性格濃いめの女子が戦国BASARAにトリップした場合。   作:藤 都斗

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しのびしのび

 

 

 

 

 

 行灯の薄灯りに照らされる室内に、一人の男が座っている。

 白髪混じりのその髪は、そのまま高い位置で結い上げられており、その男の表情は常に不敵に笑んでいた。

 

 そして、男の前には二人の人間が座っている。

 

 一人は兜で顔の上半分が全く見えない赤毛の男。

 もう一人は、勝ち気そうだが顔立ちは整った、茶髪の長い髪を高めの位置で結い上げた少女だった。

 

 「では決まりだな」

 

 男が不敵に笑みながら、ぽつりと告げる。

 

 「卿らには存分な働きを期待しているよ」

 

 男のその言葉に、少女は不敵な笑みを浮かべ、青年はこくりと静かに頷いた。

 

 

 その様子を天井裏から見詰める忍が一人。

 

 その忍はオレンジの髪の男で、表情は何処か硬く、緊張したように強張っており、そんな表情のまま、忍は気配を気取られる前にと考えてか、瞬時にそこから姿を消した。

 

 

 

 

 

 それから暫く経った後、武田軍のとある一室にてその忍の姿があった。

 

 その部屋の上座に、濃赤の着流しを纏った大柄な壮年の男が、行灯の灯りに照らされながら胡座を掻き、そうして確かめるように男は口を開く。

 

 「して、それは誠か、佐助」

 「……はっ、伝説の忍風魔小太郎、武田軍くのいちカズハ両名は」

 

 それを伝えようとする忍は、何処か困惑したような表情で俯き加減に続けた。

 

 「松永の軍門に降りました…!」

 

 その言葉に一番の反応を見せたのは近くに控えていた赤い青年で、彼はおもむろに立ち上がりながら声を荒らげる。

 

 「どういう事だ佐助!!、一体何があったのだ!!!」

 「………」

 

 しかし忍は、青年に対しどう答えれば良いのかと口をつぐんだ。

 上座の男は、表情を変えないまま不意に口を開く。

 

 「…成る程のぅ…」

 「大将…?」

 「…お館様?」

 

 ぽつりと呟かれた言葉に、二人が怪訝そうな表情をした。

 しかし上座の男は口の端を上げて楽しそうに笑う。

 

 「あやつもやりおるわ」

 

 そう言って、訳が解らないというような表情を浮かべる青年と忍を前に、男は気にした様子もなく、呵々と笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 丁度その頃、くのいちの少女と赤毛の忍は、とある場所へ向かって駆けていた。

 

 そんな中、赤毛の忍は、じっと少女を見詰める。

 その事に気付いた少女は、男へと視線を送り口を開いた。

 

 「何よ?」

 

 しかし彼は答えない。

 だが、そんな事は承知しているのか、少女は前方に気を付けながら続けた。

 

 「武田を裏切って大丈夫なのか、って?」

 

 少女は、その整った顔を不敵に歪めながら確かめるように尋ねる。

 すると男は小さく頷いた。

 

 「大丈夫よ、なんとでもなるわ」

 

 そう告げる少女は自信に満ちていて、彼はぼんやりと、この自信は何処からくるのだろうか、と考えたのだった。

 

 

 

 

 

 ……それから数日後、奥州では、独眼竜とその右目が怒りに震えていた。

 

 「Heyカズハ…、こりゃ一体どういう事だ…」

 

 独眼竜との異名を持つ隻眼の青年が握り絞めている紙に書かれた内容と、それを持って来たくのいちの少女がその原因だった。

 

 此処は数日前少女達が目指していた奥州の、伊達政宗の城の一室。

 その部屋の窓際で、少女は不敵に笑った。

 

 「どうって、見て分からない?」

 「テメェの口からちゃんと説明しやがれ、っつってんだ」

 

 隻眼の青年が、少女をその隻眼で射殺さんばかりに睨み付ける。

 

 渡された文の内容は、部下の命と引き換えに竜の爪を差し出せという物。

 そしてその文を運んだのは、少し前まで甲斐で共に楽しい時を過ごした少女。

 

 その少女は今、感情が全て抜け落ちた、まるで人形のような無機質な目をしていた。

 

 「やーね、熱くなっちゃって。coolに行くんじゃないの?」

 「……良いから説明しやがれ…!」

 

 青年の側に控える男の低いその声に、少女は小さく溜息を吐き、二人へ冷たい目を向けながら口を開いた。

 

 「…私は、アンタ達の敵になった。それだけの事よ?」

 

 そう言って、決して笑っていない目で二人へ笑いかける。

 

 「さ、その文の返事、聞かせてちょうだい?」

 

 にっこりと笑う少女は、彼らにとって記憶にある明るく暢気な人物と同一とは、とても思えなかった。

 そんな少女の言葉に、青年の中で何かがぶちりと切れる音がした。

 

 「伝えろ、返事は…Noだ!!!」

 

 青年がその言葉を口にしながら抜刀し、少女へ斬り掛かる

 だが、ガギィンという音と共に、その刃は少女へ届く前に赤毛の青年によって止められた

 

 そのまま、少女は不敵に笑う

 

 「…あらそう、仕方が無いわね。

 ま、でも文にあったと思うけど十日間は猶予があるから、その間よく考えてみたら?部下か、武器か」

 「……テメェ…!」

 「あら怖い。でもね政宗、人質って言葉の意味、分かってる?」

 「…チィ…っ!」

 

 少女の表情は変わらない

 隻眼の青年は、くやしげに顔を歪めながら吐き捨てるように告げた

 

 「首洗って待ってろ…!すぐに取り返してやる」

 

 「そう…んじゃそう伝えとくわ。小太郎、そろそろ行くわよ」

 

 しかし少女は、そんな青年など少しも気にしていないのか、促すように赤毛の青年へ声を掛けてから、踵を返した

 

 不意に、頬に傷のある男が口を開く

 

 

 「待て!」

 

 「…何?」

 

 呼び掛けに足を引き留めた少女は、振り返らずに静かに聞き返した

 

 「何故お前が…!」

 「………じゃあ、またね」

 

 しかし少女は、その問いには答えないまま

 

 赤毛の青年と共に、消えるように姿を消した。

 

 

 

 そうして、それから混乱する武田と伊達を嘲笑うかのように

松永軍はあちこちで猛威を振るい始めたのだった

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 時を、戻すとしよう

 

 

 佐助との会話の後、アタシ達はすぐ松永軍の拠点としている東大寺へと偵察に向かった。

 

 そこで見たものは、なかなかにダンディズム溢れるオジサマと

 それはもう見事な調度品や美術品の数々だった。

 

 茶器に茶道具に掛け軸に壷

 それらが置かれた部屋の空気さえそれはもう何とも言えなくて

 

 アタシは本気で、あ、あのオジサマぶっ殺して全部アタシの物にしたい、と思った。

 

 うん。

 

 それが理由。

 

 アタシは基本綺麗な物が好きだ。

 高い物も好きだけどやっぱり美術品が一番

 綺麗で見事な装飾が施されていたならもうカンペキ。

 

 とにかくそんな感じの事を考えたアタシは、佐助達と一通り偵察を済ませた後、武田さんに文を送った

 

 アタシこれから色々やらかすと思うけど気にしないでね、って内容の。

 

 それからアタシは、佐助に向き直って断言した。

 

 「ちょっとアタシこれから松永軍に入って来るわ」 

 

 その時の佐助の、アタシを馬鹿にしまくったような、可哀相な人を見るみたいな物凄く腹立つ顔は忘れられないかもしれない。

 ちなみにこの時の小太郎は無反応だったけど、微動だにしなかったからもしかしたら固まってたのかもしれない。

 

 まぁ、分からんけど。

 

 「……は?何言ってんのカズハちゃん」

 「アタシは本気よ」

 

 苛立ちをごまかすように真顔でそう告げたら、佐助は能面みたいに顔から表情を無くして、冷たい目でアタシを見た。

 

 まぁ、もしもの時はアタシを殺さなきゃならない、とかそういう事を考えてるんだろうと容易に想像が付いたけど、アタシはとりあえず気にしなかった。

 

 「…意味が解らないんだけど、…なんで?」

 

 そう告げる佐助の醸し出す空気は、張り詰めた冷たい物で

、でもとりあえずアタシはそれも気にしない事にして、口を開く。

 

 「あのオジサマをアタシの配下にする為に決まってんじゃない」

 「うん、何言ってんの?」

 

 瞬時に佐助に真顔でツッコまれたけど、とりあえずそれも気にしない。

 

 「だから、あのオジサマをアタシの下僕にして、あの調度品とか美術品を貢がせようと思って」

 

 いや、始めはぶっ殺そうかと思ってたけど、よく考えたらアタシ美術品の管理出来ないから下僕にしちゃおう、と考えての発言だったんだけど

 

 「いや、あのさカズハちゃん。普通に考えて無理じゃない?」

 

 なんか普通にツッコまれてしまった。

 

 ……………。

 

 「何言ってんの佐助、諦めたらそこで試合終了なのよ?」

 「えっ、ちょっと待って、本気?」

 

 「本気に決まってんじゃない」

 「いやいやいやいや無茶にも程があるよソレ」

 「大丈夫大丈夫。まぁ見てなさいって。小太郎!着いて来て!」

 「ちょ、待ってカズハちゃ…」

 

 まぁそんな感じで、アタシは佐助を放置して東大寺へと引き返した。

 

 遠くから“嘘だろぉおおお!!?”とか聞こえて来たけどとりあえず無視して、隣に小太郎を伴いながら着いてすぐに忍び込んだアタシはダンディーなオジサマのすぐ傍に降り立った。

 

 

 「…なんだね卿らは。」

 

 オジサマは突然現れたアタシ達に警戒してか若干眉をひそめて、でもすぐさま余裕たっぷりな顔になった。

 でもまぁ、そんな事心の底からどうでも良かったアタシは真顔で口を開く

 

 「アタシは黒柳。呼び捨て、見下し、変な呼び方以外なら好きに呼んでくれて良いわよ」

 

 「…それは“好きに”の内に入るのかね。」

 「あら、細かい事は気にしちゃダメよオジサマ。毛が薄くなるわよ?」

 「………」

 

 ツッコミに対して真顔で答えたら、オジサマは微妙な表情を浮かべたけど、とりあえずスルーして肩に掛かったポニーテールの一房を軽く払いながらまた口を開く

 

 「そんな事よりアンタに話があって来たの。今ヒマ?」

 

 そう尋ねると、オジサマは軽く眉を上げてちょっと驚いたみたいな顔をした後に、持ったままだったらしい筆を置いた

 

 あ、アタシ仕事中に邪魔しに来ちゃったのかしら、とか今更気付いたけど、まぁオッサンだし良いか、って事でスルーだ。

 

 「…ふむ…、良いだろう、話してみたまえ」

 

 そう告げながら居住まいを正すオジサマは、流石は殿様、態度でかい&上から目線。

 思わずイラッとするけどそこはとりあえず頑張って、腕を組み気を紛らわす事で無理矢理スルーして用件を言う。

 

 「とりあえずアンタの持ってる美術品とか全部欲しいんだけどタダでくれたりしない?」

 「……これはまた…、随分と非常識な用件だな」

 

 サラっと聞いたら、オジサマは一瞬固まってからアタシを蔑むみたいな表情で見詰めた。

 でもアタシは今現在、美術品に目が眩んでるからオジサマの表情なんか気にも止めずにニヤリと笑う。

 

 「常識なんかに捕われる程ヒマじゃないの、アタシ」

 

 そう告げた途端にオジサマは、軽く目を開いた後口の端を上げてニヒルに笑んだ。

 

 「…成る程、君にとっては常識など瑣末という訳か」

 「あら、解ってるじゃない」

 

 「…なに、私も常日頃似たような事を考えているのでね」

 

 そう告げるオジサマは表情を変える事なく笑っている。

 

 だがしかし…いつもアタシと似たような事を考えてるってソレ人としてどうなのかしら。

 アタシはまだまだ小娘だからギリギリ若気の至りで許されるけど…このオジサマはそうはいかないわよね

 

 …大丈夫なのかなこの人。

 

 ……まぁ良いや話進まないからスルーしよ。

 

 「そうなんだ?なんか気が合いそうね、アタシ達」

 「確かに。…だが、残念だな、あれらは譲れないのだよ」

 「えー?なんでさー」 

 

 「卿に譲る義理など無いだろう?」

 

 きっぱりと断言された事で現実に気付いた。

 

 ……そういえばそうか。

 今更ソレを言われて納得したアタシは、なんか美術品に目が眩みすぎて根本的な事忘れてたらしい。

 

 しかしそうなるとどうしたら良いかな。

 

 そんな事を考えた途端に、オジサマは目に剣呑な光を宿らせて不敵に笑いながらアタシを見た。

 

 「どうしても欲しくば、私を殺して奪うと良い」

 

 ………いや、うん、まぁそれも一理あるんだけど…

 

 「…殺して奪うとかする気無いのよね、アタシ」

 

 「ほう?何故だね」

 「だって冷静に考えたら美術品の管理とかアタシに出来る気がしないもん」

 

 真面目な顔で断言したら、オジサマは驚いたのか、軽く目を見開いてアタシを見た。

 …何せアタシには基本的に現代の一般人の知識と、こっちに来てから頭に叩き込まれた忍に必要な知識しかない。

 美術品を愛でる事は出来ても管理なんて出来る訳が無いのだ。

 

 うん、やっぱ今考えてもアタシには無理だわ。

 なるべく日影に保存するとか、たまに虫干しするとか基本的な事しか知らないけど例えする事がそれだけだとしても、よく考えるとアタシの性格上途中で絶対めんどくさくなるだろうし。

 

 「………ふっ」

 

 不意にオジサマが口に手を遣りながら肩を震わせた

 

 「っははははは!」

 

 かと思ったら噴き出すように思いきり笑われた。

 

 ……いや、うん、まぁ気持ちは解らなくは無いけど何もそんなに笑う事無くない?

 なんか初対面の人に真っ向から笑われる事多い気がする、こっち来てから。

 

 「いやはや驚かされる…!、何処までも己の都合のみか」

 「……当たり前じゃない、自分の他に何を大事にしろってのよ?」

 

 何?周りの奴らとか大事にしろっての?

 あいつら共通してアタシを蔑ろにするのに?

 やだそんなの。

 アタシを大事にしてくれない奴大事にする必要無いもん普通に考えて。

 

 小太郎は部下だから一応大事にしようかと思ってはいるけど、何考えてるかイマイチ解んないし、もしかしたらアタシの要らない考えかもしれないからとりあえずスルーしとこ。

 

 そんな事を考えながらオジサマをじっと見詰めた。

 

 

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