性格濃いめの女子が戦国BASARAにトリップした場合。 作:藤 都斗
とりあえずね、アタシは四国の方に行きたいのよ。
美味しい海産物食べたいの。
これから暑くなる事考えたら北の方かもしれないけど、そっち方面は政宗とか居るから、今回は南に行きたいのアタシ。
四国と言えば、うどん、かぼす、みかん、そして鰹のタタキ!
あるかどうか分かんないけど、もしあるなら是非食べたい。
美味しい物って、何事にも変え難い価値があると思うの。
慶次に抱きしめられたまま、真剣にそんな事を考えながら、遠く彼方の目的の地へと思いを馳せる。
あれ、これ現実逃避?
「俺はカズハを探しに来たけど、武蔵はこんなとこで何してたんだ?」
「おれさまか?おれさまはしゅぎょうだ!スっゲーだろ!」
アタシを抱きしめたままの慶次が、ポチとそんな問答をしてるけど、なんかどうでもよかった。
つーか…ポチの奴、ただ単に“修行”って言いたいだけなんじゃないの?
そんな脳内ツッコミをしながら、そんな感じに聞こえて来る二人の会話をぼんやりと聞き流し、空を仰ぐ。
そこで、なんかふと、黒い点が視界に入った。
抜けるような青空に、一つの黒い点。
えーと、なんだろうアレ。
考えてみたものの、とりあえず田中さんじゃない、という事しか分からない。
烏にしては、妙な形をしているように見える。
そこで何故か、危険という程じゃないけど、なんか妙に嫌な予感を感じてしまった。
アタシのこういう時のこういう予感は無駄に的中率高いから、このまま此処に居るのはヤバイ気がする。
確かめるみたいに点を見つめるけど、脳内に響くみたいな警鐘は鳴り止まない。
うん。
アタシの本能が逃げろって言ってるわねコレ。
こういう時は逃げるに限る…んだけど、田中さんはまだ帰って来てない訳で。
仕方ないので、慶次と阿呆の子が会話して気を取られてる隙に、またしても代わり身の術を敢行し、そのまま木々の影にサッと隠れて気配を消した。
田中さんが帰って来てれば逃げられるってのに、何とも惜しい。ちくしょう。アタシのバカ。
そんな事を考えながら隠れていたら、そこで二人はようやくアタシが居ない事に気付いたらしい。
「あれっ?これカズハじゃない!、あっれー?何処行ったんだ?」
「んん?ほんとだ!あいつどっか行きやがった!」
そんな風に呟きながら辺りを見回している。
阿呆だからか知らんけど気付くの遅くね…?
武将としてどうなのアイツら。大丈夫?戦場出たら死ぬよ?
「おーいカズハー!何処だー!?」
テメーらから隠れてんだよ、察しろよ馬鹿。
「おーいミケー!」
誰がミケだコノヤローふざけんな馬鹿。
「あっはっは!何言ってんだ武蔵、カズハはミケじゃねーよ、まァ気位が高いトコは猫みたいだけどさー、でもカズハは三毛猫ってよりは白猫っぽいぞー?」
…何の話してんだコイツ
「いや、おれさまは三毛猫だと思う!」
お前も話に参加してんじゃねぇよ馬鹿か、あ、馬鹿だった
…てゆーか、なんかアタシを探すんじゃなくてアタシが猫だとどんな猫だかの話する事に主旨変わってない?
「えー?カズハは白猫だろ、肌だって真っ白だしさー」
「いや!あいつは三毛猫だ!かみの毛茶色いじゃねーか!」
いやその場合別に茶色い猫で良いんじゃないのソレ
「んー、俺様だったらカズハちゃんは黒猫だと思うけどなァ」
「なんでそうなんのよ、いや、黒猫好きだけd…」
背後から聞こえて来た軽い調子の声に、反射的にか思わず普通に答えてしまって、軽くフリーズしてしまった。
「だってカズハちゃんの場合、白っていうか黒でしょー?」
…えーと、この聞き覚えのある飄々とした男前な声は……もしかしなくても…
「…佐助さん…?」
「なーにカズハちゃん」
「なんで此処にいんの」
「なんでって、お仕事に決まってんじゃん。あ、はいコレ。カズハちゃんの忍烏」
「ア゙ー。」
「何やってんの田中さん」
振り向いてみたら案の定佐助で、軽く固まってたら何故か佐助の懐から田中さんが出て来た。
「あ、あの文、お館様にはちゃんと届いてるよ。単に俺様が付いて来ただけ~」
いや、…うん、えーと何してんだ佐助この野郎
「意味解んないんだけどさ、アンタ何がしたいの?」
「実はねー、旦那にさー…カズハちゃんを探すように命令されちゃったんだよね。」
「……はぁ?」
「だってホラ、カズハちゃん急に居なくなった訳じゃん?旦那ったらちょっと機嫌悪くなっちゃってさー」
……いや、あのさ。
もう何にツッコめば良いか解らないから放置して良い?
「まァ俺様としてはー、カズハちゃんには甲斐へ帰って来て欲しいんだけど、でも俺様邪魔しないって決めた手前邪魔したくないんだよねー、って事で。」
「…何よ。」
「カズハちゃんに付いて行く事にしました。」
うん、えーと…なんでだこのやろう。
そして佐助はニコニコと笑いながら、まるで世間話するような軽い調子で
「だって俺様、カズハちゃんを連れて来いと命令受けた訳じゃないしね~。」
なんて、そんな事を宣いやがりました。
えっと、うん…いやいやいやいや…
「アンタ…他の任務とか良いの?」
「俺様は真田十勇士の長よ?才蔵とか他の優秀な部下がやってくれるもん」
うーわー…なんつーか…才蔵さん泣いてんじゃないの今頃…
…つーか、佐助って真田忍隊隊長…なんじゃなかったっけ?
「やだなーカズハちゃん、そんなん同じ同じ~。」
そうだっけ…?なんか妙に違う気がするのは気の所為か…?
…っていうか。
「心読むのやめてくんない?」
プライバシーの侵害で訴えっぞコラ
いや戦国時代だから無理だけど、でも現代なら絶対勝てる。
「あはー、ゴメンゴメン。」
いや、あはー、じゃねーよ
悪いと思って無ェだろ佐助テメコノヤロー。
「ま!良いじゃん別に。気にしてたらキリ無いぜ?」
爽やかにウインクされたけど佐助だから凄く胡散臭い。
「…一体誰の所為だと思ってんの?」
「あはー!」
「あはーじゃねーわよ」
「もー!カズハちゃんたら細かい事気にし過ぎだよ、三日振りに会ったってのに酷い!!」
「…いや…アタシは悪くねーわよ。」
何一つとして悪く無いもん。
寧ろこの場合意味不明な事を言い出す佐助の方が悪い。
「いーや!カズハちゃんが悪い。なんせ俺様達に一言の挨拶も無く居なくなっちゃったもん」
「えー?それはまァカズハ様だから良いじゃん」
「良くない!」
「なんでよ?」
「カズハちゃん…君、自分の立場解ってないの?」
「立場なんかに左右される程出来た人間じゃないのよアタシ」
「踏ん反り返って言う事じゃ無いよねソレ」
真顔で断言したら、真顔でツッコミ返されてしまった。
「仕方ないじゃない。なんせカズハ様なんだから。今更でしょ。」
軽くそう言ったら、なんかよく解んないけど盛大な溜息吐かれてしまった。
うん、なんかちょっとムカつく。
「大体、なんで佐助が着いて来んのよ。アタシには小太郎がいるってのに」
「その“小太郎”っていうカズハちゃんの連れてる忍なんだけどね」
「何よ?」
「…調べたけど北条の忍って以外何も出て来なかった。」
「まァ、そりゃ忍だしね」
残してたらダメでしょそんなん。
「でも、そこから推測されるのは、その忍が、長であるって事」
「ふーん?イマイチ意味解んないけどそれがどうかしたの?」
「北条が抱えてたのは、伝説と呼ばれる忍なんだよ。」
「ふんふん」
「風の悪魔、“風魔小太郎”」
…風の悪魔ねぇ。
「ふーん。」
「いや、ふーんってカズハちゃん!!?、自分の連れてる忍が風の悪魔かもしれないのに何でそんな落ち着いてんの!!?
誰も姿を見た事が無いって言われる、得体の知れない奴かも知れないのに!」
「えー、だってそんなんどうだって良いじゃん。確かに小太郎は風魔って苗字だったけど。」
「良くないよソレ完璧にアイツ“風魔小太郎”じゃん!」
「だから、どうでもいいんだってば。」
「何言ってんだよカズハちゃん!アイツがホントに風の悪魔だっていうなら、いつ殺されても可笑しく無いんだよ!!?」
「それならアタシはとっくに殺されてなきゃ可笑しいでしょうが。」
そう断言したら、佐助は言葉を詰まらせた。
だって殺すつもりならいつでも殺せた筈だもの。
アタシが今までピンピンしてるって事は、小太郎にそんな気は無かったって事だ。
「心配してくれるのは嬉しいけどね佐助。過保護過ぎ。あんまりカズハ様をナメないでくれる?」
佐助と真っ正面から対峙しながらニヤリと笑う。
それから肩に掛かったポニーテールの一房を弄りながら興味ない感じで口を開いた
「大体、今小太郎はアタシの部下なのよ?」
でも佐助は納得してくれなかったのか、暫く考えた後に頭を掻きながら溜息を吐く
「だから…なんでそんな簡単に信じちゃえるのさカズハちゃんは…」
「そんなん決まってるじゃない」
佐助を見据えながらそう言って小さく息を吸い込む
「アタシが、自分を信じてるからよ」
そして、そう断言した。
…アタシは自分を信じてるから誰かを信じる事が出来る。
もしそれで裏切られたとしても、それはそれで別に良い。
単にアタシが裏切られるような人間だったってだけ。
アタシが基本とする生き方は何事も美しく。
それが信条なんだけど、でもその為には心の成長が不可欠。
いくら外見が美しくったってアタシはまだその辺の子供と同じくらいの精神年齢だから、すぐ誰かを馬鹿にするし、悪態も吐くし、心もかなり狭い。
それでもアタシは始めから人を疑って掛かったりなんかしないと決めている。
よっぽど怪しい奴でないとそんな事しない。
だから何が起きても大丈夫。
アタシは心の底から後悔するような事だけはしないから。
アタシは自分を、自分の心を、自分の考えを、自分の目を信じてる。
だから
「だからアタシは人を信じられる」
告げながら緩く口の端を上げて、アタシは珍しく普通に微笑んだ。
そして、佐助はそれを見て、盛大に目を見開いた。
完全に顔文字で言う、(゜д゜)である。
…いや、何もそんな驚かなくて良いじゃん。
…まぁ確かに佐助の前で普通に微笑んだりした事無かった気がするけど、でもいくらなんでもびっくりし過ぎよねコレ
ちょ、しかもなんかちょっと固まってない?
え、何、佐助ってばアタシが邪悪に笑わなかった事がそんなにショッキングだったわけ?
…シバくぞ。
心の中だけでなく盛大に顔にも出しながら佐助を見る。
そんな時不意に硬直から復活した佐助が、なんか若干呆然としながら口を開いた。
「カズハちゃん…」
「何よ」
「とりあえず…忍としてソレ致命的とか色々ツッコミ所あるけど…それよりも………」
それよりも?何?
…………いや、間あけ過ぎじゃね?
「…なんなのよ。早く言いなさいよ」
勿体振られると無駄に苛々するんだけど。
「…カズハちゃんってば普通に笑うと凄い可愛いんだね」
…は……?
やっと言ったかと思った矢先の、余りにも予想外過ぎる佐助の答えの所為で、アタシはなんか普通に目が点になった。
顔文字に例えるとするなら、(・Д・)?だろうか。
えっ、ちょ…待って何?
今コイツ何て言った?
「…はぁあ?、可愛いィィイ?え、…アタシがァア?
いやいや、待ちなさいよ佐助、アタシはね、可愛いとかよりも綺麗とか美麗とかカッコイイとかそーゆーのが良いの。
可愛いなんてアタシのガラじゃないの真面目に。ふざけないで」
とりあえず思いっきり眉間に皺を寄せながらそう捲し立ててやった。
うん。だってなんか全然嬉しくないし。
てゆーか意味解んない何言ってんのコイツ馬鹿じゃないのマジで。
馬鹿じゃないのマジで。
あれ、なんか同じ事二回考えちゃった何コレ。
「…とか言いながら…カズハちゃん顔真っ赤だけど?」
「なんだとコノヤローまじでか。」
「まじだよ」
言われて改めて自分の手で顔に触れてみたら確かにいつもより熱かった。
チクショウマジだったコレ!!
「…っ仕方ないでしょ、素面でカワイイなんて今まで言われた事無いんだから!!
あ゙あ゙あ゙ぁぁああ゙あ゙チクショーめこんなんで照れてる自分がマジで心の底からキモい!!!キモ過ぎる!!!そんで無駄にムカつく!!!とりあえず佐助アンタ腹斬れ」
「褒めてるのに何その理不尽!あ、でも真っ赤だから怖くない!寧ろ面白い!可愛い!」
ぅあ゙あ゙あぁぁぁああ゙あ゙どうしてくれようこの馬鹿上司なんだろうコレまじムカつく!!!
ガチでムカつく!!!ハンパ無いくらいムカつく!!!何このとてつもない殺意!!!
「あ゙ーもー!!!とりあえず死ねよ佐助お前頼むから死ねよ!!!」
「なんで!!?しかも死ねって二回言われた!!!意味解んない!!!何この脈絡のない会話!!!」
「うっせー馬鹿黙れ馬鹿死ねよ馬鹿」
「ねぇ泣いていい?」
いや泣かなくて良いから死んでくれ。
それか真っ裸でどっかのマグマにダイブしてくれ。
そんな事を思っていたら、突然アタシの背後に人の気配を感じて、更には馴れ馴れしく肩に手を置かれた。
…こんな事を平気ですんのは一人しかいないわね
そう思った次の瞬間、案の定聞き覚えのある声が頭上から降って来た
「おいおい、女の子虐めるのは良くねえよ?カズハが困ってんじゃん」
「寧ろアタシはアンタが来たから余計困ったわよ」
「いや、ちょっと待って、今一番虐められて困ってたの俺様だよね」
佐助の場合日頃の行いが悪いからそうなるんでしょーが。自業自得ね。
なんてどうでもいい事を考える。
そしたらまたまた聞き覚えのある頭悪そうな声が隣から響いた
「そーだぞ!よわいものイジメはよくねェんだぜ!」
「いや、アンタその弱い者である筈のアタシに石投げまくってたよね」
「あれ?何?無視?泣くよ?良い歳してお兄さん泣いちゃうよ?良いの?知らないよ?」
いや知らんわよ。
つか寧ろ本気でどうでもいいんですけど。
「……………!」
この時アタシは、いつの間にか帰って来てた小太郎がこの様子を見てどうすれば良いか解らず木々の影でオタオタと困惑してたなんて全く気付いて無かった。
「まぁ良いや。冗談はこれくらいにして…そろそろ行こうかカズハちゃん」
「はァ?なんでアタシがアンタの指図受けなきゃいけないのよ。意味解んないんですけど」
てゆーかいきなりなんなのよこの人。
意味解んない上になんかウザいんですけど。
「あのねカズハちゃん、俺様君の上司だからね、君の師匠であり上司だからね!」
「どーでも良いわよそんなん。」
「いやいやいや良くないから。もういい加減にしようねカズハちゃん」
適当に答えた途端に、なんかそんな子供に言い聞かせるみたいな言葉と共に、突然両手で腰を掴まれ持ち上げられた。
「ちょっ!何すんのいきなり!セクハラ!セクハラは止めて下さい!!!」
かと思ったら。
「俺様南蛮語わかんなーい。」
なんて言葉と共にひょいとか俵担ぎされました。
…うん意味解んない
「良いから離しなさいよてゆーかお腹にアンタの肩が食い込んで地味に痛いんだけど何この荷物的な運び方そこは乙女の憧れお姫様抱っこにしろよ!あと何処連れてく気!!?」
「ヒ・ミ・ツ★」
「ウザッ!!!」
何コイツむかつくんだけどマジで!!!
しかもアタシのボケ完全にスルーしやがったちくしょう腹立つ!
「ミケ!!?おいみどり色いの!ミケを離せ!」
うん、アタシはミケじゃ無いからね。
あの馬鹿アタシの事マジでミケって認識しやがったのかしらぶっ殺す。
「オイ佐助!カズハをどうする気だよ!!?」
…嗚呼…今は慶次が一番マトモに見え
「カズハは前田家のモンだぞ!!!」
前言撤回…マトモじゃなかったわコイツも。
しかも何前田家の物って
ア タ シ は ペ ッ ト か
政宗や幸村とおんなじ扱いじゃねぇか慶次この野郎
アンタこないだ“カズハは物じゃない、可愛い女の子だ”とか似たような事言って無かったっけフザけんな
「悪いねーお二方!カズハちゃんは貰ってくから★じゃあねー!」
『あっ!』
「テメーらマジ覚えてろよゴルァァァああああ!!!」
なんかよく解んないけどアタシはそんな感じに、佐助に拉致されました。
……なんでだ。