キャロルがオタクになってしまった   作:岸寄空路

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あけましておめでとうございます。
またまた遅くなって申し訳ない。
今年もなんとか頑張って進めます。

展開に長いことを悩んでいたのですがなんとか続き書きました。


迷い藻掻きながら

「さて、予想外の敵が現れたわけだが」

「正直、最悪以外の言葉が出てこないんだが……」

 

 キャロルの言う通り予想外であり、龍也の言う最悪の理由は他でもない「ヘルヘイムの森が存在するかもしれない」と言うことだ。もしそうなった場合、あの世界の植物やインベスなど危険すぎる存在がこの世界――いや、この星というべきだろうか――に現れるかもしれない。もしそうなれば人間どころかそれ以外の生物もインベスと化す。もしこれが転生特典だとしたら「鎧武をちゃんと見ていたのか!?」と文句を言いたい。

 

「大丈夫だ」

「なんでそう言える?」

「鎧武を知っている奴がロックシードを特典に選ぶリスクを考えないわけないだろ?」

「それは――」

「よく知らない奴はそもそも選ばん」

 

 キャロルの言う通り、言ってはなんだがモチーフの一つがフルーツである鎧武をよく知らない者が選ぶとは言い難い。

 

「少なくともヘルヘイムの森に関しては問題無いだろう。何の対策も無く利用できるものではないからな」

「いや、だけど――」

「何、最後の手段は有る」

「そ、それは?」

「ソロモンの杖を使ってヘルヘイムの森に全ノイズを投入する」

 

 怪人であるヤミーが炭化した以上、元人間(というか異星人)が多いであろうインベスはノイズに炭化されて終わりだと思われる。そうキャロルは判断したのだ。

 

「だからそっちは気にするな。問題は相手が何処まで出来るか、だ」

「と言うと?」

「まあ、高確率でレモンエナジーアームズ……デュークかバロンだろうな」

「ああ、確かに普通ならどっちかだな」

「さすがにレモンアームズは無いだろうしな」

「となると」

「一番注意すべきなのはロード・バロン、だな」

「ライダーのままならスペック的に紫と燈がXXになれば勝てると思うけど……」

「あてにならない」

「だよなー」

 

 仮面ライダーのクロスオーバーではスペックなど飾りである。代表例で言えば電王だろう。後は変身者の身体能力や技量でいくらでも埋められる。そもそもキャロルの創った物ですらオリジナルとは違う事もできるのだ。相手もオリジナルより強い事を想定して動くべきだろう。

 

「今できる事は――」

「とりあえず鍛えとけ」

「ですよねー」

 

 全てのライダーは変身者の身体能力の上昇に比例して強くなる――と思われる。まあ、鍛えるのは無駄ではない。体が強くなれば負担も減るのだから。

 

「はあ、まあ今考えても仕方ないし何時も通り鍛えますか」

「その意気だ」

 

 今はそれしかできないのだから。

 

「ところで燈は?」

「……部屋でふて寝してる」

 

 

 

 翌日。

 

『ZONE! Maximum Drive!』

「行けヤミー!」

 

 キャロルはリディアンの地下にヤミーを転送した。何故、前日はこの方法を行わなかったかと言うと基本的にゾーンメモリは転移させたい物や場所など把握できていないと上手く能力を使えない。それ故に事前にヤミーを侵入させる必要が有ったのだ。

 

『でも私はその聖遺物と言う物を持ってません。なのに何故……』

「ふむ、どうやら響に説明しているところだったようだな」

「タイミング良いなおい」

「狙ったからな」

 

 その為、前回リディアンの地下を調べたのは直接転移できるようにするためだ。今回の様に秘密裏にヤミーを侵入させ情報を集めるのともう一つ、デュランダルの保管場所の正確な位置を割り出す為だ。しかし、邪魔が入ったので不明なままだ。

 

「で? 今回はどうすんだ?」

「特に何も」

「え?」

「今回は原作と違う響がどうするのか確認するだけだ」

 

 保管場所の確認はしたいが今は無理だ。恐らくフィーネ側に付いているロックシードを使う何者かは地下におり、透明化していたヤミーすら見つけられる。それ故に侵入は難しい。インビジブルメモリに強化アダプターを使うと言う手もあるが、前回のヤミーによってガイアメモリの存在は確実に知られている。相手に利用されない為に自壊させたが対策はされるだろう。

 

 閑話休題。

 

「最悪な形で融合症例になってしまったからな。どうなるのか予想がつかない」

「まあ、な。殺されかけた様なものだしな」

 

 あまりにも無理矢理なやり方で融合症例にされた響の心情はわからない。しかし、戦える様になった理由を考えると――

 

『……少しだけ時間をください』

 

 響きはすぐに戦えるとは言えなかったようだ。

 

 

 

 響は悩んでいた。

 

 自分にはノイズと戦える力がある。

 

 そう言われ、力を貸して欲しいとも言われた。できることなら自分もツヴァイウィングと共に戦いたい。

 

 だが自分が力を手に入れたきっかけを思い出してしまった。聖遺物を見たこともないロボットに無理矢理埋め込まれた。

 

 それが怖い。

 

 まるで自分がノイズと戦えるのは誰かの思惑通りとなっているかのような気持ち悪さも感じてしまい戦うのを躊躇ってしまう。

 

 だがノイズと戦うべきだと思う自分もいて結局、保留以上の答えを言えなかった。

 

「私、どうしたら……」

 

 響は未来の元にすぐ戻る気にもならず学園の屋上に無断侵入して考え込んでいた。とにかく一人で考えたかったのもあるだろうが、その様子はどこかにいる相談できる誰かを探しているようにも見えた。

 

「こんなところにいると風邪引くぞ」

 

 それ故に様子を見に来た男は思わず声をかけた。

 

「え……ええええぇぇぇぇ‼」

 

 響は声が聞こえた方に目を向けるとフェンスの上で両腕を組み、月を背にしている鎧の男がいた。はっきり言うとロム立ちしている銀色のナイトブレイザーがいた。

 

 当然ながら龍也である。本当なら来るつもりは無かったのだがライブの時の記憶を思い出しているか確認するために響に会いに来たのだ。

 

「そんなに大声出すな。別に何もする気はない」

「え、え、あのどうしてここに?」

「それは――」

 

 なんて言おう? 龍也は考える。変な理由を言うと引かれるからできるだけ考えて回答しなければと。

 

「……ちょっとあるものを探している」

「なんですか?」

「ロボット」

「!?」

「知っているみたいだな……」

 

 やはり思い出していたか、と龍也は溜息を吐く。忘れたままの方が良いのか今後の事を考えると思い出している方が都合良いのか、龍也には判断がつかなかった。

 

「え、えっと……」

「ああ、言いたくないならいい。自分で探す」

 

 そう言って背を向けて去ろうとする龍也だったが――

 

「待ってください!」

「ん?」

 

 呼び止められ頭だけ僅かに響の方に向ける。

 

「どうした?」

「その、あなたはノイズと戦っていましたよね?」

「……それが?」

「怖く、無いですか?」

 

 まさかそんな質問されるとは思わなかった龍也は鎧の下で目を見開く。

 

「私は、怖いです」

「ノイズが、か?」

 

 龍也の言葉に響は首を横に振る。

 

「自分の力が、です」

 

 そう言って響は自身の震える両手を見る。

 

「私がノイズと戦えるのは偶然じゃなくて、誰かが私に戦わせようとしている気がして、怖くて、怖くて仕方がないんです……!」

 

 よく見れば顔も青くなっている響にどう答えるべきかと龍也は悩む。

 

「…………」

 

 なんて答えれば良いのか。綺麗事を言うのは簡単だが、それで納得するとは思えない。

 

「生きるためだ」

 

 だから正直に答えた。

 

「生きる、ため?」

「そうだ」

 

 ただそれだけのために? と響の脳内は疑問で埋め尽くされていた。そんな響にもう一度、龍也は自分が戦う理由を述べる。

 

「できるだけ後悔無く、生きるためだ」

「後悔無く?」

「ああ。できることが、やれることが有る。誰かを助けられるかもしれない、救えるかもしれない。そんな何かを持っているのに何もしないのは嫌だから、そんな後悔しながら生きたくないからだ。それに……」

「それに?」

 

 それは二度目の生で決めたこと。

 

「叶えたい願いが有るのに叶える努力をせずに諦めるのは止めたんだ」

「願い?」

「とりあえずは家族や友達、失いたくない人達を守ることだ」

「あ――」

 

 その言葉を聞いて響は思い浮かべる。家族を、親友を、友達、みんなの顔を。

 

「見も知らぬ他人のためじゃなく身近な誰かのためでしか俺は戦わないんだ」

「それで良いんですか?」

「戦う理由なんてそんなものだ」

 

 そう言って龍也は今度こそ去ろうと完全に背を向ける。

 

「例え誰かの意図であろうと力を使うのはお前自身だ。力の使い方なんて自分で決めてしまえばいい」

「…………」

「少なくとも俺はその答えを正しいかどうかなんて言うつもりは無い。ただ、間違っていると思ったら止めてやるよ」

「……その時はお願いします」

「ああ」

 

 響は龍也に背を向けて走り出す。同時に警報が鳴るのが聞こえた。

 

(私は、未来を、お父さん達を、みんなを守りたい!)

 

(きっと私は誰かに利用されているのかもしれない。だけど!)

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

「今、守りたいと思うのは私の意思だー!」

 

 

 

「焚きつけるつもりは無かったんだがな……」

「そういう割には嬉しそうだな」

「そりゃな」

 

 ノイズの現れた場所まで跳んでいく響。その表情は――

 

「あの顔を見れば少なくとも悪いことではなかったとは思えるからな」

 

 迷いを振り切った笑顔だった。

 

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