プロローグ 上田幸村
人は死んだ後、何処へ行くのだろうか...
さあな。そんな事は俺にとってはどうでもいい事であって他人様にとってもどうでもいい事だ。俺が知りたい事はもっと別にある。俺が未だに答えにできないことは更に別にある。
俺が知りたいのは『何故死んだ筈の俺が生きているのか』
なのだから。
そして、俺が未だに答えに出来ていないのは──
『何故、俺は此処にいるのか』
なのだから
俺の名前は────。ごく一般の小市民だった人間だ。
...済まないな。俺はどうやら前世の記憶が断片的に欠如しているらしい。
生まれた街や住んでいた街の名前など跡形もなく消し飛んだ。自らの名前なんて以ての外だ。苗字の最初の文字すら覚えていない。
しかし、どういった経歴を持っていたか、死ぬ直前はどうしてたか等は何故か覚えている。そう、あれは交通事故だ。誰かを助けようとしたとか、自分が身代わりになったとかそんなご都合主義の主人公のテンプレ事故死のようなものではない。それはもう呆気なく走馬灯を見ることもなくトラックにペシャンコにされた。
経歴──と言うよりか最終学歴か──は、一応高卒である。これでもキャンパスライフに心を踊らせていた一人であり、都内の大学進学も決まっていた。しかし、その前に死んでしまったので結局学歴は高卒止まりである。
それが昔の俺の自己紹介だ。ここまで話して気付くことはないか?
そう、俺には現在と過去、二通りの自己紹介があるという事だ。それ即ち、俺は輪廻転生、若しくは異世界転生をしてしまった転生者、異世界人にあたる人種なのだ。
転生した瞬間は俺にも気付かない位あっという間だった。気が付くと、そこには見知らぬ天井。小さくなった手。そして、1日に何回もあるミルクタイム。あれは18歳の自我を持った状態では精神的に苦痛だった、屈辱だった、恥辱だった。出来ればこの話は誰にも知られることも無く墓場まで持っていきたいと安い決意を当時の俺はしたものだ。
さて、ここまで来たところで俺の現在の立場についての紹介をしようではないか。そろそろ俺も名前を開示してしまって皆に認知されたいし、そもそもの話、俺の名前や性別を言っていない状態で話を進めても
『転生とか、過去とかどうでも良いから名乗れよ。野郎か?』ってなるだろう?少なくとも俺はそう思う。
故に名乗らせて貰おう。
俺の名前は上田幸村、言わずもがな野郎だ。何とも高貴で何処かで聞いたことのあるような名前だと思ったら前世でやり込んだ某無双ゲームで有名なあの人と名前が同じではないか、と思ってしまったのはまた別の話。
信州に居を構えている上田家は先祖代々からなる名門らしく、立派な門構えに家は武家屋敷を彷彿とさせるそれ。茶の間まで完備されている。
おまけに上田家の人間は往々にして高学歴、過去には有名人まで輩出しているトンデモ家系である。
そんな家だからか、上田を名乗る俺も例に漏れず上田家にとっては普通の道、レールを逸れることなく、そしてグレること無く送っていた。
...色々語ったが俺が1番声を大にして言いたいのは『上田幸村はワケありの転生者』という事だ。
その不変の事実を踏まえて聞いてほしい。
これから俺に起こる数奇な運命に。
そして、とある高校を舞台にした、もう一人の少年の一人の女に対する『リベンジ』とやらを。