僕らは声をかけられた。栗色の髪を伸ばして、帽子を被ってる少女に。
見た目不良じゃないのに、再開発エリアにいるのは何故だろう?しかも歓楽街に。ここは夜遊び歩いているレヴォルフの生徒くらいしかいないものだと思っていた。
「ねぇ君たち、追われてるんじゃないの?逃げなくてもいいの?」
「えっと、君は?」
綾斗君が尋ねたが意に介さずに背を向けて歩き出す。僕と綾斗君が呆気に取られていると、振り返ってきた。
「ほら、こっちなら監視の目も少ないよ。早く逃げないと、また面倒なことになるんじゃないの?」
この人は味方なのだろうか?完全に巻き込まれに来ている。ここの極道の人たちが雇った人という可能性もあり得なくはないから、この人の思考を読んでみることにする。
すると、とある名前?が浮かんできた。
(シルヴィア=リューネハイム・・・?)
どうやらこの人はシルヴィアさんというらしい。それとここにいるのは人を探していたかららしいんだけど、どうやら敵ではないらしい。
そうしてシルヴィアさんについて行くと、再開発エリアの人が少ないところに出られた。
「ありがとう、シルヴィアさん」
僕は何の気もなしにお礼を言った。いや、この場合言ってしまったというべきか・・・
「「え!?」」
綾斗君とシルヴィアさんが同時に驚く。何でや・・・
「日向、シルヴィアってあの――」
「なんで私の名前知ってるのかなぁ?」
シルヴィアさんがすごい剣幕で聞いてくる。少し怖いんだけど・・・
「僕の魔術師としての能力で、少し君の頭をのぞかせてもらったんだ。そしたらシルヴィア=リューネハイムって名前が浮かんできて・・・」
でも何でこんなに怒っているんだろう?それに綾斗君は呆然としているし・・・
「君はレヴォルフの花園日向君だよね?『鳳凰星武祭』に『孤毒の魔女』と出てる」
気を取り直してシルヴィアさんは僕に向かってそんなことを聞いてきた。
「そうだけど、何で知ってるの?」
「そりゃ『鳳凰星武祭』の決勝進出者だもん。それに『孤毒の魔女』をペアにしてるっていうのもすっごく話題になってるし。それに君は星導館の天霧綾斗君だよね?それって変装のつもりなのかもしれないけど、変装するならもうちょっと気を使ったほうがいいんじゃないかな?」
シルヴィア=リューネハイムって名前、どっかで聞いたことがある気がするんだけど・・・どこだっけ?
「ねぇシルヴィアさん、どっかで会ったことってある?僕君の名前に聞き覚えがあるんだけど、どこで聞いたか全く思い出せなくてさ・・・」
そう言うと綾斗君とシルヴィアさんがぽかんとした表情になる。次いでシルヴィアさんが再びすごい剣幕で迫ってきた。
「ねぇ君、本当に私のこと知らないの?天霧君は気付いているようだけど、君本当に私のこと知らないんだ?からかってるんじゃなくて?」
「知ってたらこんなこと聞かないよ」
何でこの人は自分の事を知っていることを前提で話してくるのだろう?そんなに自分が有名だと思っているのかな?
「本当に知らないんだ、呆れた・・・名前だけ知られて正体には気づかないなんて・・・」
そんなこと言われても・・・知らないものは知らないんだ。
「私は世界の歌姫って言われてるアイドルなんだけどな・・・」
「アイドル!?」
「やっと分かった?私って世界的に有名な――」
「アイドルってあれでしょ?顔の良さと握手会とか舞台の優先申し込みチケットだけでCD売って、オリコンの上位掻っ攫っていく、自分の歌唱力だけじゃ碌にCDが売れない人たちの蔑称でしょ!?ごめん!僕アイドルって言葉がもうすでに無理なんだ・・・」
「はーーーー!?今なんて言った!?」
今までで一番の迫力で迫ってくる。なんか綾斗君なんかは僕を見て若干引いてるし・・・解せぬ・・・
「いやホントアイドルって存在が僕本当に苦手なんで勘弁してくれませんかね・・・」
「言っておくけど、顔の良さとか中身の特典でCD売ってるアイドルなんてA〇Bとかだけだからね!私はちゃんと歌唱力とか評価してもらってますーー!」
そんな感じで目的を忘れてアイドル談義をしていると、なんかヤバそうな人そうな人が絡んできた。
「おい!てめえら!ここがどこか分かってんだろうな!?ここはお前らみたいな真面目ちゃんが来るような所じゃ――」
「「ちょっと黙ってて!」」
僕とシルヴィアさんがハモる。そのことで睨みあうことになる。
「あの二人とも・・・今の状況分かってる・・・?」
綾斗君が僕たちに声をかけてくるが、熱くなっている僕たちには届かない。
「お前ら、ここにいるってことは覚悟できてんだろうな?」
「「うるさい黙れ」」
そう言ってしつこいガラの悪い人をシルヴィアさんが蹴り上げる。その蹴り上げられたのを、僕は剣型の煌式武装で”修羅月”を放って黙らせる。
「うわぁ・・・」
なんか綾斗君がドン引きしているけど、知らない。
「君と話してても埒が開かないや」
それからしばらく談義していたが双方意見を捻じ曲げないのでここは一旦終わりにするらしい。
「ところで君たち、ここで何をしていたの?」
あ、そういえばフローラちゃんって子探してたんだった。完全に忘れてた・・・
綾斗君がシルヴィアさんに状況を説明をしている。するとシルヴィアさんが協力すると言い始めた。
「私の能力で居場所を特定できるかもしれないけど、協力しようか?」
僕と綾斗君は顔を合わせて首を縦に振る。せっかくの協力の申し出を受けない理由は無いと思う。
「じゃあここから移動しよっか。ここじゃ探知なんてできないし・・・ところで、ここで伸びてるお兄さんはどうしたの?」
そう言えば足元に気絶してるガラの悪い人がいる。何で倒れてるの?
「二人がやったのに覚えてないの・・・?」
なんか頭を押さえてそんなことを呻いていた・・・僕とシルヴィアさんが?相性最悪なのにこんなことできるわけないじゃないか、アッハッハ
* * * * * * * * * *
僕たちは高層ビルの屋上まで移動してきた。どうやら人目が少ないところでやる必要があるらしい。
シルヴィアさんは綾斗君に地図を展開するように求めていた。六花の地図を拡大して展開する。
するとシルヴィアさんはここで起こったことを秘密にすることを求めてきた。なんか今更な気もするけど・・・
そうしてシルヴィアさんは歌い始める。どうやら歌を媒介にして能力を発動させるのが、シルヴィアさんの魔女としての能力らしい。
すると歌い始めた時に待っていた羽が、地図上に落ちる。どうやらここにフローラちゃんがいるらしい。
「ここだね。じゃあ私はこれで帰るけど、ここで起こったことは秘密にしておいてね?」
「あ、待って、何かお礼がしたいから連絡先を教えてほしいんだけど・・・」
綾斗君がそう言っったが、途中で自分の失言を悟ったらしい。しかしシルヴィアさんはくすくすと笑いだした。
「いやー、ごめんごめん、こんなに直接的なアプローチは初めてだったからさ。はいこれ、私のプライベートアドレス。君にもね」
「別に要らないよ」
いやほんと、勘弁してください。アイドル云々以前に、どうやらシルヴィアさんは本当に有名なアイドルらしい。そんな人のプライベートアドレス持ってたら、ファンの人に刺されるんじゃないだろうか?
アイドル嫌いなのに、アイドルがらみで殺されるなんて僕は御免だ。
しかしシルヴィアさんは無理やり押し付けてきた。どういうつもり?
「じゃあね」
そう言ってビルから飛び降りてその場から去っていく。
フローラちゃんの居場所が分かったことを、他の人たちに綾斗君が伝えている。僕は今日の決勝に向けて、少しでも休むために綾斗君に決勝で会おうてきなことを言って、寮へ帰った。
みんな大好きシルヴィアさんですね
界龍の人憐れ・・・