現在僕は逃走中だ。誰からかは、もう言うまでもないだろう。
「ちょっと!僕もう追いかけられる理由ないでしょ!この前、結局ちゃんと決闘して僕負けたじゃん!」
あの後、綾斗君とユリスさんと別れた後、レヴォルフに帰って来てから僕とオーフェリアさんは決闘をした。
曰く、『ユリスの炎あんなにあっさり切り捨てるんだから、結構実力あるんじゃないか?』とのことだ。
あんなのまぐれだって言ったんだけど、聞き入れてもらえずなんだかんだ決闘をすることになってしまったのである。
とりあえずこのまま適当にやって負けたら、また追いかけられるのは目に見えているので、今度はちゃんと戦った。オーフェリアさんは何度か冷や冷やしていた場面があったらしいが、結果的にはオーフェリアさんの圧勝だろう。
あの星辰力の量はズルい。連鶴とかやっても途中で星辰力でガードされちゃうし、天霧辰明流の方でも結果は同じ。奧伝まで使ったのに結局勝てないってことは、やっぱりオーフェリアさんは僕よりもすっごく強いってことだろ。
決闘が終わった後、『王竜星武祭』の決勝が終わった時よりも疲れてるみたいだったけど、それもきっと気のせいだ。
「とにかく、僕はもう追いかけられる理由は無いと思うんだけど!」
「最近、あなたを追いかけているとなぜか心が落ち着くの。追いかけていないと何故かざわつく・・・何でかしら?」
「ドSか!!」
でも追いかけられてても以前のような威圧感は無い。全力ではないのだろう。かくいう僕も、依然追いかけられているときは全力で逃げているわけじゃない。
この光景はレヴォルフで最早日常の光景になっているようで、すれ違った生徒からは
「おう、また追いかけられてるのか?まぁ精々頑張れや」
とか言われる始末。変わってあげようか?っていうと全力で避けられるんだけどね・・・
とはいえここはレヴォルフの外、しかも時間は夕方だ。星導館の近くまで来てしまったようだし、そろそろ帰ろうかと思っていたところ、見たことのある二人の人影が見えた。
「おーい、綾斗君!」
「あれ、日向?どうしてこんなところに?」
「綾斗君こそどうしてここに?このあたりって星導館の女子寮付近じゃないの?」
「この子を女子寮まで送っていた最中なんだ」
「そうなんだ。久しぶり、綺凛ちゃん!」
「え?日向さん?」
* * * * * * * * * *
僕は昔、刀藤流の道場に通っていたことがある。そこで僕と綺凛ちゃんは出会った。
出会った時点で僕の身長は当時の綺凛ちゃんと同じくらい。しかもこんな顔だから、僕は綺凛ちゃんに女の子の同い年の子と勘違いをされていたらしい。
僕が男の子で、年上だということを告げると、顔を真っ赤にして謝り倒してその場から逃げ去ってしまったけれど、その後は普通に仲良くさせてもらっていた。
「綺凛ちゃん、星導館に通ってたんだ」
「はい、どうしても叶えたいことがあるので・・・」
「えっと、二人は知り合い?」
「うん、昔綺凛ちゃんの家の道場に通わせてもらってたことがあって、そこで知り合ったんだ。仲良くさせてもらってたよ。綺凛ちゃん、僕よりもずっと強かったからなぁ・・・今もすっごく強いんだろうね」
「いえいえ、日向さ・・・日向先輩の方が強かったですよ。自分なんて日向先輩と比べたらまだまだです・・・」
「そんなことないって。綾斗君も綺凛ちゃんも、僕よりもすっごく強いと思うけどな」
そう言うと顔を合わせて苦笑いされる。なんでや・・・
「今帰ってる途中だったんだっけ?今とある人から逃げてる最中なんだけど、しばらくは何とかなりそうだから、僕も一緒に行って良い?」
「私は構いませんよ。綾斗先輩は?」
「俺も構わないよ。日向、逃げてる人ってもしかして・・・」
「オーフェリアさんだよ。この前決闘してもう追いかけられる理由は無いはずなんだけど・・・それにもう慣れちゃったよ・・・アハハ」
「え!?あの『孤毒の魔女』ですか!?」
「入学式以降、何かと縁があってね・・・今度の『鳳凰星武祭』一緒に出てもらえることになったんだ。二人は『鳳凰星武祭』に出場するの?」
「俺はユリスと組んで出場する。もし当たっても、全力でやらせてもらうよ」
「私は・・・恐らく出れないと思います。ペアもいませんし・・・」
「そうなんだ。じゃあ綾斗君は、僕のライバルだね」
そんな感じで雑談をしていると、綺凛ちゃんが過ごしている寮に到着した。
「では先輩方、送っていただきありがとうございました!」
そう言って綺凛ちゃんは頭を下げて寮に入っていく。やっぱり礼儀正しくていい子だな。
「僕たちも帰ろっか」
「そうだね。じゃあまた」
そう言って綾斗君とも別れる。帰る途中でオーフェリアさんに見つかったので、そのままレヴォルフまで一緒に帰ることにした。なんで追いかけてくるか、やっぱり理由は分からないらしい。
まぁ最近は追いかけられるのも悪くないと思えてきてしまった。
今回は結構短いですね