亜種聖杯戦争 ~God's penalty~ 作:あいますく
ピピピピピピピピピピ
目覚ましは無機質に鳴り響いた。
「夢…か…」
目覚ましを叩き、ベッドから降りる。
今日は月曜日。普通なら多くの人間が悲しそうな顔をしながら街を歩くのだろう。しかし、俺は違う。
俺が向かったのはパソコンの前。パソコンを付けていつものように『出社』する。
俺の会社はネット上に存在する。仕事内容はゲーム開発。
リリース開始直後にバグが見つかったものの今は何とか上手くいっているようだ。
サーバーの状況を眺めつつ、あの日のことを思い出していた。
謎のメールに呼び出され、セイバーを召喚したあの日。
あの“本物の殺し合い”をした日々。
あれからもう…1ヶ月…
汚い部屋だが、1箇所だけ片付けた場所がある。
セイバーを呼ぶのに使った、無銘の刀。
それを仕事用のパソコンの後に飾っている。
あれがあると、またセイバーに会えるんじゃないかって思えてくるから。
・
・
・
戦争が終わったあと、俺は永治先輩に魔術師としての弟子にならないかと誘われた。
しかし、俺はそれを断った。
俺は最初から魔術師の家系でもないし、根源に至りたいという考えもなかった。
日が登って、砂木教授と梵地教授に聖杯戦争の結果を伝えた。
教授達は聖杯が手に入れられなかったことを少し、いや、かなり落胆しているようだった。
それから、色々なことを教えて貰った。
院津さんは2人がアインツベルンのホムンクルスに習って作ったホムンクルスだということもそのひとつだ。
その後、社長が大学にやってきた。
社長は最後まで戦い抜いたことを賞賛し、過酷な戦いに突然放り込んでしまったことを謝罪した。
だが、俺にとってこの亜種聖杯戦争は人生で1番の経験になった。
普通の人間には触れることすらできない神秘
サーヴァントや魔術を目の当たりにする奇跡
それらが俺の心の中にあり続けた。
俺は今、病院のベッドにいる。
もう齢80をとうに越している。
俺の隣には、あの刀が置いてある。
院長に頼み込んで置いてもらったのだ。
一般人として生きてきたこの人生で、誰もこんな出来事を信じてくれなかった。
それでも、どれだけ科学が進歩しても、魔術が衰えることは無かった。
永治家は3代目になる魔術の藤家になった。
時々、先輩の息子さんが見舞いに来てくれる。
今の所、この紅藍市で再び亜種聖杯戦争が起こってはいないらしい。
永治先輩は家督を譲ってからどこかに消えてしまったと聞いた。
俺は何となく、何となくだが、ライダーの母国、ロシアへと向かったのだろうと思っている。
・
・
・
ああっと。いけない。客がいるっていうのに眠ってしまったみたいだ。
しかし、俺はすぐにそこが病院ではないと理解した。
刀が無い。ベッドに寝ている訳でもない。
そこにあるのはまっすぐ伸びる光。
その先に、見覚えのある和服の剣士がいた。
手を伸ばす。手を差し出す。
「また、会えた。」