亜種聖杯戦争 ~God's penalty~ 作:あいますく
土曜、17:50。
俺は三須華大学についた。
事務員さんに砂木教授の部屋を聞くと、少し眉をひそめたが、案内してくれた。
その途中、事務員さんが話しかけてきた。
「あの…もし気を悪くされたら申し訳ないのですが…」
「なんですか?」
「その…砂木教授はあまりいい噂を聞かない人で…気をつけてくださいね。あ、ここです。」
事務員さんはそう言うとそそくさと立ち去った。
「いい噂を聞かない…ね。」
時計を見ると17:55であった。
オレは3度、ノックをした。
「誰だ。」
奥から初老の男性の声がした。
「八戸切gameの滝原です。招待状を見て来ました。」
「…入れ。」
「失礼します。」
教授の部屋の中を一言で表すなら、不気味が正しいだろう。
ホルマリン漬けになったコウモリのようなものや、猫の解剖図なんかが貼ってある。
「よく来たね。わたしはここで人類について研究している砂木だ。座りたまえ。」
「人類…?この猫とかコウモリは?」
「趣味だ。」
そう言うと砂木教授はニッコリと笑った。
「君を呼んだ理由について、知っているかね?」
「確か…戦いに参加するとかなんとか。」
「その通り。」
砂木教授は椅子から立ち上がってこっちに歩いてきた。
「聖杯というものを知っているかね?」
「いえ…」
「知らなくても良い。君は魔術師ではないからな。」
そう言いながら、俺の前のソファに座った。
「端的に言えば…なんでも願いが叶うものだ。」
「そして、君にはその聖杯を手に入れるために参加してほしいのだよ。」
「『聖杯戦争』にね…」
「ちょっと待ってください。本当にそんなものがあるんですか?」
「ある。いや、もっと詳しく説明しなければならないかな。」
そう言うと、棚から丁重に一振りの刀を取り出した。
「これは、無銘の刀だ。」
「はあ。」
「しかし、名は無くとも歴史は詰まっておる。」
「そうですね。」
「…この世にこの刀の持ち主が再び現れるとしたら君はどう思う?」
「…どうって、どうも思いませんよ。そんなことありえないんですから。」
そこで、教授は深く呼吸をすると、こう言った。
「この世に、魔術は存在する。」
「…は?」
「一般人として生きてきたキミは知らないだろうが、魔術が存在しているんだ。」
「聖杯は魔術の完成系のようなものでね、それを求めて7人が戦う。」
「しかし、聖杯は過去の英雄を呼び出すんだ。ピッタリ7人。その呼び水としてこの刀を用意した。」
教授は刀の鞘を撫でた。
「なんで英雄を呼び出すんだ?」
「詳しいことはわからんが…そういうものだと思ってくれ。」
「…俺は魔術の存在を信じられない。目の前で見せてくれ。」
「なら簡単だろう。わしの見立てではこの刀に触れれば令呪を宿すはずだ。」
「令呪…?」
俺は半信半疑ながら、刀に触れた。
その時、触れた右手の甲が痛んだ。
「痛っ!」
右手の甲を見ると、アザのようなものが浮かんでいた。
「それが令呪。そしてそれが、魔術だ。」
「これが…?」
「刀を持って裏庭へ行くといい。今なら人も少ない。」
「そこで何をするんだ?」
「召喚の儀だ。この紙に呪文は書いてある。」
「はあ。」
「君はマスターとしては半人前ではあるが、佐々見君によれば魔術回路はそこそこのものがあるらしいしな。」
「佐々見社長も魔法使いなんですか?」
「魔法使い…正確には魔術師だが…まあいい。彼は私の元で魔術の研究を手伝っていただけだ。早く行きたまえ。考えるよりまず行動だ。」
裏庭には魔法陣とその奥に大きな四角い石が置いてあった。
「ここに刀を乗せれば良いかな。」
そして、呪文を読み上げた。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公…」
魔法陣が光り始めた。
これが魔術…
「抑止の輪より来たれ。天秤の守り手よ。」
詠唱を終えた直後、その場に突風が吹き荒れた。
風が止み、魔法陣を見た。
すると、そこには和服を着た人間がいた。
石の上に置いた刀を見ている。
「お前は…誰だ?」
そいつはこちらを振り向いた。
美しい容姿をしていた。男とも、女とも取れるような。
その人は、片膝をつき、こう言った。
「サーヴァント。セイバー。召喚に応じ、参上しました。」
「問いましょう。貴殿が私のマスターですか?」