性格濃いめの女子が戦国BASARAにトリップした場合。   作:藤 都斗

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やだやだ

 

 

 …なんだろこの予感。

 

 だけど、利家さんが何言い出すか気になるし…と思ったアタシは、気配を消しながら慶次の部屋へと行ってみた。

 慶次は気配が濃いからどの部屋にいるかすぐに解るんだけど、何故かまつさんも利家さんも居てなんか三人で話してた。

 

 忍らしく気配を消しながら、廊下で障子越しに立ち聞きしてみる事にした。

 

 てゆーか三人とも声でかいから丸聞こえなんだけど良いのかコレ。

 

 「なんなんだよ二人ともいきなりさぁ…特に利!俺ァ別にどこも具合悪くねーよ?」

 「何だって!!?じゃあなんで遊び人のお前が黒柳殿に何の関心も示さないんだ!!?」

 「…は?、ちょっと利…、アンタ俺の事そんな風に思ってたの…?」

 

 あ、慶次ショック受けてる。

 

 「そんな事よりも慶次。」

 「なんだよまつ姉ちゃん…」

 

 あ、そんな事で片付けられた。

 傷付いてる傷付いてる。

 声だけでも分かるよ慶次、分かりやすいなあ。

 

 「貴方は黒柳さんの事をどう思って居るのです?」

 「え?…可愛い女の子だと思ってるけど」

 「…では、あの子を嫁になさい。」

 

 

 「は?」

 

 

 そんな慶次の声でアタシは意識を取り戻した。

 

 ヤバイヤバイ。

 あんまりの事だったから今頭真っ白になった。

 冷静になれ自分。頑張れ。

 

 「あの子は慶次を慕っています。それに、慶次もあの子を気に入って居るのでしょう?」

 

 障子に映った影の利家さんがウンウン頷いている。

 

 つかアタシはそんなん思ってねーよ。

 

 「え…、いや、でも…」

 

 「まだ過去を引きずる気ですか、慶次。…もう、良いでしょう?」

 

 いや慶次の過去に何があったかは知らんが、多分慶次はそれ意外の事に戸惑ってると思うよ。

 

 「いい加減身を固めたらどうです。」

 「そうだぞ慶次!嫁がいるというのは良いものだぞ!」

 

 オイオイあんたら…一体何がしたいのよ…本当に

 

 「でもよ…まつ姉ちゃん、…多分あの子は俺の事好きじゃねーよ」

 「何を言うのです慶次!あの子は慶次の心配ばかりしておりましたよ、もう少し自信を持ちなさい!」

 

 え?何この会話、どこの女子高生?

 てゆーかアタシ慶次の心配してたってより慶次がいつボロを出すか心配してたんだけどな。

 

 「黒柳が…?」

 

 オイィィイ!!?ちょ…慶次おまっ何を真に受けてんの!!?

 

 「そうです。私と話している間も、あの子はどこか遠くを見ていました」

 

 いやそれ多分違う事考えてただけだと思うよ!

 

 「………そっか。黒柳は俺が好きなのか…」

 

 いやオイちょっと待てコラ

 何納得してんだコラ

 

 「それに…、あの子の背には刀による傷痕がありました。…年頃の娘としては、凄く辛いでしょう…」

 

 あっ!まつさんの馬鹿!秘密にしとけっつったのに!

 

 「傷…!!?」

 

 障子の向こうで慶次が息を飲む気配がした。

 その途端、慶次が動き出し障子に近付いて来ているのに気付いて、アタシは一瞬焦った。

 

 何がどうなるかは分からないけど、バレたらヤバい事だけは分かる。

 

 このまま開けられて、立ち聞きしていたのを気付かれる前に、気配を消したまま音を立てず、当初座っていた縁側へ駿足移動で戻った。

 呼吸を少し落ち着けながら縁側に腰掛け、それからまた月を見上げ無理矢理精神を落ち着かせる。

 

 落ち着けアタシ、よし、オッケーだ、いつでも来い。

 

 途端、ドタドタと誰かが走ってくる気配がした。

 

 気配からしてやっぱり慶次だろう。

 

 無理矢理心を落ち着かせたものの、やっぱり内心若干焦りながらも、無理矢理いつもの調子にシフトチェンジさせて、暢気に慶次がこっちに来るのを眺める

 

 「何どうしたの慶次、そんな慌ててなんかあった?」

 

 「カズハ!!…アンタ、俺の嫁に来い!!!」

 

 何がどうしてそうなった。

 

 「…さっぱり意味が解んないんだけど?」

 「まつ姉ちゃんから聞いた。背中に傷残ってるって、だから俺んとこ来いよ!」

 「……いや…やっぱり意味解んないんだけど…」

 

 主語も述語もあったもんじゃねーから真面目に意味が解らん。

 どんだけ焦ってんだこの男。

 てゆーかアタシ今は『黒柳』なんだけど?

 

 「カズハ、俺は背中に傷があろうと気にしない。だか」

 「うらァァァァアア!!!」

 「ぅおっとォォオ!!?ちょっ、何すんだよ!!!」

 

 回し蹴りしたら避けられた。

 

 …チッ

 

 「何を焦ってんだか知らないけどさ、アタシは誰の嫁になる気も無いのよ。

 そりゃ慶次の事は嫌いじゃないけど、でもそんな憐れみで嫁にされたら堪ったもんじゃないわ。

 まぁとりあえず落ち着いて説明しなさい」

 

 立ち聞きしたなんて気付かれないように、そう言って説明を促す。

 そうしてようやく落ち着いた慶次からされた説明は、かい摘まんではいたけど、内容はほぼ変わらなかったのでアタシが失敗さえしなきゃバレないだろう。

 

 と、いう訳で。

 

 「…ふーん?、つまり、まつさんの言葉をそのまま真に受けちゃって、それで嫁に来いとかなっちゃった訳ね。ははは。自惚れんなバーカ」

 

 とか馬鹿にしながら告げた。

 

 「ちょ…ヒデーよ…。」

 「何落ち込んでんのよアンタ。てゆーかアタシは今黒柳だっつーの」

 「あ、ごめん。」

 

 そこで慶次はようやく完全に落ち着いたらしい。

 暫く、沈黙が流れる。

 

 その合間に虫の鳴き声が微かに聞こえた。

 

 「…誰に付けられたんだ?」

 

 不意に慶次が呟く。

 

 一瞬は何について言われたのか解らなかったけど、さっきまでの話の流れで何とか理解した。

 

 「…言った所でなんか意味あんの?」

 

 仇討ちってか?

 アタシはやられたら倍返しするタイプだから要らんわよ

 

 「…じゃあ…、どの程度の怪我だったんだ?」

 

 「出血多量で死にかける程度?」

 

 特に気にせずそう告げたら、慶次は辛そうに顔を歪めながらアタシを見た。

 

 「…何その顔。アタシ憐れみなんか要らないんだけど。

 大体背中なんて自分じゃ見えないから気にしようがないし」

 

 続けて言ったけど慶次の表情は変わらない

 

 「でも…アンタは女の子なんだよ?」

 

 改めてそう言われて、少し戸惑った

 

 「…あのね慶次…、アタシは確かに女の子だけど、…その前にアタシはアタシ。

 傷があろうと無かろうとそれは変わらないのよ。」

 

 「…アンタ、気にしてないのかい?傷、付けられた事をさ」

 

 「過ぎた事を気にしてなんになるの?

 アタシに出来る事は傷痕付けた奴を腹いせにぶっ飛ばすだけよ。」

 

 まぁ一回はぶっ飛ばしたけど。

 今度会ったらとりあえず顔面に蹴り入れようとは思ってたりもする。

 

 「…黒柳、アンタ…やっぱ不思議な奴だな」

 「ハイハイ。どーせアタシは変ですよ」

 「そんな事一言も言ってねーよ?」

 

 言ってなくたって大体想像付くし。

 

 そんな風に思いながらまた月を見上げた。 

 しかし、これ以上面倒に巻き込まれない内にアタシの本性を暴露する必要がある。

 アタシが慶次の嫁に相応しくないと解れば、今の状況を打開出来るかもしれない。

 

 まぁそんな感じで、慶次を丸め込もうと試みてみる事にした。

 

 「アンタはさ…俺の嫁になるのそんなに嫌なのかい?」

 

 不意に慶次が呟く。

 

 でも慶次は、アタシを見ながらどこか遠くを見ていた。

 視線は此処にあるしアタシを見てるんだけど、アタシを通して誰かを、アタシの知らない別の誰かを見ているような、そんな感覚。

 

 「……生憎と、アタシを誰かの代わりにしようとしてるような男に興味ないの。」

 

 アタシは冷めた視線を向けながらそう皮肉った。

 

 慶次は驚いたような表情を浮かべながら、アタシを無言で見詰めた。

 

 「アタシはアタシ。…誰の代わりでもないし…ましてや誰かの代わりになる気も無い。

 アンタの過去に何があったか知らないけど…フザケてんじゃないわよ」

 

 そう続けながらアタシは笑った。

 ニヤリと、普通の女の子は絶対しない笑みで。

 

 「じゃ…おやすみ慶次。…また明日」

 

 無言になってしまった慶次を置いてアタシは踵を返す

 

 あーぁ、まったく…お陰で湯冷めしちゃったよ、風邪引いたらどうすんだ。

 

 とか思ってたら手首を掴まれた。

 

 「待てよカズハ」

 

 そう告げる慶次の表情は真剣だったので、若干面食らいながらも、尋ね返した。

 

 「…何よ」

 

 なんか雰囲気的に、それだけ言うのが精一杯だったけど、上等だと思う。

 

 「………いや、あの…今日はごめん…」

 「…謝るくらいなら最初から巻き込むなっての。」

 

 「うん。……おやすみ」

 「はい、おやすみ」

 

 そんな会話の後に、手を離しては貰えたので、アタシは宛がわれた客間へと向かったのだった。

 

 慶次が言いたかった事は一体何だったのか、分からないままに。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 「…俺、そんなに顔に出てたかな」

 

 一人残された縁側で俺は小さく呟く。

 

 カズハに悪い事をしたな…

 

 内心そんな風に落ち込みながら縁側に座り込んだ。

 

 確かにカズハを気に入ってはいた。

 

 でも今日、カズハが普通の女の子のように振る舞った時、何故か、あいつの事が頭にちらついた。

 あんまり似ているって訳じゃないのに何故かカズハと重なって驚いた。

 

 「…あいつじゃないのにな…」

 

 まるでカズハがあいつの生まれ変わりのような気さえした。

 だから、カズハが俺を好いてくれてるんじゃないかと聞いた時も嬉しかった。

 

 だからか、背中に大きな傷痕が残ってると聞いた時、脳裏に死に際のあいつが浮かんで。

 

 「…俺…阿呆だなー…」

 

 意味も無く呟きながらうなだれる。

 

 さっきカズハから言われた言葉が、胸に突き刺さった。

 

 「…カズハはカズハ…か」

 

 その呟きは夜闇に溶けて消えた。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 次の日。

 アタシはのんびりと目を醒ました。

 ちょうど日の出らしくて辺りは少し薄明るかった。

 

 「んぁー…朝か…」

 

 のんびりと体を伸ばしながらそう言って布団から起き上がる。

 

 …この時間に起きるのが習慣になっちゃってるな……まぁ美容に良いけど。

 

 なんて思いながら、くぁっ、と欠伸を漏らした。

 

 …さて起きたは良いがどうしよう。

 

 稽古するのもアレだし、だからって女中の仕事するのもアレだし…

 いや、佐助や幸村達のせいで出来ん事は無いようになっちゃったけどさ。

 

 なんで忍は皆水炊き出来るようにしてるんだろうね、あの国。

 

 もーマジ女中になれば良かった。

 佐助無駄にスパルタだしさ。

 

 もし、あの時忍になるって決めた時のアタシに会えるなら『こンのド阿呆がァァアアア!!!』って叫びながら蹴り飛ばしたい。

 

 

 「とりあえず…、着替えますか…」

 

 のんびりと呟いてそう考えを切り換えて、借りた寝間着から荷物の中の着物に着替えた。

 

 今更ながら着物に慣れといて良かったと思う。

 

 だってコレ慣れてない人にはキツイでしょ。

 

 良かったー、現代に居た普段から浴衣着たり振袖着たり、なんやかんやで自分を着飾りまくってて。

 アタシがナルシストでホント良かったよね。

 

 「…よし。完璧。鏡が無いのが残念ね」

 

 そんな感じに呟きながらのんびりと部屋から出る。

 

 さてと、ホントにどうしよう。

 

 荷物は少ないからそんなに整頓は必要無い。

 

 …暇潰しすら面倒だな…もう旅に出ちゃおうかな。

 

 のんびり廊下を歩きながら考える。

 

 

 

 「あら黒柳さん。おはようございまする」

 

 不意に聞こえた凛とした声に振り向くと、まつさんがパタパタとこっちに向かって廊下を歩いて来ていた。

 

 「…あ、おはよう御座います、まつ様。随分と早起きなんですね」

 

 とりあえずのんびりと挨拶をする。

 

 「私には朝餉の準備がありますもの。」

 

 にこにこと言われて思わず感心してしまった。

 

 スゲーな、主婦の鏡だね。

 

 「今から朝餉の準備ですか…!、大変そうでいらっしゃいますね…」

 「あら、なればお手伝い下さいませ。人手は多い方が楽で御座います故」

 

 そう言われたかと思えばガシッと手を掴まれた。

 

 え…いや、あの…マジで?

 

 「私が、ですか…!?」

 

 「あら、料理は苦手で御座いますか?大丈夫ですよ、私が指導致しまする故」

 

 

え、あの…もしかしなくても強制?

 

 

 「さぁ!共に参りましょう!」

 「え、いや、あの、えェェ…」

 

 そんな風にアタシは台所へ強制連行されたのだった。

 

 この世界ってホントそーゆー人ばっかよね。

 

 

 

 

 

 

 「黒柳さん、この人参は千切りに、こちらの芋は乱切りにお願い致しまする」

 「あ、はい」

 

 結局なんだかんだできっちり手伝っているアタシ。

 まぁ、タダで泊めて貰った訳だからお礼と考えれば良いのよね。

 

 それにしても…この時代の料理ってホント大変だよね…

 

 だって炊飯器無いんだよ?

 コンロだってレンジだって冷蔵庫だって無いし。

 昔ってマジで凄いよね

 

 「…あ。」

 

 考え事しながら切ってたら野菜の皮剥くの忘れた…

 

 「黒柳さん?どうか致しました?」

 

 「申し訳ありません…考え事をしていたら皮を剥くのを忘れてしまいました」

 「あら!大丈夫ですよ、うちの殿方は皆そんな事気に致しませぬ」

 

 いや、気にする人は気にすると思うよ?

 

 「寧ろ野菜は皮ごとの方が煮崩れ致しませんし、ゴミも減りますので、逆にとても良うございまする」

 「そうなので御座いますか…!」

 

 まぁそんな感じに主婦の豆知識付き料理を教えて貰いながら、まつさんとアタシと他の女中さんも交えて朝餉を作った。

 

 それから皆で集まって、朝餉を食べんだけど…ホントに皮が付いてても前田家の男は全く気にしなかった。

 

 寧ろアタシが手伝った事を喜んだりしていた

 

 …お前らそれで良いのか?

 つーか、料理手伝ったお陰でかなんか余計にまつさんに気に入られたような気がするんだけど、自意識過剰の気のせいだよね?

 もしそうだとしたらアタシ…此処最近ずっと墓穴掘りまくってない?

 

 …ヤバイな、どうしよう

 …アタシって無駄に見えっ張りだからなぁ

 

 わざと失敗するのも出来ないし、だからって言って嫌われようとするなんて今までした事無いからどうすりゃ良いかさっぱりだし。

 

 だってほっときゃ大概勝手に嫌うようになってたもん。

 

 

 あ、なんか胃が痛くなってきた。

 

 

 という訳で。

 

 

 

 「慶次、アタシそろそろ限界だからこの家出るわ。」

 「えっ!?、もう?」

 「普段こんなストレス感じたこと無いもん。

 あ、ストレスって何かの負担から来る苛々した感じの事ね。

 とゆー訳でアタシは今すぐ旅を再開します。」

 

 旅仕度を整えた姿で、きっぱりと慶次に伝える。

 

 「意味解んないよカズハ…昨日も言ってたけどホント唐突だなぁ…」

 「良いのよ。アタシマジでそろそろヤバそうなんだもん。普段そんなに苛々しまくる事無いからもう胃が悲鳴あげてんのよアタシ」

 

 猫被りっぱなしはホントにキツイ。

 しかも嘘ついてる訳だから良心が痛む痛む。

 何コレ精神的な拷問?

 

 「まぁそんな訳で、アタシは限界なの。オッケー?」

 「…おっけー。」

 

 若干残念そうな口調だけど、それでも慶次は了承してくれた。

 

 

 「じゃあ慶次、これまつさんと利家さんに渡しておいてくれる?」

 

 そう言ってアタシは慶次に書状を手渡す。

 

 「何これ?」

 「文よ。急用につき失礼します、お世話になりましたって感じの内容の。」

 「…俺は置いて行かれるのか?」

 「旅支度してないアンタが悪いんでしょ。じゃーね!」

 

 

 そんな感じにアタシは前田家を飛び出した。

 

 

 

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