もし美遊の世界に崩壊したカルデアマスターが召喚されたら   作:ラリーZ

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3話

 

働け、とは言ったものの相手は抑止力の使者にして事が動き出せば協力関係となる相手、流石に四六時中働かすわけにも行かず、彼女には週4ほどのペースで働いてもらっている。

 

「店長ー客が来ませんよー」

「あの災害があった後だ、金のあるものは遠くへ逃げ、残った者も外に出るために金を貯めている。外食を取れるほど余裕のあるものなどごく僅かだろう」

 

あの災厄以来、街には重い空気が常に蔓延っていた。何による災害かが全く特定できず、再発の可能性もまるで分らないとなれば、この街を離れるか、いつまた災害が起こるかの恐怖と闘いながらの生活だ。

しかしこうなってくると店の売り上げへのダメージが大きいな、これは想定外だった。協会に祈りに来る人間は圧倒的に増えたがな。

 

「………そろそろ時間だな、昼にするか」

「そですね、二時ですもんね」

 

飲食店の12時から2時まではゴールデンタイムだ、しかしそのゴールデンタイムでさえサラリーマンが10人ほどしか来ないのだから、他の食堂などもこのありさまであるなら、世界の崩壊よりも冬木市から飲食店がなくなるほうが先になりそうだ。

小娘が看板を準備中に変えに行っているうちに、ラーメンをゆで始める。そして本命の麻婆豆腐を………

 

「あー!店長またマーボーラーメンやろうとしてる!私それいらないって言ってるのに!」

「私の出すラーメンが食べられないとでも?」

「まだ出してませんー!それに自分の分は自分で作りますから!」

 

そういって急いで帰ってくる小娘、私から麺をひったくり自分で作り出す。まあ展開は読めていたので私の分しか麻婆豆腐は作っていないが。

 

完成したラーメンをお互いに向かい合うようにして座る、この小娘は距離感を取ることや、嫌悪を感じるということが少ないようで、このような年齢の離れた男とも向かい合って飯を食べることにも全く抵抗がないようだ。

 

「………小娘」

「なんです?」

「いい加減毎回小娘というのにも面倒になってきた、そろそろ名前を言わんのか?」

「おお!」

 

醤油ラーメンを食べる手を止めこちらを見てくる、その眼は相変わらず光を宿していないが、それでも彼女が嬉々として見ているのが分かる。

ちなみに睡眠もしっかり取っているはずなのだが目の下の隈が一向に無くならない、あまりにも不自然なので化粧か何かかと思ったが、そもそもこの娘が化粧をしているところなど見たことがない。

 

「やっと聞きましたか、名前を言わずに一か月経過するかと思いましたよ」

「面倒だな、早く言え」

「では自己紹介も兼ねて。

おっほん、私は■■■■」

「ん?」

 

ノイズが走った、まるで世界がこの娘の存在を拒んでいるかのように、私に名前という楔を打たせないようにしているかのようだった。少なくとも、外部の妨害が入ったことは事実だった。それはこの小娘も気づいているようだった。

 

「ありゃりゃ、じゃあ仕方ない。私の名前は藤丸立香」

 

今度は何故か普通に名前聞き取れる、では先ほど言おうとしたものは何なのか、これが偽名なのかそれとも………。いくつかの違和感が生まれたがそこは今は放置した。それよりも珍しく小娘、藤丸立香が自ら情報を出してくれるのだからそちらの方が優先される。

 

「こう見えても世界を救った(れっき)とした英霊なんですよ」

「………」

 

食べる手が、止まる。

 

「世界を、救った?」

「ええ、滅びるはずの世界を、人間を救いました」

 

それを彼女は当たり前のように、だが、それは本来誇らしい偉業であるはずなのに、藤丸は大したことでもなさげにその事実を伝えてきた。

 

「………そう、抑止力が宣伝しろと言ったのか?」

「いいや、別に上がどうとかそういうことはなく、本当に世界を救っただけだよ。ただそれだけ」

 

それだけ。藤丸立香は、英霊の中の何人が()()()()()などという偉業を成し遂げたことがあると思っているのだろうか。それも間接的ではない、直接人類を救済したなどという偉業、恐らく彼女のみ………。

 

「そうか、そういうことか………」

「どうしたの店主(マスター)?」

「何、現在生存している、いやもはや過去も含めた英霊の中で()()()()()()()()()()など君ぐらいしかいない、そうなれば、君はエインズワースに確実に狙われるだろう。そう思っただけだ」

「ああ」

 

ポン、と手を打つ当たり、どこか白々しい。恐らくそこまでは考えていたのだろう、大方それがばれればこの拠点を使えなくなるから黙っておいた、といったところか。

 

「別に一度住まわせると決めたものをたたき出すほど外道になったつもりはない、そこは気にするな」

「いえいえ、確かにあの家からすれば私も重要人物だったと、再確認できただけです」

「そうなると、此度の聖杯戦争は失敗だったという私の持論を撤回せねばならんな」

 

世界を救った英霊を呼び出せた、これだけでも0%のこの世界が僅かに、ほんのわずかな可能性を手に入れられる絶好の機会なのだ。だからと言って藤丸立香のことを彼らに伝える気はないが。

顔を上げれば、何故か真顔の藤丸がいた。

 

「別に私が彼らに接触しても構いませんよね?迷惑ですか?」

「構わん、そもそも私にお前の行動を止める義務も、術もなかろう」

 

英霊であるなら、一介の人間など塵芥の様に吹き飛ばせるだろう、藤丸の私から提供される衣食住も、盗みや窃盗に何の躊躇もなければ(そもそも英霊は基本そこら辺が無頓着なのだが)困ることなどないのだ。もしくはエインズワースに助力を求めれば一発で解決できるだろう。

 

「分かりました、今日はこの後出かけます、少し遅くなると思います」

「………日を跨ぐようなら連絡しろ、それだけだ」

「はい」

 

 

 

その後、藤丸立香は帰ってこなかった。

そして数日後にメールが一通。『数年後に、また会いましょう』とだけだった。

 

 

 

 

全く、唐突な指令に呆れてしまう。せっかくいい根城も見つけて、いい感じのバイト経験もさせて貰えていたというのに、これだから上は………。

 

「………まったく、この世界に何が起こっているか調査せよ?そんなの適当な英霊とか現地人にやらせとけよ!一々私を使うなー!」 

 

そう、ここロンドンの中心で一人叫んでみる。周りには人はおらず、むしろ霧が立ち込めていた。うーん、どっかを思い出すなー。

 

「まったく、おまけに事件解決まで命令してくるし、そもそもこの世界の秘密とか知っても()()()()()()()!」

 

あまり意味の仕事ではあるが仕方がない、目の前に突然現れた機械仕掛けの人形に目を向ける。面倒だが、どうやらこいつら全員始末しなければいけないようだ。

 

「はー本当に数年後に冬木市に戻れるのやら」

 

なんだかマーボー店主のあの店の匂いを思い出しながら。目の前の敵を殲滅しに向かうのだった。

 

 

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