性格濃いめの女子が戦国BASARAにトリップした場合。 作:藤 都斗
とりあえずさ、慶次、アンタあの人に一体何やらかしたの
「本当に…貴方という人は…っ!!突然居なくなったかと思えばこのような所で…!!!」
うわ、なんかよく解んないけど無茶苦茶怒ってるよあの人。
慶次、アンタ何かやっちゃったならさっさと謝れば良いと思うよアタシ。
「まっ…待ってくれよまつ姉ちゃん…!、俺」
「問答無用です!!!さぁ!帰りますよ!!!」
「ちょ、待ってくれってば!!、えーと、そう!俺この子に京の案内を頼まれてて…!!」
うわ、コイツアタシをダシに使いやがったぞ、最低だな。
「人様のせいにするものではありません!!!」
あーぁ、一蹴されてやんの。
とか思って悠長に構えてたら、当の慶次が何故か突然、アタシの後ろに隠れた。
え、アレ?
なんかアタシも巻き添え食いそうな予感が、ものっそいして来たんだけどコレ、気のせい?
「何ですか貴女…これは前田家の問題、部外者は邪魔だて無用にございまする!」
うわぁ、気のせいじゃ無かった、てゆーか予感的中しちゃったコレ。
「…いや、あの…アタシ別に邪魔する気は…」
「では何故慶次を庇うのです!!」
いやだからね、コレ慶次が勝手に後ろに隠れただけであって、アタシ個人は何もしてないんだけど。
「さぁ!そこをどきなさい!女子とはいえ、容赦致しませんよ…!」
えー…ちょっと待ってよコレどうしよう…
この人完璧にアタシが慶次を庇ってると思い込んでるよ…
面倒臭ェな…適当に嘘吐いてごまかすか。
「…そ、そうは参りません!貴女様がどなたかは存じませんが、慶次様は私の命の恩人…!
この黒柳、恩人を捨て置いて逃げるなど出来ません!」
適当にそんな事を言いながら両手を広げ、慶次を庇う動作をしてみる。
オプションに怖がってちょっと震える動作付きだ。
慶次がアタシの変わり身の早さに呆然としてるけどそこは気にしない。
「恩人…?」
お、案の定食いついた。
こういう、真面目だけど話を聞かないタイプの人って、お涙頂戴系の話なら聞く耳持ってくれる事が多いのよね。
「そうです…!、慶次様は私が夜盗に襲われ、あわやという所を助けて下さいました…!」
そんな感じにカタカタと小さく震えながら、いかにもな感じで、さらに眉間に皺を寄せて真剣な感じにそれっぽく言う。
そして顔だけ慶次に向けながら『話を合わせろ』と視線を送った。
まだ若干戸惑っていた慶次も、そこでやっと理解したのか小さく頷く。
「貴女様の事情は存じませんが、慶次様に危害を加えるのでしたら…私は…!」
そう言ってきゅっと目を閉じた。
「…慶次、それは本当なのですか?」
「そ…、そうだよ!その時護りきれなくて、怪我させちゃったから、その治療で帰りが遅く…」
慶次が、しどろもどろにそれっぽい理由を述べると、女の人は驚いたように両手で口を覆った。
しかし、嘘に嘘が重なってってるなぁ。
まぁ、ボロが出ないように頑張れば良いだけの話だけど。
「…慶次…!、貴方って人は…!」
「女子を守ろうと…!流石前田家の武士!!某は感動したぞ慶次ィィィ!!!」
今まで黙りこくっていた半裸の人が、女の人の後ろで突然嬉しそうに吠えた。
結構うるさい。
なんだろう、幸村っぽい雰囲気を感じる。
「ならば慶次!何故文の一つでも寄越さないのです!!」
「ご、ごめんよまつ姉ちゃん…」
「まったく…!、今回はこの方に免じて許しましょう…、しかし次は容赦致しませんからね!解りましたか慶次!」
「わ…解ったよ…」
若干しょんぼりしながら了承する慶次。
いやー…しかしコレ面白い光景だな…
あの慶次がヘコヘコしてるよマジウケる。
まぁ慶次にはお迎えが来たみたいだから慶次との旅も此処までだろう。
気の毒だけどアタシはあんまり関わりたくないからちょうど良い。
よし、じゃあとりあえず今日は慶次と別れて、一旦どっかの宿にでも入ろう。
お腹は空いてるけど荷物もあるしね。
とか悠長に構えていたら
「貴女、黒柳さんと言いましたね。」
と、お姉さんから話し掛けられた。
おっと危ない。
とりあえずは、なるべく猫被っておこうと思う。
今バレたら意味無いしね。
「…は、はい、黒柳と申します。」
深意が読めないので伺うように、なるべく礼儀正しく務める。
「慶次がお世話になったようで…真に有難う御座いまする。」
丁寧にお辞儀されて軽く面食らった。
「あっ、いいえ!寧ろ私の方が慶次様のお世話になってしまいましたのに礼など…!
それに、慶次様の御身内とは知らず無礼な真似…どうかお許し下さい」
実際は巻き添え食っただけだからそんな事カケラも思って無いけど、でも一応アタシの中の“黒柳”って娘の設定は『礼儀正しくおしとやかな普通の人』だからね。
という訳でそんな風に言いながら、慌てたように土下座をしてみる。
忍って正体バレないようにしなきゃいけないから、佐助から無駄にスパルタな演技指導受けたのよね。
こんなとこで役に立つとは思わなかったけど。
さあ、どうなるかな。
「まぁ!頭を上げて下さいな!」
おぉ、見た目通り良い人そうだ、アタシの行動に慌ててくれてる。
肩に手を添えられてしまったので、反射的になるように顔を上げた。
「着物が汚れてしまいますよ、さぁ、お立ち下さいな」
優しく諭すように促されて、その流れで立ち上がったアタシは、お姉さんを見た。
ふぅむ、さっきまでの慶次に対する言動は、怒りから来ていただけで、本来は常識的な人っぽいな。
「なんとも…、真面目な娘子だなぁ…」
不意に半裸の人がそんな風に感想を漏らしたのが聞こえたけど、あの人なんで半裸…ってゆーかほぼ裸なんだろう。
いや、もうホントに意味わからん。
「…有難う御座います。」
だがとりあえず、お姉さんには礼を言っておく。
「礼には及びませぬ」
にこりと笑って返されて、やっぱり少し戸惑ってしまった。
この世界に来てから初めて普通の人に出会った気がするから、妙に身構えてしまうんだろう。
「…あ、私、宿を取らねばなりませぬ故、もう行きますね。
関係の無い者がいつまでも皆様をお引き止めする訳には行きませんし」
そんな風に若干慌てたように言いながら踵を返す事にした。
「あっ!ちょっと待てよ黒柳!」
が、慶次に肩を掴まれて引き止められた。
「慶次様?どうか致しましたか?」
「どうせなら宿より前田家に来ればいいよ!まつ姉ちゃんの作る飯はスゲー美味いんだぜ!」
ええぇ…何でだよ、アタシ関係無いじゃん
しかし慶次の目は語っていた。
俺を置いていくなよ!まつ姉ちゃんの説教聞きたくないんだ!と。
ふむ、そうか…だが慶次よ、アタシの意思は無視なのか。
ホント何この扱い。
「そ…そんな恐れ多い事…っ!前田と言えば立派なお武家様ではありませんか…!
私のような素性の解らぬ者が敷居を跨ぐなど…!それに…ご迷惑になってしまいます!」
なんとか関わるのを回避しようとひたすら捲し立てたのだが
「なんと奥ゆかしい娘なのでしょう…!、大丈夫ですよ黒柳さん。
私は迷惑などとは思いませぬ。むしろ貴女のような方でしたら大歓迎にござりまする」
と、言われ、何故か逆効果になってしまった。
エェェエエ…
ちょっ…ま…エェェエエ…
普通そこは止める所だよね
なんでお姉さんまで賛成しちゃうのよ
何この状況
何コレホントに
「しかし…、私のような者が…!」
そう言いながら戸惑ったようにフンドシ的な男の人に“断れ!!”という意味を込めた視線を送る。
「某は別に気にせんぞー?」
しかし全く気付かず、なんとも暢気な答えが帰ってきやがりましたチクショーめ。
「流石犬千代様にございまする!」
喜ぶお姉さん。
…うわぁ、なんかハートが乱舞してる気がする。
「そうと決まれば黒柳さん!慶次!共に前田家へ参りましょう!」
えーと、アタシ…お腹空いてるんですけども。
てゆーかいつも思うんだけど、なんで誰もアタシの話を聞いてくれないんだろうか
…まぁそんな感じに、なんだかほぼ強制連行って形で馬に乗せられ、アタシは前田家へ連れて行かれました。
この世界の人間はアレか
Sか、馬鹿か、人の話を聞かない人しかいないのかもしれない。
うん、でも慶次が言ってたようにまつさんの作るご飯はめっちゃめちゃ美味しかったです。
そして現在、何故かお風呂に入らせて貰ってます。
被ってる猫がいつ取れるか、気が気じゃ無かったりするんだけど、…でも今の所は大丈夫そうだ。
ホント今だけ佐助に感謝したい。
アンタのお陰で無駄に演技力付いたよ、女優になれるんじゃね?コレ。
あ、そういえば小太郎はどうしてるだろう。
後でおにぎり持って様子を見に行こうかな。
「黒柳さん、お湯加減はどうです?」
不意にまつさんの声が聞こえて若干驚いた。
「あ…はい!、ちょうど良い湯加減ですよ、まつ様」
とりあえずで、そう返事をしたら
「そうですか、…では私も入りますね」
そう言ってまつさんも浴室へと入って来た。
突然の事に、湯舟に浸かりながらもビビる。
「なっ…、ま、まつ様!!?」
いや女同士だから別に構いやしないんだけど予想外だったから普通にビビった。
いや別に良いよ、良いんだけどね
しかし普通見ず知らずの相手が入ってる風呂に入って来るか?
「あら、黒柳さん、どうか致しましたか?」
いやいやどーしたもこーしたも、すげープロポーションですね、いや、違うそうじゃない。
「も…申し訳ありません!私、すぐに出ますね!」
「構いませぬ、ゆっくり入って居て下さいな」
慌てるアタシにそう言って、まつさんはにっこり笑った。
いやいやいやいや何考えてんだこの人
「し、しかし…!」
「大丈夫ですよ。そんなに警戒せずとも私は何もしませぬ」
「そうじゃなくてですね!私が貴女様に何かするとは考えないんですか!?」
そう言ったら
「あら、慶次の連れて来た方ですもの。そんな事微塵も考えませぬ」
そう返されて思わずうなだれた。
なんなんだホントに。
思わず被ってた猫が剥がれかけたよ今。
「とりあえずは、背中の流しっこなど致しませぬか?」
なんか楽しそうに言われて、断るのもアレな気がしたアタシは、少し戸惑いつつも湯舟から上がった。
それから彼女に背を向けて座ったのだが、途端、まつさんから息を飲むような気配がした。
「…これは…」
彼女の声色で思い出す。
あ、ヤバイ、自分じゃ見れないから忘れてた。
そういやアタシ、今、背中に傷痕が有ったんだっけ。
えーと、なんて説明すれば良いかなコレ。
「…夜盗に襲われた時の傷…ですか?」
考えている内に尋ねられて、今の自分の設定を思い出した。
えーと“夜盗に襲われたのを慶次が助けてくれて、その際怪我をしててその治療で遅くなった”って言い訳してたんだよね。
……ちょうど良いから利用させて貰おう。
「…はい。」
「なんて事でしょう…!慶次ったら年頃の娘に傷を残すなど…!」
「あっ、いいえ、これは慶次様のせいでは…」
「いいえ!!慶次がもう少しきちんと治療していれば、痕など残らなかったはず!!!」
いや元々慶次が治療した訳じゃないし、この傷付けたの明智の変態だし。
…どうしたもんかなコレ
「…慶次様には、この傷の事…黙っていて下さいませんか?
あの方は…私の体にこんな大きな傷が残っている事を知らないのです」
とりあえず、そう釘を刺しておく事にする。
そもそも慶次はアタシの傷痕の存在自体知らないからね…
余計な事言われてボロが出ないとも限らない。
「…解りました。慶次には黙っていましょう…」
渋々といった様子だが一応承諾してくれたようだ。
なけなしの良心が痛む。
なんでこんなにいい人達騙してるんだろアタシ。
それもコレも皆慶次のせいだ。
全てアイツが悪い
あの馬鹿がまつさんを怒らせるような事しなけりゃアタシは嘘付かなくても自分を偽らなくても済んだのに。
ぶっちゃけ、ずっと演技続けるのってストレス溜まるんだよねチクショー。
それから他愛のない話をしつつ、アタシはやっぱり猫を被りながら背中の流しっこして二人して風呂から出た。
それから、夜食におにぎりを二つ程貰い、そこでまつさんとは別れてから縁側に座る。
気付けば辺りはもう夜になってしまっていた。
「…小太郎ー?」
おにぎりを持ったまま小さく名を呼ぶ。
そんな呼び掛けでもすぐに小太郎は現れた。
目の前に居るのにやっぱり気配は無い
…凄いなホント
「はいコレ。お腹すくでしょ。動いてばっかだし」
「…………」
そんな感じに持ってたおにぎりを差し出すと、小太郎は暫くは何の反応も見せなかったけど、でもそっとおにぎりを受け取ってくれた。
「…あちこち行ってたみたいだったけど、なんか有った?」
月を見上げつつ小さく尋ねる。
それから小太郎に視線を戻せば一枚の封書を差し出された。
中には、この辺りの治安や民草の様子と、街の詳しい地図などが書かれた紙が入っていた。
「ぅわぁ…有難う。わざわざごめんね。」
思わず感嘆の声が出る。
頼んでもいないのに凄いなこの人。
凄い有難いよコレ。
紙から目を離して小太郎を見たら、両手でおにぎりをモチモチ食べながら、そこはかとなく嬉しそうにしていた。
え 何この癒し系。
なんだろう、なごむ…。
「…美味しい?」
尋ねればコクリと頷く小太郎は、背の高い男の人な筈なのに癒し系にしか感じられなかった。
今までの荒んだ気持ちが癒されて行く気がする。
だけどそこで、聞かなきゃいけない事があるのを思い出した。
「…戦は、どうなってる?」
尋ねれば、また封書を渡された。
明智光秀も織田信長も行方不明。
今は豊臣と徳川とが睨み合ってて、武田は上杉と睨み合い。
伊達の方は、今の所だんまり。
西は、長曾我部と毛利が睨み合い。
封書にはそんな内容が書かれていた。
「…成る程ね。何処も戦準備万端ってか。」
とりあえず…次行くとしたらやっぱ四国だな。
だって一応地元だし。
「小太郎、解ってると思うけど前田家の忍殺しちゃ駄目よ。
アタシが怪しまれるとかよりアンタの存在がバレるかもだからね」
地図の分だけ抜き取り、読み終わった封書を小太郎に渡しながらそう告げると、小太郎はコクリと頷いて、そして微かな闇を残して消えた。
「さてと…」
小太郎が目の前から居なくなったのを見届けてから、アタシはまた、ぼんやりと月を見上げた。
もうそろそろ満月なのだろう。
形は大分丸い。
「あ…、夜空綺麗…」
なんせ排気ガスや光化学スモッグなんて皆無な世界だから空気が澄んでて超綺麗。
そのうえ明かりなんか蝋燭や行灯のみだから星や月を邪魔する光なんて無い。
一寸先は闇なんだろうけど今は月が照らしてくれていて、それが日本庭園の雰囲気にマッチしててマジ綺麗だった。
「あー…、癒される…」
アタシやっぱ綺麗な物が好きだ。
心が歪んでようと荒んでようと美しいものは変わらない。
そんな風に和んでいたら
「うん?其方何をしておるのだ?」
なんて、不意に聞こえたなんとも暢気な声に一瞬驚いた。
しかしこんな奴はこの家には一人しか居ない。
慶次の叔父、前田利家だ。
「っ利家様…!、申し訳ありません、見事なお庭でしたのでつい魅入っておりました」
「おぉ、そうかそうか!それは嬉しいな!」
「とても腕の良い庭師なのですね」
そう言ったら、利家さんはわかりやすいくらいに嬉しそうにしていた。
…本心だからまぁ良いや。
「うむ、庭師にそう伝えておこう」
え、伝えられるの…ちょっと恥ずかしいなソレ。
「私のような者の言葉で、前田家の庭師が喜ぶかどうか…」
「喜ぶさ!こんな美人に褒められて喜ばない男など居ないからな!」
…そーゆーもんか?
とりあえず、外見褒められたから無難に普通の女の子の反応をしとこう…
「…び、美人なんてそんな…!」
「はっはっは!謙遜する事はないぞ!」
あー…なんだろアタシのこの中身と外身のテンションの差。
「ところで…黒柳殿は…、うちの慶次の好い人なのか?」
「……は?」
やっべ、あんまりの事に意識と一緒になって被ってた筈の猫が吹っ飛んだ。
か、被り直さなきゃ、急げアタシ、頑張れアタシ。
「と…利家様?突然何を…?」
「うん?違うのか?」
違うよ、違いまくるよ、冗談じゃねーよ。
あんな軽い男彼氏にしたら苦労しまくるのが目に見えてんじゃん。
アタシ個人は慶次と恋人ってのは無理があると思う。
特に確信とかそーゆーのは無いけどでも慶次の相手がアタシってのには絶対無理あると思う。
「利家様ったらご冗談を…私なんかに慶次様は勿体のう御座います。」
とりあえずそんな感じに受け流しながら苦笑を浮かべる
「そんな事は無いぞ!黒柳殿、慶次だって満更でも無いから家へ連れて来たのだろうし!」
いやアイツは単にまつさんに怒られたく無かっただけだろ
「まさか!慶次様は女の子が大好きでいらっしゃいますもの、私のような者は眼中にもありませんよ。」
半分くらい猫被り切れてない気がするけどまぁ良いや。
「何だって!?そんな馬鹿な!!慶次がこんな美人をほっとくなんて有り得ないぞ!!まさか具合でも悪いのか…!?、待ってろ慶次ィィィイ!!!」
「えっ?ちょ…利家様っ!!?」
ドタタタタとか騒音を立てながら利家さんは勢い良くアタシを放置して去って行った。
いや、あの…何この状況。
あれ、なんかだんだん嫌な予感して来た。