キャロルがオタクになってしまった   作:岸寄空路

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前回を投稿した次の日にXDでガチャ引いたら初の星6が出ました。ちなみに響(Glorious Break)でした。
「書けば出る」と言う都市伝説は真実だった? そう思わずにはいられませんでした。(単なる自慢)


混戦③

「オーズか……ガイアメモリとナイトブレイザーに酷似した鎧、それが君の特典かい?」

 

 奏と鍔迫り合いをしながらデュークが龍也に尋ねる。

 

「律儀に答えるとでも?」

「思わないさ。口を滑らせてくれたらとは思ったけどね」

 

 龍也の言葉に特に気にするでもなく余裕な態度を崩さないデューク。

 

「あたしを無視してんじゃねえ!」

「おっと」

 

 奏の振るう槍をソニックアローで受け止める。

 

「今の内だな」

 

 デュークの意識が奏でに向いている隙を狙って龍也はバッタレッグに力を込め高く跳躍する。

 

「おらぁ!」

「「な!?」」

 

 横跳びの形で翼と戦っているクリスに跳び付く。

 

「抱きついてんじゃねえ!」

「うおっと」

 

 そのまま一緒に転がっていくとクリスが殴ろうと拳を振り上げた。それを見て龍也は素早く離れる。

 

「何を――」

「悪いな」

 

 横槍を入れられた翼は文句を言おうとするが、龍也に制止される。

 

「あの娘の相手は俺にさせてもらう!」

 

 翼の返答を聞くことなく龍也はクリスに近づく。

 

「今度はお前が相手か?」

「ああ」

「シンフォギアでもないそれで――」

 

 クリスは鞭を振り上げながら叫ぶ。

 

「アタシ様に勝てるつもりか!?」

「勝つつもり? 違うな」

 

 振り下ろされる鞭を龍也はトラクローで弾く。

 

「助けるつもりだ」

 

 タカアイを光らせながら龍也はメダルを取り出す。

 

「何が助けるつもりだ!」

 

 再び鞭を振るうクリスを見ながら龍也はベルトのメダルを取り換える。

 

「やれるもんならやってみろ!」

「なら遠慮なく」

『タカ! トラ! チーター!』

 

 メダルをスキャンしタカトラーターに変化すると同時に龍也は走り出す。

 

「おらぁ!」

 

 トラクローでクリスの腕に付いた枷を狙う。

 

「ちょっせえ!」

「ぐぅ!」

 

 しかし、避けられカウンター気味に蹴りを腹に入れられる。そのまま蹴り飛ばされた勢いを利用して距離を取る。

 

「やっぱりまずは動きを止める必要があるか!」

 

 そう言って龍也は倉庫からある物を取り出す。

 

「頼むぜ!」

『LUNA!』

 

 取り出したのはルナメモリとメモリガジェット『スパイダーショック』だ。

 

「行ってこい!」

『LUNA! Maximum Drive!』

 

 ルナメモリを挿されたスパイダーショックは勢いよくクリスの方へと跳んでいく。

 

「く、蜘蛛!?」

 

 スパイダーショックは黄色い糸を吐き出しながらクリスの周りを高速で動き回り、クリスを縛り上げる。

 

「はあ!?」

 

 あまりの早業に驚くことしかできないでいるクリス。

 

「今の内に」

『タカ! カマキリ! チーター!』

 

 その隙を使って龍也はタカキリーターにメダルチェンジする。

 

「行くぜ」

『スキャニングチャージ!』

 

 龍也の眼前にリング状のエネルギーが三つ並ぶ。

 

「はぁぁぁ――」

 

 リングを潜る様にクリスに向かって走り出す。

 

「この!?」

 

 何とか避けようとするクリスだが、スパイダーショックの出した糸があまりに頑丈でネフシュタンの力でも引きちぎることができないでいる。

 

「セイヤーッ!」

 

 クリスの傍まで接近した龍也はカマキリソードでクリスの枷の一つを的確に斬り裂く。

 

「もう一丁!」

 

 チーターレッグによる加速を殺さない様に方向転換しながら再びクリスに向かう。

 

「くそ!? 動けねえ!?」

 

 クリスはその場から動こうとするが既にスパイダーショックが逃げられないように固定している。クリスにできるのはそのまま龍也によって枷を斬られるのを待つだけだった。

 

「ハァー!」

 

 クリスのもう一個の枷を斬り裂いた龍也はすぐに振り返りクリスの様子を観察する。

 

「…………」

 

 まるで電源が切れたかの様に俯くクリス。明らかに先ほどと様子が違うために龍也は警戒しながらゆっくりとクリスに近づく。

 

「……だ」

「ん?」

 

 クリスの元に近づくと小声で何かを呟いているのが聞こえ、龍也は足を止める。

 

「……ダメなんだ」

「駄目?」

ここにいる(・・・・・)アタシを止めても意味が無いんだ」

「何――が!?」

 

 クリスの言葉の意味を理解する前に背中に衝撃を受けて勢いよく地面を転がっていく。

 

「全く……余計なことを」

 

 声の聞こえた方を見るとソニックアローを構えたデュークが龍也達にゆっくり近づいてくる姿が見えた。デュークの後ろの方を見るとデュークが召喚したであろう初級インベスの群れを相手している響達の姿が有った。

 

「お前、クリスに何をした?」

「おや? タカメダルの力なら見抜けそうな気もするが……流石に内部(・・)までは見えないかな?」

「…………」

 

 デュークの言葉に押し黙る龍也。龍也の使っているコアメダルは未完成品であり本物に比べれば性能は低い。それ故にデュークの言うタカメダルの力すらも劣化しているのだ。

 

「さっき言っただろ? 実験をしている」

「どうせ碌でもない内容なんだろ?」

「そんな大したものではないさ」

 

 余裕綽々の態度で語るデュークを仮面越しに睨みつける龍也。次のデュークの言葉に凍り付く。

 

「機械で作った体でも『ソロモンの杖』は使用できるのか試してみたのさ」

「――は?」

 

 デュークの言葉を、内容を理解できず龍也は呆然としていた。

 

「色々試してみたが機械の体にコピー人格では上手くいかなくてね……人格そのものを移し替えないとフォニックゲインが発生しないものでね。やはり魂が本物でなければいけないという事だろうか、困ったものだ。しかし、その所為か思い通りに動いてくれなくてね……今回は枷で無理矢理操らせてもらったよ」

「――――雪音の、雪音クリスの肉体はどうなった?」

 

 デュークの実験内容を聞き、最も気になる事を龍也は質問した。

 

「ああ、厳重に保存しているよ? まあ、機械に繋いでこうやってコピーロボットに人格を移しているけどね」

「そうか」

 

 クリスの状態を聞き、龍也は静かにメダルを取り出す。今の龍也はクリスの事を考えていた。

 コピーロボットの言動は作られた肉体だから好き勝手操られていた。それでも彼女は抵抗したのだ。枷を付けられて体の自由を奪われても、僅かにでも抵抗し、それが表情と言う形で出た。それが彼女の、雪音クリスの精一杯のSOSだったのだと。

 

「お前だけは……」

「うん?」

「お前だけは倒す!」

『クワガタ! カマキリ! バッタ!』

「何!?」

『ガ~タガタガタ、キリッバ、ガタキリバッ!』

 

 話に夢中になっていたデュークの隙を突き龍也はガタキリバコンボにチェンジする。

 

「クッ!?」

 

 デュークは素早くソニックアローで攻撃しようとする。

 

「ハッ!」

「しま――!?」

 

 デュークの攻撃をバッタレッグの力で高く跳躍して避ける。

 

「その場を動くな!」

『スキャニングチャージ!』

 

 響達に動かない様に指示すると同時に必殺技の態勢に入る龍也。スキャンすると同時に分身が出現する。その数、本体を含めて25体。

 

「はぁぁぁ、セイヤーッ!」

 

 分身を含めてキックの態勢に入りインベスの群れに突撃する。キックが直撃したインベスは全て爆散し、その爆発に巻き込まれた近くのインベス諸共スクラップに変わった。

 

「やはり、ガタキリバコンボ相手では初級インベスをいくら集まっても無意味か!」

 

 自身のミスに声を荒げるデュークに対して龍也はもう一度ガタキリバキックを使おうとするが――

 

『そこまでだ。引け』

 

 キャロルに声で制止される。

 

「でも――」

『今は引け。怒りをぶつけるのは今じゃなくていいはずだ』

「……分かった」

『ZONE! Maximum Drive!』

 

 キャロルの言う通りに龍也はゾーンメモリを使って響達と共に(本人達の意見を聞かずに)転移した。

 

「逃げられたか」

 

 残されたデュークはインベスが爆発した煙の方へとソニックアローを構えていたがマキシマムドライブの音声を聞き、ソニックアローを下した。

 

「まあ良い。こっちは実験のデータを少しでも集めるのが最優先だ」

 

 そう言ってロックシードによってクラックを開くと、動かないクリスを無理矢理立たせて移動しようとする。

 

「――何?」

 

 その途中、誰かに話しかけられたかのような反応をするデューク。しかし、周りには誰も居ず、クリスも無言のままだ。

 

「まだ、諦めていなかったか……他の転生者に会って希望でも抱いたか? 無駄な事を。私に、我々に勝つ方法など無い」

 

 その言葉を最後にデュークはその場を去った。

 

 


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