさん、オハヨウございマス!」
「あ……ああ、おはよう。」
三葉になって学校に行くと、昨日転校して来たというクロエに挨拶された。
ラストネームが“アインツベルン”というのも気になるが、何より、このクロエは驚くほどイリヤに似ている。あいつが高校生になったら正にこんな感じだろう。
やっぱり、親戚か何かなのかな?聞いてみたいけど、皆がいるところじゃ不味いよな?
とりあえず、昼間は何も聞かなかった。
三葉からのメッセージで聞いていたが、本当に人懐っこくて陽気な娘だった。ただ、昨日会った、非戦闘時のイリヤもそんな感じだった。尚更、二人が何か関係があるように思えた。
放課後、掃除のごみ捨ての際にたまたまクロエと二人きりになったので、その時にイリヤについて尋ねてみた。
「なあ……ねえ、クロエさん?」
「ハイ?なんデスか?」
「あなたって、もしかして……“イリヤスフィール”と親類関係とか?」
すると、突然クロエの表情が変わった。
「イリヤ?!」
表情だけでは無い、体全体から、得体の知れないオーラのようなものが噴き出すのを感じた。クロエの顔からは笑顔が消え、まるで獲物を狩る獣のような目で、俺を睨み付けて来た。
「ナゼ、ミツハサンガ……ソノナマエヲ、シッテイルノデスカ?」
「い……いや、あの……ふ……冬木市に行った時に……ぐ……偶然出会って……」
「フユキ?!」
この言葉も、彼女の癇に障ったようだ。更に、目付きが厳しくなる。
いったい、どうしたというのか?さっきまで、異様なくらい陽気だったクロエとは、まるで別人だ。冬木での敵のマスターか、サーヴァントと対峙しているかのような威圧感だ。
「イリヤハ、アイリノムスメ……ニドト、ワタシノマエデ、ソノナハダサナイデ……」
「……は……はい……」
それだけ言い残し、クロエは、俺に背中を向けて去って行った。
な……何だったんだ、今のは?……イリヤとは、やはり関係があるんだろうが、あの雰囲気は尋常じゃない!いったい、クロエとイリヤの間に、何があったんだ?
そういえば、“アイリの娘”って言ってたけど……アイリって誰?
クロエがごみ捨てを放棄して帰ってしまったので、俺は、ひとりでごみを片付けて教室に戻った。
教室では、帰り支度をしたサヤちんとテッシーが待っていた。
「お疲れ、三葉。」
「ああ……お待たせ。」
「ねえ三葉、クロエさんと何かあったん?」
「え?」
「何か、機嫌悪そうにひとりで戻って来て、とっとと帰ってまったから。」
「ううん、べ……別に、何も無いよ……」
本当のことを、言える訳も無い。
「後援活動でも頼んで、怒らせたんやろ?」
横から、口を挟んで来る奴がいる……例の、松本だ。
「何や、どういう意味や?」
テッシーが反応する。
「あんだけの城に住んどるんや、資金力も半端無いやろ?町長の娘としては、後援会に是が非でも入って欲しいわな?」
「お…お前……」
「止めて!テッシー!」
松本に喰って掛かろうとするテッシーを、俺は制した。
「ふん、まあ、精々がんばりや。」
そう言って、松本は教室を出て行く。
「あいつ……ほんまに性格悪いやっちゃな!いったい、三葉に何の恨みがあるんや!」
テッシーは、そうとう頭に血が上っている。俺も相当頭に来てはいたが、ここで俺が手を出したら、三葉に迷惑が掛かってしまう。
しかし、何であいつは、ここまで三葉に喰って掛かるんだ?単に町長の娘というだけで、ここまで絡んで来るか?テッシーの言うように、三葉に何か恨みでもあるんじゃないのか?
何気に、松本の三葉に対する態度が、最近の、慎二の俺に対する態度に似ているようにも感じた。
「シロウが私のサーヴァントになれば、シロウを殺さなくて済むでしょ?」
「な……何言ってんの?」
私は、まだ生きてるんだから……だいたい、英雄じゃないのにサーヴァントになんてなれるの?
「そんなんじゃ、すぐに殺されちゃうよ。シロウはここに居ればいいの、私がず~と護ってあげるから。」
そう言って、イリヤは私の胸に寄り添って、目を閉じる。
「ちょ……ちょっと、離れなさい……そんな事を言われても、わた……俺は……」
すると、イリヤは“黙りなさい”という感じに私の口に指をあてる。
「もう……分かってないんだから……いい?今のシロウは、籠の中の小鳥なのよ。生かすも殺すも、私の自由なんだから。あんまり私を怒らせるような事、言っちゃダメ!それに、10年も待ったんだもの、簡単に殺しちゃうなんて……そんなの、つまらないでしょ?」
じゅ……10年?あなたいくつ?10年前じゃ、まだ赤ちゃんじゃないの?
そんな前からって……まさか、衛宮くんの許嫁?衛宮くん、許嫁がいるのに、桜ちゃんを誘惑して、セイバーや遠坂さんに手を出したの?さ……最低っ!
私が衛宮くんに対して怒っていたのを、自分を否定していると勘違いしたのか、イリヤは急に口調を荒げてくる。
「そう、あなたまで、私を裏切るのね?いいわ。そんなに嫌なら、まずセイバーを殺してくるから。マスターじゃ無くなれば、シロウも考えを変えるでしょ!」
「え?いや、ちょっと……待って……」
「せいぜい、逃げ出す努力でもしてなさい。」
そう言って、イリヤは部屋を出て行こうとする。
「ちょっと……待ちなさい……待って!」
振り向きもせず、そのまま出て行ってしまった。私は、またひとり部屋に取り残された。
い……いけない、セイバーが……遠坂さんも危ない。な……何とかしなくっちゃっ!
私は、懸命にもがくが、縄は全く緩まない。普通のマスターなら魔術で何とかできるのかもしれないが、霊能力による治癒しかできない私には、縄を解く術も無かった。
樹海の中を、イリヤの拠点の城を目指して進むセイバー、凛、アーチャー。わずかに感じる士郎(三葉)の魔力を頼りに、迷う事無く進んで行く。
「しかしまさか、イリヤスフィールが、士郎を誘拐するとは思わなかったわ……攫われたのは、三葉だけど……」
「あの娘も、とんだ災難に見舞われたものだ……あんな未熟なマスターは、やはり、とっとと始末するべきだったな。」
アーチャーの言葉に、セイバーは歩みを止め厳しく彼を睨み付ける。
「やめなさい、アーチャー!……いい、三葉を救出したら、見つかる前に全力で逃げるわよ。今は、余計な戦闘で、魔力を消耗するべきじゃ無いわ。」
凛の言葉に、セイバーは頷き、再び走り出す。
イリヤの拠点の城に着いたところで、凛はアーチャーに指示を出す。
「アーチャーは、姿を消して。」
アーチャーが霊体化したところで、凛とセイバーは木陰に隠れる。
すると、城の入り口の扉が開き、イリヤが顔を出す。イリヤは辺りを見回した後、城の裏手の方に歩いて行く。
イリヤの姿が見えなくなったところで、凛とセイバーは城の中に入って行く。
「ううん……うん!うんっ!」
私は、懸命にもがき続けるが、やっぱり、どうする事もできない。途方に暮れていたところで、突然ドアが開く。そして、セイバーが顔を出した。
「三葉!」
「せ……セイバー、無事だったんやね!」
セイバーは私に駆け寄り、私を椅子に縛り付けている縄を解いてくれる。
「あ……ありがとう。」
「急いで!早くしないと、イリヤが戻ってくるわ!」
遠坂さんも顔を出す。皆で、助けに来てくれたんだ。
部屋を出ると、アーチャーも居た。
「君も、つくづく運の無い女だな?まあ、元凶は全てあの馬鹿なんだがな、恨むなら奴を恨め。」
また、衛宮くんの悪口?確かに災難だけど、別に衛宮くんが悪い訳じゃないんじゃない?
私、この事では、衛宮くんを責めるつもりは無いけど……
廊下を走り抜け、正面玄関ホールに出る。最短ルートで外に出ようと、階段を駆け降りる。しかし、後はホールを扉まで突っ切るだけというところで、イリヤに呼び止められた。
「何だ、もう帰っちゃうの?折角来たのに、残念ね?」
振り返ると、階段の上にイリヤが立っていた。
「こんばんは、あなたの方から来てくれて嬉しいわ、凛!」
遠坂さんは、黙ってイリヤを睨み付けている。
「どうしたの?黙っていちゃつまらないわ。せっかく時間をあげてるんだから、遺言くらいは残した方がいいと思うな。」
「そう、じゃあ、ひとつ聞いてあげる。イリヤスフィール、あんたが戻って来た気配は無かったけど、もしかして、ずっと隠れてたのかしら?」
「そうよ、私は何処にも行ってないわ。ここから、あなた達の道化ぶりを眺めていただけ。私は、この城の主なんだから、御もてなしをしなきゃ、お客様に……」
その時、屋敷中に響き渡る唸り声と共に、バーサーカーが私達の前に舞い降りて来た。そして、今にも飛び掛かろうかという野獣のような目で、私達を睨み付けている。
「もう、話す事は無いかしら?」
私達は、呆然と佇むだけだった。
「無い見たいね?それじゃ、始めようか?誓うわ、今日は、ひとりも逃がさない。」
「来るわ!」
「ぐわあああああああっ!」
襲い掛かって来るバーサーカーに、まずはセイバーが対峙する。しかし、相変わらずその強大な腕力に翻弄される。屋敷の中という事もあり、行動範囲も限定されてしまう。そこに、アーチャーが後方から弓で援護をする。波状攻撃でバーサーカーの体勢が崩れたところで、セイバーが懐に飛び込む。
「はあっ!」
セイバーは、剣のカモフラージュを解いて、バーサーカーの心臓に突き付ける。黄金に輝く剣が、バーサーカーの強靭な体を貫いた。
「ぐわああああああああああっ!」
目の光が消え、バーサーカーはその場に跪く。動きが止まり、体から出ていたオーラも消失する。
「やったわ!」
遠坂さんが、歓声を上げる。しかし……
「いや……まだだ!」
アーチャーがそう叫ぶと同時に、バーサーカーの右腕が動き出し、巨大な剣がセイバーに襲い掛かった。
「ううっ!」
「せ……セイバーっ?!」
バーサーカーの攻撃をまともに受けてしまい、セイバーは私達の前まで弾き飛ばされてしまう。胸は大きく切り裂かれ、大量の血が流れている。
「だ……大丈夫?セイバー?」
私は、セイバーに駆け寄る。
「な……何?さ……再生してる?」
遠坂さんの言葉通り、セイバーに貫かれた傷が、どんどんと塞がって行く。そして、バーサーカーの体からは、またオーラが発せられ始める。
「何をやってもムダよ、バーサーカーに敵なんて無いんだから!」
イリヤは、勝ち誇ったように言う。
「に……逃げるわよ!三葉!」
「え?」
「今のままじゃ、勝機が見えない。あいつが完全に再生する前に、できるだけここから離れるのよ!」
「は……はいっ!」
私は、セイバーに肩を貸して、起き上がらせる。
「アーチャー!悪いけど、私達が逃げ延びるまでの間、あいつの足止めをお願い!」
「賢明な判断だ。凛が先に逃げてくれれば、私も逃げられる……ところで凛、ひとつ確認していいかな?時間を稼ぐのはいいが、別に、あれを倒してしまっても構わんのだろう?」
「え?」
アーチャーと遠坂さんの間で、何かのアイコンタクトがあった。そして遠坂さんは、
「……ええ、遠慮はいらないわ。」
「では、期待に応えるとしよう。」
?……何だろう?今の、遠坂さんの表情は?
「さあ!急ぐわよ、三葉!」
「はい!」
「三葉、」
その時、アーチャーが私を呼び止めた。
「あの馬鹿に伝えておいてくれ、“お前は戦う者では無く、生み出す者に過ぎん。余計な事は考えるな、そのひとつを極めてみろ。忘れるな、イメージするものは、常に最強の自分だ。お前にとって戦う相手は、自身のイメージに他ならない“と……」
「あ……アーチャー、あなた……」
「三葉!早く!」
「は……はいっ!」
私は、セイバーに肩を貸したまま、遠坂さんの待つ出口の扉に走る。すると、アーチャーは両手に剣を投影し、それを天井に投げて天井を崩した。
「きゃあっ!」
間一髪で、私達は瓦礫を避けられた。しかし、私達とアーチャーは、崩れた瓦礫で完全に分離されてしまった。私達をできるだけ遠くまで逃がすために、通路を遮断したのだ。
「アーチャー……」
不安を抱えながらも、私はセイバー、遠坂さんと城を後にした。
イリヤがもしアーチャーの正体を知っていたら、自分のサーヴァントにしたいと思ったんでしょうか?原作のアニメで、士郎を自分のサーヴァントにしようとしたのに対し、アーチャーに対しては冷徹に始末しようとしているところが、何か虚しく思えました。
イリヤはアイリの娘ですが、ここでのクロエはアイリの娘ではありません。どちらかといえば、アイリの妹みたいなもんです。