『JOSHUA JOESTAR』   作:佐島 五十郎

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ジョジョとなのはのクロスオーバーです。
設定の変更点として、魔導師はスタンドを目視できるというものがあります。
ご了承ください。
今回の本文はプロローグ的な内容になっています。


Stand up

 母が亡くなってからは、毎日がただのルーティーンの繰り返しだった。

色あせた日々のなかで母の死を思い出さないように、心を空っぽに、また意識も薄くする。

そして、母が亡くなったと聞かされて、おおよそ一か月くらい経った頃だった。

いつも通りに部活を終え、帰路につき、玄関のかぎを開け、未だ母の温もりの残るリビングでソファに腰かける。

目を瞑っていると、今は亡き母の面影が思い出された。

 

 「死にたい」

 

思わず、声に出してしまったこの言葉。

一日のすべてが終わった後の空白の時間に押し寄せてくるこの感情。

母の為に、生きねばとは思う。しかし、そう思えば思うほどに、そのたびに思い出される母の死が、奮い立たせた勇気を粉々に打ち砕く。

 

「そういえば――」

 

ふと、部屋の隅に置いていた母の形見のトランクが目に入った。

旅好きの母はよくあのトランクで単身旅行に行っていたものだ。思えば、母が亡くなってからは、開けたことは一度もなかったように思う。

そうこう考えを巡らせているうち、いつの間にか鍵に手をかけていた。

普段の彼ならば、母を思い出したくないという理由でトランクを己から遠ざけただろう。

しかし、今まさに、彼はトランクを開けようとしている。それはまるで――いやまさしく引力だった。母の残滓(トランク)と彼の間には確かに引力があった。

 

 そして――

 

 ――突如、謎の痛みに襲われた。

その痛みがトランクから飛び出てきた謎の物体が手に突き刺さったことでもたらされたものだと分かった時には、もはや意識は痛みに支配されてしまっていた。

 

「が、ああああああッ――」

 

熱い、あつい、アツイ――

手の甲から進行してきたナニカは、まるで死にたいのなら殺してやるよとでも言うようにゆっくりと首元を狙う。

このままでは確実に死んでしまう。さっきまで死にたいと考えていた人間とは思えない思考が頭を巡った。

――だから、「死にたくない」と必死で叫んだ。

自分にはまだ生きる意志があるんだと世界に知らしめるように。

 

瞬間、彼の体から一本の剛腕が現出する。

剛腕は命を絶とうとしている物体――矢じりを力任せに引き抜くと、そのままの勢いで、キッチンの方へ放り投げた。

 

やがて、ドサリと彼の体は地面に伏した。

後には、開きっぱなしのトランクと一冊の手帳、未だクルクルと回り続ける矢じりが残され、何事もなかったかのように辺りはシイーンとした静寂に包まれた。

青年の名はヨシュア・ジョースター。

のちに海鳴市を発端としたスタンド使いたちの攻防の中心となる人物である。

 

***

 

 翌日、ヨシュアは学校を休んだ。

理由は、母の残した手帳と謎の矢じり、そして自分に取り憑いた守護霊のようなものの正体を見究めるためである。

もう彼に死への願望などない。

昨日の痛みを彼は母親からのメッセージと受け取ったからだ。

 手帳には、驚くべき事実が記されていた。

母は血縁上ヨシュアの母親ではないこと。

母がかつてDIOという吸血鬼の臣下だったということ。

そして、ヨシュア自身が、そのDIOの息子だということ。

他には、彼に取り憑いた守護霊の正体にも言及があった。

 

 曰く、守護霊のようなものの正体は、『スタンド』と呼ばれる超能力である。

 曰く、『スタンド』を目視することができるのは『スタンド使い』のみである。

 曰く、『スタンド』は持ち主である本体の意思で動く。

 曰く、『スタンド』は特殊能力を最低一つ持っている。

 

 何かの冗談かと思った。

だが、信じなければ、自分のそばに現れ立つ(Stand by me)この巨漢の男に説明がつかなかった。

 次いで、矢じりについてだが、母の手帳にはこれについての言及が全くなかった。

しかし、体に突き刺さった後に、スタンドが発現したところを見ると、少なくともスタンドと何かしらの関係があるだろうという推測が立てられる。

 

「ムーンチャイルドッ」

 

意思の力を込めて、己が守護霊(スタンド)の名を叫ぶ。スタンドは雄たけびをあげながらヨシュアの身体から出現する。

その容姿はまるで美術館の彫刻のようだった。

黄金のボディのいたるところに波紋の意匠がされており、悠然と立つその姿に神秘的な印象を与えている。

 

「ひとつ、スタンドの力を試してみるとするか」

 

言うと、ヨシュアは玄関から家を出て、深い夜の下に繰り出した。

 

 深夜二時、海鳴市民の大半が寝静まったであろうこの時刻。

だが、夜の街を闊歩する不良少年たちは違う。

彼らは街を練り歩きながら、自分たちのストレス発散の捌け口を毎夜探しているのだ。その対象にはヨシュアも含まれる。

彼には父親から受け継いだとされる金髪があり、よく街の不良たちに絡まれてきた。

丁度いいからそいつら相手にスタンドを試してみようと思ったのだ。

 

「おい、テメェ。今、ガン飛ばしてきたよなァ」

 

早速、絡まれた。話しかけてきた不良の後から、ぞろぞろと数人の不良たちも現れる。

 

「ガンなんて飛ばしちゃあいないよ。ただ、群れなきゃなにもできないアンタらに侮蔑の視線を送っただけさ」

 

「あんだとぉ!?ガキのくせによォ、粋がってんなら切り刻んでやるよぉ――!!」

 

不良の懐から取り出したアーミーナイフでの攻撃が、戦いの火ぶたを切った――

 

「ムーンチャイルドッ!!」

 

迫る不良のナイフ。しかし、ムーンチャイルドは圧倒的な力で不良の腕の骨をそのナイフごとへし折った。

 

「ウゲブェ~!!俺の……おれのうでがぁ~~!粉々にぃ~~!」

 

「安心しろよ。ちゃんと治るよう加減はしたぜ」

 

他の不良たちはすっかり怯えてしまっていた。

ひとりでに仲間の腕がへし折れるという目の前のありえない現象を受け入れられないのだ。

 

「アンタらもかかってきなよ。生意気なガキを叩きのめすんじゃあなかったのか?」

 

「ひいいああ」

 

やけになって、不良たちは一斉に襲い掛かる。

手に武器なんぞ持っておらず、たとえ持っていたとしても勝ち目などないというのに。彼らはもう頭が混乱して、目の前の危機を正しく認識できていなかった。

 

「無駄だァ!」

 

彼らの攻撃はやはり無意味に終わる。

ムーンチャイルドのラッシュは彼らの頭を正確に打ち、意識を昏倒へと追いやった。

 

「さて、腕試しはここまでかな。騒ぎを聞きつけて警察がこちらに向かって来ているようだし……」

 

スタンドが最低一つは持っているという特殊能力を拝むことはできなかったが、収穫もあった。

それはヨシュアのスタンド、ムーンチャイルドが接近戦で威力を発揮するスタンドだと知れたことだ。

逆に遠距離に行くことはできないということも判明した。

 

「おっと、今はそんなことを考えている場合じゃあないようだな」

 

パトカーのサイレンはもうすぐそこだ。

ヨシュアは見つからぬよう慎重に、だが素早く帰路に就いた。

 

***

 

 家に着いたのは、丑三つ時も過ぎた深夜4時だった。

帰る途中、警察とバッタリ遭遇するなんていうハプニングがあったが、それもうまく切り抜けることができた。

 

「疲れた……」

 

ドッカリとソファに全身を預ける。

一昨日まではこのソファに腰かけると辛い思いに苛まれた。

しかし、今は違う。

あの痛みに耐え、スタンドを獲得したことで母に「生きろ」と言われた気がしたからだ。

リビングを見渡してみると、母との思い出が浮かんでは消えていく。

ふと、母のトランクが目に入った。その次に手帳。そして――

 

違和感、あるべきものがないという強烈な違和感。

 

「……ない、矢じりが――ないッ!」

 

確かに手帳の横に置いておいたはずだ。

それなのにもかかわらず矢じりは忽然とその姿を消していた。

必死に他の部屋も探したが、やはり見つからない。

何者かに盗まれたとでもいうのか、家の鍵は施錠しておいたはずなのに。

盗まれたと考えるのならば、それはきっと恐ろしいことだ。

現金や貴金属が盗まれていないところをみると矢じりだけを狙ったのだと考えられる。ならばなぜだ?目的は?

 

「まさか、他のスタンド使いが……?」

 

大いにあり得る。密室で窓ガラスが割られた形跡もなく、ヨシュアのいないうちに素早く盗めるものはスタンド使い以外に思いつかない。

近いうち海鳴市でなにかがおこる。その予感がヨシュアにはあった。

 

「とにかく探しださないと」

 

ここ海鳴市で運命の歯車はゆっくりと廻り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




スタンド名:ムーンチャイルド
   本体:ヨシュア・ジョースター

  破壊力:A
スピード:A
 射程距離:E
  持続力:E
精密動作性:A
  成長性:A

   能力:?
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