性格濃いめの女子が戦国BASARAにトリップした場合。 作:藤 都斗
そして、漸く落ち着いたのか少し笑いを収めたオジサマは、クツクツと喉の奥だけで笑いながらアタシを見た。
「…確かに一理ある。…しかしなんとも欲に忠実な娘だ、その思考は嫌いでは無いよ」
そう言ってニヒルに笑うオジサマは何と言うか、周りの美術品も相俟って凄く様になっている。
これが大人の貫禄ってヤツなのか、とかどうでもいい事ぼんやり考えたけど、とりあえず褒められた…のかなコレ。
イマイチ解らんけどまぁそんなんよりアタシは言いたい事があった。
「…アタシの話を怒らずに聞いてくれた大人はオジサマが初めだわ」
「何、私の思考は柔らかいのでね」
そう告げながらオジサマは目を細める。
「…その歳でソレって凄いわね」
「褒めた所であれらを譲る事は出来んがね」
「えー!そんなつもり無かったけどでも良いじゃんくれたって!」
何なのかしらこのオジサマ。
意外とケチなのかないい歳して。
…いや年齢知らんけど。
真顔でそんな事考えながら言ったら、オジサマは普通に溜息を吐いて口を開いた。
「……管理出来ない者に与えてどうするのだね。何より私に得る物など何も無いだろう」
ふむ…、成る程。
自分にも利が無いと決断出来ない人なのか。
まぁ確かに聖人君子ってガラじゃなさそうだし…どっちかって言ったら悪役まっしぐら系?
そんな人がタダで貴重な物くれる訳無いか
考えたら当たり前の事よね。
まぁ元から駄目元だったけど。
「じゃあ働いたらくれる?」
本当に唐突に言ったら、オジサマは軽く眉尻を上げて怪訝そうな顔をした。
「………働く、とは?」
「アタシ忍なの。その辺の…アタシの侵入に気付かなかった忍よりは役に立つわよ?」
軽く目を細めて、いつもの、普通の女の子は絶対しないような、ニヤリとした笑みを浮かべる。
途端にオジサマは何だか面白そうにアタシを見て
「ほう…君が忍かね、…なんとも…似合わない職な事だ…」
楽しげにそう言った
それがどういう意味なのかとかどうでも良いアタシは、特に何も考えず口を開く。
「あら、そんな事ないわよ、ただ目立って、明るい美少女なだけで師匠のお墨付きは貰ってるんだから」
「ほう?」
「まぁ、美形は殺せないけど」
興味深そうにアタシを見るオジサマを眺めながら、やっぱりアタシはテキトーに答えると、なんかオジサマが軽く固まった。
何を答えたら良いか一瞬解らんくなったんじゃないかしら、ウケるー。
まぁそんなオジサマ見るのも面白いけど、そんなん気にしてたら話進まないからとアタシはまた口を開く。
「で、どうなの?」
「…何がだね」
尋ねた事によって復活したらしいオジサマが怪訝そうな表情を浮かべるけど、アタシは気にせず真顔で尋ねた
「アタシに美術品くれる?」
「……それ程まで欲しいのかね」
オジサマが心底呆れたとばかりに溜息を吐いたけど、アタシはやっぱり気にせず顎に手をあてながら軽く思案。
「んー…、美術品も欲しいんだけどー…」
「…?」
「ほら、言ったじゃない。
アタシ、美術品を管理してくれる人も欲しいの」
怪訝そうなオジサマに、そう言って爽やかな笑顔を向ける
と、彼は引き攣るように表情を歪めた。
それは、驚いた表情を無理矢理不敵な表情に誤魔化そうとして失敗したみたいな顔だった。
ウケる。
「私ごと美術品が欲しい、と?」
「まぁそういう事かしら」
ニヤニヤしながらオジサマを見詰める。
そのまま見つめ合う事暫く。
この間にアタシは、ほぼ空気に溶けてるみたいな小太郎は本当凄いとかどうでもいい事を考えたりしながら、オジサマが反応するのを待った。
当のオジサマはと言えば、不意にアタシから視線を外し目を閉じて、それから肩を震わせたかと思ったら
「はっはっはっはっは!全く驚かされる、こんな形で口説かれるとは…」
噴き出すように、さっきよりも盛大に笑い始めた
「あら、こんな美少女相手に何か不満?」
「あぁ、不満だとも」
尋ねた途端に返って来た言葉に軽く面食らう。
そのまま、眉間へ皺を寄せた微妙な笑顔でオジサマは続けた
「君のような小娘に手玉に取られるなど不満以外の何でもない」
「あ、やっぱり?なんかそんな気はしてたのよね」
だって殿様だもんねこの人。
無礼者!って斬られる前に逃げるとするか。
小太郎が居るから大丈夫でしょ。
そんな風に考えながら逃げる準備をしようとした時、
「だが、…面白いな」
オジサマはそう言って、ニヤリと笑いながらアタシを見た。
「君を雇おう」
「……はい?」
告げられた予想外な言葉に、今度はアタシが固まった。
けどオジサマは変わらぬ表情で笑っていて、でも今一瞬オジサマの笑みが深くなったから、多分今アタシはかなりポカンとした表情をしているんだと思う。
なんか腹立つな。
「不満かね」
不満だよ。
軽く眉間に皺とか寄せながら口を開く事にする。
「…美術品は?」
「…私と同じ軍になれば必然的に身近で見れる上に、管理する者も居る。君の望みが叶ったようなものだろう?」
オジサマの返答に納得しそうになるけど、そこは流石アタシ、ちゃんと気付いた。
まあ確かに、そう言われればそうなんだけど
「…でもアタシのって訳じゃないじゃん」
さっき伝えた事と違う話になってるよねコレ。
そんな風に告げると、オジサマは軽く顎に手をあてながら思案がちに言った。
「ふむ、己の物にする意味はあるのかね?」
えっ。
えーと、……改めて言われるとなんだろう。
利点、っていったら、そうだ!
「…不注意で壊しても怒られない」
真顔で告げたら、何故かオジサマは笑顔のまま固まった
暫く沈黙が続いたけど、それは数秒で。
オジサマは、やれやれといった様子で口を開いた。
「やはり君が美術品を持つのはやめた方が良い。」
「なんでよ」
つかなんでアンタに決められなきゃいけないのかマジ謎なんですけど意味わかんない
「決まっているだろう?造った者が憐れだからだ」
「いやいくらアタシでも手に取った途端壊したりしないわよ。そんなドジッ子じゃないし」
大体そんな不器用で忍の仕事出来る訳無いじゃん
此処まで出来るようになるまでどんだけの労力を費やしたと思ってんの死ぬ思いしたのよふざけんな馬鹿じゃないの
蔑んだ眼差しを送ってみたけど、オジサマはといえば
「おや、そうかね」
なんて、サラっとかわしたもんだから、なんかやっぱりイラッとした
「つかアンタ信じてないでしょ」
明らかに信じてないの丸解りな顔してんですけどこのオジサマ。
演技がわざとらしいのよなんかもう。
「何、壊れる様もまた芸術なのは解る。だがそうやすやすと壊されてもな」
「いやアタシそんな壊しまくらないからね」
つかどんだけガサツだと思われてんのアタシ。
この美しいカズハ様がそんな美しく無い所作する訳無いじゃん馬鹿じゃないのこのオッサン。
「気持ちは分かるのだがな…」
「聞けよ、てゆーかアンタ…からかってるでしょ」
真顔で言ったら、オジサマは軽く眉を上げて笑んだかと思えば、楽しそうにアタシを見た
「おや、バレてしまったか」
「…アンタ良い性格してるわね」
「何、君こそ」
どういう意味ソレ
いや、言われなくても何となく解るけど。
とにかく話が進まないと思ったアタシは、思いっ切り溜息とか交えつつ、とりあえず折衷案を出す事にした。
「じゃあこうしましょ、アタシはアンタに少し力貸す代わりに、アンタはアタシに美術品を見せる」
「成る程。交換条件という訳か」
「そうそう」
「…ふむ、まぁ良いだろう。」
「じゃあ交渉成立ね」
此処の美術品なら見るだけでも全然問題無い
むしろ他の所みたく勝手に見て捕まったりしない分かなり良い
まぁ、欲しかったら潜入した先で美術品パクったりすりゃ良いし
…だけど、よく考えたらこの世界の物現代に持って帰れないんじゃないだろうか。
せいぜい身につけてる物だけみたいな。
なんかアタシの勘がそう言ってるから確かだと思う。
つー事はやっぱ見るだけか。
残念だけどまぁしゃーない、どのみち管理出来ない気がするし。
ぼんやりそんな事を思ってたら、不意にオジサマが口を開いた
「早速だが、私には今欲しい物があってね…、手伝って貰えるかな?」
「あー、うん。いいわよ。何すりゃ良いの?」
ぼんやりしていた思考を現実へ引き戻しながら、改めてオジサマを見詰めて、不敵に笑うオジサマの言葉を待つ
「…奥州の独眼竜を知っているかね?」
「成る程。あいつをシバいて来れば良いのね。任せろ」
真面目な顔で頷きながらぐっと拳を握った。
「…まずは話を聞きたまえ」
まぁとりあえずそんな若干グダグダな経緯で、アタシ(小太郎含む)は松永軍でアルバイトを始める事になったのだった。
******
不可思議な、くのいちを雇う事になった。
姿形は自分で言うだけあって、どこぞの姫かと思うぐらいには整っている。
だが、その腹は自己中心的で傲慢、そして初対面の相手を前に礼節は皆無。
しかし自覚が無いのかと思えばそうではなく、問えば“身分など人柄に敵う訳が無い”と不敵に笑う。
つまり私は彼女の中で良くない人柄だと判断されてしまったらしい。
何となく腹が立ち無理難題を押し付けてみたが、仕事は完璧にこなし、それ以外はのらりくらりとかわされた。
確かに彼女は優秀な、くのいち、なのだろう。
連れている忍が多少補助している気もするが。
だが明らかに力の差がある私にさえ悪態を吐く彼女は、今までどんな場所に居たのか。
一時の主とは言え、彼女は遠慮という言葉を知らないらしい。
忍は道具、という事を忘れているような彼女は、本当に不可思議だ。
美術品を好む、傲慢、気に入らないものは壊す、気に入ったものは奪う、いつでも不敵に笑んでいる。
まるで私を女にしたようだが、彼女と私には決定的な違いがあった
…澱みだ。
彼女は血の香りがするにも関わらず、澄んでいる。
その違いは余りにも大きい
子供よりは汚れ、私よりも澄んだそれは、ひとつ間違えば同属嫌悪によって殺意が芽生えるものだろう。
が、血の香りがそれを中和していた。
この少女も、いつかは私同様に澱んでいくのかと思うと自然と笑みが漏れてくる。
実に興味深い存在だった。
「何笑ってんの松永のオジサマ。いつもより気持ち悪い顔になってるわよ」
書簡を綴る手を止め、不意に聞こえた声に視線を遣ると、黒柳と名乗った彼女が腕組しつつ佇んでいるのが視界に映る。
「気持ち悪いとは心外だな…、君は本当に遠慮というものを知らないらしい」
「あら、なんでアタシがそんなんしなきゃいけない訳?意味わかんない」
そう言う彼女は心底解らない、というような表情で此方を見ていた
常識というものを理解していないだけの事はあるが、此処は大人としてそれを教えた方が良いのかもしれない
だが、彼女には意味が無いようにも思えた
何より、常識を知るからこその言動だという事は、同じ性質の者故か何となく理解出来た
「…何、気にする必要は無い。ただ嫁には行けないだろうと思っただけだ」
目を細め、笑って告げる
このような娘は、余程の猛者で無ければ娶れないだろう
「余計なお世話よ。大体行く気無いし、そんな乙女思考持ってないもの」
「おや、うら若き乙女がそれを言うのかね」
口の端を上げ笑みながら告げて見せた所、彼女には何故か溜息を吐かれてしまった
「あのね…乙女なんてガラじゃないからアタシ。」
「ほう?女である事が嫌なのかね」
「それはどうでもいいの。」
どうやら彼女にとっては己の性別さえどうでもいい部類らしい
なんと言うか、外見は美しい娘だというのになんとも残念だ
「なんでそんな残念な子見るみたいな顔してんの違うわよ、アタシが言ってるのはキャラ的、…えーと人格?性格?…性質?なんかそんな感じの問題」
「ふむ、つまりどういう事だね」
彼女に告げられた内容があまり理解出来ず聞き返すと、彼女は真面目な顔で口を開いた
「早い話“可愛い女の子☆”より“カッコイイお姉さん”になりたいのアタシ。」
「無理だろう」
「なんでよ」
直ぐさま告げてみれば、驚いたような表情の彼女と目が合う
そのまま口の端を上げ口を開く
「君は良い所、“我が儘な姫”と言った所だ」
「ふざけんなばかやろう。」
「…一体何が気に食わないのだね」
何故そのような嫌そうな顔で悪態を吐かれなければならないのか
年頃の娘ならば、少々喜んでも良いような言葉を掛けたというのに。
この娘にはやはり常識は通用しないようだ
そう思案する間に、彼女は捲し立てるようにつらつらと述べ始めた
「姫なんて“女の子の憧れ☆”の固まりじゃん。しかも自由無いわめんどくさいわ勝手に結婚相手決められるわ最悪じゃない」
確かにそう言われれば姫というモノは彼女にとって最悪に分類されるのかもしれない。
しかし彼女は姫に役割がある事を忘れているのだろうか。
「つまり結婚で助かる民の事はどうでもいいと?」
尋ねれば、途端に彼女はキョトンとしたかと思えば、あっけらかんとした様子で口を開いた
「え、だってアタシ姫じゃないし。つかアタシが関わり無い人達の事気にするような奴に見える?」
言われて見れば、確かにそんな自己犠牲精神を持ち合わせているような人間には全く見えない
「…確かにそれは無いな」
思わず口の端が持ち上がる
本当に不可思議な娘だ
喉の奥でクツクツと笑って居れば、不意に彼女が呆れたように口を開いた
「…で、そんなんよりもいい加減報告していい?」
「ふむ、残念だな、それほど私との会話が煩わしいのかね」
わざとらしく残念そうな声音と表情で告げてみせれば、彼女はやはり呆れた様子で本当に煩わしげな態度をみせた
「はいはい、進まないから報告するわよ」
「…まぁ良いだろう。報告したまえ」
わざと尊大な態度で答えてみれば、彼女は面倒そうに私を見る
そんな態度が実に面白いのだから質が悪い。
「ホント無駄に偉そうね…、まぁ良いわ。えーと…はいコレ」
「…これは?」
「頼まれてた掛け軸。それから奥州の伊達なんだけど………」
受け取った掛け軸の紐を解きながら彼女の報告を聞き、自然と口の端が上がる
「…ふむ、そうかね」
どうやら思い通りになりそうだ
無意識ににやりと笑ってしまわないように気を使っていると、不意に彼女が口を開いた
「ところでアタシその時やりたい事あるから、ちょっとだけ任せてくれたりしない?」
「…ほう?」
一体何をする気なのだろう
ともあれ、面白いモノが見られそうな予感は今まで以上であり、不覚にも見たいと考えてしまったのは今までの彼女の言動に寄るものだ
「面白い…、やってみたまえ」
そう許可を出してみたものの、面白く無ければ爆破してしまおうと考える私は、余程捻くれているのだろう
彼女が嬉々として去った後、部屋に残された私は一人にやりと笑った
******
それから少し時が経ち、人取橋と呼ばれる付近に双龍が姿を見せた。
松永久秀により取られてしまった人質を解放させる為、そして元凶である松永久秀をぶちのめす為に。
進む度に掛かって来る松永軍の兵を容赦無く斬り伏せながらも、漸く辿り着いた最奥
そこに奴は居た
「松永…久秀…!」
青い龍、独眼竜伊達政宗が搾り出すように名を呟く
「おや、ようやくのお出ましかね。待ちくたびれてしまったよ」
ゆったりと振り返った壮年の男は不敵に笑いながらのんびりと告げる
それがカンに障ったらしい伊達政宗は表情を凶悪に歪めながら口を開く
「戯れ事ほざいてんじゃねぇ…!人質返しやがれ!!!」
当の松永久秀は軽く肩を竦めながら困ったような表情を浮かべる
「おお怖い…。ならば相応の品の用意は出来ているのだろうな?」
交換条件を出していたのだからこういう話の流れになるのは当たり前だろう
しかし独眼竜は眉間へ皺を寄せ黙り込んだ
「さぁ、六の爪を寄越して貰おう」
松永久秀が急かすように手を差し延べる
だが、差し延べられた手を無視して、独眼竜は腰の刀に手を掛けた
「…コイツもそいつらもテメェにゃ渡せねェ…!」
きっぱりと告げながら六本の刀を抜く
「テメェが死んじまえばAll okだろ?、You see?」
告げながらニヤリと笑って、六爪を構え挑発する姿は正に独眼竜の名に相応しかった。
その背後に、彼女の姿を見るまでは。
「政宗様…っ!!?」
控えていた右目が気付いた時には既に遅い
右目は咄嗟に駆け出そうと足を踏み出し、固まった
「…!?」
彼女、カズハが、政宗の腰、袴紐に手を掛けたのだ
そして
「ぃよいしょお!!」
そんな掛け声と共に全てをずり下げた。
そう、全て。
何をどうやったのか、器用に腰鎧も袴も、戦用に作られていた筈の特殊な下着も、何もかもである。
この場に居合わせた全ての者の時が止まる。
ていうか固まった。
視線の中心には、六爪を構えたまま下半身を露出させた独眼竜が、ドヤ顔のまま固まっている
「あははははははははは!ざまーみろ!アタシの事散々コケにするからよ!あーっはっはっはっはっは!!」
独眼竜に指差し腹を抱えて爆笑するカズハの震え気味な笑い声が辺りに響き渡る。
笑いすぎて涙すら流れており、更には余程可笑しいのか美人が台無しなくらい顔が歪んでいた。
独眼竜はと言えば、
「…………」
無言で俯き震え始めていた
兜で見えにくいが耳が赤くなっている事から、怒りに打ち震えている事が解る
「ま…政宗…様…」
右目が恐る恐る声を掛けた途端に、頭の何かがぶちりと千切れたらしい独眼竜が声を張り上げた。
「…っテメ、カズハーーーー!!!」
恥ずかしいのか悔しいのかそれとも他の何かなのかは解らないが、般若の形相でブチ切れる政宗。
だが半裸+六爪のせいで何の迫力も無いので全く怖くない。
むしろ彼女の笑いのツボを刺激するだけだったりする。
「あははははははは!ヤバい凄い無様!!!ぷくくくく…!!!」
確かにそんな格好で凄まれても無様である
「あははははは!いやー気が済んだ!今までのセクハラはコレでチャラにしといてあげるわ!じゃあねー!」
一通り爆笑して気が済んだらしい彼女はそれだけを告げて烏に掴まり飛び去って行った。
そして訪れたのは痛い程の沈黙。
チュピチュピと聞こえる鳥の鳴き声さえ己を馬鹿にしているように聞こえて泣きそうになり始めた独眼竜
そんな中、口を開いたのは予想外の人物だった。
「…ふっ、ははははは!いやはや、これはこれは…面白いものを見せて貰った。」
「笑うな松永ァアア!!!」
最早半泣きで怒鳴り散らしている姿は何とも哀愁を誘う。
控えたままの右目は混乱の余りオロオロするしかなかった。
しかし怒鳴られた松永は特に気にした様子も無く不敵に笑う
「何、そう憤るな。そうだな、詫びといっては妙だが人質は返そう。」
告げられた言葉に固まってしまったのは仕方ない事だろう
「は…!!?」
「不思議な事に、滅多に見られないものが見られただけで満足してしまったよ」
こいつ一体何処に満足してんだよと思いはすれど口には出さない独眼竜
「ではな。もう会う事は無いだろうが…。撤収だ」
そして松永久秀は、本当に帰って行った。
「………何だったんだ」
ぽかーんと、何処か機嫌良さ気に帰って行った松永の最早豆粒よりも小さく見える姿を眺めながら呟く。
そこで漸く右目が独眼竜へ声を掛けた
「政宗様…、袴を穿いて下さい」
「あ」
******
「いやー面白かった!超傑作だったわ!」
武田の城に帰って来たアタシは自分の部屋に入るなり報告をしろと佐助に迫られたので、とりあえず適当に経緯と、何をしたかを話した所で、畳にコロンと仰向けに転がって背伸びしながら盛大にそう呟いた。
だってあの時の政宗の間抜けさと言ったら無かった。
なんかもう顔なんか真っ赤で耳まで赤くなってたし。
あはははははははざまーみろアタシにセクハラとか好き勝手するからよバーカ!
「…………」
不意に佐助が無言で死んだ目をしてる事に気付いた。
いやちょっとなんでそんな酷い顔してんのよ?
「どしたの佐助」
尋ねれば、一瞬考えるようなそぶりを見せてから口を開く佐助
「いや、まさか…たったそれだけの事する為にあんな色々やってたの?」
色々って、松永軍に入ってやった事なんて、美術品盗んだり美術品盗んだり人質確保の為に伊達の人捕獲したり、あと美術品盗んだり伊達に書状届けたりしか、してないけどなぁ…まぁ良いや。
「確かに政宗に恥かかせたかったけど、本命は美術品よ?」
「そのくらいなら大将がくれるでしょうが!!!」
突然声を荒らげツッコむ佐助に、アタシは至極真面目に言葉を返す。
「あら、ダメよ。ただでさえ色々貰ってるんだから。」
「なんでそこで遠慮しちゃうの意味わかんない!!!こんな大騒ぎにしちゃうくらいなら大将とか俺様におねだりしてよ!!!」
とうとう佐助が両手で顔を隠してうわぁあんと俯いてしまった。
どうやらマジで半泣きらしい。
なんなのこの男。成人男性がやるとこの上なくウザいんだけど。
イケメンでもウザいものはウザいのね。新たな発見だわ。
どうでもいいか。
「…仕方ないわね。次からお館様に美術品見せて貰うように頼むわよ」
「なんでそんなしぶしぶなの」
溜息混じりに告げたら、じとりとした視線を向けられて、思わずちょっと眉根を寄せた
「だって申し訳無いじゃない」
「今回やらかした事の方を申し訳無く思ってよ!!!」
「なんで?」
「……カズハちゃん、君暫く外出禁止ね」
「なんで!!?」
かなり意味がわかんないんだけどどうしてこうなった!!!
十年前はここで止めてしまってたので、改めて書いています。
気長にのんびりまったりお待ち下さい、宜しくお願いします。