響が気づいた時、周りの景色は一変していた。先ほどまで自分がいたライブ会場に逆戻りし、目の前には騎士を彷彿とさせるロボットが自分から距離を取り剣の形をした銃をこちらに向けている。その光景を見て彼女は
(私死ぬんだ)
自身の命を諦めた――
「うおおぉぉぉー!」
その絶望を払うかの如く奏がラフトクランズに挑みかかった。
「早く逃げろ!」
奏の言葉を聞き響は逃げるために立ち上がろうとするが体が震えて動けなかった。無理もない。本来ならノイズから逃げ切り助かるはずだった、その直前に謎の人物に元の場所に戻されると言う絶望を味わった彼女は『同じことを繰り返すのではないか』その疑念が頭から離れず彼女は動き出すことができなかった。
響のその様子を含めて全て見ていた龍也もまた動けずにいた。奏と戦っているのはラフトクランズ・アウルンを青色にした機体。それを見た龍也は何が起きたのかを察した。ラフトクランズはラースエイレムという範囲内の時間経過を完全停止させる「ステイシス・フィールド」を展開する機能を持っている。範囲がどれほどか解らないが下手に介入しても停止されるだけだ。それ故に動けずにいた。
(だが、このままっていう訳にも……!)
「龍也」
ガリィにミカを預けたキャロルに声を掛けられて龍也は漸く思考のループから抜け出した。
「俺とエルフナインで隙を作る。お前はその間に立花響を連れて逃げろ」
「……できるのか?」
「俺を誰だと思っている?」
「……任せた」
キャロルの言葉を信じ龍也は背中のスラスターにエネルギーを溜める。
「行くぞ、エルフナイン」
『ACCEL!』
「いつでも行けますよ、キャロル」
『CYCLONE! ACCEL!』
キャロルの左半分の髪が赤く染まり、瞳の色も青くなる。
「機を逃すなよ」
「わかってる」
龍也の返事を聞きキャロルはダブルドライバーからアクセルメモリを取出しながら走り出した。
『ACCEL! Maximum Drive!』
マキシマムドライブを発動させたキャロルは急加速し一気にラフトクランズに接近する。
同時に龍也もスラスターを吹かして響の下に向かう。
「「アクセルストームグランツァー!」」
キャロルはそのまま奏と戦い後ろを向いているラフトクランズに向かって跳び、風を纏った後ろ回し蹴りを繰り出した。その一撃はラフトクランズの頭部に直撃し、ラフトクランズの体勢を崩した。
それと同時に龍也が響を抱きかかえて戦線を離脱する為に空へ飛ぶ。
「え? えぇ!?」
「捕まってろ!」
予想外の状況に動揺を隠せない響。そんな響の動揺を無視してコンサート会場の外に出た――
はずだった。
気づけば元の位置に戻っており、頭部を損傷したラフトクランズが龍也の肩を掴んでいた。
「チィッ!!」
時を止めて元の位置に戻された事を理解した龍也は舌打ちしながらラフトクランズに向かって裏拳を繰り出す。しかし――
「グゥッ!?」
一瞬の間に自身が殴り飛ばされ、響から引き剥がされる。同時に奏の下に現れて再び戦いを始めるラフトクランズに今度は心の中で龍也は舌打ちをする。
「龍也!?」「龍也さん!?」
一連の流れを見ていることしかできなかったキャロルとエルフナインが悲鳴に似た声で同時に龍也を呼ぶ。
「だ、大丈夫だ……、それよりも」
振出しに戻った。
その事が三人の心に暗い影を落とす。ラフトクランズの能力で上手く事は運ばないとは解っていたがそれでもここまでの行動が無意味に近くなると落ち込まずにいるのは難しいだろう。
「オートスコアラーの皆はどうだ?」
「下手に介入してもやり直しになるだけだ。場合によっては更に戦力を追加されることになる。……いや、既に投入されている」
「なっ!?」
ガリィ達の方を見れば彼女達を足止めするかの様に新たな機体が十数体――全てガーリオン――追加されてガリィ達の相手をしており頼る事も出来なくなっていた。
「八方塞がりかよ……!」
動こうにも動けない龍也達を、ラフトクランズと戦う奏を見て響は思った。自分を助けようとしてくれる人達がいる。生きて欲しいと願う人達がいる。
(逃げなきゃ)
絶望している場合じゃない。自分の生存を願っている目の前の人達と今頃この状況を知り待っているだろう家族と親友の為に、生きる為に響は立ち上がりその足でこの場を離れようとした。
それを嘲笑うが如くラフトクランズが動ける様になった響に向かってソードライフルによる射撃を仕掛ける。
「やめろぉぉぉ!」
その攻撃を奏は槍を回転させて防ぐ。だが、奏のダメージも大きく装甲が剥がれて飛んでいく。
「まずい!?」
響を守るために龍也は再びスラスターを噴かして飛び出す。
「エルフナイン!」
「はい!」
『LUNA!』
『TRIGGER!』
『LUNA! TRIGGER!』
キャロルも自身の右の髪を黄色に、左側を青に変えてトリガーマグナムを構えた。
響に接近しながら龍也は考える。どうすれば響を守れるか。
(このままじゃガングニールの破片が当たる。なら――)
飛来する破片を響に直撃しない様にする為に龍也は――
「ぐあっ!?」
「え!?」
響を抱きしめて自分の体を盾にする形で守った。
「あ、あの――」
「い、いいからじっとしてろ!」
龍也の背中に奏の槍や装甲の破片が突き刺さる。鎧越しの為に怪我は少ないが幾つかの破片が鎧を貫き血が噴き出ている。
「で、でも血が――」
「お前の命の方が大事だ」
龍也自身、人生二回目である自分よりも他人の命の方が重いと何処かで思っており、それが原作主要キャラ相手ならより一層その意識が強くなる。
特に相手は立花響。装者でなくとも生存して欲しいと龍也は強く願っているのだ。何故なら龍也は前世の頃から立花響のファンなのだから。
続きは明日の同じ時間に投稿します。