キャロルがオタクになってしまった   作:岸寄空路

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混戦①

「奏さん! 翼さん!」

 

 それは響が追っていたぶどうノイズ(正式名称:セルノイズ)が飛行していた翼の斬撃によって一刀両断されたタイミングだった。

 

「おう、響。無事か?」

「あれが最後でいいのかしら?」

 

 奏は響の無事を確認し、翼は他にノイズがいないか周りを警戒している。

 

「はい! 大丈夫です! それに今のノイズで最後です!」

 

 それに元気よく返事する響。憧れのツヴァイウイングと親しく会話できていることが嬉しいのだ。

 

「そうか。なら帰り送ってやろうか?」

「え?」

「約束があるんだろう? 実はこの近くに便利なのがあるんだ。見たら驚くぞー」

 

 一緒に戦っているうちに親しくなった奏や翼には未来との約束の事も話している。奏が死亡していた場合は、翼が拒絶しているためにそんな会話すらできなかったが、生き残っている事で三人はちゃんと協力し合ってノイズと戦っている。

 基本的には奏が響の指導をし、翼が二課で活動する上で必要な知識を教えるといった様に順調に響は強くなっている。少なくともこの時点では奏がいない世界よりも実力を付けている。さすがに弦十郎の指導を受けた状態には程遠いが。

 

 閑話休題。

 

 最後のノイズを退治したのを確認した奏はキャロルから二課にメダジャリバーと共に譲渡されたある物を使おうと提案した。

 

「奏、あれは非常時用――」

「まあまあ、いいじゃんか。頑張ってる新人を少しぐらい贔屓したって」

 

 奏の思惑に気づいた翼は止めようと声をかけるが奏は気にせずに移動しようとする。

 

「その前にあたしの相手をしてくれよ」

 

 すると近くの森の方から声が聞こえてきた。

 

「誰だ!?」

 

 翼が大声で声の聞こえた方に問いかける。本来ならノイズの出現で避難が終わっているので奏者達以外の人間はいないはず。それにも拘わらずこの場にいる人間に翼と奏は警戒せずにはいられなかった。

 

「な!?」

「あれは!?」

 

 月明かりに照らされて現れた声の主の姿に翼と奏は驚きの声を上げる。響は戸惑いながらその様子を見ることしかできない。

 

「ネフシュタンの鎧……!」

「お前、なんでそれを?」

 

 翼が驚きながらも鎧の名を呟き、奏が鎧を纏っている少女に問いかける。

 

「わざわざ教えるために出てきたとでも思うのかよ?」

「ならば――」

 

 奏の問いに嘲るように答える少女に翼は自らのアームドギアを構える。

 

「力づくで聞きだす!」

 

 その様子を見ながら奏は翼に小声で話しかける。

 

「響はあたしが守る。任せて大丈夫か?」

「当然よ。防人の名は伊達ではないわ」

 

 お互いの役割を即座に決め、翼は少女に斬りかかり、奏は響の前に自身を壁にするように立つ。

 

「止めてください翼さん!?」

「ジッとしてな」

 

 そう言って響を抑え込む奏。しかし、響は目の前の状況に納得できないのか奏に自身の疑問をぶつける。

 

「でも、相手は人ですよ!?」

「落ち着けって」

 

 そんな響に奏は諭すように状況を説明する。

 

「あのネフシュタンの鎧は完全聖遺物、分かりやすく言うとシンフォギアより危険なもので、元々は二課で管理していたんだけど、二年前に盗まれたんだ」

「え? という事は――」

「そう、あいつは盗品の危険物を装備しているんだ」

 

 響は奏の言葉を聞き、翼と戦っている少女が少なくとも味方とは言い難いことは理解できた。だが、それでも完全に納得できない。

 

「だからってなにも戦わなくても……」

「響の気持ちも分かるけど危険物を装備している奴に、それも明らかに戦う気が有るんだぞ? これが警察なら取り押さえてもおかしくないだろ?」

 

 奏の言葉に響も「確かに……」と納得する。戦う理由に納得できた響から奏は目を翼の方に向ける。

 

「ほらほら、どうした? 一人でどうにかできるんじゃないのか!?」

「くっなめるな!」

(苦戦しているみたいだな)

 

 シンフォギアと完全聖遺物の性能差、だけでなく鎧を纏っている少女自身も強い。奏は助太刀に行こうとする。

 

「あの、奏さん」

 

 しかし、響に呼び止められ足を止めた。

 

「どうした?」

「あの手錠みたいなのも完全聖遺物なんですか?」

「手錠?」

 

 響に言われて鎧の少女を見ると確かに鎧とは不釣り合いな枷が両手首に付けられている。

 

「それにさっきからあの子、表情が全く変わっていないような……」

「なに?」

 

 響の言葉にさすがにおかしいと思った奏は少女の顔をよく観察する。

 

「ちょせえ!」

「このぉ!」

「……確かに」

 

 戦いに集中しているならおかしくないが、話し方と声に籠った感情などを考えると不自然と言えるほど表情が変化していない、剥離していた。

 

「変、ですよね?」

「変だな」

 

 明らかにおかしい。それは奏にも分かった。

 

「とりあえずあのあからさまな手錠から壊してみるか」

 

 それが原因かもしれないならこれ以上戦わずに済むかもしれない。そう判断しアームドギアを構え走り出そうとした瞬間――

 

「!」

 

 突然、奏と響の方に杖を向け閃光を放つ。直撃せず二人の周囲の地面に当たると光の中からノイズが現れた。

 

「ノイズが操られている?」

「響!」

 

 奏と分断される形でノイズが召喚され、孤立した響は予想外の状況に固まる。そこをノイズが襲い掛かろうとする。

 

『ACCEL!  Maximum Drive!』

 

 だが次の瞬間には響の姿がその場から消えた。

 

「え、えええぇぇぇー!?」

 

 奏が響の叫びが聞こえた方に向くと離れた場所で赤いマフラーに銀色の鎧を身に纏った人にお姫様抱っこされている響が居た。

 

「え、なんで私、こんな事に!?」

「落ち着け」

 

 そう言って響を下す。咄嗟に抱き抱えたが気恥ずかしくてすぐに下したのだ。

 

「あ、ありがとうございます。えっと――」

「? ああ、ブレイザーとでも呼んでくれ」

 

 そう言えば名乗ってなかった事に今更気づいた龍也は鎧の名前で答えた。

 

「はい、ブレイザーさん!」

「おう」

 

 響の元気良い声に返事しながら龍也はネフシュタンの鎧を纏う少女、雪音クリスを見る。

 

(どうやら思ったよりも状況は悪いな)

「で? ブレイザーだっけ? お前、何者だ?」

 

 何時の間にかノイズを退治した奏が龍也のすぐ近くまで近づいていた。

 

「あー、二課の協力者の部下。そう思っといてくれ」

「協力者? ってもしかして――」

「おっと、名前は言うなよ。許可が無い相手には秘密にするように言われているだろ?」

 

 二課の協力者。当然、キャロルの事である。

 

「それに俺の事よりも彼女の事だ――!」

 

 話している途中、龍也の足元に黄色く光る矢が飛来する。

 

「こいつは――」

「やれやれ、これ以上余計な真似するのは止めてもらえるかな?」

 

 それは何もない空間から突然現れた。

 

「ステルス機能まで付いているのか……。いや、そのライダーならあり得るか」

 

 龍也は現れた者の姿を見て、「まだましか」と自分に言い聞かせる。性能を考えれば楽では無い事は百も承知。だからこそ負けるわけにはいかないと闘志を燃やす。

 

「初めまして、”ナイトブレイザー”。その姿を見るとロードブレイザーはいないみたいだね」

「そう言うそっちはメガヘクスでもバックについているのか? “仮面ライダーデューク”」

 

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