性格濃いめの女子が戦国BASARAにトリップした場合。 作:藤 都斗
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隻眼の青年が行灯の明かりに照らされながら、酒の入った盃を空ける。
静かな夜の気配からは虫の鳴き声すらも微かにしか聞こえない。
その様はあたかも何かの映画のワンシーンのようだった。
しかし、そんな雰囲気にも関わらず、青年の表情は不機嫌そうに歪められ、眉間には皺が刻まれている。
「政宗様、…あの娘の情報が入りました」
そこへ、顔に傷の入った男が襖越しに青年へと、そう声を掛けた。
途端、青年の表情が変わり口の端を上げてニヤリと笑む。
「Ha…!やっとか小十郎…、…で?アイツは今、何処に居る…?」
空の盃を片手に隻眼を細めた青年は酷く楽しそうに笑った。
「黒巾頭組の掴んだ情報では、…甲斐に。」
襖越しに聞こえた答えに青年は隻眼に剣呑な光を宿らせた。
「…Huh…甲斐…武田か」
青年の深意は解らない
「小十郎」
「…はっ」
青年は微動だにしないまま言葉を紡ぐ。
「…明日甲斐へ行く、支度をしておけ」
「…承知しました」
男の気配が無くなり、部屋が青年の息遣いしか解らない程になった時、青年は口を開いた。
「待ってろ、カズハ…」
*****
「誰が待つかボケ寧ろ来んなァァァアアア!!!」
アタシは自分の部屋に敷かれた、自分の布団から跳び起きた。
今更だが、アタシが保護された時に宛がわれた部屋をそのまま使わせて貰う形になっている。
うん…あれ、なんだろこのデジャビュ。
まぁとりあえず、アタシはまた嫌な夢見て、自分の絶叫で起きた。
内容全然覚えてないけど気分の悪さと寝汗具合で悪夢だったんだと解る。
「…どんな夢だったんだ一体」
「うん、それは俺様も凄い気になる。」
「佐助!ビビるからその登場マジで止めてくれ!心臓に悪い!」
やっぱり佐助はいつの間にか逆さで現れてこっちを見てた
つか佐助は気配読めないから尚更ビビるんだよホントやめてくれ
「えぇ~?、ヤダ。だってカズハちゃん反応面白いんだもん」
「…ヤダじゃねーよ、可愛い子ぶんなよ、可愛いけどさ」
「アハハ~、それが狙いですから」
…ホントにタチ悪ィなこの男
「カズハ殿ォォォオオ!!!」
そしてやっぱり幸村も騒がしく現れる
「あ、幸村おはよー、騒がせてごめーん。なんでもないよーまた悪夢見たっぽいだけ」
「なんと!またでござるか…、佐助!お主カズハ殿に無理をさせ過ぎたのではないか!?」
「そんな事無いよ、最近じゃ俺様のさせてる訓練軽々と消化するようになったんだよカズハちゃん」
いや、軽々って訳じゃない、どっちかって言ったらかなり必死。
「…うむ、確かに此処暫くカズハ殿の武術の上達は目を見張るものがある…」
あれから毎日手合わせしてても幸村に勝てた事無いけどね!!
「でしょ~?、俺様の教育の賜物だよ。」
あの訓練と称した嫌がらせ、もといイジメを、教育だと抜かすかコノヤロー
アタシが此処に来て、はや二ヶ月。
忍の訓練を受け始めて一ヶ月とちょっと。
元々身軽だった事もあり、意外と早く基本が出来るようになった。
佐助ほどに早く走れたり、一回の跳躍で空に飛んでったり、影分身作ったり、なんて人外な事は出来ないけど
忍び足も、気配を消す事も、気配を読む事も
クナイを狙った場所に正確に刺す事も、なんとか完璧に出来るようになった。
佐助のスパルタ訓練のお陰…というより、スパルタ訓練のせい。
アタシ個人は、護身が出来る程度で充分なんです。
何この、忍見習いだけどもうすぐ忍になれます!みたいな現在のアタシの戦闘力。
お陰でその辺の兵士なら、一撃で昏倒させる事が出来るくらいに強くなってしまった。
まぁ、忍の基本知識で人体の急所全部叩き込まれたからってのもあるけど。
アタシ、女の子なんだけどな...。
…まぁ、アタシの美意識に反する程じゃ無ければ、どれだけ強くなっても良いや。
女の子なのに超ムキムキ、とか、腹筋六つに割れてる、とか、そんな有り得ない状態でさえ無ければ。
ホラ強い女ってカッコイイじゃん?
…いや、この成長は確かにちょっと、異常かもしれないけど…、そこは…まぁ才能に満ち溢れてるカズハ様だからね、仕方ないね!
てゆーかそれ以前に、もっとゆっくり…命とか掛けずに習いたかったです。
いきなりどっか山奥に連れて行かれて、結構な高さの崖っぷちに立たされ、しかもコードレスバンジーで綺麗に着地しろ、みたいな事させられた時には、思わず自分の身軽さを怨んだ。
なんとか出来て、やった方のアタシもビックリしたけど、受け身習って無かったら死ぬ所だよ、っていうか普通死ぬわ
何より顔に傷付いたらどうしてくれるマジふざけんな佐助
佐助はそれをニヤニヤしながら見てるとか有り得ないだろ
なんかアタシ最近佐助のストレス解消にされてない?
…されてるよね確実に。
…チクショー…このドS忍者め…。
…まぁ、そんなこんなで。
アタシは佐助みたいに完璧では無いけど、一応忍に近いものには、なる事が出来たようだ。
…ある程度強くなって思ったんだけど、佐助は多分人間じゃないと思う。
だって有り得ないじゃん、色々と。
…流石ゲームだよね。
「よし、ではカズハ殿!気分転換に城下へ行かぬか?」
「城下?、えっ、良いの?今日訓練無し?」
「ちょ、旦那!何勝手な事…」
「佐助、お主とて休みが欲しいと思うだろう。
カズハ殿は今まで訓練のみ、一日くらいは良いでは無いか」
佐助は若干渋ったけど次には諦めたように溜息を吐いた
「…ったく…解ったよ旦那。
…カズハちゃん、帰って来たらちゃんと自主練習するんだよ?」
「うん!大丈夫、既に自主練は日課になってるから」
主に佐助のせいでな!!!
うん、でもそんなどうでもいい事より、アタシ城下町に行けるの?
…ヤバイ、なんか無駄に嬉しいかも。
買い物とか散策とか、凄いしてみたかったのよね。
だって現代に無い物ばっかりだろうし、何より綺麗な物が多そう。
うん、でもそれ以前に気分転換出来るってのが凄い嬉しい。
はっきり言って訓練飽きてたもん
「ではカズハ殿!!朝餉が済んだら、某が城下を案内するでござる!」
「え?、あ、うん。宜しく!」
「ではまた後程!」
アタシの返事を聞いた幸村は、そんな感じに珍しく爽やかに朝の鍛練へと向かって行った。
…それにしても城下かー…
…ん?、え?あれ、もしかしてコレってデート?
…いやいや、それは勘違いでしょカズハちゃんよ。
よく考えろ、んな訳無いじゃん。
普通に考えて無理があるだろ
…よし、とりあえず犬の散歩だと思っとこう。
そしてアタシは、佐助の関与の無い朝の合気道の稽古へ向かった。
佐助の関与が無いってだけで物凄い楽。
精神的にも肉体的にも物凄い楽。
…かなり今更だけど、武田軍に仕えるようになってから、なんか色々武術を習わされてます、現在進行形で。
あと、毎日幸村との手合わせ。
いつも思うけどなんでアタシ、本格的に武人になるようにしごかれてんだろうか。
…解んないから気にしないけどね。
なんだかんだで体動かすのは好きだし。
まぁ、そんなこんなで朝稽古を終え、佐助と朝食を取って、普通の着物に着替えてから、幸村と一緒に城を出た。
「そういえばカズハ殿は、甲斐の町を見物するのは初めてではないか?」
普段通る忍用の通り道なんかじゃなくて、色んな普通の人が行き交う普通の道。
見慣れない角度の景色に思わず辺りを見回しながら歩を進めて居ればそう声を掛けられて、とりあえずアタシは機嫌良く答えた。
「うん!、怪我治ってからずっと訓練だったし、城下町なんて遠くから見てるだけだったもん」
「そうか、では今暫くはつかの間の休日、楽しもうぞカズハ殿!!」
「つかの間とか言わないでよ!現実を思い出して悲しくなるじゃん!」
「ぬぅ!!それは気付かなかった!!申し訳ない…」
「え、自覚無し!!?」
まぁ、そんな感じで城下を歩く
ふと、町を歩く様々な人々が幸村やアタシを見ている視線に気付いてちょっと驚いた。
…まぁ、遠くから見れば幸村ってかなり美形だもんね。
普段五月蝿いから忘れがちになるけど、一応お偉いさんだし。
まあ、アタシが美人だから余計に視線集めてるんだろうけどね!
此処は重要よね!テストに出るくらいなんじゃないかしら。
殺気の篭った視線も今の所無いし、これなら何の問題もなく過ごせそうだ
そんな視線が解るようになったアタシもなんか人間ぽくない気がしないでもないけど、気にしない。
「カズハ殿は…」
「ん?何?」
不意に掛けられた声に、とりあえず幸村へ顔を向ける
幸村の方が背が高いからどうしても見上げる形になるけど、無理矢理気にしない事にした
見上げるのあんまり好きじゃないのよね。
「自分の故郷へ帰りたいと思った事は無いのか?」
……故郷?
その単語に、思わず一瞬動揺してしまった。
何故なら、今、それを言われてようやく、思い出したからだ。
今までそれ所じゃなかった事もあるけど、なんか現代より居心地良いし、充実感あるしで、すっきりさっぱり脳から抜け落ちていた。
「あー、忘れてたわ。」
とりあえず、自分の頭の脳天気さに自嘲しながら苦笑する。
凄いよねアタシ。
携帯とか電化製品も無いのになんで馴染めてんのかしら。
こんなんじゃ今後ホームシックになるかすら怪しい。
あ、でも、お菓子とか洋食とかファーストフードは恋しくなりそう。
今の所は平気だけど。
しかし、アタシの言葉を聞いた幸村は、なんか勘違いしたらしく、眉間へ皺を寄せ、表情を曇らせた。
「…す、すまぬ、某が余計な事を…」
「いやいやいやいや、寧ろ忘れてたアタシがアレなんだから気にしないでよ、寧ろ思い出させてくれてアリガト。」
「し、しかしカズハ殿…某のせい、おぶぅ!!」
「はい黙れ。気にしてどうすんのよ、ンなどうでもいい事」
喋ってる途中の幸村の顔に、張り手をかます
ベチッという微妙に痛そうな音が聞こえたけどとりあえず気にしない。
「どうでも良くは無いだろう!?カズハ殿の事ではないか!!」
「チッ…いちいち面倒な男だなアンタ。気にしても仕方ない事気にすんなって言ってんのよ」
「それは…どういう…?」
「今の所、帰れるなんて思ってないし、帰った所できっと退屈するだけだもん」
張り手された頬を押さえながら、若干驚いたようにアタシを見る幸村。
「…母御や、御家族が心配召されて居るとは、思わぬのか?」
「…?、あぁ、大丈夫。心配はしてるかもだけど、うちの家族皆、無駄におおざっぱだから」
「そういう問題でござるか!!?」
「うん。だってアタシの親よ?」
誇らしげにそう言ったら、なんか微妙な表情された。
…なんなんだ。
なんか腹立つな。
「…まぁ良いや、幸村!とりあえず団子食べよう団子!アタシなんか歩いてて疲れたし」
適当にそう言って話を反らす。
実際疲れた訳じゃないし、そこまで団子が食べたい訳でもない。
とりあえず今は違う話題にしたかった。
でないとなんか、アタシがいたたまれない。
「…う、うむ!!それもそうだな」
幸村はそう笑って、近くの団子屋まで案内してくれた。
団子屋の外椅子に座り、二人で団子を食べながら町行く人を眺めつつ、アタシは若干焦っていた。
だってアタシ、お金持ってない、どうしよう。
ちくしょう佐助め、お小遣いくらい出掛ける前にくれても良いじゃん!
幸村担いで食い逃げするべきかな、なんかそれが良い気して来た。
「…カズハ殿?如何された、この団子…お気に召さなかったか?」
「や、そうじゃなくて…アタシの分のお勘定どうするべきかと思って。」
真面目にそう言ったら何故だか思い切り驚かれた。
「カズハ殿!其方はお気に召されずとも良い!」
「へ?、何?奢ってくれんの?」
「当たり前にござる!カズハ殿を誘ったのは某!誘っておいて金を払わせる事なぞ出来ん!」
「え、…そういうもん?」
「そういうものでござる!」
そうか。
そうなのか。
へー。
現代の知識しかないから知らんかった。
…いや、もしかしたら幸村がそういう奴だって可能性もあるか...
とりあえず一意見として留めておこう。
「なら、ちょっと遠慮して少し、頂く事にするよ。一応幸村ってアタシの上司の上司だし」
「カズハ殿…別に遠慮はいらんのだぞ?」
「良いのよ。食べすぎても夕飯入らなくなるし」
アタシはそう言って皿のみたらし団子を頬張った。
幸村はと言えば小さく『女子とはそういうものなのか…』と呟いて山盛りの団子に手を付けている。
うん、そう、山盛り。
いつも思うけど幸村の原動力は団子なんじゃないだろうか。
それくらいいつも山盛りの団子を食べる。
どんな胃の構造してんだコイツ。
最近は慣れたけど、それでも見てて胸やけ起こしそうだ。
そんな時だった。
遠くから、なんか異質な気配が城下町に入って来た感じがした。
若干怒気が含まれたような、武人らしき気配。
…なんか嫌な予感がする。
「ねぇ、幸村…」
「……この気配は…!」
「……幸村?」
アタシが不審に思って声を掛けた瞬間幸村は勢い良く立ち上がり、そして
「政宗殿ォォォオオオ!!!」
とか叫びながら、アタシを置いて走って行った。
うん。
部下を置いてくなよ。
…てゆーか、お勘定は?
.........…アイツ、何考えてんの?
え?食い逃げ?アタシお金無いって事仄めかしたよね。
え…ちょっ…どうしよう。
いや、それよりも、アイツ今なんつった?
「あ~ぁ、竜の旦那の気配がしたから来てみれば…、案の定こんな状態か」
食べかけの団子を頬張って、無理矢理動揺を隠しながら色々思案していれば、気付いた時にはいつの間にか佐助がそこに居た。
いつもドSでムカつく上司も今ばかりは救世主に見える。
「佐助っ!!良かった、アタシお金無いからどうしようかと…!」
「そっかそっか…よし、じゃあカズハちゃん。…“助けて下さい佐助様”、って上目遣いで可愛ーく言ってみようか」
前言撤回。
やっぱドSはドSだ。
それ以上でも以下でも無い。
寧ろドSでしかない。
ニコニコしながら言ってる事こんなんとかホントどうしたいんだよコイツ
え、言わなきゃダメなのコレ
でもなんか、スゲー嫌だけど言わなかったら放置される気がする。
...それは避けたい。
仕方ない…マジでもの凄く嫌だけど。
キャラじゃないからマジスゲーハンパ無く嫌だけど、背に腹は変えられない。
「…っ、…た…、助けて下さい…佐助様…!」
「うーん、表情が引き攣ってるけどまぁ良いか。…じゃあお礼は体で返してねカズハちゃん」
なんとか言えたと思ったら、軽い調子でそんな事を言われた。
うん、とりあえずちょっとツッコんで良いだろうか。
ねぇ、それどういう意味?
…いや、やっぱ良いや、なんか聞くの怖いから聞かなかった事にしよう。
「じゃちょっと待ってて、お勘定終わらせて来るから」
佐助はそう言って団子屋の主人に近付いて行って普通に会計を済ませた。
ちなみに幸村が残した団子は、一応お持ち帰りにしてもらう。
まあ、勿体ないしね
「…てゆーかさ、幸村走ってっちゃったけど、一体何が起きてんの?」
「あれ、カズハちゃん解んない?竜の旦那とうちの旦那が戦ってんだよ」
いや、幸村が誰かと戦ってるのは気配で解る。
暑苦しい気配が誰か解んない武人の気配とぶつかり合ってるから。
なんか無駄にはしゃぎながら。
……町破壊してないと良いけど。
「とりあえず、竜の旦那って誰よ?」
「えー?そんなん見た方が早いよ?」
…確かに。
とまぁそんなこんなで、団子の入った風呂敷抱えながら、現場に足を運んだ。
*****
俺と政宗様が町に入った時、土煙をあげながら見覚えのある赤いのが走って来た。
「Ha!、律義にお出迎えたぁ嬉しいね!真田幸村!!」
「うおォォォオオオ!!政宗殿ォォオオ!!!お手合わせ願う!!!」
「Ah!?無視かテメェ!!」
辺りにガキィン!という甲高い鍔ぜり合いの音が響いた
そしてそれは暫くの間何度も辺りに響く
その間俺は、それを見ている事しか出来なかった。
…否、止める暇が無かった。
…しかし止めなければ血気盛んな二人の事だ、このままでは町を破壊しかねない。
「政宗様!!」
「ゴルァ幸村ァ!!」
俺の声と重なる様に若干ドスの効いた若い娘の声が響いた
そして、何か小さい物が凄い勢いで俺の横を通り過ぎ、政宗様と幸村殿の間を割る様に壁に突き刺さった。
「ぬ…!!?」
「…団子?」
政宗様の呟き通り、団子だった。
何故か、団子が壁に刺さっていたのだ。
意味が解らないが…とりあえず今のうちに政宗様に駆け寄る。
「政宗様!何しているんですか、此処は街中ですよ!?こんな所で戦えばどうなるか判っているでしょう!!?」
政宗様はバツが悪いのか眉間へ皺を寄せた
「チッ…判ってるよ小十郎。しかし向かって来たのァあっちだぜ?」
「ならば避ければ良いだけでしょう!何故立ち向かおうとするのです!」
「それはアイツが無視しやがったから…!」
「言い訳は聞きません!!」