『JOSHUA JOESTAR』   作:佐島 五十郎

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【警告】
これより先は
(原作から大きく乖離するので苦手な人は)
読んではいけない


ouvertureは静かに奏でられる「管理世界のスタンド使い その1」

 あれから、数日が経った。

ジュエルシードはすでに21個中5個がなのはによって集められ、順調に見えた。

 

(……スタンドは僕らの住む管理世界では、レアスキルという認識であることは以前話しましたよね?)

 

(……ああ)

 

ヨシュアと承太郎は念話でユーノから管理世界のスタンド使いについて教示してもらっていた。

なのはは日々のジュエルシード集めの疲れからか部屋で熟睡しているとのことなので、こういった話にはお誂え向きの時間だ。

 

(遠い昔からスタンド使いは存在していたと言われています。それこそ魔法が生まれる前から。魔法はそのスタンドという才能に近づこうとする技術という説もあります。)

 

(スタンドは精神の作り出す(パワー)ある(ヴィジョン)……。君の世界に存在していても何らおかしくない。しかし、我々のスタンドと君の世界の魔法にそんな関係があったとはな……)

 

(スタンドと魔法には歴史だけじゃあなく、もっと密接な関係があります。それはリンカーコアです)

 

(そういえば、オレがあのジュエルシードの化け物をブチのめしたときもそんなことをいっていたな)

 

(ええ。リンカーコアとは魔導師の体内にある魔力の源のことですが、スタンド使いの身体にもあることが確認されています。リンカーコアについてはまだ確かな解明は為されていませんが、おそらく、魔導師がスタンドを視認することができる原因はここにあるだろうと言われています)

 

(そうか。どうやら君の世界の者はスタンドについて我々より詳しい部分があるようだ。)

 

(そうでもありません。今や魔法はスタンドより万能であるとみなされていますから、ほとんど研究が進んでいないんです)

 

(SPW財団ではスタンドについての研究が進んでいる。知識提供の為だけではないが、ぜひ君の世界の代表とコンタクトが取りたい)

 

(僕は管理世界の一魔導師でしかありません。そんな権限はありませんが、ジュエルシードの問題が解決できれば、その機会を得られるかもしれません)

 

その答えに承太郎は満足そうに、そうかと返した。

このジュエルシード騒動とスタンドの矢が盗み出されたこと、根拠はないが感覚でなにか関係があるように思える。

承太郎とユーノの会話を聞きながらヨシュアはそんなことを考えていた。

スタンドと魔法、管理世界ならまだしもこの地球で絡み合うはずのないものが、なにかの因縁か海鳴市を中心に絡み合おうとしている。

そんな風に思えて仕方がなかった。

 

***

 

 そして事態は突然にそれも当然のように起きた。

ヨシュアの脳に鋭い感覚が走った。

なにかに共鳴するように……、その共鳴しているものの正体をヨシュアは知っていた。

 

「ジュエルシードだッ……。それにものスゴク強いぞ、この感覚ッ」

 

(承太郎さん!ヨシュアさん!)

 

(ユーノか!?)

 

(ジュエルシードが発動しました!僕となのはは現在その場所へ向かっています!皆さんも急いで!)

 

(……わかった)

 

「オレもすぐに向かう。しかし、なにか嫌な予感がする。魔法がらみじゃあなく、スタンドがらみの嫌な予感がな」

 

言って、二階の自室の窓を開く。

桟に足をかけ、そこから思いっきり跳躍した。

窓から斜め上の方向に8mほどジャンプし、向かいの家の屋根に着地する。

ヨシュアの『ムーンチャイルド』はパワータイプのスタンドだ。

だからそんな芸当もできる。

その家はなのはの家だったが、いまは緊急事態だ。

家の中から「なのはか?出かけてくるんじゃなかったのか?」という声が聞こえてきたが、聞かなかったことにする。

そうして屋根伝いに跳躍しながら引き付けられる方向に向かっていると、だんだんと異変の様相が見えてきた。

巨大化した木々、まるでファンタジーやメルヘンにでも出てきそうな大樹の群だった。

ヨシュアはその数ある大樹の一つに着地すると、異変の中心を探し始めた。

 

「ジュエルシードの発動をこの身体で感じることができたのならば、その位置を探知することができるはずだ」

 

精神(こころ)を澄まして、ジュエルシードの存在を探り出す。

 

――瞬間、ヨシュアの身体を第六感的な危険予知の感覚が襲った。

 

「ムーンチャイルドッ!!」

 

すかさず防御する。

猛スピードで迫るその赤黒い物体を。

 

「良い反応だ。さすがだな。若きスタンド使いよ」

 

しわがれた声。だが、芯の通ったような声だ。

 

「その木の陰にいるのはわかっている。姿をみせろ」

 

予想に反してその男は素直に陰から姿を現した。

そして、予想通りソイツは老人だった。

 

「この状況にまったく動揺していないことから察するに、じいさん、アンタこの世界の住人じゃあないな?恰好から魔導師でもない。アンタはスタンド使いだ。ねらいはジュエルシードか?」

 

「ご名答。そういう君もただの現住のスタンド使いではないようだ。魔導師や魔法に何らかの関りがあるのだろう?」

 

「答える義理はない」

 

ヨシュアのその言葉に老人は大きく肩をすくめると、

 

――即座に攻撃を仕掛けてきた。

 

またしても赤黒い物体が空気を薙ぐ。

それをヨシュアは再び『ムーンチャイルド』で防御する。

その防御は完璧に見えた。

だが――、

 

「なにッ!?」

 

ポタリ……、ポタリ……と、ヨシュアの腕から血液が滴り落ちる。

老人の攻撃は防がれてなどいなかった。

 

「そのスタンド……一瞬だが視えた。血液だ。血液を操るスタンドか!!」

 

「よくわかったな、少年よ。わしのスタンド『ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ』は血液によりその(ヴィジョン)を描く!」

 

老人が腕を薙ぐ。

すると背後から血液が噴出し、渦巻き、そして、やがて人型の像に変化した。

とっさにヨシュアは距離をとる。

 

「良い判断だ。わしから3mの範囲に近づけば即座に君の血液は暴走し、身体を破裂させるだろう」

 

なぜ敵にその能力を教えるのかヨシュアには理解できなかったが、ヨシュアにとってそんなことは些事だった。

老人の血液のスタンドの射程距離は5mほどだ。

だがヤツに『ムーンチャイルド』を叩きこもうとして3mの範囲に入ってしまえば死ぬ。

死ぬ前にそれこそ一瞬で叩きのめし、再起不能にすれば、能力は解除されるが……

『ムーンチャイルド』の射程距離は2m、やはり一手足りない。

取れる選択肢は一つだけ。

 

「5m範囲外からの遠距離攻撃だけだッ」

 

『ムーンチャイルド』で石ころを投球する……はずだった。

 

「うぐぅ」

 

それは老人のうめき声ではなく、ヨシュアのものだった。

 

「またもや良い判断。遠距離攻撃はこの状況では最善手であるといえるだろう。だが、最善手とは相手からも読みやすいもの。その判断は実は悪手だったのだよ」

 

槍がヨシュアの両腕と胴体から生えていた。

正確には凝固した血液の槍が。

 

「脳と心臓を狙ったが、咄嗟にガードしたのか……。いずれにせよ君はもうわしには勝てん。一つ質問をする。みたところ君はデバイスを持っていない。ジュエルシードの封印にはデバイスがいる。仲間はどこだね?」

 

「ぐッあ……答える義理は……ないッ……」

 

「まあ、良い。おおよそ検討はつく。あのビルの屋上から魔力が感じられた。魔導師はあそこだ。ジュエルシードを集めるには、封印する魔導師を押さえるのが一番効率が良い」

 

――コイツは危険だ。いくらなのはが稀代の天才魔導師だろうと、経験あるこのスタンド使いには勝てない。

 

――コイツはッ!オレが倒さなくてはならない敵だッ!コイツをッ!なのはのもとへ行かせてはならないッ!

 

「待て……ッ」

 

「なんだね?君はもうしゃべることも億劫だろう?横たわって死ぬ前に家族に思いでも馳せたらどうかね」

 

「純粋な疑問なんだ。なぜアンタは自分のスタンド能力の秘密やらをそうベラベラとしゃべる?」

 

時間稼ぎではない本当の心からくる疑問だった。

 

「スタンドとは精神の発露だからだ。君に話すことでわしは成長できる。あえて自分を逆境に置くことでスタンドは成長する!!」

 

そう話す老人の顔には、僅かな喜色の表情が浮かんでいた。

おそらくそれがこの老人の美学なのだろうとヨシュアは思った。

 

「わしはそうやってスタンド使いとして生きることで、ここまでの力を得たのだ!!」

 

「なら、オレもアンタを見習って成長しなくちゃならない。」

 

「なに?」

 

「オレはヨシュア・ジョースター。スタンドの名はムーンチャイルド。能力は相手を催眠にかけること」

 

コイツを倒す、それには成長が必要だ。

あえて逆境に身を置く、そのための暴露。

 

「そして、オレは成長するッ!うおおおおおおお……!」

 

両の腕と胴体を貫いた血液の槍を引き抜く。

その咆哮はまるで宣言のようだった。

自分の生きる道を宣言するようだった。

 

「なにをやっているッ!?」

 

二度目の血液の槍が発射される。

それをヨシュアは血だらけの『ムーンチャイルド』のラッシュで弾き飛ばした。

 

「なに、アンタに成長した姿を見てほしいだけさ」

 

ヨシュアの顔にはもう苦悶の貌はない。

あるのは超然の表情だけだ。

 

「良い顔だ」

 

対して老人もニヤリと笑う。

さきほどの動揺はもうない。

二人のこの様相はまさしく決闘だった。

 

「アンタ、さっき動揺したよな?」

 

「ああ、わしは動揺した。だが、それがどうした」

 

「ならそれが付け入る隙ってやつさ」

 

――老人が動く。

 

再度、血液を槍状に凝固し、血液のスタンドがそれを放つ。

槍は確かにヨシュア・ジョースターに当たったかに見えた。

少なくとも、老人からは。

 

「催眠には、大雑把にいって二つの方法があると言われている。何らかのプロセスを踏む……例えば、身体に触ったりしてかけるもの、そして、会話の中で誘導してかけるもの」

 

ヨシュアは依然として超然の表情をしてそこに立っていた。

遅れて老人は気づく。

血液の槍はヨシュアをそれて奥の大樹に突き刺さっていることに。

 

「動揺がオレのスタンド能力のトリガーだ。アンタに勝つためにそういうふうに成長したのだッ」

 

老人に近づく。

5mの範囲へ。

スタンドは動かない。

そうして3mの範囲に踏み込んだ。

 

「アンタの能力はもう発動しない」

 

「わしも焼きが回ったか。だが、自分の美学に敗れるのも悪くない」

 

『ムーンチャイルド』がヨシュアの背後に発現する。

 

「いくぞ――、無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄……無駄ァ!!!」

 

スタンド名:『ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ』 本体:名も知らない老人……再起不能(リタイヤ)

 

***

 

 目が覚めて最初に見えたのは白い天井だった。

ここが病院であることはボーっとした病み上がりの脳でも理解できた。

気配がしたので、右隣を見ると、そこにはやはりなのはがいた。

彼女は心配そうにこちらをのぞき込むと、突然口を開いた。

 

「ごめんなさいっ!!ヨシュアさんはわたしを守ってくれたんですよね?わたしがあのとき気のせいだなんて思わなかったら……」

 

いきなりまくし立てるなのは。

それにヨシュアは思わず眼が点になってしまった。

 

「おいおい、いきなりまくし立てないでくれ。それにあれはキミのせいなんかじゃあない。いずれ起こっていただろう必然だったんだ」

 

「でも……」

 

いまにも泣き出してしまいそうななのはをどうにか慰めたくて、ヨシュアは言葉を紡ぎだした。

 

「オレは今日成長した。成長しなくてはキミを狙うスタンド使いを倒すことはできなかった。キミも同じはずだ。キミの瞳には成長者の持つ黄金の輝きがある。これは推測だが、キミは街を襲う大規模なジュエルシードの猛威を目にして後悔したしたはずだ。さっきのように気のせいだなんて思うんじゃなかったという風にな。だが、それは失敗ではない。その後悔は教訓となり、キミの成長への一歩を照らし出す陽の光になる」

 

こんな大仰なセリフをヨシュアは吐いたことなどなかったが、なぜだか言葉は自然に出てきた。

その後、なのははひとしきり泣いた。

ヨシュアはただ見守るだけだった。

こんな状況は不得手だったが不思議と気まずいだなんて感情は起こらなかった。




スタンド名:ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ
   本体:デイビット・クレイトン・トーマス

  破壊力:B
 スピード:C
 射程距離:D
  持続力:A
精密動作性:E
  成長性:B

   能力:血液を操る。




なのはってそんなに泣くイメージありませんよね。
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