性格濃いめの女子が戦国BASARAにトリップした場合。 作:藤 都斗
あれから暫くして、ようやく降ろして貰えたのは、あの場所からかなり離れた大きな杉の木の枝の上だった。
目の前の佐助を見据え、アタシは腕を組みながら口を開く。
「で?」
「いや、カズハちゃん何さ、いきなり」
「いきなりはアンタでしょうよ。何なのいきなりアタシを拉致しくさってからに。」
半目でジトーっと佐助を睨み、腹立たしさを微塵も隠さずに吐き捨てた。
ちなみに現在小太郎は、アタシ達より一段上の枝に立ってます。
ちゃんと付いて来てくれてるよ!流石だよねマジで!
「…カズハちゃん、女の子がそんな汚い言葉遣いしちゃいけません。」
「うっさい黙れ。どうでもいいのよそんなん」
アタシそんなんが聞きたいんじゃ無いんですけど。
でも佐助はまだ食い下がって来た。
「良くないよ!そんなんじゃ真田の旦那の嫁になれないよ!」
「なる気すら全く無ェよ馬鹿か」
訳の分からん佐助の言葉に対して瞬時に真顔でそう言ったら、なんか言われた方の佐助は昔の少女漫画みたいな“どきーん☆”って感じの、全力で鬱陶しい顔をした。
「え…っ、じゃあ俺様の嫁に…!!?」
「シバくぞ。」
どんだけKYだよお前。
マジ意味解んないんですけどとりあえずもう死ねば?
「大体アンタの嫁になるくらいならアタシ小太郎に嫁ぐし」
佐助なんか絶対嫌だ。
大体アタシはMじゃねぇ。
しかしそれを聞いた小太郎は
「っ!!?」
遠くを見ていた視線をアタシにバッと向けてアタシを凝視した。
兜のお陰で見てるのかよく解んない感じではあるけど、なんか視線が刺さりまくってるから凝視されてると思う。
意外と動揺しちゃったらしい。
「えええ!!?なんで!!?」
でも、一番動揺したのは佐助みたいだった。
なんか、物凄い驚いた顔しながら両肩をガシッとか掴まれた。
…正直ウザい。
だけどまぁ、とりあえず気にしない事にして、アタシはまた口を開いた。
「…いや、だってアンタドSじゃん。小太郎は癒し系だもん。」
でもそう言った途端に、アタシにそんな事を言われてしまった小太郎は、何故か思いっきり体を強張らせたかと思ったら、手をバタバタさせ始めた。
「…っ!、…!、!」
…イマイチ何がしたいのか解んないけど多分アレよねコレ
いくらなんでも、さっきのはちょっと失礼だったって事よね。
まぁ癒し系なんてアタシから言われても嬉しくないだろうし、ついでにいきなりだから意味もよく解んないわよね。うん。
よし、とりあえず謝っとこ。
「あー、ごめん小太郎迷惑だったね。例え話だから気にしないで良いよ」
「………」
謝ったけど、小太郎は無反応でした。
なんとなくだけど、そこはかとなく微妙そうな雰囲気?な気はするけど、どうなんだろう。
……うん、やっぱ表情が分からんからよく分からんわ…感情全く読み取れんし…
…とりあえず…納得はして貰えた…よね…解らんけど。
………うん。分からんからまァ良いや。気にしない事にしよ。
「…って違う!また話がズレた!アタシが聞きたいのはそんな話じゃないのよ佐助いい加減にして」
そんな事を言いながら、ぐるりと体ごと佐助へ向き直り、ついでにツッコミも混じえつつ佐助にガン飛ばすと、
「ちっ。気付いたか」
なんて、アタシから顔を背けながらおもいっきり舌打ちしくさってくれやがりました。
…うん、シバくぞコノヤロー
「気付くわよ馬鹿。アタシどんだけナメられてんのマジで」
「………」
小太郎がアタシと佐助を交互に見ながらちょっと戸惑ってるような雰囲気を醸し出してる気がしたけど、結局よく解らんからとりあえず放置しとこうと思います。
そう思った時、佐助が仕方ないとばかりに軽く溜息を吐き、それから真剣な表情で口を開いた。
「まァ良いや、理由は…―」
「…理由は?」
佐助の真剣な様子に、アタシも釣られて真剣な顔をしながら続きを促す。
暫くの沈黙。
余りにも真剣だから、よっぽどの事があるのかと頭の隅で考えながら、佐助が口を開くのを待つ。
そして、ついに佐助が口を開いた。
「なんとなく☆」
「シバくぞ」
…なんかもう思わず真顔のまま0.1秒くらいの脊髄反射でツッコんじゃったけどアタシは悪くないと思う。
つーかコレもうコイツ殺っちゃってもいいんじゃないのマジで。
だってムカつくし。
「冗談だよ、全くもーカズハちゃんてば気が荒いんだからー」
「誰が荒くさせてると思ってんだこのfryingmonkeyめ」
「いくら俺様が南蛮語理解出来なくても今のは悪口だって解るよカズハちゃん。」
「うっさい。今アタシは気が立ってんの。さっさと説明しなさいよ。」
「……ったく、仕方ないなぁ…」
いや仕方ない奴なのはアンタの方だからね。
寧ろ話をどんどん脱線させやがって何してんだお前。
やれやれ、なんて仕方なさそうなジェスチャーと表情をしていた佐助が不意にまた真剣な表情になった。
そして奴は、少し思案しながら口を開く。
「…この間さ、織田の魔王と変態が行方不明になったじゃん?」
「あー、うん」
「そしたらさ、新勢力が出て来ちゃったみたいなの」
予想外だったその言葉に少し固まる。
「新勢力?」
「そう。なんか天下に興味は無いらしいから今までは放置してたんだけどさ」
「何?いきなりそいつが天下取りに参戦して来たっての?」
とりあえず適当に予想を付けてそう言ってみたけど、佐助は軽く眉を下げただけだった。
「いや、違くて。」
「何よ?」
とりあえずアタシは眉間に皺寄せながら先を促す
「なんかね、村とか国とか普通に襲い始めちゃってさ。」
「はぁ?何それ…目的は?」
「家宝だったり茶器だったり」
うん、えーと…
「…山賊じゃん。」
「いや、山賊とはまた違うんだけどね、これが」
「…何が違うのよ?」
勝手に襲って奪うとか山賊そのものだと思うけど。
「違うよー、山賊は生きる為に強奪してるけど、そいつは欲しいから、とか気になるから、とかそんな理由だから。」
「……何それ子供?」
「いや、白髪混じりのオッサン」
「……………うわぁ」
何してんのソイツ。オッサンの癖にガキみたいな事してるとか迷惑以外の何ものでもないじゃんソレ
「…まぁつまりそんなだからさ。なんのつもりなのかとかその他諸々気になるじゃん?」
「…そりゃまぁ…武田さんとかは気になるでしょうね」
甲斐を治めてる訳だから…そんな訳解らん奴が出て来たらなんだコイツみたいなね。うん。
頭でそんな事を適当に考えて居たら
「だからさ、偵察をね。しなきゃなんない訳」
そう言って佐助は爽やかに笑った。
…………。
「で?」
「でさー。大将からカズハちゃん捜すついでに偵察して来いって言われてんの。」
此処まで言われたら流石に佐助が何をしたいのか解る。
でも佐助は、アタシが何か言おうとする前に、更にベラベラと喋り出した。
「だからさー、めんどいからいっそ一緒に偵察しに行こうかと思って。」
「ほほう、なるほど強制か。」
「うん☆」
「シバくぞ」
「えー…良いじゃんそれくらい」
「良くねーよ」
いい加減にしろよマジで。
アタシは四国に行きたいんだっつーの。
「まぁまぁ、細かい事は気にしない気にしない☆」
「いや、全く細かくないわよ明らかに」
何言ってんのよふざけんな、そう言おうとした次の瞬間
「………ダメなの?」
なんて、捨てられた犬みたいな目を向けながら首を傾げられて、思わず硬直した。
……チクショウ佐助の奴アタシの扱い分かって来たわね…!美形がそんな仕種すんじゃねーよ可愛いだろ馬鹿!
クソッ、負けるなアタシ!今負けたら面倒な事になる…!
「…だ…、ダメに決まってんじゃない、アタシはマグロ食べに行くんだから!」
ちょっと吃ったりしたけど何とか言えた!よっしゃあザマーミロ佐助!
そんな事を思ってはみたけど佐助は未だ捨てられた犬みたいなしょんぼり具合で口を開く
「…そんなんいつでも行けるじゃん。」
……うん。えーと
「そんな訳あるか。アンタみたいな人外の動きアタシは出来ません!
移動手段は基本足だっつーの!佐助みたいに浮かべた凧までひとっ跳びとか無理だから!有り得ないから!」
思った事をそのまんま口に出して言いたいだけ捲し立てると、不意に佐助が真面目な顔で頷いた。
「…わかった」
ようやく理解してくれたのかと思ってホッとした次の瞬間
「つまり後でカズハちゃんを四国に送れば良いって事だね!」
爽やかな顔で訳分からん結論を仰ってくれやがりました。
「いや何が分かったのよアンタ。」
さっぱり意味が分からんのですが。
「え、違うの?」
「いや、うん、まぁ色々ツッコミ入れたいけど…とりあえず楽出来そうだからいっか。」
正直徒歩で四国目指すのダルかったのよね。
送って貰えるんならそれに越した事無いわ、楽だし、うん。
「マジで!!?よーし!じゃあ早速行こう!」
「はいはい。終わったらちゃんとアタシを四国まで送りなさいよ」
「大丈夫だって!俺様に任せときな!」
……無駄な爽やかさが逆に胡散臭いわね…。
…まぁ、良いか。うん。
そんな感じにアタシ達は偵察に向かう事になったのだった。
思ったんだけど佐助の奴…幸村を放置してて良いのかな。
*****
一方の真田幸村はと言えば、武田信玄が本拠地、躑躅ヶ崎館へと居を移していた。
青く爽やかな空の下、彼はその館の廊下を爆走する。
「失礼つかまつります、お館様ァァア!!!」
「何事じゃ幸村、騒々しい!」
襖を開けた途端に響く威厳のある声に身をすくませ、素早くその場に土下座しながらも、幸村は意を決して口を開く。
「もっ、申し訳ありませぬ!しかし!カズハ殿を捜索に向かわせた佐助がまだ戻らぬのです!もしやカズハ殿の身に何か…!!?」
「うろたえるでない幸村ァァア!!!」
「ごぶへぁ!!!」
信玄の拳が、見事幸村の顔面にめり込み、彼は勢い良く吹き飛んだ。
「佐助ならばついでに松永久秀の動向を探らせておる!帰りが遅いのも当たり前よ!」
「っそ、そうで御座いましたかお館様ァァア!!!」
「うむ!!!」
鼻血を流しながら普段通り立ち上がり、尚も叫ぶ幸村の前で信玄は仁王立ちで頷いた。
「っし!しかしお館様!!!佐助の事ゆえ、カズハ殿と共に松永久秀を探りにゆくやも知れませぬ!その場合カズハ殿は、」
「馬鹿者ぉぉおおおお!!!」
「っぶふぉあ!!!」
「部下を信ずる事が出来ずしてなんとする!!!お主を信じておる佐助とカズハの気持ちを踏みにじるつもりか!!?」
「っも、申し訳ありませぬ!!ぅお館様ァァア!!!」
「幸村ァァア!!!」
「ぅお館様ァァア!!!」
「ぃゆきむるぁァァァァア!!!」
「ぅおやかたさぶぁああああ!!!」
彼等の殴り愛により、粉砕して行く部屋の中、その音が響き渡る館内で、武田軍は今日も平和だなぁ、としみじみしている兵達が居たのだった。