絶望ノ淵デ慟哭ヲ謳ウ   作:玉響@彼方

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※今回はアレンとドロシーがちょこっとだけイチャつきますので、ご注意ください。


疑惑

9

 

「……………はぁ」

 

アレンは深くため息をついて、ベッドに沈んだ。

 

ドロシー達、共和国側との接触から既に数週間がたった。

 

思いの外、共和国との協力は過酷で、アンジェやドロシーの足を引っ張ってばかりいるようだ。

 

それに、明日。

 

明日、『チェンジリング作戦』が決行される。

 

議員や王族、貴族が集まる夜会が開かれる。

 

そこにはノルマンディー公も現れるという。

 

「…クソ親父」

 

貴族が集まるということは、父スカー・ヴィルムもこの夜会に来るだろう。

 

しかし、Lから決して手を出さないようにと、釘を刺されている。

 

目の前にご飯があるのにお預けされてる犬のような気分だ。

 

さらに、貴族として顔が割れてるアレンは夜会に参加せず、遠くから様子を伺い、状況に応じて行動するように言われているため、父はおろか、ノルマンディー公にさえ近づけない。

 

歯痒い。

 

とても…

 

「嫌な気分だ」

 

アレンはベッドの上に仰向けになって、天井の木目を眺めていた。

 

その木目に向かって掲げた手の震えが止まらない。

 

すると、その木目が突然…()()()

 

「っ?!」

 

思わず、身構えようとするがそれは穴から現れたものによって止められた。

 

ひょっこりと穴から逆さまに顔を出したのは、ドロシーだった。

 

ドロシーは無言のまま、アレンにヒラヒラと手を振った。

 

アレンは、はぁぁ…と深くため息をついた。

 

「ちょっと…何よその反応」

 

と、アレンのベッドの隣に音もなく着地した。

 

「誰だって天井から知り合いが出て来たら驚くぞ…」

 

「全く、こんなに可愛い子が夜中に男の部屋に来てあげてるのに!」

 

「阿呆か…余計なお世話だ。帰れ」

 

「…心配?明日のこと」

 

「……」

 

見透かされていた。

 

「帰れ」

 

「嫌よ」

 

「か え れ」

 

「い や よ」

 

「かえrーー

 

と言ったところで、ドロシーが先に動いた。

 

ベッドの上にいるアレンを押し倒すかのように、ドロシーは覆いかぶさった。

 

「おい待て!お前、何しやがる!」

 

声を荒げるアレンに対し、終始無言のままドロシー。

 

そのままアレンの顔に自身の豊かな母性の象徴を押し当てた。

 

「っ!………っ!…!……っ!」

 

ぎゅっと押し当てられ、呼吸もままならなくなるアレン。

 

じたばたと暴れるが完全にホールドされていて、抵抗出来ない。

 

徐々に苦しくなり、抵抗が弱まった時にようやくドロシーはアレンを解放した。

 

「っ!…はぁ…はぁ…はぁ…うっ…ゲホッ…ゴホッ…」

 

ようやく解放されたアレンの顔はトマトのように真っ赤になっていた。

 

「お…前…本気で…何、しやがる…」

 

「あら?()()()()が頑張る弟を励ましてあげたのに…」

 

「何が…お姉さん…だよ」

 

「手、見てみな」

 

言われて初めて気が付いた。

 

さっきまで感じていた、手の震えが止まっていた。

 

「それに、私は本当に()()()()だからね?」

 

ドロシーは手を口に当て、妖艶に笑った。

 

実際、ドロシーはアレンよりも年上である。

しかし、アレンがそんなことを知る由もなく、今はただ面倒くさいとしか思ってなかったが、その事実を知って驚くのはまた、別のお話。

 

「じゃあね」

 

ドロシーはそれだけ告げると、さっさと天井に登って帰って行った。

 

「…ったく何してんだか」

 

ドロシーが去った後、すぐに悪態をついたアレンだったが、心のどこかで感謝している自分がいた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

肌に触れる夜風が、アレンの覚醒を促す。

 

「……ん」

 

チェンジリング作戦が決行されて数十分くらい経っただろうか。

 

アレンは夜会が行われる屋敷から遠く離れた家屋の屋根の上に待機していた。

 

チェンジリング作戦についてはドロシーから話を聞いている。

 

だが、ここまで来るのに、正直言ってアレンはほとんど何もしていない。

 

そもそもプリンセスなんていうくらいだから、シャーロットは女の子だ。

 

そこにアレンが何かしようものなら、ノルマンディー公の警備や他生徒から白い目で見られるのは明白。

 

この作戦はドロシーやアンジェたちにしかできない作戦でもある。

 

しかし、万が一ということがあるかもしれない。

 

だからアレンも派遣されている。

 

と、いってもすることはあまりなさそうでもある。

 

(暇だな)

 

誰かに聞こえるはずがないが、敢えて口には出さなかった感情。

 

欠伸を噛み殺し、双眼鏡を覗く。

 

カーテンの隙間からアンジェの横顔が見えた。

 

(あいつ、何してんだ?)

 

アンジェは体の向きを変え、窓に背を向けた。

 

しかし、手だけはカーテンに隠されるように、『Cボール』を握っていた。

 

翡翠色の灯りが、何度も点滅した。

 

それがアンジェからのメッセージであることに気がつくのに時間はかからなかった。

 

(おいおいおい…どういうことだよ!()()()()()()()()だと?!何考えてやがるあいつ!)

 

アレンはすぐにその場から跳躍。

 

夜会の屋敷のすぐそばまで来たところで突然、連絡が入った。

 

メッセージの内容はすぐに帰投するようにというものだった。

 

目の前で何が起こっているか分からないが、取り敢えず、命令に従ってアレンは帰還することにした。

 

 

 

 

 

 




いつもながらの不定期更新です。いつもすいません。それと、今回は少し短くなってます。それは次の内容を少し濃くしたいので、今回は短くしました。それではまた次の話で。今後ともよろしくお願いします。
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