キャロルがオタクになってしまった   作:岸寄空路

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サブタイトルが思いつかなかった!


第23話

 

 ……これがデジャブなのかな?

 

 響は目の前の光景を見て既知感を覚えた。以前にもこうやってノイズに囲まれたような気がする。いや、記憶は曖昧だが実際にツヴァイウィングのライブで同じ目に遭ったのだからおかしくは無い。だが、同時に頭に過るのは何者かが自分の胸を叩きつける瞬間。それはキャロルの記憶処理だけでなく、響本人が思い出したくないと最も深くに封印した記憶。

 

 ――嫌だ。

 

 金属で出来た何かが自分を襲う光景を。

 

 ――来ないで。

 

 流れ出る血と迫りくる死の恐怖を。

 

 ――怖い、コワイヨ。

 

 恐怖が脳内を満たそうとした瞬間――

 

「ライダーブレイク!」

「え」

 

 バイクに乗った騎士が現れた。騎士はノイズを蹴散らしながら自分と少女の前に立つ。その姿に思い出す。

 

「そこでジッとしてろ」

 

 その声で思い出す。

 

「あ――」

 

 命懸けで戦う背中を。自分を守る為に傷つく誰かがいた事を。自分の為に戦い続ける姿を。

 

「そうだ――」

 

 その時に自分が何を思ったのかを。

 

「私は――」

 

 絶望した自分の中に芽生えた思いを。

 

「――生きるのを諦めない!」

 

 その瞬間、響の胸から光が放たれ、シンフォギア奏者として覚醒した。

 

 

 

「……っく、マジか」

 

 数秒ほど呆けていた龍也は正気に戻るが動揺を隠せずにいる。

 

「え、え!? なんで!? 私、どうなっちゃってるの!?」

「お姉ちゃん、カッコいい!」

 

 そんな会話が聞こえるが龍也の耳に入ってこない。再び変えられなかった事に自身の無力さを感じずにいられないのだ。

 

(やっぱり俺では――)

『いつまでも後悔している場合か! ノイズが動くぞ!』

「!」

 

 キャロルの言葉に龍也はノイズに向き直る。ノイズが響達や自分に近づいてくるのが見えた。

 

「ッ! その子を抱えてろ!」

「え!?」

 

 そう言って龍也は剣を仕舞うと女の子を抱きかかえた響をお姫様抱っこする。

 

「え、え!?」

「しっかり掴まってろ!」

 

 屋上から大ジャンプした龍也はノイズが少ない場所まで二人を運ぶ。慣れてない響に逃げさせた場合、女の子の負担がどうなるか解らないが故の判断だ。

 

「よし。ここなら……」

「あ、あの――」

「説明は後だ。お前はその子の傍に居ろ」

「は、はい」

「今のお前ならノイズ相手でも即死することは無いはずだ」

「え?」

 

 龍也は響の疑問に答える事無く、屋上から飛んでくるノイズを撃退していく。その背後で別方向から襲ってきたノイズに自らの拳が当たり倒した響の姿も有った。

 

「さすがに俺一人では厳しいか……」

 

 こんな事なら燈を、レーザーをレベル1にしておくべきだったと龍也は後悔した。しかし仮面ライダーの知識が無いならレーザーが人型になると想像できないはずなので可能なら隠し玉としてレベル2以外をできるだけ見られないようにしたいと言うのも有る。紫はクリスの事が有るからまだ見られる訳にはいかない。現状、龍也一人しか表だって行動できないのが悩ましい。

 

「む」

 

 そうしてどうすべきかと考えながら戦っていると二台のバイクの音が聞こえてきた。よく見るとノイズを弾き飛ばしながらバイクで疾走するツヴァイウィングがこちらに向かってきていた。

 

「え」

 

 二人は響の横を通り過ぎるとバイクから跳んだ。

 

「あ――」

 

 そして二台のバイクはその先にいた巨大ノイズの足にぶつかり爆発した。

 

(二人揃って乗り捨てしちゃうのかぁ……。そっかー)

 

 翼だけでなく奏まで同じ事をするのかと、実はアレ経費で落ちるのか? とかどうでもいい事を考えながら龍也は二人を眺める。

 

「よく頑張ったな」

「あとは私達に任せて」

「え、あ、はい」

 

 響を安心させる様に話しかけたツヴァイウィングはシンフォギアを纏い二人同時にアームドギアから衝撃波を放つ。それにより二人の目の前にいたノイズの大半が爆発に飲まれた。更に追撃と言わんばかりに跳躍した二人は無数の剣と槍を降らしノイズ達を貫く。

 

「そういえばXDで奏が使う技って翼と同じのが多かったなぁ……」

 

 そこからはもはや無双ゲーと言わんばかりにノイズ達を殲滅していくツヴァイウィング。二人の息の合ったコンビネーションはまるでダンスを踊っているようだった。

 

「すごい……翼さんも奏さんも……」

 

 最後は巨大ノイズをまたまた二人揃って巨大化したアームドギアで貫いた。

 

「……今のうちにっと」

 

 そして龍也は隙を見て燈の元に向かい――

 

「さて、後は二課に任せるとしようか」

「……コノウラミハラサデオクベキカァ」

「……うん、俺が悪かった。今度、スイーツを奢るから勘弁してくれ」

 

 燈に恨み言を呟かれ続けながら龍也はレーザーに乗って帰還した。

 

「あれ? さっきの人は!?」

 

 後に気づいた響が叫ぶ頃には既にその姿は見えなくなっていた。

 

 

 

「ただいまー」

「おかえり」

 

 自宅へと戻った龍也はリビングにいたキャロルに帰宅を告げる。

 

「状況は?」

「ん」

 

 キャロルの目線がテレビに向いたのを見て龍也もそちらに目を向けた。

 

『あ、ははは』

『無理して笑わなくていいからな?』

『落ち着いて――と言うのも無理よね』

 

 画面の向こうではエレベーターに乗った響と奏と翼の会話が行われていた。

 

「……なんか違和感」

「風鳴翼の対応が違いすぎるからじゃないか?」

「あー」

 

 キャロルに言われて思わず手を叩く龍也。言われてみればノイズとの戦いの場に現れた時も響への対応が違った。

 

「やっぱ奏が生き残っているからか?」

「他に風鳴翼が変化する理由は考えられないな」

「まあ、響への初期の対応の理由って大概は奏が理由だしな」

 

 しかし、これが良い変化なのか悩みどころである。

 

「しばらく様子見かな」

「だな」

 

 そう言って二人は再び画面に目を向ける。

 

「そう言えばこの映像どうやって撮ってるんだ?」

「インビジブルメモリを使ったヤミーに撮影させてる」

「ちょっと待て、何時創った!?」

「この時の為に色々用意しといた」

 

 どうやらまたガイアメモリの種類を増やした模様。便利だから仕方ないね。

 

「お、二課に着いたみたいだな」

「歓迎するのは一緒か」

「エレベーターに乗ってる全員が呆れているな」

「まあ、空気読んでるのか読んでないのか解らん対応だしな……」

 

 彼らなりに気を使ったのだろう。

 

「だが、そんな事はどうでもいい」

 

 しかし、キャロルにはどうでも良かった。

 

「オレはわざわざこんな茶番を見る為にヤミーを侵入させたわけじゃない」

「ですよねー。しかし、よくOTONA達に気づかれなかったな……」

「ふ、何のために響にヤミーを着けさせていると思っている」

「え?」

「いくら奴らが規格外でも最初からいる気配に疑問も持たんだろう!」

「なん……だと……!? まさか!?」

「龍也のすぐそばに侵入用ヤミーを憑け、お前が響の近くに移動した時にこっそり響と一緒に行動していた!」

「何時の間に!?」

「さらに!」

 

 そう言ってキャロルが画面を指さす。すると、そこには響の鞄から、数枚のセルメダルが誰にも見られない様に転がっていく。

 

「こっそり響の鞄に自壊機能付きセルメダルを忍ばせていた!」

「自壊機能!?」

「いざと言う時は証拠も残さん! 当然、遠隔操作も可能!」

「無駄に機能追加してやがる!」

「と言う訳で行け! メダル共! 内部構造を調べろ!」

 

 キャロルが転がるセルメダルに命令を下す。その指示に従いセルメダルはリディアンの地下を虱潰しに探索していく。

 

「ふっふっふ。セルメダルが通った場所はこっちの機械に情動的にマッピングされていく」

「あの小さいメダルにどんだけ機能を詰め込んでるんだよ……」

 

 最早セルメダルの形をした何かである。

 

「コアメダル作成の過程で色々試している内にな……」

「どういう過程を辿ったらそうなる」

「何故だろうな……。時々爆発したし」

「本当に何をしたらそうなる!」

「ただもう一度創れと言われても無理だ。徹夜明けのハイテンションで創ったからどうやったか解らん」

「そんな事だろうと思ったよ!」

「予想だがメダルの形をしたシフトカーみたいな物になっている……気がする」

「もう何でも有か」

 

 そんな雑談をしていると、キャロルの持っている端末から警報が鳴る。

 

「む、人に見つかったようだ」

「そんなことまで知らせるのかよ……」

 

 もう本当にメダルじゃなくてシフトカーのプロトタイプと思った方が良いだろう。きっと今回の件を活かしてシフトカーを完成させる日は近い。

 

「!?」

「どうした?」

「砕かれた……だと」

「?」

「メダルが砕かれた」

「ちょっと待て、二課の人間がセルメダルを砕くのはおかしいだろ」

 

 二課にはキャロルがセルメダルを渡している。増やし方も教えてないのでわざわざ使えなくする理由は無い。ちなみに量産型メダジャリバーはノイズ相手に時間稼ぎなどが多い自衛隊が使用している。

 

「つまり――」

「違う奴がいるな」

 

 メダルが砕かれた場所まで透明化したヤミーを誘導する。そこには既に誰もいなかった。

 

「しかし解らん」

「何がだ?」

「セルメダルを砕けば屑ヤミーが生まれる。あれを砕く事が出来ると知っている人間がそれを知らんとは思えんのだが――」

「セルメダルに擬態したコアメダルと思ったとか? いや、無いか?」

「勝手に動いていたからそう思った可能性も否定できんな……。確認の為にやったのか?」

 

 疑問が湧くが答えが出ず、頭を悩ませていると画面に唐突にある物が出現した。

 

「!」

「こ、これは――」

 

 それはライダーの知識が有るものなら少なくともどの作品か一目で解る映像だった。それが映ってすぐにヤミーからの映像は途切れた。

 

「…………」

「なあ、キャロル」

「お前の言いたい事は解る」

「「今のは――」」

 

 ――レモンだ。

 

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