もし美遊の世界に崩壊したカルデアマスターが召喚されたら 作:ラリーZ
街に降りてみたはいいのだけれど、やっぱりこの恰好に色々問題がある。今は大災害により絶賛混乱中のため、私を見かけても視線すら向けずに走り去っていく人たちがほとんどなのだけど(こんな非常事態でも下半身に正直なのか、一部こちらを見ながら逃げる者もいたが)そのうち日常を取り戻すであろうこの街でやはりこの格好は頂けない。
目の前で怪我でのたうち回る人を避けながら、服を手に入れる手段を考える、………うーん、やっぱりこの混乱に乗じて目についた服でも貰うしかないか。火事場泥棒は好きではないのだが、やらざるを得ない。
さて、無人となったOSODAという店で物色を始めることにする、残念ながら都市部にあるようなお洒落なお店はこの大災害で全部吹っ飛んでしまったようで、えり好みもできないのでここで良しとした。
このオレンジ色の髪にあう服は結構選ぶのが大変だ、だが選んでる暇もない、仕方がない、非常事態という事実も含めて、動きやすいTシャツとジーパンのボーイッシュに見える服を適当に選んで店を出た。
「さて、やっと人様の前に出ても問題ない格好になったね」
そうなると次は衣食住である。状況が分からない手前適当な空き家に入ってしまえばいいとは思うのだが、何やら先ほどからずっと視線を感じるのでそっちに向かってみようと思う。長期的な潜入になると思うし、敵なら消すし協力してくれるならありがたく力を借りよう。こちらのことを察知している時点で既に一般人ではないだろうし説明もいらないだろう。
私はまだ混乱の収まらない街を、どこからか覗いてくる視線に向けて歩いていくのだった。
◎
さて、これはどうしたものか。
監視者である私、
その結末の末に国そのものすら崩壊しかねない大災厄が発生したことも、そしてそれが何らかの力………いや、正確に語ろう。朔月家の稚児がこの大災厄を退けたことも知っていた。
では何故私がここまで困惑しているかだが、それは目の前の少女の処遇についてだ。
「で、魔術協会と協力関係にあるあなたがこの世界の現状を監視、傍観するものとして存在する。てことでいいの?」
「ああ、それでおおよそ外れてはいない」
「なるほど、つまりあなたは今回のこの災厄には関与していないと」
「ああ、神にでも誓った方がいいか」
「………別にいいや、あなた本心から神とか信じてるわけじゃなさそうだし」
見た目は高校生ほどの少女、しかし人のことは言えないが目は光を宿しておらず、大きな隈が人並みに美人であるはずの少女に影を落としている。髪は煤けたオレンジ色で、あまり手入れはされていないようだ。
そしてそこまで一言でいえばやつれている少女だが、表情は非常に豊かだ、というよりも笑顔しか浮かべていないのだ。これまで話していて見れたのは、笑顔と無表情。ある程度一般人ならば衝撃を受ける被害の全容を伝えても笑顔のままなのには、正直神経とやらを疑わざるを得ない。もちろん私も表情一つ変わらないが。
「随分と辛らつだな、私とて一介の神父なのだが?」
「え~見えないな~どちらかというと殺し屋とかの方が合いそう」
「失礼な少女だ。で、私のことは伝えたのだ、君のことを聞いてもいいか?」
「いいよ、話せることならね」
彼女が
そしてこのタイミングで呼び出された彼女の使命も恐らくではあるが想像できた。
「このタイミングでこちらの世界に何者かを召喚できる組織、そうなると私が知りえる中では一つしかない。となると、君は人の抑止力から送られた守護者、ということで間違いないかな?」
「………うーん」
笑顔のままではあるが少々困ったような返事を聞き、私の想定はほぼ間違いがないとした。この反応から恐らく彼女からは答えは出てこないだろう。
人の抑止力とは何か、一言で言うなれば、人類という種を守るものであり人類の絶滅を防ぐものである。
しかし私の予想ではこの世界に人の抑止力が介入してくる可能性はほぼ皆無だと思っていたのだがな。
「エインズワースのやり方が君たちの琴線に触れてしまったのか?」
「人類を再構築するってやり方、確かにやり過ぎではあるよね、でも私の目的はそれではないよ」
それではない、となるとエインズワースを潰すために送り込まれたというわけではないのか………。
「失礼、流石に急に切り込み過ぎたか」
「いやいや、流石だとは思ったよ。私を見つけてまだそんなに時間が経っていないのに、もうその発想に至っているなんて」
「となると君の目的は………いや、これも憶測の域をでないな。他の可能性もないことはない、だが今最も介入する可能性があるものと言われればそれしか思いつかん」
ということは、今回の聖杯戦争はある意味
「まあ神父さんがどんな考察しようが勝手なんだけどさ、他に聞きたいことはない?」
「そうだな、回りくどいことはやめようか。君の目的はなんだ?この世界は放っておいても確実に滅びる、それに今更介入する意味は正直言ってあまりないと思うのだが?」
「ふむふむ、この世界の行く末を理解している良い意見だね。答えは簡単だ、今回のタイミングで私が呼び出されたこと、それこそが正解だよ」
「はて、聖杯戦争の被害の規模が問題かな?」
「とぼけちゃって、今回の聖杯戦争は一つ、大きな成果を出しているんだよね」
その成果とは何か、言わずとも分かる。あの闇を消し去った神々しい光、あれ以外に何があるというのだろうか。
「………聖杯の発見、か」
「ビンゴ」
「そしてそれを排除するべく君が呼び出された訳か」
「さて、流石に色々制約があるからそれ以上は言えないな~」
「ということは、今から始めるのは聖杯の確保、または破壊か………」
それならば彼女を止める術は無い、私はそもそも傍観者であり、この件には既に関わらないことを決めている。ならば彼女と敵対関係になり抹殺されるよりも、この先の行く末を見るために彼女とは協力関係にあるべきだろう。
しかし、彼女の回答を待てども、一向に肯定の言葉が返って来ない。
よく見れば、通常の笑顔とほとんど差がないため見分けは付きにくいが、僅かに困惑の表情を浮かべていた。
「うーん、そのはずなんだけどね。上からの命令が下りてこないんだよね」
「………なるほど、つまりは現在、待機命令が出されているというわけか」
私の見立てでは、仮に
それとも………。
「まあそんな感じなんだけど………。ほら、本来私って仕事が終わったらさっさと帰るスタイルなんだけど。こんな調子じゃん?魔術師の連中に眼を付けられても面倒だし、あの~できれば~」
………この小娘が何を言いたいのかをなんとなく理解した、まあ恩を売るだけの価値はあるとは思えるか。
「わかった、喜べ、お前をこの教会で君を住ませてやろう」
「えぇ!?いきなり上から!」
「私が家主なのだぞ?それにお前は金を持っているのか?」
「え、えっと………きゅ、QPなら」
「なんだそれは、ここでは全く役に立たんぞ」
小娘がなにやら結晶のようなものを出してきた、恐らく魔力の結晶、それなりの価値はあるのだが。ここで優位を取るために伏せておこう。
「ガーン!」
「さて、無一文、おまけに根無し草のお前はこれから誰の言うことを聞かなければならないか、分かるか?」
「は、はい!言峰綺礼様です!」
ははー、と平伏しだした小娘を見て、こいつを派遣した抑止力は何か重大な欠陥でもあるのではと一瞬疑ってしまった。まあ見ていて愉快なので止めないが。
「分かればいい、働かざる者食うべからず。私は教会の神父をしながらラーメン屋を営んでいる。そこで居候分の代金は”働け”」
「はっ!ははー」
何故か先ほどよりも深い土下座をかましている小娘だった。
ちょいと面倒な単語が何個か出ています、自分なりに解釈しちゃってるところもあるので気になる人は感想か何かで聞いてください。