性格濃いめの女子が戦国BASARAにトリップした場合。   作:藤 都斗

3 / 25
へんたいへんたい

 

 

 

 

 不意に目が醒めた。

 

 よっぽど疲れてたのか、木の上だったってのにいつの間にか寝てしまっていたようだ。

 辺りは暗いけどなんか薄明るいからきっとそろそろ朝なんだろう。

 

 でも、かなり寒い。

 手がかじかんで指先が動かなかった。

 

 あー、明け方が一番冷えるってホントなんだなーやっぱ。

 

 てゆーか初野宿も疲れてたからかサラっと終わったし意外と楽かも。

 普段寝ない所で寝たから肩凝りとか物凄いけど。

 

 でもまだ眠いからもう少し寝よ。

 

 そんな事を暢気に考えて二度寝しようとしたら

 

 突然

 

 身を預けていた太い枝が、根元から“ズレた”

 

 断面は綺麗な円形。

 一瞬の浮遊感の後の落下の間に、何かに斬られたのだと思った。

 

 何で? 

 誰に? 

 

 その答えはすぐに解った。

 

 落ちていく視界の中、目の端に映る

 

 長い、銀髪。

 

 両手に掴まれた大きな、黒い鎌。

 

 痛い思いはしたくないと、落ちていく身体をホントに無理矢理反転させて、いたたたた今背中グキって音した! とか言いながら足から着地すると、そいつは至極楽しそうにくつくつと笑っていた。

 

 ……アタシ、こいつ知ってる。

 

 友達のデータだったから何処の軍だったかとか名前とか覚えて無いけど、確か一回だけ、V系だからって気に入って使った覚えがある。

 

 使った時の感想は、使いやすくて強いけど

 

 

 こいつ絶対変態だ……、だった。

 

 

 

 「……迷子、ですか?」

 

 

 

 不意にそんな風に掛けられた声で我に還ると、ソイツはアタシを眺めながらニタリと笑った

 

 めちゃくちゃ怖い。

 

 「ま……迷子です。あの……なんでアタシが寝てたの邪魔したんですか」

 

 「こんな森の中に人が居たからつい気になって」

 

 気になったぐらいで安眠妨害されるアタシの身になってくれないだろうか

 

 「君は綺麗な顔をしていますね……」

 

 ホントに突然、そいつはアタシの視界から消えて、かと思えば、ふわりと背後からアタシの耳元へ語りかけて来た。

 

 悪寒が一気に全身を駆け巡る。

 

 余りの事に、貰ったクナイを一つ構えながら地面を蹴って、一気にソイツから離れた。

 

 「君には血の色がよく似合いそうです……」

 

 いやいやいや、似合うかもしれないけど別に今じゃ無くて良いじゃん? 

 

 「知っていますか? 、綺麗な顔が苦痛に歪む様はとても美しいんですよ……ふふふ……」

 

 知らねーよどうでもいいよ怖いよふふふじゃねーよ! 

 物騒な物構えないでマジ怖いんですけどこういう時ってどうすりゃいいの

 

 つーかさ、アタシ現在進行形で踏んだり蹴ったりじゃね? 

 いや、寧ろ踏まれたり蹴られたりだよこの状況じゃ

 

 ビリーさんマジ助けて……!! 

 

 

 そうこうしている間にもV系お兄さんはゆっくりこっちへ歩いて来る

 

 

 「貴女の苦痛に歪む表情……見せて下さい……」

 

 「……そんなん嫌に決まってんでしょ、アタシ痛いの嫌いなんだから……!!」

 

 

 今の所向こうに足を止める気配は無い。

 大きな鎌をヒュンヒュンと振り回しながら、ただただ妖し気な笑みを浮かべている

 

 

 ……はっきり言ってかなり怖い。

 

 何がって顔が。

 

 死ぬ死なないよりもあの人の顔と雰囲気が。

 

 なんか黒い靄がお兄さんから立ち上ってる幻覚が見える。

 

 あれ? マジで出てないか? 

 幻覚じゃないのコレ? 

 

 いやそんなんより……どうしよう。

 アタシってば、普通の、ちょっと身軽なくらいの一般人よ? 

 

 ……勝てるとは思えない。

 つか寧ろ対抗出来るとも思えない。

 

 武器らしきものなんて、かすがさんから貰ったクナイ数本オンリー。

 

 

 うん。

 

 逃げよう。

 

 

 こんな所で死んだら逆ハーレムの夢が潰えてしまう……! 

 

 それより何よりあの人マジ怖い。

 

 とりあえず、持ってたクナイをお兄さん目掛けて投げる。

 でも、案の定軽く弾かれた。

 

 「……こんな物が効くとでも?」

 「思ってないわよ、目眩ましくらいになれば良いかなーって思っただけ」

 

 「ふふふ……面白い方ですね……」

 

 アタシは全く面白くも何とも無いけどね!!! 

 

 ...ヤバイ、どうしよう、逃げる隙も無い。

 

 

 焦るアタシを他所に、また、お兄さんが消えた

 

 

 途端、アタシの頬にピリッとした痛みを感じて、頬を伝う血の感触に気付いた。

 

 そして、背後から感じたのは

 

 

 あの鋭い刃とお兄さんの気配

 

 

 うん、でもね。

 

 

 この兄さんは、アタシにしちゃいけない事をしました。

 

 

 さてなんでしょう? 

 

 

 チッチッチッ……ブー! 時間切れでーす。

 解ってる人が居ても知りませーん。

 はい正解行きまーす

 

 

 「テメェ……このアタシの顔に傷付けやがったな……

 ……ナルシストなめんなよゴルァァァァアア!!!」

 

 

 キレてとりあえず叫びながら、渾身の力を篭めて背後の男に向かって蹴りを放つ。

 アタシの突然の変化に付いて行けてないのか、男は驚いたような表情を浮かべ、アタシの回し蹴りを腹に喰らった。

 

 そのまま2メートルくらい吹っ飛んで、地面に落ちる事で止まった男は、ゆっくりと起き上がると

 

 

 「……く……クハハハハ!! ……アハハッ……ハハハハハハハハ!!! 、イイ……イイですよ……!!」

 

 

 なんか変態丸出しで笑い始めた。

 

 

 「貴女を今殺してしまうのが惜しくなって来ました……!! 、あぁ……惜しい!」

 

 ぐねぐねと身体を曲げたり揺らしたりしながら、仰け反る男は、なんか現在進行形で最高に気持ち悪い。

 

 キレて上がった筈のテンションも一気にガタッと落ちるくらいに気持ち悪かった。

 

 

 「こンの……変態が……っ! 許可も無く勝手にこのカズハ様に盾突いてんじゃないわよ……!」

 

 

 苦し紛れに悪態を吐く。

 

 下がったテンションを上げようと言ってみたけどあんまり意味を成さなくて、逆にソレであっちのテンションを上げてしまったらしい。

 

 なんか物凄く楽しそうな妖しい笑顔を向けられたキモい。

 

 

 「カズハ……、ふふふ……そうですか……、覚えましたよカズハさん……」

 

 

 うわ最悪だなんか名前覚えられた!! 

 

 

 「今の弱い貴女を殺すのは勿体ない……もう少し……もう少し武人として育つまで…………でも……」

 

 

 は? え、……何? 

 

 頭が真横になりそうな程首を曲げながらクスクスと笑っていた男が不意に静かになって、怖い。

 

 うん、ヤバイなんか凄い嫌な予感がする。

 

 

 「味見程度は構いませんよね……?」

 

 

 とても歪な笑顔で

 

 ニヤリと

 

 そいつが笑った。

 

 

 理解する事も出来ないままそいつは視界から消えて

 

 

 背中に

 

 刃の気配を感じて

 

 

 「っあぁぁぁぁ……ッ!!」

 

 

 今まで感じた事の無い痛みを通り越した熱さに

 

 アタシの意識は飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どのくらい時間が経ったのか。

 

 

 不意に意識が覚醒した時、ぼやけた視界に誰かの顔が見えた。

 

 知ってるような知らないような、……一体誰だろう? 

 

 「……――~―~……!?」

 

 何か喋ってるけどよく解らない。

 

 身体が全く動かないのはきっと血が足りてないからだろう

 

 でもそんな事をぼんやり考えてる間に、アタシの意識はまた無くなって行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目が醒めた時、木目の天井が見えた。

 見覚えが無くて思わず眉間に皺が寄る。

 

 「お、目が醒めた~?」

 

 不意に、くすんだオレンジの髪をした緑のフェイスペインティングの、なんか異様に軽いテンションの男が視界にひょっこり入って来た。

 

 「君ねー、なんか森の中で血だらけで倒れてたんだよ~」

 

 わー……この人も見覚えある~……でも誰だっけ。

 

 もう訳解らん。

 話の流れが急過ぎてついて行けない。

 二回目だけどもっかい言うわ。

 

 ここどこ? 

 

 「……あの……えーと……」

 「あ、今動くと痛いから動かない方が良いよ~」

 

 大丈夫、動きたくない、つか寧ろ何もしたくない

 

 「で? 、君は何者?」

 「カズハです」

 

 「……いや、そうじゃなくてね? 何者かって聞いてるの」

 「質問の意図がよく解んないんですけど、せめて何がどうなってそういう事聞くのか説明下さい」

 

 そう告げたらオレンジ頭の人はなんか軽く悩んだ様子見せて、アタシを覗き込みながら口を開いた

 

 「えーとね、俺様の都合上、君の素性を知りたいんだよね。

 で、とりあえず君の持ち物調べてみたらクナイ入ってたし、見た事無い素材の服も有った。

 その上背中の傷は刀かそれに似た何かで付けられたっぽい、と来たら……ねぇ?」

 

 「成る程。それは怪しいですね」

 「いや、君の事だからねカズハちゃん」

 

 うん、ツッコミ有難うございます。

 

 見た事ない素材の服って、下着とかかな? 

 そうなんだろうな。

 傷の治療に邪魔だろうしね。

 しかし下着をまじまじと調べる男性って、完全な事案だよな。

 戦国時代で良かったねオレンジの人。

 

 しかしどうしよう。

 何者かなんて聞かれてもなんて説明すりゃ良いんだよ。

 

 えーと、ゲームしようとしたらいきなり誰かに首掴まれて引っ張られてこの世界に来て、その元凶の三日月男に悪態吐いたら座敷牢に入れられて、かすがさんに助けて貰ったと思ったら美麗な人にも助けられて、でもまた三日月男に捕まりそうだったから逃がして貰ったら、突然森の中に置き去りにされたので

 とりあえず野宿して寒い中起きて二度寝しようとしたらV系の変態に襲われました。

 

 長い上に訳解らん。

 駄目だ信じて貰えるとは全く思えない。

 

 うーん……仕方ない……。

 

 

 「名前以外……覚えて無いんです」

 

 

 これならなんとかごまかせる筈だ。

 

 「覚えてない?」

 

 「はい、アタシがなんでクナイ持ってるのか、その……なんかよく解んない服? についても」

 

 目を伏せ、若干シリアスな感じの表情を浮かべながら平然と嘘を吐く。

 

 

 「背中の傷は?」

 

 「……訳解らなくて……森の中で野宿してたら……、突然……銀髪の……鎌持った変態に攻撃されました」

 

 これは間違ってない。

 本当の事だもんね! 

 

 「あぁ……、アイツか……」

 「知ってるんですか?」

 「……まぁね」

 

 教えてくれないのかよ。

 

 「で? 本当は何なの?」

 

 あ、全く信じられてない。

 

 「アイツに襲撃されて生きてる一般人なんて居る訳ないじゃん」

 

 あのーすいませーん、居ますよー? 現在貴方の目の前に居ますよー? 

 

 「……なんか……苦し紛れに応戦したら……なんか殺すの惜しいとか言われて……でも味見とか言われて……意識飛びました」

 「……ふぅ~ん?」

 

 うーん、信じられてないなぁ。

 まぁ突飛だから仕方ないか。

 

 なんかニコニコして見られてるけどこの人垣間見える目が全っ然笑ってないな~、てゆーかこの首に当たってる冷たい物なんだろうな~、うわー、嫌な予感~。

 

 「本当の事言いなよ。君何処の間者?」

 

 ニコニコと笑ってない目で見詰められる。

 

 「……本当の事言ったってどーせ信じて貰えないでしょ?」

 

 「なんなら爪一枚ずつ剥いで行くよ?」

 

 うわー、完璧な拷問だよねソレ

 いくらなんでもそれは勘弁して欲しい痛いの嫌い。

 

 「……クナイは、かすがって人がくれたんです。

 変な素材の服はアタシが着てました、以上」

 

 「うーん、それだけじゃ駄目だなぁ。もっと詳しく教えてくれる?」

 

 ……しつこいなこの男。

 

 あと無駄に近い。

 

 「えーと……覚えてるのは……川で溺れて、助けて貰ったのは良いけど服装が怪しいからって捕まって……

 それをかすがさんが助けてくれたけど……なんか用があるからって森の中に置き去りにされました」

 

 うん、ぼかしてはいるけど間違ってはない。

 

 「……それはつまり、川で溺れる前は何してたとか覚えて無いって事?」

 

 「まぁそうなりますね」

 

 「……本当かなぁ?」

 

 「……信じる信じないはご自由にどーぞ」

 

 なんか面倒臭くなって来た、もう知らん。

 

 アタシは流れに身を任せるよ。

 殺すならどうかサックリ一発で痛くないように殺してくれ。

 

 そんな感じに目を閉じた時だった

 

 ドタタタタなんて人が走ってるみたいな音が聞こえて来たと思ったら

 

 「すぅぅあすくぇぇぇえエエッ!!!」

 

 スパァン!! と、なんかいきなり物凄い騒がしい音と共に騒がしい人が現れたっぽい。

 

 うん、でもオレンジの人の顔で何も見えない。

 

 「あっれ? 旦那ァ……もう来ちゃったんですかー?」

 「さっ!! さささささ佐助!! お主女子の上に跨がるなぞ破廉恥窮まりない!!!」

 「うぉっと!! ちょっと旦那ァ、危ないよいきなり何すんの?」

 

 説明しよう! 

 オレンジの人はアタシの首にクナイ突き付けてたけど、それを端から見たら怪しい図に見えたらしい喧しい人が、オレンジの人にドロップキックしようとしたけど

 軽く避けられて向こうの襖に思い切り突っ込みました。

 

 

 「……あの……訳解んないんですけど」

 

 正直な感想である。

 

 「おぉ!! 目覚められたか!! 申し訳ないな、起きたそうそう破廉恥な忍が破廉恥な事を……、後で某がよく言って聞かせる故許してはくれないだろうか!?」

 

 大破したらしい襖からガッバーとか起き上がったらしい騒がしい人に捲し立てられるけど、背中痛いからあんまり首とか身体を動かせなくて姿が見えない。

 

 てゆーかとりあえず頭動かしたくない。

 

 「……はぁ……大丈夫ですんで……お構いなく..」

 

 「ちょっと旦那、それは無いんじゃないの? 

 それじゃ俺様のやる事なす事全部破廉恥みたいじゃん」

 

 「女子の上に跨がっておったお主が何を言う!! 様子を見に来て驚いてしまったではないか!」

 「旦那の思考回路の方が破廉恥だよ」

 

 

 全くだ。

 

 

 「喧しいぞ佐助!! 良いからお主はお館様に報告へ行かぬか!!!」

 

 「はいはい、じゃカズハちゃんまた後でね」

 

 そう言ってヒラヒラと手を振りながら佐助と呼ばれたオレンジの人は姿を消した。

 

 うん。

 

 もう全てにおいて訳が解りません。

 

 お母さーん! アタシもうお家帰りたーい! 

 

 そんな事を考えたら、突然アタシの視界にその喧しい人がひょっこり入って来た。

 

 「怪我の具合は如何か?」

 

 ……うわー、この人も凄い見た事あるんですけども。

 

 ホラ、ゲームのオープニングで三日月男とぶつかり合ってたあの暑苦しいジャニーズ系。

 

 もうキャラいっぱい出過ぎて名前覚え切れないかも知れない。

 

 ついで言うと全く話に付いて行けてない。

 

 

 うん、でも目の保養。

 

 

 「えっと……、怪我は……先刻起きたばっかりだから解らないんですけど、寧ろアタシの怪我どうなってるんですか?」

 

 「え? 、あぁそうか……えーと……肩口から背中の中程まですっぱりと……」

 

 ……この人なんで顔赤らめてんの? 

 

 「……もしかして、アタシ怪我の治療したのって貴方ですか?」

 「そ、某ではござらぬ!! 横から見ていただけで……!」

 「……つまりアタシの裸見たんですね?」

 「ちっ違う!! そ、そそそ某はそんなっ……!!」

 

 キャー! とか言い出しそうな程真っ赤になって両手で顔を隠すお兄さん。

 

 うわー……なごむ……。

 

 今まで男の人にはドSとか変態とかSっぽい人とかにしか会ってなかったから、こういう反応凄い癒される。

 

 「まぁ……実際意識無かったですからどんな状況だったか解んないですけども……」

 「佐助じゃあるまいし、某はそのような事断じて致さぬ! ご安心召されよ!」

 

 ……まぁ、この調子なら大丈夫なんだろうな。

 

 「えっと……ところで貴方は?」

 「おぉ! 忘れる所であった! 某は真田源次郎幸村と申す」

 

 あー……、そうか、そういえばそんな人がいるゲームだっけ。

 てゆーかそんな名前だったんだ? 

 

 

 「ただーいまっと」

 「おぉ、佐助か! 早かったな」

 

 不意に突然あのどっか行った筈のオレンジの人が現れた。

 報告とやらは終わったのだろうか。

 

 ……まぁ、名前は佐助っていうんだろうけどまだアタシ名乗られてないからオレンジの人って呼びます。

 

 

 「つーかさ旦那ァ、初対面の素性も知れない怪しい奴に本名教えるってどんな神経してんの?」

 

 あ、それはアタシもそう思う。

 

 「何を言う佐助! この様なか弱い手負いの女子相手に!」

 「……あのね旦那、この子がもし間者だったらどうすんの? 殺されちゃうかもよ? 

 何たってこの子あの“明智光秀”とやり合って生き残ったらしいんだから」

 「なんと!! 其方怪我が治ったら某と一度手合わせせぬか!?」

 

 

 今の所全く会話について行けません。

 そしてやっぱ、ここどこですか? 

 

 で、何? 明智光秀がなんだって? 

 

 はいはいはいすいませーん、意味が解りませんよー。

 

 

 「ん? ……明智光秀? 、…………っ!!」

 

 

 あぁぁああ! 

 そういえばあの変態兄さんそんな名前だった! 

 友達も変態としか言わなかったし自分でもその印象強すぎて忘れてた! 力いっぱい忘れてた! 

 

 「カズハちゃーん? 余裕だねェ考え事で百面相なんて」

 

 うわ、なんかソレこっち来てからよく言われるなーアタシ。

 そんなに顔に出てんだろうか。

 

 ……てゆーか余裕なんてあんまり無いんですが。

 

 「このままじゃ怪我治ったら旦那と手合わせしなきゃいけなくなるよ?」

 

 「……は? なんで?」

 「旦那は思い立ったら必ず実行したがるからねェ。良いの?」

 

 「いや……あんまり良くない……アタシちょっと身軽なだけで……戦いに関しては素人だから」

 

 真面目に無理。

 力いっぱい無理。

 

 「だってさ旦那。諦めなよ」

 「……むぅ……、……手合わせ……」

 

 

 可愛いなオイ。

 しゅーんとかしてんですけどあの人幾つだよ

 ジャニーズ系の顔でそんな顔すんなよ

 

 虐めたくなるじゃん。

 

 

 「……まぁ、今は怪我してるし、何も出来ないだろうから放置するけどー」

 

 ん? え、何? 

 

 「旦那や大将に何か危害を加えようとするなら殺すからね★」

 

 語尾に付いてる星も黒いし、視線も冷たいし、目も笑ってない。

 

 うわー、この人絶対笑顔で人をサクサク殺せるタイプだよ、怖っ。

 

 まぁ、ソレ以前にアタシ、人に危害を加えようって思う時はその相手に何かされた時だけだから、そこの辺り解ってくれないかな。暴力は正当防衛オンリーよ。

 

 そんな風に考え込んでる間に、アタシがオレンジの人に言った事のあらましを説明されたらしい真田さんが、アタシの手をガシッとか掴んだ。

 

 「記憶喪失とは……っ! 、さぞ心細い思いを……っ! 

 その上……明智殿にまで襲撃されるなど……! 辛い思いをされたのだな……!」

 

 

 え、あの、なんで泣いてるんですかこの人。

 なんかどうしたら良いかわかんなくて困るんですけど。

 

 「カズハ殿! 、其方さえよければこの上田城に住まわれよ! 歓迎致すぞ!!」

 

 

 は? いやいや、この人何がしたいの? 

 いや、言ってる事は解るんだけど、話が突飛過ぎて付いて行けない。

 

 寧ろこんな怪しさしかない人間を住まわせるだと? 

 

 え? 

 

 馬鹿? 

 

 いや寧ろ阿呆? 

 

 

 「ちょっとちょっと旦那ァ、それマジで言ってんの?」

 「某、身寄りも無いに上住む所も無い、しかも記憶を失った女子を放り出すなぞ侍としてあるまじき行為……出来ん!!」

 

 

 いや、有り難いとは思うけどさ、でもさ

 

 ちょっと失礼して良いかな。

 

 こんな事言える立場じゃないってのは凄い解ってるんだけど我慢したくないから言います。

 拒否権はありません。

 知りませんそんなモン。

 

 アタシの辞書には無い!! 

 

 「……こんな素性の解らない、“怪しい”が服着て歩いてる様な娘を城に住まわせようとするなんて……アンタもしかしなくても馬鹿? 

 アタシが嘘吐いてるとか考えないの? 初対面の相手を信用し過ぎじゃないの?」

 

 眉間に皺寄せたりしながらそう言ったら、なんかオレンジの人が驚いた顔した。

 予想外だったのか軽く固まってる。

 

……いや、だってそうじゃん? 悪いけどアタシ現実派だから。

 こんなん普通に気になるしツッコみたくなるよ。

 

 ……つかなんでアンタ達そんなアタシ凝視してんの? 

 いくらアタシが美少女でもそんなに凝視されると居心地悪いんですが。

 

「……なんすかオレンジの人も真田さんも。そんな見ないで下さいよ」

 

 金取るぞ。

 

 アタシの天井しか解らない限られた視界の中で、しつこいくらい暫く凝視された後(マジウザかった)顔を見合わせる二人。

 

 なんか真田さんが勝ち誇った笑みをオレンジの人に向けている。

 

 んでオレンジの人は軽く溜息を吐いている。

 

 わー……何この空気とりあえず誰か説明くれよ。

 さっきからずっと言ってるけど訳解らん、話が見えない、誰か説明くれ。

 

 「……本当に旦那は……、俺様の仕事増やしてくれるよね……」

 「何を言う佐助、それがお主の仕事だろう?」

 「職権乱用だよ……」

 

 あのーすいませーん説明下さーい

 

 「そうそう、俺様オレンジの人じゃなくて佐助だから」

 「あ、はい。アタシはカズハです」

 「うん、先刻聞いた」

 

 ……何だこの会話。

 

 「まぁとりあえず、俺様は旦那の命令には逆らえないから従うけども……

 一応大将に指示仰いで来た方が良いんじゃないの? 旦那」

 「む……それもそうだな、それでは某は一度失礼する」

 

 そう言いながら真田さんが立ち上がったかと思ったら軽く一礼して

 

 「ぅおやかたさむアアアァァァァぁ……!!!」

 

 喧しく叫びながら走って行った。

 

 ……うん……うっせー人だな。

 

 「えーと、じゃあとりあえず何日か暫くは傷治すのに専念しときなよ。

 俺様声の届く範囲に居るから用があったら呼んで」

 

 「は? 、え……」

 「じゃーねカズハちゃん」

 

 で、佐助さんは消えた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。