絶望ノ淵デ慟哭ヲ謳ウ   作:玉響@彼方

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空中戦:後、終編

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「クソが…クソッタレが!」

 

まだ頭の中がガンガンと鳴り響く。

 

痛くて痛くてたまらない。

 

今にもアタマにヒビが入って、カラダごと真っ二つに裂けてしまいそうだ。

 

先程より更にどす黒く染まった手を空に伸ばす。

 

しかし、その手が掴むものは虚空。

 

舞い散る花のように儚いもの。

 

滴る血が歴戦の数を物語る。

 

切り刻まれた死体が転がる廊下は緋に染まり、返り血を浴び続けたアレンの四肢も深紅と化した。

 

「ひぃひぃ……ひひ…」

 

目の前で悲鳴のような声を上げる王国兵士は、失禁しながらアレンを見上げていた。

 

虚ろな目で兵士を見つめるアレンの目に光は無い。

 

こいつに生きる価値はあるのだろうか?

 

殺すとは一体なんなんだろうか?

 

ヒトの命に優先順位はあるのだろうか?

 

何も無い。何も要らない。全部、邪魔だ。

 

もっと生命を刈ることに特化した方がいいんだ…

 

もっと、こんな爪じゃない…そうだ…()がいい。

 

「ひっ!」

 

兵士が最期に見たのは、目の前の人間の腕が、剥き出しの刃となった瞬間だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

銃撃は止めた。

 

あとはこの船を堕とすだけだ。

 

手始めにここ(砲撃室)を潰す。

 

自身の手を爪から進化したブレードに変え、部屋ごと切り裂く。

 

鋼鉄に囲まれたはずの部屋はプディングのように何の抵抗もなかった。

 

それどころか、斬った余波で船が割れた。

 

ズルッ…っと音がして、船の半身が真っ逆さまに落下していく。

 

「なっなんだ!何が起きている!」

 

突如として戦艦が半分に割れ、状況が飲み込めないが、残った戦艦の半分にいた兵士たちが続々と現れた。

 

それを確認し、アレンは落下する戦艦から、一気に跳躍した。

 

「く、来るぞ!なにか分からんが()()が来る!」

 

「撃てぇぇぇぇぇ!撃って撃って撃ちまくれ!奴を落とせぇぇぇ!」

 

兵士たちが所々で甲高い声で叫ぶ。

 

しかし、悲しいかな、その弾がアレンに当たるどころか、掠りもしない。

 

当然と言えば当然である、アレンには飛来する弾丸の軌道は全て見えている。

 

「うわぁぁぁぁぁ!ーーあがっ…」

 

とりあえず、手前にいた兵士の心臓を貫く。

 

ごぷっと血を吐き、目をひん剥いて動かなくなる。

 

「邪魔」

 

短く吐き出し、次の目標へ。

 

切って、斬って、貫いて、裂く。

 

鮮血が滴る前に、次から次へと刈り取っていく。

 

もう頭痛はしない。

 

罪悪感もない。

 

後に咲くように血が彼岸花のように宙を舞う。

 

「く、くく…きひひ…あははは…アハハハハハ!!」

 

惰弱。

 

脆弱。

 

矮小。

 

「こ…のっゴミ虫共がぁぁぁ!とっとと死に失せやがれぇぇぇぇぇ!」

 

叫びながら眼前の兵士を十文字に切り裂く。

 

返り血を浴びまくり、頭の先から足のつま先まで、真っ赤に染まったままアレンは甲板まで駆け抜けた。

 

ちょうどそこではパラシュートを身につけたアンジェとベアトリスの姿があったが、すぐに降下して行った。

 

「はぁ…はぁ…ハハハ…」

 

これで終わり。

 

作戦は成功で終わる。

 

アレンは降下する2人のあとを追うように艦から飛び降ーーれなかった。

 

「あ?」

 

腹が熱い。

 

違う…これは…

 

「いっ……つぅ……」

 

腹を()()()()()()

 

「や、やったぞ…仲間の仇だ!このバケモノめ!死ね!死ね!死ね!シネェェェェ!」

 

半狂乱状態の兵士は更に銃撃を続ける。

 

その度にアレンの服には血が滲む。

 

「う…ぐっ…」

 

あまりの痛みに思わず膝をつく。

 

狂ったように叫ぶ兵士の声が遠くに聴こえる。

 

この高度の上に伴った風速。

 

いずれあの兵士も吹き飛ばされて、地面に叩きつけられて紅い華を咲かすだろう。

 

だが…

 

「…こ…てやる…殺してやるよ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

足を踏ん張り、風圧を割るように甲板を蹴る。

 

神速の如き速さで間合いを詰め、その脳天に刃を突き立てる。

 

ズズズ…とブレードが沈んでいく。

 

刃を半分ほど沈めたところで兵士の腹から刃が飛び出した。

 

「俺が受けた痛みの十分の一くらい味わっとけよ」

 

ブレードを引っこ抜くと、脳天から血吹雪が舞う。

 

今度こそ終焉を迎えた艦から離脱する。

 

パラシュートを使わなくてもこの程度の高さからならそのまま着地できる。

 

ズンッと音を立て、アレンは森に着地する。が、周りにクレーターが出来てしまった。

 

ま、是非もないネ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はちょっと短めでした。あと最後にノッブを挟んだことは反省はしていますが、後悔はしていません。
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