魔法少女リリカルなのは~愛、恐いなぁ~   作:極麗霊夢

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第四話 力を持ちすぎて破滅思考に振り切った人達がいるそうな

 チャポンと湯船に誰かが入ってくる音が聞こえた。

 時間的にアルフかなっと、先に上がったなのは達は大丈夫だったろうかと考えながら入ってきた人を出迎える。

 当然、私のそばにはナイチンゲールがいる。

 

「おやおんやぁ? 黒岩さんの次は白岩さん? ブラック★ロックシューターに白岩って居なかったから……ああ、THE GAMEかな? となると黒岩さんは黒岩さんじゃなくてホワイト、ステラなのかな? いや、でも黒岩さんがブラック★ロックシューターを知らないってのはおかしいような……って、なんで婦長さんもいるの?」

 

 と、私の予想を裏切って現れたのは、ステラがこの間出会ったと言った転生者だった。

 その後ろにアルフも居るけど、表情を見る限り、仕方なくそばにいるって感じだ。

 

 なんで他の転生者達って自分勝手に行動したがるのか。

 するなとは言わないけど、周りの人間関係にも気を回せばいいのに、、、もしかしてフェイト側じゃなくプレシア側なのかな?

 

「司令官、そろそろ逆上せます」

 

「わかった」

 

「ちょっと何無視してるわけ? ムカつくんですけど?」

 

 彼女に反応しなかったせいか、もしくは疑問に答えなかったせいかテンションが上がってた彼女は急に冷めて、凄味を利かせた声を出すけど、正直愛故に突っ走ったすずかの方が怖い。

 それに私に掴み掛かろうとした彼女の手をフローレンスが掴んで、露天の縁にまで吹き飛んでいったから驚異でもなんでもない。

 なんせフローレンスは真の英霊に昇華してるとはいえ、私の専属医で非戦闘員だ。

 そんな彼女でも楽々不意をつけるのだから、あの転生者の戦闘レベルは高くない。

 ステラが不意を取られたのは、つい最近私達側に来たからだ。

 

 うん、なんだ心配して損した。

 

「浴衣……良いですね、火照った体の熱が逃げやすいですし、団扇も使えばその分早く熱が冷める。 湯冷めしないように気を付けてください」

 

「わかった」

 

「それと今回の介入もステラさんだけです。 司令官が介入する必要はありません」

 

「はーい」

 

 その辺はまだ大丈夫だ。

 私が介入する時は、本当に町が危険な時だ。

 

 

 ☆

 

 

 カット。

 温泉での出来事は簡単に言えば、原作のような展開が起きて、イレギュラーと言えばフェイト側の転生者とステラが二度目の激突でステラが勝利をもぎ取った。

 正直、瞬間移動染みた瞬歩とか、斬魄刀の能力、鬼道をどう潜り抜けたのかわからないけど、ステラが勝てた事を素直に喜ぼう。

 だが、なのはの悩みは吹っ切れておらず、またアリサが苛々し始めた。

 恐らく明日辺りにでも、なのはを叱るアリサが見れるに違いないが、原作と違って私達と言う相談相手が居るにも関わらずこうなるってなのはの病気は幼少時代に少し干渉した程度じゃ治らないという事なんだろう。

 巨木事件の頃も相談せずに見逃してたみたいだしね。

 

「なんで相談してこないんだろ」

 

「依存に入ってたら相談くらいは受けれたと思いますが、結局は幼少時代に形成されてしまった性格故、でしょうな」

 

「シングはなのはの悩みを知ってるんだよね? 相談に乗らないの?」

 

「悩みは知ってるが、理解できんのが現状だな」

 

 なのはの悩みはフェイト嬢が悲しい目をしているのか、どうしてジュエルシードを集めてるのかの二点に集約される。

 そんなの私からしてみれば、ジュエルシード集めにライバルが出現した、負けた、悔しいから強くなる、絶対に負けたくない、だからどうあっても倒すくらいしか思えないし、ライバルが何故悲しい目をしてるか等と敵の心情を探るなんて思考自体がわからない。

 

 まぁ、答えを知ってるから導いてやることは出来るんだけどね。

 

 リボンを解きエルに手鏡になるよう言い、なのはの前に手鏡を置く。

 

「えっと……な、なに? シングちゃん」

 

「さぁ? ただ今のなのはの悩みの答えはなのは自身の中にあるんじゃないかと思って」

 

「わたし?」

 

 手鏡をリボンに戻して、髪を結んで私は怒ったアリサを追い掛けずにステラと座覇の二人でジュエルシードが目覚める場所へと向かったが、商店街に入った瞬間、私がいた場所が隔離される。

 

「……ここは邪魔してほしくなかったんだがな」

 

「ここから、物語は急速に動き出す。 邪魔はさせない」

 

「物語通りに事を進めようと静観したのが、あの巨木の根っこだ。 あれだけの被害……今回もあのような暴走が起きたら次元崩壊は免れんぞ」

 

「それがどうかしたか?」

 

「なに?」

 

「次元崩壊……結構ではないか。 元より我々は原作遵守派ではない。 原作崩壊は勿論の事、世界すらも玩具として遊ぶ終焉の鐘だぁ!!」

 

「…………………………………………………………は、ダッサ」

 

 終焉の鐘と名乗る世界に壊滅的なまでの病原菌の主張を聞いての感想だ。

 これにはリボンのエルもステラも座覇も呆れた顔をしており、その隙に令呪を使って母さん達を喚んだ。

 

「この背徳感を楽しめないとは残念な奴だよっ!!」

 

 病原菌が何かを言ってるが、それを聞いてやるほど優しくもない私はクーフーリンさんに突撃させるが、真っ正面からの突撃だったため簡単に避けられる。

 

「クーフーリン、終わらせて」

 

「了解した、マスター。 全呪解放……」

 

 私の魔力を少しだけ持っていったクーフーリンは、その体に刻まれた呪を解放し、宝具を発動した。

 

 ――それは伝説の怪物のように巨大な体躯。

 ――頭は毛先から金、赤、黒の三層の頭髪。

 ――全身に刻まれたルーンは、淡く輝き始めてクーフーリンのステータスを上昇させる。

 ――手に持つ呪いの朱槍も、赤黒く禍々しい魔力を大放出してる。

 

「ひ……」

 

 病原菌が怯え始める。

 当然だ。

 彼の前世がどんなモノだろうと、いまだ神秘があった時代の英雄達ですら、このクーフーリンに魅了されるか恐怖によって怯ませるかのどちらかだ。

 終焉の鐘だ破壊だなんだと言っても、所詮は強大な力を得て増長したガン細胞だ。

 

「真っ当なオレや(いびつ)なオレみたく期待すんなよ。 マスターが殺れと言ったからには遊びはない。 『刺し穿ち突き穿ち抉り穿つ鏖殺の呪槍(ゲイ・ボルク)』!!」

 

「き、緊急だっ……」

 

 無駄だ。

 ゲイ・ボルクの真名解放は、放った瞬間に相手の心臓を貫いてるという結果を残す。

 回避するなら豪運かゲイ・ボルク同等かそれ以上の防御型宝具で防ぐしかない。

 そして真の英霊となったクーフーリンの宝具ランクは、A➕➕➕にまで上昇されてる。

 そのせいかはわからないけど、豪運持ちの心臓ですら貫けたりする。

 

「カッ……ガフっあ、ひゅー……ごぶぁ……ぶしっ!!」

 

 病原菌の体内から呪の死棘が、木枝の如く飛び出て死へと(いざな)った。

 病原菌が死ぬと私達を捕らえていた結界が消えていく。

 

「時間にして3分か……」

 

「奴の戯言に付き合いすぎだ、マスター。 次はもっと早く、な」

 

「ああ、わかったよ」

 

「そう言えば「我々」とか言ってたね、彼。 あんなのが一杯いるの? 迷惑だなぁどっかの女神を名乗るゴミみたい。 マスター達みたいなマトモな転生者居ないの?」

 

「そう言うモノさ……人というのは。 エルがいた時代よりも便利になった分……いや、それは違うか……だけどどこかに必ず弱きを助け悪しきモノを討つ転生者はいるはずだ」

 

 

 ★

 

 

 地球ではない何処か別次元の世界。

 

「消エロォオオオオオオオッ!! 聖剣使ィイイイイイイッ!!!」

 

 天を轟かす程の化け物が一人の男へ、巨大な拳を向け放った。

 男は向かってくる拳に慌てることなく、手に持つ剣を掲げる。

 

「聖剣よ……我が同胞達を喚べ」

 

 男の言葉に聖剣は光輝く事で応え、男の後ろに彼の同胞達が召喚される。

 男の同胞達は皆、白く聖なる力を宿した鎧を身に纏い、男と同じ聖なる剣を手に持った女騎士達が(たたず)んでいた。

 

「皆! この世界を守るため、力を貸しておくれ……」

 

「はい! それでこそ我が王」

 

「お任せください。 我が聖剣の耀きは王の為に!」

 

「王の威光は世界を照らす光」

 

「その世界を曇らす闇は我らが討ち払います」

 

「宝具開張!」

 

「「「世界を照らす我が王に捧げし聖光(ナイト・オブ・ラウンズ)」」」

 

「オオオオオオオオノォオオオレェエエエエ! 聖天ノ騎士ィイイイイイイ」

 

 彼の、男の同胞達が放った聖剣の耀きは化け物の心臓を貫き、その巨体を光へと変えた。

 

(ふぅー今回もなんとかなった……しかし、なんでこんなにも外道に堕ちる転生者多いんだ? どっか真っ当な転生者は居ないのかね……はぁ)

 

 ため息つく男を余所に、彼の同胞は王の勝利を称える。

 自分達の功績であるにも拘わらず、彼らは流石は我が王だの王の威光は留まることを知らないなど、男が彼らを称えても誰一人として賛同しないのだ。

 ただただ王に尽くすだけだった、、、愛ゆえに。

 

(にしても俺の転生特典が曲者すぎる……聖剣を媒介に騎士系サーヴァントを召喚って、、、しかも何故か知らないけど女体化してるし……まぁ、それはいいけど自衛力0はいただけない……ほんと、どうすればいいのか)

 

 男の苦悩はまだまだ続く……が、同性にも好かれてる同系統の特典を持つ女転生者よりマシな方だと彼は知らない。

 

 

 ☆

 

 

 なんか急に同情したくなったけど、別にどうでも良くなった。

 なんかこう……同じ悩みだけどなんか違うというか、そんな感じだ。

 さて、病原菌一匹消してから数時間、なのはとフェイト嬢が戦い始めた。

 当然、側には私の仲間と、フェイト側の転生者がいる。

 勿論、私に危害が与えられないよう小太郎の捕縛術と、真の英霊である源頼光とクーフーリンの監視付きだ。

 

「過剰戦力乙」

 

「黙りなさい、虫が……誰が娘に話しかけていいと言いました?」

 

「あと見るな、嗅ぐな、認識するな」

 

「無理難題過ぎて笑えない……」

 

「囀ずらないでください。 主殿は情が深いので貴女の処理に戸惑いが生まれます」

 

「ちょ、ちょっと白岩さん!! 助けて! 貴女の保護者が過保護過ぎて私死んじゃう!!」

 

「少し黙っておれ、総督はお疲れなのだ。 あと少しでも生き延びたいなら、その二人の言うことを切実に守った方が良いぞ。 わしですら二人の意見を覆すのは難しいのでな。 ワハハハハ!」

 

「そんな……東方不敗ですら難しいと言わせるなんて、流石は平安魔境武者と超戦闘民族……オワタ」

 

「本当に始末しないの?」

 

 絶望に打ちひしがれてる転生者を一瞥したエルが私に言う。

 始末、処分、、、しても良いが、彼女の立ち位置が本当にわからない。

 私達のように今の生を謳歌してるのか、それとも終焉の鐘とやらの同じ考えで動いてるのか、はたまた別の思惑か……。

 

「正直に答えたら助けてやるが、もし一つでも嘘が混じってるなら敵と見なす」

 

「……マスター」

 

「これは戯言に付き合ってる訳じゃないよ」

 

「…………そうか。 敵を見定める行為ならオレに文句はない」

 

 私が言いたいことを一言で理解するクーフーリン。

 何故か母さんが不服そうだけど、たぶんクーフーリンが転生者を見逃したことだろう。

 

「でも、そろそろか。 質問はこれが終わった後だな」

 

 なのは達の戦闘は佳境を迎え、ジュエルシードが鼓動を始める。

 ジュエルシード程の魔力の鼓動は、戦ってるなのは達も気付き、戦ってる場合じゃないと感じたのかジュエルシードを封印する体勢に入る。

 動き、魔力コントロールの全てが同じで物語通り二つの光の帯がジュエルシードへ向かうが、、、

 

「あ、あれ!?」

 

 フェイト側の転生者が叫ぶ。

 その方向には、封印の魔力が込められた光の帯が10個。

 明らかにジュエルシードを暴走させ次元崩壊させる気だ。

 私の魔力感知内にいる遵守派も慌てて動こうとするが、時すでに遅しといった所だ。

 だが……

 

「安心しろ。 私が何とかする」

 

 12の魔力で抑え込められたジュエルシードは、数秒も待たずに次元震を起こし始めるが、すでにジュエルシードの魔力よりも高い私がジュエルシードの魔力放出を包み込み、世界から隔離する。

 

「シングちゃん!」

 

「ッ!!」

 

「全魔術回路起動。 リンカーコア最大稼働……ジュエルシードの魔力掌握、収束、収束、収束、収束、収束、収束、収束、収束、収束」

 

 暴力的で強大な魔力が私のリンカーコアと魔術回路を通して、私の中の聖杯へと注がれる。

 私の魔力は満ち満ちてる状態だけれど、何故か魔力を入れる場所がある。

 

「うそ……なに、これ……魔力チート所じゃないわよ」

 

「ば、化け物……」

 

「こんなの、人間が取り込める量を越えてる」

 

「リーダー! 既に奴の魔力量は計測不可能!!」

 

「バカな!! 一つの次元世界に満ちてる魔力を計れる程の測定機だぞ……それもかなり魔力が豊富な世界の!!」

 

「今のうちに倒した方が……」

 

「させるとお思いですか? 羽虫」

 

「な、過保護者(モンスターペアレント)!?」

 

 私が事態の収束を図ってる頃に漸く現れた遵守派は、母さん達に包囲される。

 まぁ、それも当然だ。

 今の私はこの上なく無防備だ。

 だからこそ、護衛役を全員喚んでるのだ。

 

「もっとも……今此処にいる病原菌共は再起不能にさせるがなっ!!!」

 

 未だにジュエルシードに魔力を注いでる10の魔力帯すらも掌握し、回収速度を上げに上げ、魔力切れを起こした者のリンカーコアに魔力を一気に送って即座に回収。

 そうすることで、魔力が空っぽになった転生者の魔力は飽和状態となり破裂する。

 一人、二人、三人以下省略。

 

「「「「グギャァアアアアアアアアアアアァァァ………………」」」」

 

 

 ★

 

 

 夕方と夜の狭間。

 昔では黄昏時と呼ばれ、私達、先祖が活発になる時刻。

 バイオリンのお稽古の準備をしてると、町の方で光が見えた。

 私の直感が囁く、シングちゃんが活躍してる事を……。

 その場を激しく見たいのに、此処に居ればさらに凄いものが見られると直感が告げる。

 いや、これはもう啓示だ。

 神の啓示? いや、違う……これはもっと別の遥か空の彼方。

 星々が煌めく宇宙を駆ける一つの星が、見逃すなと。

 私達の女王が……

 

「あ……」

 

 現れた。

 

 その御姿は、白く美しくそれでいて畏れを抱く、月に住まう偉大な太陽。

 

「あれが、あの姿が総督の本来の御姿」

 

 

 ★

 

 

「おおっ! 総督!! やはり貴女は総督だ!! わしが前々世より御守する事が出来なかった!!」

 

「……シング・ラブ」

 

 彼の姿を知る二人は再び目にするその偉容に震えた。

 それは歓び、それは畏れ……。

 当然、前者は座覇で後者がステラだ。

 だが、二人が感じたソレは別の感情が覆った。

 ソレは愛だ。

 ステラは付き合って短いが、シングから注がれた情を感じてた。

 その情は前世で注がれる事のなかった母の愛。

 

 勿論、座覇に向けられたのは別の情だ。

 だが、それもまた愛であることに変わりなく、座覇は高らかに世界に聞かせるように叫ぶ。

 総督の復活を、いまだ会うことが出来てない古き同胞達が聞こえるように、我が王は、此処に健在であると……。

 

 そして知識のみ知ってるフェイト側の転生者、観測していた終焉の鐘の者達は恐怖した。

 当然だ。

 彼女達は彼女に情を向けられてないからだ。

 理解できない存在に対して、彼女達が取った行動は身に包む冷たい恐怖に耐える事だ。

 

 何も知らないなのは達もまたその強大な魔力に震える。

 凡そひと一人が持つ魔力量じゃないことに、得たいの知れないナニかに……。

 

 シングの姿を見た者を余所に巨大なシング・ラブは消え、世界を揺るがす次元震は収まり、次元崩壊という驚異はなくなった……が、理解不能のソレを観測したモノは荒れていた。

 

「なんなの!! なんなのアレは!! あんなのが居たんじゃ私の、私のアリシアは……ああ、アリシア、私のたった一人の娘……」

 

 世界は一つの物語を加速させ、一つの物語は終局へ向かう。




力を望んで刹那的思想で破滅思考な転生者さん達のご登場。
居るよね、こういう人って
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