亜種聖杯戦争 ~God's penalty~ 作:あいますく
「キャスターをこっち側に…ね。」
永治先輩はスマホを操作した。どうやら院都さんにメッセージを送っているようだ。
「そろそろ作戦会議でもしようと思ってたんだ。明日、19:00に大学に来い。アサシンが何か掴んだかもしれない。」
「わかりました。」
その夜、セイバーが改まって話してきた。
「言いそびれていましたが、一つ忠告を。」
「何だ?」
「あなたはライダーのマスターを殺せますか?」
「えっ?」
「…聖杯戦争は大抵、マスターが生き残ることはありません。」
「な、なんで?サーヴァントが殺し合うんだろ?」
「私達が現界出来ているのはマスターからの魔力供給があるからです。逆に言えば、マスターがいなければ、サーヴァントは数日で消えてしまうでしょう。」
「…だからサーヴァントより殺しやすいマスターを狙う…と。」
「はい。改めて問います。ライダーのマスターを殺せますか?」
「…」
俺はしばらく黙っていた。
セイバーはじっとこちらを見ていた。
そうして俺は、悩み抜いた結果を伝えた。
「無理だ。出来るならば誰も殺したくない。」
「…何故ですか?」
「罪もない人間を殺すのは嫌だ。ただ、それだけだ。」
「……」
「覚悟ができてないのはわかってる。だけど、永治先輩にも、出来るならアーチャーのマスターも死んで欲しくない。」
すると、セイバーは誇らしい顔つきになってこう言った。
「…それでこそ私のマスターです!」
「えっ?」
「もし殺せるなんて言ったらマスターのこと逆に殺してましたよー。」
「ええっ!」
「…私があなたに呼ばれたのは触媒となったこの刀ではなく、別の理由だったのかも知れませんね。」
「どういう事だ?」
「そういう事です!さあ、夜も遅いですしマスターは寝てください!私はいつも通り見張ってますから!」
「はあ。おやすみ。」
翌日、19:00。
俺と、永治先輩と、院都さん。
3人は重苦しい空気の中、作戦会議を始めた。
「まず、お互いの収穫を話しましょうか。」
俺たちは、アーチャーの真名と宝具、ランサーの真名と思われる名を伝えた。
「なるほど、ウィリアム・テルと本田忠勝…これは厄介ですね。両者知名度はかなり高い。ライダーの真名がバレてしまったのも手痛い。」
「いや、ライダーの真名はバラしたかったんだよ。」
永治先輩はにやりと笑ってそう言った。
「何故?」
「ライダーの宝具はいくつかある伝説の道具を取り出すってものだ。つまり宝具に満たない様な神秘の寄せ集めだ。」
「だからこそ単一の対策が取れない…という強みはありますが…」
「…まあ、ライダーが脅威であるってことが伝われば十分さ。それで、そっちは?」
「残念ながら、バーサーカーのマスターの少年を発見しただけですね。それと、キャスターのマスターらしき人間も。」
「どんなやつだ?」
「アサシン。直接見たお前が伝えるといい。」
そう言うと、アサシンが現れた。数日前より少し疲れている様子だった。
「バーサーカーのマスター。名前は凪城立海。中学生かな。」
それを聞いた永治先輩は戸惑っていた。
「中学生!?…いや、中学生だからバーサーカーを野放しにしているのか…?」
「で、そいつの推理によると、聖堂学院高等部の駆都撫子がキャスターのマスターらしい。確かに家には結界が張ってあったし、その可能性は高いね。」
「で、重要なキャスターは見つからなかったのか?」
永治先輩が聞くと、アサシンは首を横に振って消えた。
「と、この程度です。申し訳ありません。」
「いや、十分だ。」
永治先輩は少し溜めて、院都さんに言った。
「滝原の提案なんだが…キャスターをこちら側につけるのはどうだ?」
「…不可能ではないでしょう。ですが、どうやって接触するんですか?」
「…とりあえずキャスターのマスターの家に行ってみるしかないな。」
「では3人で行きましょうか。いざとなればアサシンの気配遮断スキルが役に立つでしょう。」
「ここ…か。」
家は、至って普通の一戸建てであった。しかし、魔術師でない俺でもわかるくらい違和感を感じた。
「…結界とは言えども、この程度なら簡単に破れそうだな…」
「もしかしたら罠ということもありますので、慎重にいきましょう。」
院都さんがそういった直後、聞き覚えのある声が聞こえた。
「あら。お久しぶりですわね。セイバー、ライダー。それに…初めてお会いしますわね。アサシン。」