モンスターハンター 〜狩人ノ手記〜(Remake)   作:活字の嵐

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 皆様お久しぶりです。はじめましての方はこんにちは。活字と申します。
 長らくスランプとなっておりましたが、克服のために何か書いてみようと思い立ち、別の方向性で既出の『狩人ノ手記』第一話をリメイクしてみました。
 拙いところもあるかもしれませんが、リハビリ投稿第一回、お楽しみいただければと思いますm(_ _)m


#01

 ここは、シュレイド王国の王立図書館。

 飛竜がすっぽり収まりそうなほど高い天井と、中身のぎっしり詰まった書棚で埋め尽くされた空間。その片隅に、ひっそりとその本はあります。

 一冊のぶ厚い本。大きさは辞書ほどでしょうか。茶色い革表紙は手垢にまみれ、お世辞にもきれいとはいえません。表紙のどこにもタイトルはなく、図書館での管理用でしょうか、背表紙に「1-23715」と書かれた紙片が貼り付けられていました。

 本を開くと、手書きの文章がずらりと並んでいます。ところどころインクがにじんでいますが、几帳面に書かれた文章ははっきりと読むことができました。

 どうやらこの手書きの本は、あるハンターが自分の狩りの人生をまとめた回顧録のようです。ハンター達の中には日記をつけている者もいますが、それを一冊の本にしようなどという者はほとんどいません。

 このハンターは、なぜここまでして記録を残そうと思ったのでしょうか。その答えも、きっとこの中にあるはずです。

 

 

さあ、ページをめくり、彼の人生を辿ってみましょうーー

 

 

     *     *     *

 

 

 リオレイアが大きく胸をそらすような動作をとるのを見て、俺は反射的に横に飛び退いた。

 次の瞬間、俺のすぐ横を燃えさかる火球(ブレス)がかすめていった。それはすぐ後ろで()ぜたようで、大地が揺れ、草の焼ける臭いが鼻をついた。避けるのがあと少し遅ければ、俺自身も瞬時に消し炭となっていただろう。

 (あっぶな…)

 自分の幸運に感謝し、ついでに二発目が来ないことも祈りながら、俺は再び大地を蹴って走り出す。

 走り出した俺の左後方から、エドのボウガン”鬼ヶ島”の聞き慣れた発砲音が三回連続で聞こえた。ほとんど一繋がりに聞こえた発砲音と同時に、リオレイアの鼻面に三発の徹甲りゅう弾が突き刺さり、三つの爆発を起こす。

 突然の不意打ちに、リオレイアが大きく身をよじった。丸太のように太い足が大きくたたらを踏み、巨大な飛竜がバランスを崩しかける。

 「うおぉぉ!」

 がら空きになったリオレイアの懐に潜り込んだ俺は、背中に背負っていた”41式対飛竜大剣”を引き抜き、勢いに任せて振り下ろした。緑色をしたリオレイアの鱗が数枚吹き飛び、生臭い血の臭いが、俺の着ているハプルシリーズの防具に降りかかってくる。

 体を軸にして、腰をひねるように一回転。大剣を横なぎに振り、さらに追い打ちをかける。頭上では、バチン、バチンと鬼ヶ島の通常弾がリオレイアの鱗を弾き飛ばしている音が聞こえる。

 これならいける。もう一撃とばかりに、41式対飛竜大剣を振りかぶり、溜め斬りの態勢に入った。腕に力を込め、大剣の自重を利用して力任せに叩きつける。

 だが、小型モンスターなら瞬時に両断できるほどの勢いで振り下ろされた切っ先は、むなしく空を切った。

 何事かと顔を上げると、リオレイアが一歩後ずさり、翼を広げている。

 「しまっ…!」

 溜め斬りは大剣の中でもトップクラスの威力を誇るが、こちらもしばらくの間足を止めなければならない。そのため、本来ならモンスターに大きな隙ができたときにだけ使われる。だが、それを空振りしてしまっては全く意味がないどころか、逆にこちらの隙にしかならない。

 ――そして、リオレイアの後ずさり。この動作を取った後に来るものはたしか……

 「がはっ!」

 腹のところに強く突き上げるような感覚がした。鋭い痛みと奇妙な浮遊感が一拍遅れて襲ってきて、耐えきれずに41式対飛竜大剣を手放してしまう。そこでようやく、飛び上がったリオレイアに、尻尾でのサマーソルト攻撃を喰らったのだと気付いた。

 (ヤベッ……!)

 だが、気付いたところで今更どうにもならない。俺は何もできないまま地面に叩きつけられ、そのまま無様に転がった。

 鈍い痛みとともに、枯れ草と土と生温い鉄の味が、口いっぱいに広がる。

 「くそっ…」

 すぐに起きあがろうとするが、どうも意識がはっきりしない。目の前の景色がぼやけて見える。体中から力が抜けていく。手足が動かない。子供の頃にかかった熱病の症状にそっくりだ。

 リオレイアの尻尾には、毒を分泌するトゲがある。身体が動かないのは、サマーソルトを喰らったときに防具ごしに毒を送り込まれたからだろう。

 不意に風が強くなり、胴を何かに掴まれる感触がした。握りつぶされそうなほどの力で掴まれ、鋭い爪が防具に食い込む。あまりの力に、思わず「うっ」とうめき声が漏れた。

 とにかく痛い。爪の先端が、防具どころかその下のインナーまで突き破って、皮膚に達しているようだ。

 目があまり見えないが、どうやらリオレイアに捕まったらしい。リオレイアの口がすぐ近くにあるのか、生臭い息と唾液が顔に降りかかってくる。

 (だめだ、食われる!)

 そう思った瞬間、狩りに出る前の風景が頭をよぎった。

 遺跡平原までの道のり、クエストの受付をしたカウンター、エドと食べた朝食ーそれらの風景が逆回しに再生されていく。

 そして最後に、今日の朝、目覚めた後の風景に見た風景でそれは途切れた。

 (ああ、これが走馬灯(そうまとう)ってやつか。ってことは俺、ここで死ぬのかな)

 そう考えると、なぜか急に切なくなってきた。リオレイアに今にも食われそうな状態なのにだ。

 不思議なことだが、怖いとは思わなかった。ただただ、残念だと思う気持ちだけがあった。

 だが、その考えは突如として打ち切られた。

 突然、視界が白一色に塗りつぶされ、リオレイアの悲鳴が聞こえ、食い込んでいた爪がふっと抜けたかと思うと、俺は再び地面に投げ出され、ゴム(まり)のように転がった。そのすぐ近くで、何か大きなものが暴れ回る音と地響きがしていた。

 「…痛てぇ……」

 胸の部分に激痛が走る。リオレイアに掴まれたときに肋<あばら>が折れたか、それともヒビが入ったか。

 夢の後のようにぼんやりとしている頭で、そんなことを考えていると、意識が朦朧としてきた。直後、何者かに腕を掴まれて引きずられる。おそらくエドだろう。

 「おい、しっかりしろ!」

 ――おいおい、もうちょっと丁寧にやれよ。痛いじゃないか。

 視界が利かなくなったリオレイアが滅茶苦茶に暴れ回る音を背景音楽にそれだけ考えると、俺の意識はすぐに深い闇に呑まれていった。

 

 

     *    *    *

 

 

 その後、俺は遺跡平原のベースキャンプで目を覚ました。俺が気絶している間に、エドはさっさとクエストをリタイアして迎えの竜車を呼んでいた。

 今の拠点――バルバレへの道中は、お互いに終始無言だった。エドは俺に話しかけようとはしなかったし、俺も話そうとは思わなかった。

 そして、俺は一直線にギルドの医者の所まで運ばれ、診察と治療を受けた。

 肋骨が二本と、右足首、右手首の捻挫。リオレイアの爪が食い込んでいた部分のあざ。さらにその他大小もろもろの傷を負った俺は今、胸と足に包帯を巻かれ、病室のベッドで横たわっている。

 「こりゃまた、痛々しいなあ」

 病室に入って来るなりそう言ったエドは、ベッドの横に椅子を持ってきてどっかりと座った。竜車のときのような表情はどこへやら、ヘラヘラと笑っている。

 「おいおい、せめてそこは心配しろよ。『大丈夫かレツ~っ!』って風にさ」

 「心配なら狩り場で済ませてきたからな。五体満足で戻れただけでも、儲けもんだろ」

 エドは俺の抗議をさらりと受け流した。もしかして、あのとき黙っていたのは、俺のことを気遣っていたのだろうか?

 そんな俺の考えは露知らず、エドはさらにしゃべり続ける。

 「親父に事情は話した。次があるからなるべく早く治してこいだとよ。医者は何て言ってた?」

 「確か……動けるようになるまで三日、肋は一月で治る、みたいなことを言ってたな」

 「そうか。分かった、親父には俺から伝えておく」

 そう言うと、エドは急に神妙な顔になった。普段からへらへらしている彼には、あまり似つかわしくない顔だと思った。

 「しかしレツ、お前何かあったのか?」

 「なんだよ、急に」

 「出発前から、お前が妙に落ち着きがないように見えてな。それに、リオレイアのあのサマーソルト、あれだって普段のお前ならわけなくしのげるだろ?」

 「……別に、何でもない」

 「悩み事じゃないだろうな。何かあるんなら隠すなよ」

 「何でもないって言ってるだろ。考えすぎだよ」

 俺がそう言うと、エドはどこか諦めたような顔でため息をつき、椅子から立ち上がった。

 「そうか。ま、今はよく休むこったな」

 そう言い残し、エドは病室を出ていった。

 ――またよろしく頼むぜ、相棒。

 狩りの後、いつもエドが俺によく言っていた言葉は、ついに聞くことができなかった。




 楽しんでいただけたでしょうか?
 私は執筆に時間がかかる人間ですが、書いているとやはり楽しいです。なんというか…キャラクターの動く光景が思い浮かぶのがなんとも言えません(*´ω`*)
 それではまたお会いしましょう。さようなら(^_^)/~
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