キャロルがオタクになってしまった   作:岸寄空路

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二人目の転生者

「ただいまー」

 

 コンサートでの事件から暫く経ち、退院した龍也は家に帰ってきた。久しぶりの自宅に母と共に帰ってきた龍也は家に居るであろうキャロルとエルフナインに自身の帰宅を知らせる。

 

「いやーやっぱり自宅が一番――」

 

 落ち着く。そう言いかけた龍也はリビングの扉を開けて見えた光景に固まる。

 

「あ、お帰りなさい。お邪魔しています」

「ただいま。紫ちゃん」

 

 何故なら見知らぬ少女がテレビゲームをやっていた。ちなみにプレイしていたのはスーパーロボット大戦だった。母は普通に挨拶している。

 

「誰だお前は!?」

「地獄からの使者! スパイダー○ッ!!」

 

 その気は無かったが龍也のネタフリに謎の少女はノリノリだった。

 

 

 

「えー改めまして、初めまして唄川(うたかわ)(ゆかり)と言います。紫と呼んでください」

「えーと裃龍也。よろしく。俺も龍也で良い」

 

 紫と名乗った少女に戸惑いを隠せない龍也。何故ならその見た目が前世で見覚えが有ったからだ。

 

「失礼を承知で聞くけど……“結月ゆかり”って名前に聞き覚え有る?」

「あ、やっぱり解りますか」

 

 そう。紫の姿はVOCALOIDでVOICEROIDの『結月ゆかり』そのものだった。声も全く同じで龍也は前世に見ていた動画を思い出してしまう。

 

「私のこの姿が解るならあなたも転生者で間違いないですね」

「あ、ああ。俺も転生者だ」

「ゲームのラインナップでなんとなくそんな気はしていました」

 

 龍也の特典は前世の物なのでこの世界に本来存在しない物である。それを見て紫は龍也が転生者であるのではと判断していた。

 

「あれ? 父さんと母さんから聞いてなかった?」

「え?」

「二人には既に話してあるから」

 

 ちなみにその時の両親の反応は、父は「前世の経験を活かしてより高みを目指せるな!」、母は「あら、それならあまり子供扱いするのも良くないわね」と言った感じだ。龍也の感想は母よ、それだけで良いのか? いや助かるけど。父よ、俺をどうする気だ? その後、父による見た目年齢に合わないスパルタな特訓を受ける事になった。父曰く、「これくらいしなければノイズから逃げ切れないぞ!」だそうだ。その結果、龍也はOTONAの領域に片足を踏み込んでいる。

 

「そうですか……仲良しで羨ましいです」

「紫の両親は――」

「私の両親は話す前に亡くなったので」

「そうか……」

 

 空気が暗くなってしまい龍也も何を話したら良いのか悩む。

 

「まあ、あの二人は気づいていたかもしれませんけどね。なんせクリスちゃんと同い年なのに『お姉ちゃんなんだからクリスちゃんをお願いね』と言い残していますからね」

「そうか――んん?」

 

 紫の口から出た名前に思わず目を見開く。

 

「なあ、もしかして――」

「あ、私は雪音クリスちゃんの幼馴染なんですよ」

「マジか……」

「マジです」

 

 目の前の転生者も原作キャラに関わっている事に驚愕で呆然とする龍也。すると――

 

「その所為で予定外の結果になったがな」

 

 溜息を吐きながらキャロルが現れた。

 

「予定外?」

「本当ならフィーネより先に雪音クリスを確保するはずだった」

 

 その為にヤミーを用意し、キャロルの仲間だと思わせないためにヤミーにガイアメモリを使い見た目をドーパントに変えてクリスの下に向かわせた。

 

「向こうは紫を確保して雪音クリスに対する人質にするつもりだったんだろうな。真っ先に紫を確保しようとしてな」

「浚われそうになっている紫をヤミーが助けた、と」

「代わりに雪音クリスは連れて行かれた」

 

 だいぶ厄介な状況に龍也も溜息を吐いた。

 

「……どうなっていると思う?」

「ドーパントは紫を連れ去った悪、と認識しているな」

「間違いなくフィーネにとって都合の良い情報を刷り込まれていますね」

「紫を取り戻すには私の言う通りにしなさいって感じだろうな」

 

 三人揃って溜息を吐いた。

 

「……ところで、雪音クリスが帰国したのはコンサート前だよな?」

 

 空気を変える為に龍也が別の話題を振る。

 

「そうだが?」

「紫は今まで何処に隠れていたんだよ? 帰ってきたらゲームしてるし、母さんは当たり前の様に挨拶してるし」

「お前が入院する直前までチフォージュ・シャトーに匿っていた」

 

 龍也の予想通りの答えだった。まあ、他に匿う場所などないが。

 

「すぐに裃家に匿ってもらうのはまずいからな。表向きは行き倒れていた処をお前の母親が保護したことになっている。ついでに誘拐されてから保護される直前までの記憶は無いと言う事になった」

「よくそれで通ったな?」

「お前の父親に言え。『ちょっと待ってろ』と言ってどっかに電話したらここで暮らすことになっていたからな」

「いやぁ~、あれはもう『その時、不思議な事が起きた』としか言えませんでしたね」

 

 龍也の父親が動いた結果らしい。実際、龍也の父の知り合いにはOTONAとしか言えない人が多い。ノブヒコとかホンゴウとかカザミとか。

 我が父ながら恐ろしくも頼もしい。龍也はそう思った。

 

「そういえば、紫も転生者なら何か特典を持ってるのか?」

 

 話を変えたい龍也は別の話題を質問した。

 

「ふふふ、そうですよね。気になりますよね」

 

 龍也の質問に嬉しそうに笑みを浮かべる紫。その姿は自慢したくて仕方がないと言った様子だ。

 

「では――お見せいたしましょう!」

 

 そう言って紫は懐から蛍光グリーンと蛍光ピンクの派手なアイテムを取り出した。それを装着した紫は更にグリーンとオレンジのアイテムを取り出す。

 

「それは!?」

「変身!」

『ダブルガシャット!』

 

 手に持ったアイテムをベルトに差し込みレバーを引くと音声が流れ出す。

 

『レベルアップ! マイティブラザーズ! 二人で一人! マイティブラザーズ! 二人でビクトリー! X!』

「仮面ライダーエグゼイドダブルアクションゲーマーレベルX!」

「おおー」

「更に……だーい変身!」

 

 バックルのレバーを開閉し再度変身する紫。

 

『ダブルアップ!』

『俺がお前で! お前が俺で! ウィーアー! マイティマイティブラザーズ! ヘイ! ダブルエーックス!』

『ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!』

 

 予想通り仮面ライダーエグゼイドダブルアクションゲーマーレベルXXRとXXLに分離する紫。

 

「……一つ質問良いか?」

『なんでしょう?』

「どっちも紫で良いのか?」

「あ、いえ私XXLが紫です」

「……じゃあそっちは?」

「あ、どうも紫ちゃんに感染しているこの世界唯一のバグスターです。(あかり)とお呼びください」

「お、おう」

 

 会話しながら紫と燈の二人は変身解除する。するとXXRだったバグスターの姿を見て龍也は確認の質問をする。

 

「“紲星あかり”?」

「あ、はい。そうです」

 

 またもやVOICEROIDにそっくりの姿に呆れる龍也。

 

「なんでこう、見覚えが有る姿なんだ?」

「ああ、それなら単純に私達を転生させた神の趣味ですよ」

「は!?」

 

 予想外の事実に驚く龍也。当然だろう。龍也自身も見た目はペルソナ5の主人公と見た目そっくりなのだから。その理由が神の趣味だとは知りたくなかった。

 

「いや、転生前に見た目と性別はどうなるか聞いたら『選ばなかった場合はこっちで好き勝手に決める』とか言っていたので。まあ、前世の記憶も知識ぐらいしか残らないとの話でしたので特典は生き残ること優先で決めたんですけどね」

 

 親によって決まるとかではなく神の気まぐれで容姿が決まると言う不安しか感じない情報を聞いて、そう考えられる紫に思わず尊敬の目を向ける龍也。

 

「まあ、いいや……。もう一つ聞いても良いか?」

「なんでしょう?」

「他のガシャットは有るのか?」

「当然!」

 

 そう言って紫はドヤ顔して金色のガシャットを取り出す。

 

「エグゼイドなら当然! これを貰わない理由などありません!」

「ハイパームテキか」

「これが有ればノイズなど怖くありませんからね!」

 

 確かにムテキゲーマーならばベルトが壊されでもしない限りピンチに陥る事は無いだろう。だが同時に疑問が浮かぶ。

 

「それが有るなら雪音も守り切れたんじゃないか?」

 

 変身する隙も無かったのだろうか? と考えながら紫に質問する龍也。

 

「そ、それは――」

「そいつはマイティブラザーズとハイパームテキ以外のガシャットを持っていない」

「……え?」

 

 引き攣った笑みを浮かべる紫の代わりにキャロルが回答する。その答えに龍也は一瞬、言葉を理解することができなかった。

 

「いやいやいや、なんでその二つだけなんだよ!?」

「転生者は三つの特典を貰えるのは覚えているか?」

「当然。そもそもキャロルにそれを教えたのは俺だろ?」

 

 ちなみに龍也の特典は

 

1. 四次元ポケット(本人の任意で開閉)

2. ポケットの中身をラノベ、漫画、ゲーム、アニメや特撮のDVDまたはBDにする

3. 新しく作られたものを含めて補充、追加していく

 

 というむしろ三つで足りるのか、聞かれんばかりの内容である。戦闘? 最初はする気など無かったと言っておこう。

 

「紫の場合、一つ目がマイティブラザーズXXガシャット、二つ目が自身に感染しているバグスターの相棒が欲しい。三つ目がハイパームテキガシャット」

「あれ? それだと――」

「お前の予想通りだ。マイティブラザーズでは無敵モードすら使えん」

「意味無いじゃん!」

 

 龍也の言葉に紫は目を背けて口笛を吹いている。燈は苦笑し、キャロルは天を仰いでいる。ちなみに本来ならゲーマドライバーすら無くガシャットだけの状態だったのだが、流石に可哀想に思ったのか特別サービスで付いてきたらしい。言われるまで気づかなかった紫に神は残念なものを見る目を向けていたらしい。最初からエグゼイドの変身アイテム一式にしとけばよかったのだから残念ながら当然としか言えない。

 

「だからこいつは今までレベルXの状態で捕虜の状態から脱走し雪音クリスを抱えて逃げ続けていた処をイチモンジとか言うカメラマンに保護されたらしい」

「まあ、この世界じゃOTONAに遭遇でもしない限りは逃げ切れるか……」

「ふ、二人共! そ、そんな可哀想なものを見る目で見ないでくださーい!」

「あはは……」

 

 龍也とキャロルの「こいつ大丈夫か?」と言わんばかりの視線に紫は半泣きで両手両膝をついた。燈は遠い目をしながら乾いた笑いしか出ない。

 

「まあ、これをサンプルに他のガシャットを創ってやるから我慢しろ」

「すいませんがお願いします」

 

 キャロルがマイティブラザーズXXガシャットを持って行き、燈が頭を下げてお願いしていた。

 

 こうして裃家に二人の同居人が増えるので有った。後日、クラスメイトにその事がばれた龍也は嫉妬した男子生徒達に追いかけられる事となるが特に語る予定は無い。

 

「龍也さん」

「これからお世話になります」

『コンゴトモヨロシク……』

「その言い方止めろ」

 

 




次回、龍也もライダーに変身?
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