長城を越えよ ~騎馬民族に転生したので漢王朝をポアします~ 作:ゲベック
久々に自作を読み返して思索に耽ったりしてました。
他にも腐らせてる原稿がありますが、そこそこ出来が良い部分だけ供養します。
「我が同胞よ、あの長城を見よ。
あれはかつて、戦国の世において諸王達が築き始め、秦の始皇帝がそれを繋げ、漢の歴代皇帝が万里に及ぶ今の姿に仕立てあげた物だ」
荒涼とした平原に青年の涼やかなる声が響き渡る。
声を荒げている訳ではないのに、不思議と頭の中に入ってくる美声だ。
「漢人達は自らの
漢人が我等の同意もなく定めた境界。その理を此方に押し付ける事はあれど、我等の理が漢人に受け入れられた事は無かった。そして草原の民は長きに渡る虐げによって分裂し、抗う力を削がれ、壁を諦観の念で見つめる日々を送ってきた」
苦渋、苦痛、悲哀、無念、悔恨、そして憤怒。
ありとあらゆる『負』の概念が込められた主の言葉に、兵士達は歯ぎしりをし、中には涙を溢す者もいた。
それは約三百年もの間、漢人に迫害されてきた事による怨念、いや、呪詛と言い換えてもいい。
このやりきれぬ絶望感が、理不尽に対する単なる怒りから殺意に変貌するのに、それほど長い時間は必要ない。
「だがっ!その苦難はこの日を境に消え去る事となる!」
於夫羅は馬上において両腕を大鷲の如く広げ、張り裂けんばかりの声を上げた。
「誇り高き匈奴たる我等は、決して他者の理を我が理としてはならぬ!例えそれが万里に及ぶ長城であろうと、漢人の理である以上、その存在を認めてはならぬ!
であれば、漢の衰えたる今!我等は長城を無き物として越えねばならぬのだ!」
民はずっと、艱難辛苦に耐えてきた。
親、兄弟、友、恋人、それらを守るために。
だからこそ、草原の民を理不尽から救い、希望を見せてくれたこの年若き英雄に、命を捧げたいと思った。
彼らの高揚感は爆発的な忠誠心と戦意へ昇華し、馬上の王をギラギラと輝く目で見つめた。
「長城を越えよ、我が同胞達よ!
前方に聳え立つ雁門関を破るか否かは、和戦の選択であるだけでない。我らが北方の胡族と侮られ続けられるか、それとも誇り高き匈奴人足りうるかの選択である。
古の英雄
決然と拳を振り上げ、全軍に檄を飛ばす。
騎馬軍勢の間に生気が漲り、於夫羅はその空気を見事に捉えて叫んだ。
「いざっ!これより我等は雁門関を攻める!
我等が行くは修羅の道!人とあっては人を切り、神とあっては神を切れっ!問答無用!容赦無用!宿敵漢王朝に鉄槌を下すのだ!!」
『『『『『オォォォォォォォォォォォォ─────ッッッッッ!!!』』』』』
世界が、揺れた。
覇気に満ち満ちた雄叫び。士気は最高潮に達し、団結という言葉だけでは言い表せない程に皆の心は一つとなった。
青年は神話の軍神さながらに雄々しく外套を靡かせ、腰から黒光りの大太刀を抜き、丘の向こうの雁門関を指して叫んだ。
「草原の勇者達よ、この於夫羅の馬に続き長城を越えよ!!」
雁門関は一日と経たずに陥落した。
匈奴の主力軍は長城を越え、更に北西の羌・氐族を糾合して漢土に多方面からの電撃的な侵攻を開始する。
曹魏、孫呉、劉蜀。これら三国の中心に位置する都「洛陽」に報告が届いたとき、既に涼州や并州を始めとした北土諸州は人馬の濁流に呑み込まれていた。
彼ら漢族にとって長城の向こう側に住まう異民族は、自らの天敵にして侮蔑の対象たる夷狄。
民を殺し全てを奪っていくその蛮族達が、この大陸に大挙として押し寄せてきたのだ。
民草を慈しむ仁徳の王 劉備、孤高にして覇道を突き進む王 曹操、郷土と血縁の繋がりを守らんとする王 孫策。
”彼女”達はそれまでの反目を一旦収め、大陸を危機から救わんと共に立ち上がった。
その先に待ち受けるものが、漢朝四百年の終端であるとも知らずに。
ちなみに内容は殆ど「中原の虹」の丸パクリ
誰か続き書いて(涙)